黒 米


黒米との出会い

 黒米を作る人が増えたようだ。先日も黒米を作っている話を聞いた。私が生まれてはじめて黒米を口にしたのは8、9年前だったような気がする。誰かに盃一杯の黒米を「いつものごはんに混ぜて炊けばいいから」といただいたのが最初である。

 炊きあがったとき、一瞬、お赤飯と間違えるような色合いに炊きあがり、びっくりしたことである。炊飯ジャーの中に置いておくと日一日一日と色が濃くなっていくのも楽しいものだ。その後、一年に2、3回炊くだろうか。その間に、赤米にも縁があり、赤米は黒米より色が薄く炊きあがる。いつだったか確か赤米から作ったというお酒にも縁があった。御殿場の『富岳庵』という所で自然食の学習会に参加した時、黒米の「うどん」を頂いたこともあった。

 黒米の人気の秘密は、白米より高い栄養価、珍しさ、料理のおもしろさなどであろうか? 食べた人が口をそろえて云うのは、「便通がよくなった」という言葉だ。白米にそのまま入れて炊けるというのも主婦にしてみると魅力である。玄米の良さを知っていても土鍋で長時間、また圧力鍋でとなるとなかなか面倒な方も多いようである。

黒米の栄養価

 黒米は、白米と比較して、ビタミンB1、B2、ナイアシン、ビタミンE、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などが目立って多い。これは分析の結果現れた数字であるが、滋養ということを考えれば数字には現れない、表すことのできない未分化の成分も考えられる。この未分化のところの私の仮説は、黒米が育つ時、うるち米に比べ、粒から出る亡(のぎ)が極端に長いことや生命力が強く干ばつ、冷水にも育つことなどを考えると、とても野草と似ている。野草や薬草は人間の自然治癒力の活性化を助けてくれる力を秘めている。黒米もしかりかと・・・・。

 先日もある料理教室で、「黒米が産地から直接入ったので、ガンや血液の病気の方を優先に原価でお分けします」と云っていた。黒米には、動脈硬化を予防し、発ガンの抑制、婦人の血のめぐりを良くし、造血作用もあるということだ。ここの先生は、食べ物と病気との関係も熟慮し、いい素材が手に入ったときは病人に安価で提供してくださる。病気に良いとなると、高価なものが多い中、ほっとする光景だった。

 私が、新潟県の六日町で黒米を作っている人から聞いた話である。中国の若者が日本の国に渡る時、若者の母親が「異国の地で、病気になって倒れることにでもなったら、このお米をお粥にして食べなさい。元気になるから」といって渡したそうである。その黒米を日本の長野県で植えたのが日本に黒米が伝わった始めというはなしを聞いたことがある。この話が真実かどうかは判らないとしても、中国人はからだで黒米のパワーを感じていたに違いないと云う想像はつく。薬膳料理にも古くから使われ、薬米という別名もあるほどである。

赤米のノギ

日本のお米

 日本に稲が渡来したのは縄文晩期または弥生初期、今から2400年前頃らしい。 お米には、インディカの米(細長い米)、ジャポニカの米(粒が短くて丸い米)、水稲、陸稲、餅米、うるち米、赤米、黒米、香り米などがある。日本人の嗜好にはジャポニカ米があっているようだが、世界全体を通じてみるとインディカ米が70%余を占めているらしい。これらすべてがひとつの先祖から出て来た変異体なのである。稲がいつどこで出来たのか、となるといろんな説がありはっきりしていない。そのひとつに、アジアの栽培稲はアッサム地方、雲南省あたりに一万年も前に成立し、長い年月をかけてタイ、ビルマと西へ、東は中国、日本へ伝わったらしいという説がある。その過程で熱帯にはインディカの種類、温帯にはジャポニカの種類が適応して栽培を広げると共に、次第にそれぞれの性質をはっきり区別させて、今日の姿になったと考えられているようだ。土地も最初は畑で栽培され、のち低湿な平坦地で栽培が始まったようである。

古代の日本人が食べていたのは「モチ米かウルチ米か?」 

 古代の日本人が日常一般的に食べていたのは、モチ米であったのか、ウルチ米であったのか判らないようだ。中国で前漢の時代(日本の弥生時代)に、「稲」と云っていたのはもっぱらモチ米のことを意味していたし、東南アジアでも「モチ米文化圏」はかなり広い地域に及んでいた。これらから察すると日本もモチ米が古代は重要な存在であったと考えることもできる。一方、風土記にモチ米が最初出てくるのは8世紀前後であるから、古代はウルチ米だったという説もあるらしい。

 昨年(2000年)、富山県の万葉博物館に行った時、同行した食養の先生が万葉集の脇に「万葉人の一日の食事」という記事があったのを見つけた。その先生は記事の内容をもう一回確かめたくて、後日、また一人で博物館に行き、そのコピーをもらって来て見せて下さった。万葉人は、一日407カロリー(現代人は成人で2400カロリー)しか取っていなかったようだ。メニューは、「玄米、塩、ひじき、ノビル」である。これからすると、現代人に成人病が蔓延してもおかしくはない話である。最近、その先生が「当時は圧力鍋なんてないから、なんらかのかたちで玄米を蒸して食べていたんでしょう」と、玄米のモチ米とウルチ米の両方を「4時間かけ蒸して来ましたので食べてごらんなさい」というのだ。食べたトタン、私はモチ米説の方を取ろうと思った。この先生の姿を見て何でもハウツウがないと進めない世の中で、自学自習とはこういう学習の仕方をいうのだなと改めて感じ入ったことだった。

 どちらにしろ、玄米のお米を食べる日本人がもっと増えると日本の国の医療費の出費が減ることは間違いないだろう。               (2001年10月12日記)


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