農業動向を見る前に把握しておいた方が何かと都合のいい事柄

農政の実態
農協の実相
食糧供給予測
認定農家とは何
揺れる減反政策

稲作やお米関連のミニ知識

米取り引きの傾向
米の在庫・需給見通し
人気のある米と米相場
これから注目される米いろいろ
米の食味試験とランキング
世界の米貿易
日本の稲作の歴史

農村・農家・農業者の実相

減少する耕地面積や農家総数
離職就農者は増加傾向、新規学卒者の就農は依然少数



日本の農業政策とは?

 戦後50年間、復興再建から開始された農業政策は、農業の方向をただ一点、「産業としての農業の確立」に見い出し、その内容を「効率化」に絞り、実現させる手段を「農政への服従」に置き、ありとあらゆる誘導政策で施策を繰り返していった。その中心になったのが、1961(昭和36)年に制定された農業基本法だった。

 しかしその農基法農政は、産業としての農業の実現すらかなえられず、ただ単に中央集権体制の産物として全国一律に農業の工業化マニュアルを、補助金付きで提供したに過ぎなかった。そして施策を実施していくために、数限りない補助事業や助成事業を金融制度と絡めてセットにして誘導するという、いわば「目の前に補助金というカネをぶらさげて食いつかせて従わせる」という今日に至る農政の施策パターンの原型を誕生させていった。

 そしてそれは、結果的には、農業とはかけ離れた領域での公共土木工事事業が利権がらみで拡大すると共に、関係機関や組織が、ありとあらゆる手段で関係省庁にこびながら予算確保に飛び回り、官僚が頭にのるというシステムだけをつくりあげてしまった。またこの仕組を支える役目を結果として果たしたのが審議会で、委員に省庁の職員や官庁と関係の深い学識経験者、OBが入ることが多いため、審議するというよりもむしろ官僚主導で政策決定する際の便利なサロンとして成立し続けてきた。

 そして今、農業そのものを窮地に追い込んだ日本の農政や官僚機構は、功なき農政の総仕上げとして、さらなる官僚主導支配を目指して着々と「新制度」を名目に、あの手この手の官僚生き残り策を講じ始めている。

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JA農協の姿

 敗戦後、GHQ(マッカーサーの指揮の下にアメリカ軍が主導した日本への占領軍)が提案した農業協同組合法(1947/昭和22年成立)に基づいて誕生した農協は、農家からの要望が突き上がり、必然性をもって誕生した協同組合ではなく、占領軍と政府の利害調整の末に出来上がった組織で、「相互扶助」をたてまえにしながらも実質では農家に対する統制組織としての役割を果たすためだけのものだった。

 そしてその統制組織は、ある時は農民の声を代弁して政治に伝える「圧力団体」としての顔を見せ、ある時は経済事業や金融事業によって立つ「巨大総合商社」あるいは「金融機関」としての顔を見せ、ある時は農林水産省の事業の一部を受け持つ「下請け代表機関」としての顔を見せ、またある時は、農政の意向を忠実に農業現場で実行に移すのに最適な「行政の出先機関」の顔を見せる、いわば用途に応じて様々な顔を器用に使い分ける変幻自在な組織/JA農協の姿になっていった。

 今では、農家数500万人、職員約30万人、年間購買事業高約5兆8000億円、貯金総額約60兆円、国の補助金が年間に「兆」という規模で関わる巨大独占組織に成長。それはあたかも日本の農業が衰退するのと反比例するかのような勢いだった。特に近年は、農産品の販売流通での経済活動よりも金融事業での経済活動への依存率が圧倒的に高く、組合員という名の農家が預けた預貯金や国民の税金を不正融資や債務超過の損失補填にあてるなど、金融ビックバンの中での生き残りをかけて血相を変えている。

 その基本姿勢は、あくまでも「農政追随従属型」で、実は、一度も協同組合らしさを発揮したことはなかった。それどころか、対策に窮するごとに、あるいは誘導政策や組織保身を押し進めなければならなくなる度に「協同の精神」と「組合員(農業者)利益」を言葉として持ち出しては、最終的に農業者(組合員)の不満をかわして合意を取り付けることが、今日に至るまでの説得テクニックの必須手段になっていくのだった。

 そして現在、農業の統制組織としての生き残りをかけて選択した方向は、さらなる農政への従属と金融ビックバンの中でのJAの生き残りで、農家個々の意向は不在のまま、組織保身を第一にして官僚組織の農林水産省と一蓮托生の歩みを続けている。

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2000年以降の食糧供給は?

