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【中国/四国/九州発】


■上水道の約8割の水源を地下水に依存する熊本県は、地下水のかん養を目的にした法定外目的税の導入に向けて検討作業に入ることを決めた。
 法定外目的税は、今春施行の地方分権一括法のなかで、地方自治体の自主財源拡充を目的とするために創設されたもので、代表的な導入計画としては、神奈川県の水源環境税、三重県の産業廃棄物埋立税などがある。

 熊本県は、全国で初めて地下水保全に絞った法定外目的税の導入を計画。豊富な地下水を次世代に引き継ぐため、税の使途は、森林整備や地下水源のかん養能力をもつとされる水田など農地保全などに限定する。全県を対象に上水道料金に上乗せして徴収する予定で、来春決定する県環境基本計画に盛り込んだ上で、具体的な課税額などの検討作業に入る。

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【中国/四国/九州発】


■トンネル工事などでじん肺にかかったのは企業の責任として、徳島県内の患者や遺族ら23人が大手ゼネコンなど37社を相手に、総額7億5900万円の損害賠償を求めている「第1次徳島トンネルじん肺訴訟」で、徳島地裁は11月13日、被告企業の賠償責任を認め、被告全社に対して、原告の病状に応じ1人当たり1400万〜2200万円を支払うなどとする和解案を提示した。
 また、損害賠償の時効対象者(1人)についても 「じん肺が進行性、不可逆性の病気であり、原告の被害認識を妨げた一因が被告側にもあった。他の原告と差異を設けることは、不公平かつ社会的正義に反する」とし、トンネルじん肺訴訟で初めて、時効差別をしないという判断を示した。

 トンネルじん肺訴訟は、全国トンネルじん肺補償請求団による集団訴訟として全国23地裁で争われており、和解案が提示されたのは今年9月に前橋地裁での判断に続き2番目。原告側は和解案を受け入れる意向。

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【中国/四国/九州発】


■中国電力が山口県上関町で進めている上関原発建設計画に伴なう通産省・資源エネルギー庁主催の第1次公開ヒアリングが10月31日、同町の町民体育館で実施された。
 公開ヒアリングは、一般的には原発建設を前提にした儀式に近いことから、「合意のないままヒアリングは許せない」として抗議を行なう住民の座り込みで、午前8時半からの予定が正午前までに開催がずれ込む事態になった。
 原発立地計画の公開ヒアリングは、新規立地としては、1998年12月実施の青森県大間町の電源開発・大間原発以来約2年ぶり。

 今回の「第一次公開ヒアリング」には、資源エネルギー庁の審議官ら幹部が出席。公募で選ばれた地元住民20人が1人約10分以内で意見陳述し、中国電力が質問に回答するという形式。ヒアリングには、県や地元周辺市町の関係者、一般の傍聴者ら計約350人が参加。反対派の住民らは午前6時過ぎから会場近くに次々と集まり、会場入り口で座り込みなど、開催に抗議し、資源エネルギー庁の職員らとにらみあった。

 ヒアリング開催後、山口県知事が同意すれば中国電力は電源開発調整審議会に原発の新設計画を上程。この公開ヒアリングでの議事録は、原発建設を前提にした電調審開催の参考にされると共に、原発の新設計画が国の電源開発基本計画に組み込まれることになる。

 上関原発問題では、今年4月、一部の反対を押し切る形で、中国電力と地元の2漁協、及び地元8漁協でつくる共同漁業権管理委員会との間での漁業補償交渉がまとまっており、中国電力は年内にも国の電源開発調整審議会(電調審)に計画を上程したい考えだ。

 この漁業補償交渉は、建設を前提にした漁業補償として「約125億円の漁業補償を支払う」という内容の契約。主な内容は、「中国電力が、埋め立てで漁場が消滅する上関町の上関、四代の両漁協に計47億5000万円、温排水の影響を受ける海域に共同漁業権を持つ8漁協に計78億2500万円を支払う」「建設工事に伴なう掘削岩石で魚礁を造成し、漁業振興策を協議する」「事故に伴う風評被害には補償を含む適切な措置を取る」など。
 中国電力は、補償の半額を1カ月以内に支払い、残りを電調審への上程後、山口県知事の海岸埋め立て許可が出てから支払う、としている。

