有機表示

 最近、有機野菜とか有機農産物とか、やたら「有機」や「オ−ガニック」という文字が目につき、鼻にもつく。レストランには、「有機野菜で元気な毎日云々」と書かれたポスタ−や「何とか産の有機野菜使用」と書かれたメニュ−。近所のス−パ−でも新しく有機野菜のコ−ナ−が設けられ、ケチャップや豆腐、ジュ−ス等のコ−ナ−でも有機野菜使用というレッテルも目につく。
 
 有機農法と一口にいっても、完熟堆肥を使って無農薬で有機栽培でつくっているものから未熟堆肥で化学肥料に農薬栽培でつくっているものまである。その曖昧さをなくすためか農水省から有機農産物のガイドラインが発表された。それによると「有機農産物とは、化学合成農薬、化学肥料、化学合成資材を中止して3年以上経過し、堆肥等による土づくりをしたほ場で収穫されたものをいう」とある。このガイドラインに基づく表示の普及を図っているようだが、ガイドラインの設定基準の是非は別問題として、「有機」と冠されたものが流通している今の市場は、意識を含めてメチャクチャだ。
 
 有機に関する最も典型的な意識は、「有機的な循環」への志向より、消費者の意識は「有機=安全」であるし、生産者の意識は「有機=一般栽培より高値で出荷できる」である。そうした意識が、どこまで信じていいものやら皆目見当がつかない「有機」や「オ−ガニック」という文字だけが、やたらと目につく市場をつくった。いわば「誇大表示時代」の到来だ。

 先日、たまたま輸入牛を扱っている業者の方に出会うことがあったので「国産黒豚というレッテルを貼られ市場に出回っている黒豚の量が、実際に日本で飼育されている黒豚より多い」という最近問題になっている件で、「牛の世界も同様のことがあるのではないか」「厳選表示には神経を使うのではないか」といった事を、少し尋ねてみた。すると、その業者氏いわく、「そこまで消費者に知らせなきゃいけないもんでしょうかね」。 そこまでとはこういう事だ。日本人の好む霜降り牛をアメリカやオ−ストラリアが日本に輸出を始めた。霜降りの多い和牛を輸入してむこうの牛とかけあわせF1として開発したものである。それはもともと日本の和牛だから「和牛の霜降り肉」として売ってもおかしくないというのである。 そして、ニヤリと笑って言った。「結構、儲かりますよ」。
 聞いた私は「ムカァ〜」ときて、思わず口から次のような言葉が出ていた。 「見かけやブランドで売れる時代のこれまでは気楽だったでしょうけれど、これからは、本当の本物の時代が来るので、意識変革を自らがやらなきゃいけないので流通業者さんの世界も大変ですね。それにお肉を食べない人も増加傾向にありますしね。ましてそんな意識で流通されたんじゃ、お肉を信用して買えないですもんね」と。
 言った瞬間は、すっきりしたが、言ったような時代が来ると思うのは幻想に過ぎないのかも、という気持ちが沸き上がってきていた。そして、業者氏の誘いを受けて昼食に某レストランに入った。
 するとそこには、「天然有機・薬膳農法米を使用」と書かれた、なんともご立派だが、どこか怪しいポスターが、貼ってあった。
 「まだ、こんな時代です」と言わんばかりに・・・・。


(1998年6月7日記)


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