 すでに現在、穀物生産量と消費量のバランスは崩れ、世界の穀物在庫水準も安全水準ラインを割り込んでいる、ということは知られている。
 しかし、この先いったいどうなるのか?という予測は、一般的にはあまり知られていないのが現実だ。

 多くの比較的信頼度の高い国際機関は、今後の食糧供給の予測を楽観視していない。むしろ、どこも深刻な数字を上げているのが実情。
例えば世界銀行や国連人口基金などは「開発途上国を中心に人口が増加して1995年の約57億人から2025年には約85億人に達し、耕地面積が増加したとしても人口増加には追い付かず、一人当たりの耕地面積は現在の半分になり、食糧不足の懸念は大だ」と言っている。
 アジアだけを見ても、国際稲研究所(フィリピン)は「アジアの米消費国の人口は過去25年間で70%増加、その中で1986年〜1992年の人口増加率1・8%に対して米生産の伸びは1・2%で、このままいけば2000年以降にはアジアの国の多くが米不足に陥る」と予測している。

 また、農林中金総合研究所がはじき出した数字によると「穀物輸入が途絶えた場合、日本では、米の生産調整(減反)をやめて米を生産しても、空腹を満たす程度で300万トン前後不足し、満腹感を保証するには500万トン強足らなくなる」という予測になっている。これは、生産量と消費量を「食糧難だった1946年」「ほぼ戦前並に回復した1952年」「米中心の食生活が可能になった1962年」に基準設定、これに人口の将来推計を加味し、米の生産調整をやめてすべての水田に水稲をつくり続けた場合の潜在生産力を含む生産可能量を算出したうえで2000年以降を推計した調査リポート『米穀依存の食糧安全保証の現実性』で発表されたもの。

 にもかかわらず日本の農業政策では、世界の穀物生産量や備蓄量とは無関係かのように、いまなお減反政策に必死で「在庫を抱え込みたくないので米をつくるな」「今後はもっと減反を進めよう」と言っている。

 しかし、国内の農地は毎年約4万ヘクタール強が減少し、そのうち水田は2万ヘクタールにのぼっているのが現実。これを米の生産量に置き換えて表現すると「毎年のように約10万トンの生産力が失われている」ことになる。

 農地のかい廃に歯止めがかかっても食糧難の時代は到来するという予測が、方々で出されているにもかかわらず、依然として「米余りが深刻だ」「過剰流通が問題だ」と、目先の数字を追い回すだけでの施策ばかりが続いているのが実情だ。

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揺れる減反政策

 1970年代からはじまった米の強制的な生産調整=強制一律減反を巡る政策は、農業現場に深い傷を残したまま、今も揺れ続けている。

 近年、特に減反が強化されたのは、1997年〜1998年。ミニマムアクセス米による過剰在庫感から、減反目標面積を1997年より2年間、減反総面積を96万3000ヘクタール(田んぼの総面積=約267万9000ヘクタール/減反面積はその内約36%)にし、減反を促すために、減反農家に米の値下がりによる減収分の8割を補填するなどの米政策がとられてきた。
 その稲作経営安定対策と米需給安定対策を柱にした米政策の具体策は、米余りには減反拡大で対応するほか、減反に従う農家や農村を対象に減収を補てんしたり、補償金(とも補償)を支払うというものだった。減収の8割補填の財源は、農家が米の基準価格の2%(60キロあたり383円)、政府が6%(60キロあたり1150円)を拠出し、その基金を元に補填する。また、10アールあたり5000円の加算金や5万円の転作補助金が受け取れるとも補償も、農家と政府の拠出で基金をつくり、農家の受取額の2分の1相当を政府が助成する。この稲作放棄にしか結び付かない施策に、2年間で約5000億円程度の税金が使用されていた。