 11月の電調審への計画上程を目指している中国電力側は、漁業補償合意で「電調審への計画上程に向けて、大きな山を一つ越えることができた」としているが、一貫して反対を貫く祝島漁協は、「原発建設に伴う影響が最も大きい漁協が反対しているのに、議論もせずに一方的に多数決で補償受け入れを決めた執行部の決議は許せない」 などとして、決議の無効を求める民事訴訟や、中国電力の株主と連携し、漁業補償に巨費を投じる中国電力役員の責任をただす株主代表訴訟などで徹底抗戦を貫く構えを見せている。

 山口県の二井関成知事は計画への態度を明らかにしていないが、10月23日〜24日に「県民の意見を聴く会」を実施、11月中には地元周辺の首長らとの意見交換を予定するなど、知事判断の材料集約を進めている。

 しかし、上関原発計画は、根強い反対運動に加え、スナメリなど希少生物の保護の問題をはじめ、建設予定地に約10万平方メートルの未買収用地があるなど、まだまだ多くの課題が残っており、中国電力が目指す年内の電調審上程は見送られる可能性が濃厚。

※山口県大島郡大島町議会が行なった上関原発建設計画の賛否を問う住民アンケートで「反対」が59・6%を占めるなど、住民の反対姿勢が浮き彫りになる結果が11月2日にまとまった。
 アンケートは全町民の6分の1にあたる1206人を無作為抽出し、9月25日から10月16日まで実施し、61・7%の744人 が回答した。
 744人の中で「賛成」は3・9%。「やむを得ない」の16・8%を入れても、上関原発建設計画を認める住民はアンケートに答えたなかでは2割に過ぎず、6割近くが反対の意思表示をした。
 また、町長や議会の対応についても「反対意見を述べるべきだ」が39 ・5%と最も多く、「難しい問題なので慎重に対応すべきだ」の34・4%を入れると、約7割以上が潜在的に見直しを求めるという結果になった。

 全町民が対象ではないため、このアンケート結果だけを取り上げて云々することはできないものの、判断材料を集約している山口県知事の最終判断に何らかの影響を及ぼすものとみられている。
 原発建設計画の原発に関する住民意向調査として自治体自らがこうした形式で賛否を問うアンケートは全国で初めて。

※電調審は12月下旬ごろだが、11月17日に行なわれた電調審事務局の連絡会議で上関原発を議題にあげるのが見合わされた。このことから、電調審への年内の上程は事務的にもタイムリミットを過ぎたため、事実上見送りになった、といえそうだ。

※上関原発関連の記事は、特報/環境アセス法と原発と「スナメリの住む海」

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■長崎原爆で被爆した長崎市深堀町に住む58歳の女性が、原爆症認定の申請却下に対する処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷は7月18日、請求を認め、国側の上告を棄却した。

 女性は3歳の時に長崎市内の自宅で被爆。爆風で飛んだかわらで頭の骨を折り、右半身まひとなった。医療特別手当が支給される原爆症認定を2度、国に申請したが却下されたため、88年に提訴。長崎地裁は「放射線の影響は否定できず、治療の必要性もある」とし、国の却下処分を取り消した。
 二審の福岡高裁も「厳密な医学的な立証の必要はなく、相当程度のがい然性の証明があれば足りる」として、国側の控訴を棄却していた。

 最高裁第三小法廷の判決では、厚生省の認定基準について「審査基準を機械的に適用すると、十分に説明しきれない事実もある」と指摘。原爆症の認定要件について厚生省が主張した「爆心地から被爆地までの距離を基準とする被ばく線量推定方式に基づいて認定しており、被爆距離が2・4キロあった今回の場合、2キロ以内とした審査基準を超えるため、放射線の影響は認められない」とする判断に対しては、「審査基準の被ばく線量推定方式は現在も見直しが続けられている。発生するはずのない地域で発生した脱毛の大半を栄養状態など、放射線以外の原因によると断じることには躊躇を覚えざるを得ない」としたうえで、原告の脳損傷について「直接的には原子爆弾の爆風で飛んできたかわらの打撃により生じたが、原爆の放射線を相当程度浴びたためか、治癒能力が低下したために重篤化した」と結論付けた。
 国側敗訴の判決を下した原爆症認定をめぐっての最高裁判決は、今回が初めて。

