調理の際の塩ビ製手袋使用はダメよ!
厚生省が自粛要請

 調理の際に塩化ビニール製手袋を使っていることから、コンビニやスーパーなどの市販の弁当、外食レストランの定食や病院食などで、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の一つ、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が高濃度で見つかった調査結果を受けて、厚生省は6月14日、スーパー、コンビニ、外食レストラン、弁当チェーンなど関係業界団体に、調理の際の塩ビ製手袋使用を自粛するよう要請すると共に、食品衛生法に基づく規格基準に、調理などに対し、DEHPを使った塩ビ手袋の使用を禁止する項目を盛り込むことも決めた。

 DEHPは、塩ビ樹脂を軟らかくする添加物で、動物実験では精巣への毒性が報告されていることから、環境ホルモンの一つに指定されている。しかし、使用は禁止されておらず、最近では逆にO─157騒動以降、その対策として調理現場で使い捨ての塩ビ製手袋が便利さも手伝って大量に使われるようになった。

 厚生省は、「一生食べ続けても健康に影響がない量」の耐容1日摂取量(TDI)を、DEHPで体重50キロの人に対して、2000〜7000マイクログラム(1マイクロは100万分の1)と設定しているが、国立医薬品食品衛生研究所などの研究班が、昨年8月〜12月にかけて、コンビニやスーパーなどの市販の弁当、外食レストランの定食や病院食などを調査した結果、最高濃度の弁当からは1食で4300マイクログラムを検出、病院食でも、朝昼夕3食の合計で最大2500マイクログラムに達する例があり、DEHPを検出した弁当などは、そのすべてでDEHPを含む塩ビ製手袋が調理や盛り付けなどで使われていたことが判明した。

 また、弁当を詰める実験を行なったところ、使う前と後では、塩ビ製手袋を使って弁当を詰めると米飯で54倍、焼きうどんで51倍のDEHPが検出された。そして、消毒アルコールや高温の揚げ油を使うと、さらに検出量が跳ね上がることも確認できた。
 これらことから、塩ビ製手袋を使うと耐容1日摂取量(TDI)を超えるおそれがあるとして、使用を禁止するよう要請した。

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アレルギー原因物質を含む原材料名表示を義務化

 食品アレルギーに悩む人が増えているのに対応して厚生省は、加工食品にアレルギー原因物質を含む原材料名の表示を義務付ける方針を決めた。

 現行の食品衛生法では、ほとんどの加工食品に原材料名の表示が義務付けられておらず、アレルギー原因物質が含まれているかどうかを消費者が判別できないという指摘が出ていた。しかもここ数年、アレルギー物質を含む食品を食べた後、短時間で呼吸困難や血圧低下、意識障害などに陥る「アナフィラキシーショック」と呼ばれる重症例の報告が増えており、厚生省の全国調査でも1057件の症例が確認されるなど、対策が望まれていた。

 今後、表示義務を課すのは、アレルギー物質が入っているかどうか判断しにくい容器に入ったものやラップで包装されたすべての加工食品。
 表示の対象となる原材料は、食品衛生調査会でさらに検討して決める模様だが、ソバや小麦や米などの穀類、エビやカニなどの甲殻類、イカやサバなどの魚介類、鶏卵、牛乳、ミカン、クルミ、大豆など、「アレルギー物質が含まれていることが明確な原材料」「血圧低下や呼吸困難、意識障害などの重い健康被害がある原材料」「国内で年に1回以上の健康被害が発生している原材料」で、少なくとも20種類余りになる見通し。含有量が微量でも表示を義務化する。

 食品衛生法の省令を改正し、2001年4月からの施行を目指す。

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白神産地の酵母パン

 秋田県内の研究グループが、世界遺産・白神山地の広葉樹林から採取した天然酵母から製パン用酵母を分離させることに成功した。この新酵母は、強い冷凍耐性を持っていることから、パン生地を冷凍保存することなどで長期保存も可能だという。

 新酵母の元となったサンプルは、秋田県内の民間研究施設「小玉発酵化学研究室」が1997年10月に、白神山地の秋田県側広葉樹林で採取した。それを秋田県総合食品研究所が約1年をかけて、製パン用酵母に分離することに成功し、「白神こだま酵母」の名で商標出願した。
 白神こだま酵母の最大の特徴は、冷凍耐性の強さだという。既存の酵母はマイナス20度で20日間保存した場合、8割の生存率だが、白神こだま酵母は、マイナス50度で約1カ月保存しても、ほぼ100%の生存率を保つ。