 この減反強化に対しては、各地域の農家および単位農協などから「今後の食糧供給という観点から考えても、作れる田んぼを無理やりつぶせというのは、食糧の安全保障や自給の大切さを国内外に向けて主張する当局の姿勢からも矛盾しているし、人道的立場からも逸脱した無責任な政策だ」と疑問の声と反発する動きが広がった。当局は、その動きが具体的に表面化する兆しを察知すると、「逆らうと他の地方行政をめぐる補助金配分にも影響を与える」「全国とも補償なのだから、一個人や一単位農協の否定的な見解や協調性のない動きなどが、全国の農家の足を引っぱることになる」などの押し付け攻勢で減反割り当てを農家個々に強要。本来は「自主選択での減反」がうたわれていながらも、実態は、相変わらず「目の前に補助金というカネをぶらさげて食いつかせて従わせる」という今日に至る農政の施策パターンの原型が健在であることを示し続けていた。

 しかし、市場原理導入を進める必要に迫られて1999年4月から米輸入の関税化を政府決定したために、市場メカニズムの中で、強制的な減反政策そのものがつじつまの合わないものになると共に、毎年の米穀年度期末(10月末)の米の持ち越し在庫を減らし、2000年には150〜200万トンにする計画も、ミニマムアクセスによる輸入米が足かせになり、減反政策そのものの限界感が表面化し始めた。

 そうした情勢から一時は、その場しのぎの場あたり的農政の象徴でもあった強制的な減反政策は、30年を経て幕引きになるかに見えたものの、にわかに大豆・麦などの「転作誘導」を強化することに手法を変更することから息を吹きかえす。そして、再び「新たな助成金」とのセットによる米の減反政策が「稲作経営安定対策」の名の下で打ち出されつつある。

●稲作経営安定対策●
 水田を中心とする土地利用型農業活性化対策(水田営農対策)の一環で、麦・大豆・飼料用作物の増産を名目にした「助成金制度」。
 これは、米を作付けしない水田=減反分では、転作用として麦・大豆・飼料作物をつくり、新たに「米の生産調整(減反)」の徹底を図るというもので、これに準じて「水田農業振興計画」を策定した地域に限り、基盤整備事業や施設助成も重点的に実施するという計画。
 ちなみに、これを誘導するための助成金は、稲作所得平均の10アールあたり6万2000円を上回る金額の10アールあたり最高額で7万3000円が予定されている。この助成金は、「とも補償」と「経営確立助成」の二本立てで形成。減反達成した地域に限り3000円上乗せすると共に、農地の流動化を促して団地化した地域に限り基本助成3〜4万円を交付するなど、「目の前に補助金というカネをぶらさげて食いつかせて従わせる」という手法に、変化はない。

新連載3:「定まらない農業所得政策」

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認定農家という言葉を
最近よく耳にするが、これは何?

 農業の担い手(担い手の定義は「農業経営者」)不足を食い止め、これからの担い手を確保するための手段としてできた「農業経営改善計画の認定制度」で、従来あった「農用地利用増進法」の農業経営規模拡大計画の認定制度を、さらに拡大したもの。

 認定制度によって、産業としての農業を確立するという農政路線上で、農政に従順なプロの経営を目指す農業者を重点的に支援し、最終的に、自らの創意工夫に基づきながら規模拡大・集約化・複合化などによって農業経営をする者が農業生産の大部分を占める農業構造へ誘導していこうとするもので、この制度には、農業委員会などによる農用地利用の集積への支援、割増償却制度などでの税制上の特例待遇、農林漁業金融公庫などからの有利融資待遇、経営管理向上に関する研修支援など、一見して至れり尽くせりの支援措置が講じられている。

 しかし、「自らの創意工夫に基づき」としながらも、「その計画が市町村の基本構想に照らして適切であること」「米の生産調整(減反)対策が考慮されていること」が認定基準になっていることからも分かるように、この認定制度を利用したその時から、その農業者は、いわば半永久的に行政の下僕として農業に従事していくことになる一面ではとても窮屈な制度でもある。