原爆症認定
 
原爆投下時に広島、長崎市内や周辺地区にいた人や、2週間以内に爆心地の約2キロ圏内に入った人に対しては、被災証明があれば被爆者と認定され、医療費は無料となる。
 また、負傷や疾病が原爆の放射線に起因するか、その治癒能力が放射線の影響を受けたと判断された場合、厚生省が原爆症と認定。原爆症認定者に対しては、2000年度で月額13万9600円の医療特別手当が支給される。
 今年3月末現在で、全国の被爆者手帳所有者29万7613人のうち原爆症認定を受けているのは2166人と、極めて少ない。

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■中国電力が計画している島根県鹿島町の島根原発3号機増設に関して、澄田信義島根県知事は7月14日の県議会全員協議会で同意する考えを表明した。
 これで3号機増設計画は8月にも開かれる電調審で国の電源開発基本計画に組み込まれる。
 原発が電調審に提案されるのは、1999年8月の青森県での電源開発大間原発以来で、茨城県東海村で起きた臨界事故以降の増設同意は初めて。

 北海道泊村に計画している北海道電力の泊原発3号機増設について、堀達也北海道知事も14日の道議会予算特別委員会で「選択せざるを得ない」と述べ、増設を容認する考えを明らかにしている。

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■香川県豊島(てしま)に不法投棄された約50万トンの産業廃棄物の撤去をめぐる国の公害調停が6月6日、37回にわたる調停で初めて地元の豊島で開かれ、豊島住民と香川県が、国の公害等調整委員会が示した調停文書に署名押印し、最終合意が成立した。

 県側は真鍋知事ら、住民側は、調停申請人ら約600人と豊島住民弁護団の中坊公平団長らが出席。合意には「廃棄物の認定を誤り、処理業者に対する適切な指導監督を怠った結果、土壌汚染、水質汚濁など深刻な事態を招来し、住民に長期にわたり不安と苦痛を与えたことを認め、心から謝罪の意を表する」との知事の謝罪が盛り込まれ、調停の席でも知事が「心から謝罪します」と住民に向かって初めて頭を下げた。

 国内最大規模とされる豊島の不法投棄産廃問題は、住民が公害調停を申請してから約7年ぶりに撤去に向けて動き出す。県は今年度中に処理施設の発注にかかり、総事業費300億円前後をかけて2016年度末までに産廃を豊島から搬出する。

 中間処理施設は、隣り直島町の三菱マテリアル直島製錬所に建設される。

豊島の産廃問題
 1975年、豊島での産廃処理業の申請に対し、住民は反対運動を展開。83年ごろから産廃の不法投棄が始まり、有害物質が周囲の環境を汚染し続けた。90年に地元県警ではなく兵庫県警が処理業者らを廃棄物処理法違反容疑で摘発。住民らは93年、県の責任を明らかにするとともに産廃の撤去を求めて公害調停を申請。97年に中間合意に達したが、県は「遺憾の意」を表明するにとどまっていた。
 また、県知事は謝罪の意思を聞かれるたびに「遺憾の意で決着済み」と答え、「住民はお金が欲しいんでしょう」とも発言し、住民から強い反発を受けていたが、直島町が中間処理施設を受け入れ、紛争の一括解決の見通しが立ったことなどから、「謙虚に反省し、これを教訓として、適正な廃棄物行政を推進する」「改めるべき点は改め、県民の負託にこたえるよう最大限努める」と表明。調停での合意案に「産廃の完全撤去」「県の謝罪」「何の対価も求めない豊島の真意」という豊島住民の闘いの三つの悲願が盛り込まれ、最終合意が成立した。

※これらの問題の詳細は地元「豊島住民会議」のホームページにあります。

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■混迷と停滞が続いている山口県上関町の上関原発立地計画で中国電力は4月27日、周辺8漁協の「共同漁業権管理委員会」との間で、建設を前提にした漁業補償として「約125億円の漁業補償を支払う」という内容の契約書を交した。