 この特徴を生かすと、パン生地を冷凍保存する「冷凍生地製パン」によって、長期保存が可能で、メーカーの在庫管理や多品種生産などにも利点が多く、パンの全国販売も可能。また新酵母を使ったパンは、天然酵母特有のフルーティーな香りを持つほかに酵母にトレハロースという糖質が多く含まれることから、ほのかな甘みも持つという。
 パンの生産を担当する秋田県内のパンメーカー「六郷製パン」など2社は、現在、食パンやフランスパン、菓子パンなどの試作に入っているが、秋田の新名産品「白神山地のこだま酵母パン」として商品化して製品を販売する予定だ。

※白神産地を素材にした取り組みは農業関係記事「白神山地保全をと、リンゴジュースを販売」にもあります。

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COマグロ問題、薫製品も違反に

 発色効果を高めるため一酸化炭素(CO)で処理されたブリやマグロが出回った問題で、厚生省は2月10日、おがくずなどの煙でいぶした薫製品もCO処理をしたものとみなし、食品衛生法違反で取り締まるよう都道府県に通知した。
 COマグロは、一酸化炭素の発色効果で見ため「鮮度が高い」と思わせる手法。2年前から輸入品や国産品が出回り問題になっていた。厚生省は「消費者に鮮度の判断を誤らせる」としてCO処理を禁止し、濃度基準を定めたが、海外の会社などが「COボンベを使わずオガクズでいぶしただけの製法は認めて欲しい」と求め、食品衛生調査会が審議していた。

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日本人のダイオキシン摂取量の
調査結果がでる

 食品を通した日本人のダイオキシン類の一日平均摂取量は、体重1キロ当たり2・41ピコ・グラム(ピコは一兆分の一)で、魚介類からの摂取が多いことが1998年10月28日、厚生省の「1997年度食品中のダイオキシン類汚染実態調査」で分かった。食品別に見ると、「魚介類」からの摂取が多く、次いで「肉、卵類」「乳・乳製品」の順。
 この調査は1997年度、全国7地点で食品のサンプルを集め、一般的な食生活に合わせて調理し測定したもの。それによると、一人が一日に摂取するダイオキシン類の平均は120・7ピコ・グラムで、体重1キロ当たりの換算値では、最高が3・18ピコ・グラム、最少は1・37ピコ・グラムだった。
 ちなみに同省が定めた基準(耐容一日摂取量=TDI)は10ピコ・グラムで、WHOが定めるTDI指針は1〜4ピコ・グラム。

 また、ダイオキシン汚染調査結果を「安全基準がない」ことからJA所沢市が2年も市民要請に応えず、不安や疑念を増幅させて「埼玉県所沢市産の野菜から高濃度のダイオキシン検出」のテレビ放送にまで至り、野菜市場が混乱した問題で、厚相は「国がきちんとした基準を示すことが不安を解消するになる」と述べ、食品中のダイオキシン濃度について今後、国としての基準づくりを検討する方針を明らかにした。
 厚相は「全食品についてチェックするのは容易ではない」とした上で「基準は個別の食品ごとではなく、魚介類や野菜、穀物など食品群ごとに検討し、標準的な食生活での一日の摂取許容量を示したい」などとした。

ダイオキシンの耐用摂取量の
国内での基準づくりがはじまる

 そして、今回の一件で泥縄的に発足したダイオキシン対策関係閣僚会議が2月24日開かれ、総合対策を盛り込んだ基本指針を年度内に策定することを決めた。これは、これまで省庁がばらばらに行なおうとしていた対策を見直し、今後は連携した取り組みをするというもので、廃棄物の削減対策や許容目安となる1日当たりの摂取量を示す耐容1日摂取量を設定する。

 具体的には、耐容1日摂取量については、世界保健機関(WHO)が昨年5月、体重1キログラム当たり10ピコグラム(ピコは1兆分の1)の許容摂取量を1〜4ピコグラムに引き下げることを提案している事に関して、国内の統一基準をまとめるというもの。国内では、厚生省が体重1キログラム当たり10ピコグラム、環境庁は体重1キログラム当たり5ピコグラムを示していた(農水省はこれまで基準づくりの発想は皆無だった)。この二つの値があることは混乱を招くとして両省庁間で今年夏をめどに統一基準をつくる予定だったのを、農水省も参加して前倒しでやろうというのが今回の決定事項でもある。