 また最近では、窮屈な制度程度ならまだしも、米の販売価格の急低下や減反面積の拡大で、認定制度を利用して借金をし、規模拡大に走った農家になればなるほど経営が悪化、一部では、自殺者も出る状態になっている。

 農水省が2003年までに目標とする「認定農家(認定農業者)数」は30万(その後、23万に下方修正、目標年度も2004年に変更)。ちなみに現在は、農水省の集計では約16万7000人(2002年末)が、認定農家になっている。都道府県別のトップ3は、北海道、新潟県、熊本県。

 この認定農家を「農業の担い手の中心」と位置付けている農水省は、今後さらに農地の利用調整なども優先的に可能になるよう、財政支援を含んだ認定農家間での組織化に力を入れていく方針を打ち出している。

2001年1月に東北地方で調査した東北農政局のアンケート結果では、認定農業者に係わる施策についてその効果をみると「どちらかといえばメリットがない」と回答した人が45・5%、「メリットがない」が14・3%、「どちらかといえばメリットがある」が30・1%「メリットがある」が7・1%となり、6割以上が、認定農業者制度の効果のなさを実質的に感じている。
 また、認定期間内に経営改善目標を達成できるかどうかについては、「達成できた(できる見込み)」と回答した人は全体の3分の1で「達成できない(できない見込み)」が3分の2を占めた。
 規模拡大を誘導する制度にもかかわらず、農業経営規模に対する意向では、「現状維持」が55・4%で最も高く、「経営規模の拡大」は33・3%で、農業を取り巻く環境が一層厳しくなるなか、「今の状態が維持できれば、それにこしたことはない」という農業者の思いが読み取れる。ちなみに、現状維持や規模縮小と答えた理由をみると「農産物価格が下がっており、経営を続けて良いのか不安」が約8割を占めている。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●米取り引きの傾向
 近年の自主流通米(計画流通米)の集出荷率は、55%前後で、あとは自由米(計画外流通米)として流通している。その自由米市場の流通状況は、消費者と生産者との直接取引が約50%で、卸や小売、出荷業者との取引が約30%、その他業者が約20%になっている。

 自主流通米は年間約430万トンが流通。これまではそのうち約100万トンが上場されて入札にかけられていた。「実勢価格や実質市場を反映していない」などの批判も多く、自主流通米の入札取引は米あまりの時代の中で低迷傾向にあった。その反面、生産と流通が相対で自由に取引価格をきめる自由米市場の流通は活性化傾向にあり、約300万トン〜500万トンの取り引きに拡大している。
 そうしたことから、自主流通米入札では自主米取引の入札制度の見直しが行なわれ、1998年度産から入札制度が一部変更になった。これまでは原則として「指標価格」に基づいて一定の値幅制限の枠内(上限下限13%)で入札・落札価格が決められていたが、実勢価格を反映した入札制度に近付けたい意向で、値幅制限が撤廃されると共に、売り手が最低平均落札価格を申し出て、それを目安にしての入札に変更。入札上場回数も増やした。

 1999年産米の作況は「平年並み」でも作柄は過去5年間で最も悪くなったため、本来なら新米として高値が付く時期の新米市場でも、作柄不良に在庫過多と消費低迷のトリプル要素で、値下がりが加速した。自主流通米入札では大量の売れ残りが発生。また下落対策として70万トンを市場隔離したものの、平均落札価格は、この10年間で最安値水準に落ち込んだ。
 その後、スーパーなどでは安売りが目立ち始め、例年より2割近く安い価格で販売するのが一般的になってきた。それを追ってディスカウント店ではさらに安い値を付け、米は値下がり傾向にある。

 2000年産米の価格も下落傾向で推移、2001年4月からの改正JAS法による表示がらみで、銘柄米の確保分が若干、上昇傾向に転じる傾向ではあるものの、米の低価格に対する歯止めはかかっていないのが現状だ。

 さらに米の値下がりに拍車をかけているのが消費者の安値志向と米離れで、購入傾向は高品質銘柄を敬遠して値ごろ感のある米が主流になっている。そうした状況を背景に1995年以降の4年間で自主流通米の販売価格は全体で約6000億円低下した。