 契約の主な内容は、「中国電力が、埋め立てで漁場が消滅する上関町の上関、四代の両漁協に計47億5000万円、温排水の影響を受ける海域に共同漁業権を持つ8漁協に計78億2500万円を支払う」「建設工事に伴う掘削岩石で魚礁を造成し、漁業振興策を協議する」「事故に伴う風評被害には補償を含む適切な措置を取る」など。
 中国電力は、補償の半額を1カ月以内に支払い、残りを電調審への上程後、山口県知事の海岸埋め立て許可が出てから支払う、としている。

 11月の電調審への計画上程を目指している中国電力側は、漁業補償合意で「電調審への計画上程に向けて、大きな山を一つ越えることができた」としているが、一貫して反対を貫く祝島漁協は、「原発建設に伴う影響が最も大きい漁協が反対しているのに、議論もせずに一方的に多数決で補償受け入れを決めた執行部の決議は許せない」 などとして、決議の無効を求める民事訴訟や、中国電力の株主と連携し、中国電力の株主と連携し、漁業補償に巨費を投じる中国電力役員の責任をただす株主代表訴訟などで徹底抗戦を貫く構えを見せている。

※上関原発関連の記事は特報/環境アセス法と原発と「スナメリの住む海」

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■長崎が原爆で被災した際、被爆未指定の地域住民も、指定地域被爆者と同程度の被害を受けているとする調査結果が、4月17日、長崎市が発表した初の面接調査の報告書で明らかになった。

 調査は、原爆投下時、爆心地から半径12キロ以内の未指定地域居住者で、現在も同じ行政区域内に居住する8700人を対象に実施。調査票郵送に対して回答があった7086人から312人を無作為抽出して面接を行なった。

 初の面接調査では、多くの人たちが何らかの不安を訴え、被爆から半世紀以上過ぎても、未だに苦痛な夢を見たり、原爆投下に関連したことを思い浮かべるだけで苦痛になるなど、心理的後遺症を抱える人が約25%にのぼった。また、現在かかっている病気の数も1人平均3・4と、指定地域の被爆者とほぼ同じ健康状態であることが分かると共に、心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられる症状もあった。

 被爆地域は、1957年に「被爆者医療法」に基づき被爆当時の長崎市と、隣接町村の一部が指定された。76年の法改正で、周辺地域が健康診断特例区域として追加指定されたが、被爆者健康手帳を取得できるのは、爆心地を中心とした南北12キロ、東西7キロの楕円形内の被爆地域の住民だけで、隣接する未指定地域の住民は取得できない。

 このことから、この調査結果をもとに、長崎市長は「被爆地域の拡大・是正問題を、被爆55年の本年度中に解決するため、国に積極的に働きかけていく」としている。

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■住民投票で反対が圧倒的多数を占めた吉野川可動堰(ぜき)計画だが、徳島市議会(定数40)は、「吉野川可動堰計画の白紙撤回を求める意見書」を3月22日午前の本会議で、賛成16、反対22(欠席1)の賛成少数で否決した。

 意見書は、住民投票で反対票が9割を超えた投票結果や、投票結果を受けて小池正勝市長が計画反対を表明したことなどを踏まえ、計画反対会派の市民ネットワークと共産党の議員が、建設省や徳島県に計画中止を求める内容で提案。

 しかし、昨年の6月定例会で同計画の賛否を問う住民投票条例案を提案した公明党市議団が「一地域の投票結果で白紙撤回を求めるのはおかしい」などとして反対に回ったため、賛成が過半数に達しなかった。

 市議会は計画に対し、改選前の1997(平成9)年9月定例会で「可動堰化推進を求める意見書」を可決している。

 一方、建設省は3月24日、新年度予算で吉野川可動堰計画での予算を4億円枠確保することを決めた。主に地域住民からの提案を含めた代替案の検討などの経費にあてる。
「可動堰が最適」としながらも、「可動堰計画を前提とした予算の使い方は、住民の納得を得られないし、現段階での吉野川河川改修費名目での予算確保は無理」と判断した模様だ。