 会議ではこのほか、ダイオキシンの検査体制の整備やダイオキシン汚染の実態把握、国民へ適切な情報提供を行なうことも決めたが、現在、国内でダイオキシンの検査が可能な機関は公的機関が12機関、民間36機関の計48機関しかなく、その中でも農産物あるいは食品や血液中の濃度測定は、検査方法が複雑なため、対応可能な施設はさらに限られるというのが現実だ。このため、ダイオキシン対策関係閣僚会議では今後、研修などによる分析技術の向上や、資金援助などによる検査機関の増強を進めることも話し合われた。

 これらが本格的に機能し、「国民不安を解消するため」に出てくるであろう今後の「国民への適切な情報提供」が、許容(耐用)摂取量の設定値を含めて、また「人への健康影響についての評価」や「公表されるダイオキシン類の濃度調査の数値」を含めて、本当に信用できるものになるのかは不明で、国民不安を駆り立てる数値が出た場合、意図的に「先に安全宣言」ありきの判断での公表にならぬよう、注意深く一人ひとりが凝視する必要がありそうだ。

※関連記事は「ニュースハイライト」にもあります。

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偽造の食材表示が増える
今後、各地各部門に波紋拡大は必至

 佐賀県のコープさが生活協同組合が3年以上も前から、輸入肉を「十勝牛」と偽った表示をして共同購入分すべてを消費者たちに販売していた問題が波紋を広げた。

 これに限らずこうした問題は、流通・販売のほどんに見られるケースが多くなってきており、鹿児島県産の「黒豚」や新潟県魚沼産の「魚沼コシヒカリ」など、販売する側が「偽造表示」して、それらの食材を意図的に消費者に販売するところが、年々増加してきている。
 特に問題なのは、こうした例が、消費者との信頼関係をベースにした流通・販売組織から発生/発覚するというもので、現在表面化しているものは、ほんの氷山の一角に過ぎないとの見方が多くなってきた。

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遺伝子組み換え農産物で
免疫力低下の実験結果がでる

 害虫を寄せつけないように遺伝子を組み換えたジャガイモをラットに食べさせたところ、免疫力の低下が著しくあらわれたという実験結果が、イギリスで公表された。

 実験は、イギリスのロウェット研究所が行なったもので、アブラムシなどの害虫を寄せつけないタンパク質を作り出す遺伝子をタチナタマメから取り出して、それをジャガイモに組み込んだ。5匹のラットに110日間、そのジャガイモを与えたところ、免疫力が著しく低下したというもので、この実験結果を公表した担当教授は「遺伝子組み換え作物の食用への承認には、徹底した安全性の確認が必要だということを示している」と警告を発した。
 ちなみに、ラット110日間は、人間に換算すると10年程度に相当するという。また、アブラムシなどの害虫を寄せつけないタンパク質を作り出す遺伝子を、マツユキソウから取り出して、それをジャガイモに組み込み、同じ実験をしたところ、免疫力の低下はみられなかったという。

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ダイオキシン&環境ホルモン脱却か?
塩ビの食品包装ラップから転換

 ダイオキシンや環境ホルモンなどの問題で敬遠されはじめた塩化ビニール製の食品包装ラップ。そのメーカーのひとつ「クラレ」が、このほど生産原料の見直しを進め、「ダイオキシンを出さないラップ原料などによる合成樹脂の生産量を1年で約1・6倍に引き上げる」と発表した。

 増産するのは、弾力のある合成樹脂2種類で、7月に年産1万2000トンまで増強した茨城県鹿島工場の生産能力を、さらに約50億円かけて増強し、来年7月までに1万9000トンに引き上げる。増産される樹脂は、塩素を含まず、燃やしてもダイオキシンが発生しないという。食品ラップに使うのは、同社が開発し、独占製造している接着性も高い「ハイブラー」と呼ぶ樹脂。ハイブラー自体が柔らかいため、添加剤も不要で、人体への悪影響はないという。

塩ビのラップ:塩ビの食品ラップは、柔軟性を上げるため、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の働きがあるとされる添加剤を含んでいるため、以前から安全性が疑問視されていた。
現在、国内で量販店などの業務用ラップに年間8万〜9万トンが使われているが、環境意識の高まりからラップメーカーからの代替品需要が急増している。

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