 農水省は、2001年度米の減反(生産調整)目標面積を現行の減反面積96万3000ヘクタールから4万7000ヘクタール拡大し、101万ヘクタールにした。主食米用の作付面積は全国で168万1000ヘクタールとし、全国平均収量(10アールあたりの収量518キロ)換算で生産量は870万トンを見込んだ。しかし、2001年産の水稲の作柄概況では、10アール当たりの収穫量を示す作況指数は全国平均で103の「やや良」で、値崩れを回避するために打ち出された生産目標の870万トンを10万トン程度上回ることがほぼ確実となった。米の年間需給総量は農家消費分を入れて約900万トン強とされているが、米在庫がだぶついているため、これを約20万トン下回る計算だが、過剰感を払拭することは出来ず、今年産も流通・販売価格が低迷しそうな状況になっている。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●米の在庫・需給見通し
 食生活として消費するのに必要な量は最低でも約550万トンとされているお米。毎年の新米数量は、農家消費(約150万トン)を差し引いて約700万トン強。
 安定した年間流通量として必要な米数量は約750万トンといわれているが、持ち越し在庫を含めると現在の米在庫は若干「過剰気味」。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●人気のある米と米相場
 
お米は、福島や新潟県産などが人気で、傾向とすれば新潟魚沼コシヒカリが60キロ当たり3万0000〜3万3000円で、会津コシヒカリは2万0000〜2万2000円で取引されてきた。また、人気が定着しつつある「ひとめぼれ」は、岩手ひとめぼれ、宮城ひとめぼれ、秋田ひとめぼれが1万7000〜1万9000円程度。秋田県産あきたこまちは1万6000〜1万8000円程度で取引されてきた。
 しかし最近の米相場は、不景気を反映して、新潟県産コシヒカリなどの高値銘柄米を消費者が買い控える傾向にあることから、在庫がダブついて、自主流通米や自由米を問わず全体的に下げ基調を強めている。

 しかし、稲作農家に対しては1998年産米から「稲作経営安定対策」の名目で、生産者の拠出金と国からの補助金で価格差を補填する制度ができているため、深刻さは薄められているのが現状だ。
 この制度により、過去3年間の平均を補填基準価格とし、それを下回った年は、自主流通米の産地品種銘柄すべてに差額の8割が補填される。

●お米の流通・相場などに関する最新動向を米穀データーバンクの「日本の米市場」でみる。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●これから注目される米いろいろ
 お米は、大きくは「うるち米」と「もち米」に分けられる。日常ご飯としてたべているのは「うるち米」。
 このうるち米には「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「あきたこまち」など、さまざまな銘柄のお米があり、人気もまちまち。どの銘柄がいいとは言えないが、上記『人気のある米と米相場』が一般的なところ。

 これとは別にいま、限定したものとして大きくは3つのお米が注目を集めている。その3つは「古代米」「低アミロース米」「低タンパク米」。

 古代米は、その名のとおり古代から作られていたお米。赤米や黒米がその代表的なものだ。
 今では「古代米研究会」も全国的な広がりをみせ、赤米や黒米を栽培する農家も増えてきた。
 この米の特徴は、元来、陸稲(うるち米は水稲)の性格を持つことから丈夫。ノギ(稲のひげのようなもの)が長く伸びて、生育すると赤米はその赤いノギが美しい。
 普通のお米に、炊飯する際、おちょこ1杯か2杯の赤米を入れると赤ピンク色の「お赤飯」のようなお米が炊き上がる。見た目の美しさばかりでなくエネルギー値も高い。

 低アミロース米というのは、お米の成分のデンプンに含まれる「アミロース」が極めて低いもの。
 アミロースが多いとお米は粘りが無くなり、アミロースが少ないとお米は粘りおよび柔らかさが増す。
 その特性を引きだそうとしてできたのが低アミロース米。品種では「ミルキークイン」などもその一種。