吉野川第十堰可動堰の賛否を問う住民投票
 全国初の国の大型公共事業を対象にした吉野川第十堰可動堰の賛否を問う住民投票は1月23日、徳島市で実施された。

 住民投票が実施された際、投票率が50%を下回れば開票されず、住民投票そのものが成立しないという「ハードル」が設けられたが、投票率は50%を超えた。

 国内で初めて「住民投票」が行なわれたのは1996年8月の新潟県巻町での原発立地の是非を巡って。「住民投票」でのこれまでの平均投票率は79%と、いずれも高い関心を集めているが、今回10例目になる徳島市で実施された住民投票では、投票率50%を巡って「投票で賛否を」との呼びかけ<対>「投票のボイコットを」との呼びかけ合戦が繰り広げられたことから、投票率が注目された。
 投票率は54.99%となり開票の結果、計画に賛成する団体などが投票への棄権を呼びかけていたことから、反対票が圧倒的多数の9割以上を占め、投票者総数11万3996のうち10万2759が、可動堰建設に「ノー」の意志表示をした。これは有権者総数約20万9000人(男性約9万8000人、女性11万1000人)のうち約5割にあたる。建設賛成は9367だった。

 この結果を受けて、これまで「中立」の立場を取っていた建設省出身の小池正勝市長は、「市民の意思を尊重して徳島市としても建設にはノーの判断をする」ことを表明した。

これまで
 徳島県・吉野川の第十堰(ぜき)を壊し、上下開閉式可動堰をつくる計画の是非を問う住民投票の賛否が最大の争点となった徳島市議選(定数40)は、2月の臨時市議会で住民投票条例案に反対した現職4人が落選、住民投票実現を掲げた市民グループが擁立した新人5人のうち3人が当選、可動堰化反対を訴える共産党も5議席を獲得し、住民投票賛成派が大きく票を伸ばした。住民投票を求める市民の意思が選挙結果に表れた形になり、議席数は、住民投票賛成派22人、反対派16人、態度保留2人で賛成派が過半数を獲得した。
 その後、徳島市議会は6月22日、吉野川第十堰可動堰化計画の是非を問う住民投票条例案を賛成22、反対16の賛成多数で可決。
 条例案をめぐっては、投票実現を目指す市民ネットワーク、共産党、新政会の3会派グループと公明党市議団が、それぞれ条例案を提出していたが、両条例案の上程ではいずれも反対多数になり、住民投票条例制定そのものが不可能になるため、条件付きで公明案への一本化で合意した。
 それぞれの条例案では、投票の実施時期をめぐり「別の条例で定める」とする公明案と「6カ月以内」とする3会派案とで大きく食い違っていたが、最終的に「賛成議員の協議を6カ月後に始める」「投票時期の決定は、賛成議員の過半数で決定、結果を総意とする」などの確認書を交わしたうえで3会派側の条例案を撤回、公明案に賛成することで合意した。

●吉野川の可動堰建設計画●
 約250年前に築かれた吉野川の第十堰が洪水時に危険として、建設省が約1000億円をかけ全長約720メートルのコンクリート堰を造る計画。建設省は、事業審議委員会が1998年7月に計画を妥当とする結論を出したのを受けて同年8月、1999年度予算に環境アセスメント費約4億円も概算要求した。しかし、計画そのものに異論を唱えてきた市民らは「住民の意見が反映されていない」と反発していた。

●事業審議委員会●
 事業審議委員会というのは、建設省が長良川河口堰事業で強い批判を浴びた反省から、吉野川を含む全国14カ所を対象に、地元首長や学者で構成する第三者機関「ダム等事業審議委員会」(ダム審)を設け、事業の妥当性を審議するためにできた。
 しかし、この審議会に限らずどの省庁でもいえる事だが、審議会というのは、「あらかじめ第三者で議論をし、検討し尽くした」というアリバイ作りのための機関という、計画を進めるための便宜上のものという性格が強いのが実情だ。
 ご他聞にもれず、吉野川のダム審も昨年7月に「事業は妥当」とする結論を出し、建設省もこれを受けて事業を進めていく方針だった。着工時期は決まっていなかったが、住民側は「議論が尽くされていない」などと反発を強めていた。

