【ウルトラCの震災危機対応?】
通貨を増発=紙幣を増刷=する案が、浮上しているという。

 東日本大震災の復興財源を確保するため、与党内で日銀が国債を直接引き受ける案、とどのつまりは通貨を増発=紙幣を増刷=する案が、浮上しているという。

 だが、戦前に行なわれた国債の日銀引き受けのコトの顛末が思い起こされて、政府は、この案の火消しに躍起になっているともいう。

 昭和恐慌の1930年代、日銀引き受けが高橋是清蔵相の元で実施された。ところが、通貨の増発により急激なインフレを招き、急激に物価が上昇するハイパーインフレに陥った。
 だから「国債の直接引き受けで日銀が安易に通貨を増発すると、世の中でのお金の流通量も増え、インフレなど多くの弊害を生む恐れがある」という教科書的な認識で、財政規律という面でも、硬く禁じ手になっている。

 しかし今、国債の日銀引き受け案が与党内で公然と浮上している。

 なぜなら、3月末の国債残高が642兆円にも達しているので、この大震災のどさくさに紛れて、日銀に国債を売ってしまえば発行残高も減り、押し売りされた日銀が、紙幣を増刷すれば、復興財源まで気に病むことなく簡単に賄うことが出来る、という考えだ。そして、あわよくいけば、デフレスパイラルから脱出するいいきっかけにもなる、というとらぬ狸の皮算用も透けて見える。

 野田財務相や与謝野経済財政担当相は「通貨としての円の信認低下や、金利の上昇も招きかねない。政府と日銀は信認を失う。財政危機を自ら招く」と表向きは否定的だ。しかし、円安や金利上昇は、デフレスパイラルから脱出したいという思いを考えると、望むところではないのか? と思う人もいる。

 日銀が政府の“財布”に。
 それは非常識だ、という声は常識的には多い。
 日銀が政府の財源になることについては、金融市場でも懸念が広がっている。懸念が広がる、という事は、あり得るかも知れない、という証しでもある。非常識で異例な対応が、いつの間にか恒常的な政策となる、つまり常識なのがこれまでの常でもあった。

 金融機関が破綻寸前になった時、公的資金投入でマンマとごまかした。大手企業が破綻寸前になった時、大型合併でしたたかにごまかした。株価が急降下する時、買い支えで凌いだ。
 バブルを例に出すことなく、ままごとのようなやり方がまかり通ってきたという事実がある。
 今回の原発危機でもそうだ。急低下する国策企業体の東電の信用力回復や事故対応のための資金調達を、国策で破綻を救済された金融機関が下支えし、長期債務残高が国と地方を合わせて23年度末には892兆円に達する政府も「危機対応融資」を活用して政府系金融機関を通じて東電に資金支援する。
 分かるようでさっぱり分からない支援という名のカネぐり、資金繰りだ。金融機関や政府が、東電の“財布”になるのだから、結構な話だ。

 戦後最大の危機だというのであるのなら、復興という大義名分で、日銀が国債を直接引き受け、紙幣を増刷し、お金の流通量を増やし・・・。
 そのシナリオに乗ってみるのもいいのかも知れない。

 ニセ札のようなものだが、個人がコンビニのカラーコピー機で刷って使うのではない。紙幣を司る日銀が刷るのだから、犯罪にはならない。
 但し、あとは野となれ山となれ、の、臍の坐った言い訳無用の覚悟は必要である。

 社会がどこまで混乱するのか分からないが、閉塞感のある現状に対しては、案外、起爆剤になるのかも知れない? ・・・とは思えない?

 確たる一手は、誰も持ち合わせていない。

【記:2011.4.1】


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■1次補正は4兆153億円

 政府ならびに民主党は、東日本大震災の復旧・復興に向けた2011年度第1次補正予算案について閣議決定した。
 主な復旧・復興予算は、ガレキ処理や仮設住宅建設や公共インフラ整備の費用などで、これに充てる財源の捻出は、1)基礎年金の国庫負担割合の50%維持のために予定していた2・5兆円の活用。2)予備費の投入で8100億円。3)民主党がマニフェストで掲げた高速道路無料化の見直し(約3500億円)や子ども手当の上積み撤回(2083億円)。4)DA関連予算の削減で501億円など。

 歳出の内訳は、損壊した道路や港湾、下水道などを修復する災害復旧の公共事業が1兆2019億円、8万6000戸の仮設住宅建設や賃貸に3626億円、ガレキ撤去に3519億円、学校など公共施設の復旧に4160億円、震災関連融資に6407億円、地方交付税の増額に1200億円、自衛隊、消防などの活動経費に2593億円、放射線測定の強化策などに24億円。

 閣議決定した1次補正予算案は5月2日に参院本会議で採決され、全会一致で可決、成立した。

 政府は1次補正に続き、本格的な復興に向けた2次補正予算を6〜7月に編成するが、国会提出時期は7月以降に先送りとなる模様だ。財源確保が最大の課題で、政府・与党は復興に使い道を限る復興再生債の発行や復興税の導入を検討している。

■政府内では「時限増税」案が浮上
 
政府は震災対策として、道路や港湾などインフラ整備費を建設国債でまかない、それ以外は歳出の見直しに加え、臨時特例国債(赤字国債)での調達を想定しているが、政府内では5年程度の時限措置として所得税や消費税などを引き上げ、増税分を復興のために発行する国債の償還財源に充てる案などが浮上している。
 (1)所得税額を一定割合上乗せする増税(2)消費税の臨時増税(3)法人税の引き上げ、の3案だ。

 しかし、増税をめぐっては、景気の重しとなるとの反発もあり、財源探しは難しい。内閣府の試算では震災の直接被害だけで最大約25兆円。

■日本国債また格下げへ
 スタンダード・アンド・プアーズ(米格付け会社S&P)は4月27日、日本の国債の格付けそのものは上から四番目の「AAマイナス」で据え置いたが、日本の長期国債の格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。
 S&Pは震災前の2011年1月に、菅政権の財政運営に一貫した戦略が欠けているとして、日本国債の格付けを上から三番目の「AA」から一段階引き下げて「AAマイナス」にたばかりだった。
 東日本大震災の復旧・復興や福島第一原発事故への対応に伴う政府の財政支出の拡大と、菅政権の力量にも懸念があることから、一段の財政悪化の懸念があると判断した。S&Pは「今後の財政見通しは政府の政治的リーダーシップと、いかに財政再建策に関する政治的合意を形成できるかに大きく左右される」との認識を示した。

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