 使われ方は、現在のところ一般の米にブレンドして、お米の食感を良くするために用いられているが、「混米用なら陸稲の安価なモチ米でもいい」という評価もあることから普及は遅れ気味。
 今後、食品メーカーなどが「冷凍米飯」用など加工米飯用にブレンドするなどして利用されそうだが、用途が少ないのが現状。
 和菓子など、原料をお米に依存する業態での利用が試みられているが、「帯に短し、たすきに長し」といった試作結果が出ている。

 今後の用途開発が待たれるお米だ。

 低タンパク米というのは、文字どおり「タンパク質」を抑えたお米。低グルテリン米と称されることもある。
 米の成分は「でんぷん質」「たんぱく質」「水分」「脂質」が主で(図は下記の『米の食味試験とランキング』を参照のこと)、「たんぱく質」が多いとお米を炊くとパサパサしたものになる。
 そのパサパサ感をなくすのと、もうひとつ大きな役目を担っているのが低タンパク米(低グルテリン米)で、食事療法が必要な糖尿病患者や人口透析患者に対しても「お腹いっぱいに食べても大丈夫」という性質のお米として注目を集めている(食事療法の得意な病院と1軒の米穀店が連携してデーターを集積中)。
 ただ精米に高度の技術が必要なことから、現在は「特殊なお米」という位置付けだ。

 有望な開発品種は「LGC(エルジーシー)1」(育成は農水省農業生物資源研究所)と「北陸183号」(育成は農水省北陸農試育成)で、現在は「LGC1」が一歩リード。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●米の食味試験とランキング
 お米の食味試験は、日本穀物検定協会(穀検)が毎年実施している。
 そこでの食味試験は、滋賀県野州郡中主町の「日本晴」を基準にして対象3銘柄毎を同じ皿に少量盛り、専門のパネラー20人によって実際に食べる「官能試験」で行なわれる。そして「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合」の項目ごとに相対法で比較し、7段階に分けて評価する。

 食味試験のポイントは、外観では「艶の良否、胚芽の程度、こ飯つぶの形、粒面の花咲き具合などをみる」。香りでは「ご飯特有の香りをかぎ、口から鼻に抜ける香りを捉える」。味では「喉ごしの滑らかさ、噛んでいる内に感じるあま味などに着眼する」。粘りでは「ご飯を噛んで離す時の歯や口腔の感覚をつかむ。自分の好みではなく基準米との比較で判断する」。硬さでは「基準米と比較した歯ごたえを確かめる」。総合では「全体的に基準米と比較してどうかを率直に判断する」。

 これを判断指針に評価は、基準米と比較してどうかを、「同じ」を0として「それ以上かなり良い」を+3、「少し良い」を+2、「わずかに良い」を+1、「それ以下かなり悪い」を-3、以下順に-2、-1と点数化して記入、それを合計してパネラーの数で割る。その平均値が「食味の評価値」になる。そして基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、同等なものを「A’」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」とし、毎年これを「食味ランキング」としてまとめる。

 良品質米づくりへの取り組みを反映して全国的に食味は向上している。

 勿論、穀検の食味ランキングが、ムーディーズのように「格付け」を支配するものではなく、あくまでもお米選びの際の「ひとつの目安にする」ものとしての一参考例。また、「特A」に選ばれた地域のお米がすべて食味良好と言えるものでもなく、個々の田んぼ条件など栽培条件や稲を育てる人の違いで、お米の味は大きく違ってくる。しかしながら、この食味試験には大きな外れはなく、平均的にお米の味を評価すると、妥当な線が出ている。

食味ランキングの詳細を穀検のホームページでみる。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●世界の米貿易
 国連食糧農業機関FAOは今年の春以来、「インドネシアなどの米不足を主因に、米の貿易量が過去最大になり、世界的な穀物供給不足が懸念される」と、世界穀物生産見通しを発表し、警戒を促し続けている。
 見通しでは、今年の穀物生産量は18億7200万トンで、来年までの需要は十分に賄えるものの、食糧安全保障上での備蓄最低水準が十分に確保できない模様。全世界の消費量は、飼料用を含めて年間約16億万トン。備蓄にまわるのが約3億万トンでは、全消費量の約16%にすぎず、FAOが食糧安全保障上で必要とする備蓄最低水準17〜18%に届かないと警戒している。