●建設省の動き●
 同省は「可動堰が最有力案」との主張を変えていないが、住民参加を掲げた新河川法が施行されていながらも、住民の意見を聞かずに反発を受けたまま可動堰の建設事業を強行するのは不利、また、住民投票で建設計画が拒否されるのも、川辺川ダム(熊本県)など反対運動が続く他のダム計画にも影響が大で、今後何かと不都合と判断。徳島市議会での住民投票条例案の採決結果にかかわらず、「河川整備計画」をつくる際に、アセスメント(環境影響評価)などに3〜5年程度の時間をかけることを明示したうえで、住民の意見も聴き取って打開策を探り、計画の代替案を議論することも否定しないとしていた。 そして、事業審議委員会の結論だけにこだわることなく「吉野川方式」と位置づけて、河川整備計画に意見を述べる委員会を新たに設置して試験的に、住民の理解を得ながら事業を進めていくことにしたい意向を示している。

 しかし、 この新設される委員会も事業審議委員会同様、計画を推進させるための便宜上のものに過ぎないとの批判が住民側から出ていることから、住民参加の意義や対話のルールづくりなどを話し合う『懇談会』の設立を目指し、ここから打開策を講じたい意向だが、「先に建設推進ありき」の姿勢を崩さない建設省と、流域住民との真の対話は、現在のところ望めそうにないのが実情だ。

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■電力会社以外でも3月21日からは大口顧客に電力を自由に売れるようになることから、山口県徳山市と新南陽市にまたがる周南コンビナートにある化学メーカー・東ソー(東洋ソーダ)南陽事業所は、自社内にある発電設備を利用して、隣接するコンビナート主要企業に電力の小売りをする方針を打ち出した。

 東ソー南陽事業所は、単一事業所では国内最大の自家発電設備(石炭火力発電・約68万キロワット)を持っており、その電力で工場の設備等を起動させている。今後は、電力の小売り自由化をバネに、隣接するコンビナート主要企業に、自社の余剰分電力を低コストで供給する、という計画だ。
 東ソーの計画では、周南コンビナートを形成する日新製鋼、トクヤマ(旧徳山ソーダ)、日本ゼオンなどの主要事業所・工場間を電力会社の送電線とは別の専用線で結び、余剰電力を東ソーから他の事業所に送る。

 その電力を購入するか否かは未決だが、東ソーの隣りでステンレスをつくる日新製鋼周南工場のある職員は、「電気の炉でステンレスを生産しているため、生産用電力代は膨大。特に中国電力の料金は高く、コスト面で課題が多いのは事実。これが実現すると、石炭火力という点で酸性雨など環境的には課題もあるが、企業姿勢として捉えると、前向きな企業の垣根を越えた国内でも先進的な事業ネットワークの事例として、注目されるだろう」と評価する。

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■鹿児島県が鹿児島市沖に計画している人工島建設(鹿児島市沖の錦江湾を約67ヘクタール埋め立て、マリーナや国際交流施設などを造る計画で、護岸部分についての1期工事は昨年12月26日に着工されている)で、その是非を問う市民投票条例案を審査していた同市議会特別委員会は1月31日、同条例案を賛成3人、反対8人で否決した。この事業計画をめぐっては、市民団体が県民投票実施を求めて知事に条例制定を直接請求したが、昨年12月17日に県議会で否決。

 この条例案は、市民団体が法定必要数の5倍を超える約4万5000人の署名を集め、昨年12月、鹿児島市長に市民投票条例制定を直接請求していた。特別委では、「人工島建設は計画段階で民意を聴く手続きが取られていない」などとして市民投票に賛成する意見が出されたが、「市民投票は必要ない」とする意見が根強く、採決の結果、否決された。2月2日の市議会本会議でも否決された。

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■四万十川にある高知県高岡郡窪川町の家地川ダム(佐賀取水堰=ぜき)の水利権更新問題で、ダム撤去運動の一環として1999年1月から署名活動を実施していた四万十川漁業組合連合会は1月12日、橋本大二郎高知県知事あてにダム撤去を求める7837人分の署名を提出した。また、これを受けて幡多郡大正町の町民代表でつくる「家地川ダムをなくする町民会議」も1月15日から、家地川ダム撤去へ向け、町民の約85%にあたる3000人を目標に署名活動を始めた。