 今年の世界穀物生産見通しを品目別に見ると、小麦が約5億8200万トン(前年比3%減)、米が約3億7000万トン(前年比1%減)、雑穀が約9億2000万トン(前年比1%増)。
 米の国別の輸入必要量は多い国で、インドネシアが350万トン、ブラジルが120万トン、フィリピンが100万トン。また米の輸出量は多い国で、タイが560万トン、ベトナムが400万トン、インドとパキスタンが各200万トン、中国が170万トンの見込み。タイは既に今年の1〜2月で前年比70%増の120万トンを輸出しており、ベトナムは5月までの輸出が250万トンに達したことから、米不足の国に対する援助輸出が数量的に次第に困難になっていく事が、改めて懸念されている。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●日本の稲作の歴史
 
実際に日本で発見された栽培稲の跡は、約4500年前の縄文中期のものが最古とされていたが、岡山市の縄文時代の貝塚「朝寝鼻(あさねばな)」を調査している岡山理科大の考古学チームが1999年4月21日、「縄文前期の土壌から稲の細胞に含まれるプラントオパールが見つかった」と、発表。約6000年前に「米作り」が行なわれていたとする発見で、稲作の歴史が縄文前期にまでさかのぼることになった。
 このプラントオパールはイネ科の葉の細胞内に含まれるケイ酸体の粒子で、同貝塚の下層(深さ2メートルの土壌)からのサンプルを採り調査したところ、356点のサンプルから10点、形状からジャポニカ(短粒種)とみられる稲のプラントオパールが検出された。また、稲のほか小麦とハトムギのプラントオパールも見つかった。小麦の検出例もこれまでは約4000年前(縄文後期)が最古で、これを約2000年もさかのぼることになる。

 年代を推定した根拠は、プラントオパールが見つかったのと同じ地層から縄文前期の特徴を持つ土器が出土し、この土器の様式が放射性炭素年代測定法で約6000年前と測定された福井県・鳥浜貝塚出土の土器と共通したため。同遺跡は、岡山理科大の通学路工事で発見され、考古学チームが1997年夏から発掘を開始。これまでの調査で縄文前期から後期の土器が見つかっている。

 日本での稲の栽培例は、岡山県美甘村「姫笹原遺跡」の約4500年前が最古とされてきた。これを約1500年さかのぼると共に、小麦などのプラントオパールも見つかったことから、米と穀物を組み合わせた農耕が縄文時代前期からすでに存在していた可能性も高まった。また、朝鮮半島で最古とされる約5000年前の米よりも古いことから、狩猟・採集中心という固定された縄文観や稲の伝播ルート観にも、この発見は影響を与えることとなった。

 中国に起源を発する稲の日本への伝播ルート「ライス・ロード」についてはこれまで「朝鮮半島を経由」「東シナ海から九州に到達」「南方の海上から到達」とする三つの説がある。

プラントオパール:植物のガラス質細胞の化石。酸やアルカリ、熱に強く、植物が枯れても分解せず地中に残る。植物の種類によって形状が異なり、イネ科は地中からケイ酸を吸収して細胞にため込む性質がある。発見されたのはこのケイ酸体の粒子。

放射性炭素年代測定法:生物に含まれる炭素の放射性同位体が、死後、一定の速度で窒素に変化していく性質を利用した年代測定法で、炭素の放射性同位体濃度の半減期5730年を基に計算する。加速器によって同位体の原子1個1個を検出して正確に測定するAMS法というのがある。

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農村・農家・農業者の実相

●耕地面積、今年も減少。
 全国の田んぼや畑の耕地面積は約476万ヘクタールで、毎年のように田・畑は個々に約2万ヘクタールずつコンスタントに減少している。

 ちなみに耕地面積は、1960年から2000年までの40年間に、田んぼが約72万ヘクタール以上、畑が約50万ヘクタール以上と、合計で約120万ヘクタール以上減少している。要因は、宅地への転用と耕作放棄による農地のかい廃の進行で、1990年から1995年の5年間で約33万ヘクタール発生。現在の耕作放棄地は、作付け意思がありながらも不作付けの農地を含むと50万ヘクタール以上に拡大している。耕作放棄の拡大は、農業者の高齢化に伴なう農業リタイア組の増加に加えて、農政が強要する減反(米の生産調整)が大きな一因にもなっている。