 家地川ダムは、四国電力が佐賀町の発電所の用水確保のため1937年に建設。「ダムなき清流」とも称される四万十川にある唯一の堰で、貯水量は約88万トン。アユのそ上期を除き、10月から2月末まで水門が閉鎖され、年間約2億6000万トンの水が別水系に流されている。このため閉鎖時は、堰の直下には水が流れず、アユの減少などを筆頭に川の変質が問題視されていた。
 水利権更新期限が2001年4月7日と目前に迫ったため、四国電力が水利権を更新する前に、流域8市町村では初めてダム下流の大正町の住民が「21世紀を担う子どもたちに継承するため、水が流れる川に戻し、世界に誇れる四万十川を取り戻そう」と、撤去を求める運動を開始した。集めた署名は、建設省や四電などに提出する。また、大正町の町長も「撤去費用は町で持つ。21世紀初頭に四万十川をよみがえらせるのが使命」と表明している。

その後
 家地川ダム問題への対応を検討する家地川ダム下流域の大正町、十和村、西土佐村各議員で構成する「北幡地区家地川ダム対策協議会」は、遅くとも3月中に大正町、十和村、西土佐村の議会がそれぞれダム撤去を求める意志表示をすることを決め、2月23日、先陣を切って十和村では臨時村議会が開かれ、「四万十川の水がダムによって別水系に分水されてきたことによって、村民の生活環境や自然環境に極めて深刻な影響を及ぼしてきた」として全会一致でダム撤去を求める決議案を採択。4月17日、十和村の村長と村議会議長らが県庁を訪れ、高知県知事あてに「川本来の姿を後世に引き継ぐことは村民のためだけではなく、国民に対する責務だ」として、撤去の要望書を提出した。

 また、十和村村長らは同日、四国電力中村支店や建設省中村工事事務所に対してもダム撤去を求める申入書を提出。四電中村支店では村長が水利権更新の許可申請をな行わないよう求めたのに対し、四電中村支店長は「家地川ダムおよび佐賀発電所は電力の安定供給のために重要。今回の水利権更新では河川維持流量が設定され、適正な量を年間を通じて放流するため河川環境は改善される」と従来の見解を繰り返すにとどまった。

 十和村ではまた、4月28日、集落の区長らを発起人とするダム撤去を目指す住民組織「家地川ダムをなくする十和村民会議」が発足。同会は、先に発足した大正町の町民代表でつくる「家地川ダムをなくする町民会議」などとも交流しながら、今後、流域住民との連携強化を図り、「四万十川を自然の川に戻し、21世紀に継承していくため、村民の結集により家地川ダムを撤去させる」ことを表明した。

 この動きを受けて大正町の「家地川ダムをなくする町民会議」も5月11日、高知県知事らに1月から町内で集めていた撤去署名約2000人分とダム撤去への協力を求める要望書を提出。橋本知事に「四万十川はひん死の状態だが、今ならまだ助かる。住民の思いを受け止めてください」「ダム撤去後の代替エネルギーとして太陽光、風力を徐々に導入することも考えているので、県も協力支援してほしい」などと訴えた。
 これに対応して橋本知事は「大正町がエコエネルギーの実現に取り組んでいることは素晴らしい。県としても、研究グループをつくるなどして力を入れていきたいと考えている」と代替エネルギー開発に関しては前向きな姿勢を示したものの、ダム撤去やゲート全面開放については「皆さんの思いも四万十川が大切なことも、十分分かっている」としながらも、言及を避けた。

 その後、四万十川の上流に位置する高岡郡大野見村と東津野村も6月の定例議会で「ダム撤去」を決議。幡多郡大正町、十和村、西土佐村の議会でつくる「北幡地区家地川ダム対策協議会」は7月5日、幡多郡十和村役場で会合を開き、3町村に大野見村と東津野村を加えた5町村で、ダム撤去に向けての行動を起こしていくことを決めた。
 具体的取り組みとしては、8月中までに5町村の首長、議長、ダム委員長、住民組織代表で知事と建設省四国地方建設局にダム撤去を求める要請文を提出。また、同協議会は解散し、5町村で新組織をつくり、さらに一丸となってダム撤去に向けての行動を起こしていくことも確認した。

特報バックナンバー蘇るか、清流四万十の流れ清流四万十川。その流域住民が、本来の流れを取り戻そうと、ダムの撤去運動を始めた。

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