 また、市町村が指定する優良農地も食料自給率目標の達成に必要な面積を下回る傾向で、優良農地417万ヘクタール維持(2010年まで)の目標が、転用などで2003年3月末ですでに優良農地は416万ヘクタールになり、維持目標割れは必至の情勢だ。
 農水省は、この減少に歯止めをかけるために、20ヘクタール以上のまとまった農地や基盤整備事業対象農地などを、新規に優良農地指定するよう市町村に働きかけている。

●総農家数も減少
 
「2000年世界農林業センサス」によると、全国の農家総数(自給農家も含む)は312万戸で、年々減少傾向にある。その内、農産物を何らかのかたちで出荷している農家は約250万戸弱で、いわゆる専業農家は約61万戸しかない。1960年から見ると今日までで約5割減少していることになる。ちなみに2002年の総農家戸数は303万戸でうち販売農家は225万戸。

 特に近年、稲作農家に占める「中核農家」(農水省の定義だと、16歳以上60歳未満の男子で、年間自家農業従事日数が160日以上の者のいる農家で、市場メカニズムを重視して、市場競争に耐えられるよう、高い生産性と農業所得を実現できる農業経営体のこと)の割合も減少しており、1985年頃には2割程度占めていたものが、この頃は1割強にまで落ち込んでいる。また、農村における65歳以上の農家人口比率が30%と、国内総人口の高齢者割合15%から比較しても高く、農村の高齢化が顕著になっていることを再認識する格好にもなっている。

 今後の農村地域では、高齢者の農業リタイア組の増加に比例して農作業の受委託が活発化し、耕作請負が広域化している。

 農家人口(農家世帯員)は、農家戸数の減少や核家族化の進行により
2002年で前年に比べ27万人減少して990万人となり、初めて1000万人を下回った。このうち女性が農業就業人口の約6割を占める。

農村・農家・農業者の実相

●新規学卒就農者は2000人強
 農水省が全国市町村、農協、生産法人などを対象に調査した1998年次の新規学卒就農者数は、2190人で、農業への就農者が増えはじめたとはいえ依然、少数にとどまっている。

 就農部門別では、酪農が330人強とトップで、稲作320人強、花き310人強で、全体の9割が「農家出身者」で占められ、非農家出身の就農への人気が高まっているとはいえ、新規学卒者では非農家出身の就農人気は、低い状況が続いている。

 また全国の農業大学校では、入学者は減少傾向にあるものの、女性の入学者数が増加傾向を示している。全国での入学者総数は2357人で内450人が女性。昨年より総数で134人減っているが、女性は29人増。非農家出身も多くなってきた。

●離職就農者は4万2000人強

 一方、現在の仕事を離職して新たに農業に従事したり農的な暮らしをする人の数は、1999年5月までに約4万2000人強に達し、5年間で約2倍強に増えている。
 ちなみに年齢層でみると、40歳以下約7000人強、50歳以下約7000人強、それ以上65歳までが約2万9000人と、定年退職後やそれ間近に農村で農業あるいは農的な暮らしを開始する人が増えている。

●最近の動向、地域例
 北海道庁がまとめた1999年の新規就農者実態調査結果によると、北海道内で新たに就農した人は前年比21人増の581人で、うち他産業に就職した後に農家出身者が農業に戻る「Uターン就農者」は前年比56人増の197人で、過去最多となった。
 しかし、 農業以外の分野からの新規就農者は前年比1人増の52人で、これまで増加傾向が続いてきた、いわゆる非農家出身の新規就農は勢いを弱めた。また、新規学卒就業者は前年比36人減の332人だった。
 新規学卒就業者、Uターン就農者、非農家出身の新規就農の個々で最も多い経営形態は、新規学卒就業者の36%が畑作、Uターン就農者の32%が稲作、非農家出身の新規就農の46%が酪農で占められたが、傾向として、大型農業を敬遠して野菜や花きなど、小面積や小資金で営農が可能な分野への新規参入が増加している模様。

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