土屋義彦・埼玉県知事、辞任へ、献金隠しなどで刑事責任追及の可能性も。

 献金を隠すなどして政治資金規正法違反で長女が東京地検特捜部に逮捕されたのを受け、土屋義彦・埼玉県知事は7月12日未明、辞任を表明した。

 土屋埼玉県知事の政治資金管理団体「地方行政研究会」の収支報告書をめぐって捜索していた特捜部が7月10日、知事の長女と同会の事務担当者を政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕した際には、「長女とわたしは別人格。知事を辞めるつもりはない。県政をまっとうする」と明言。献金隠しについても「長女に任せ、一切知らなかった」と関与を全面否定していたが、その翌日、特捜部が知事室や知事の自宅などにも強制捜査の手をのばすなど、予想以上に事態が急展開し、支持者や側近、自民党幹部などから「もうもたない」などの声もあがったため、辞任を決断せざるを得なくなった模様だ。

 東京地検特捜部が当初、家宅捜査を行なった資金管理団体は、個人寄付や小口献金の窓口になっていたところで、知事が代表を務め、逮捕された知事の長女で会社経営者の市川桃子容疑者が会計操作の裏方になり、同会の98年〜02年分の政治資金収支報告書に、実際より約1億1300万円少ないうその金額を記入し、当時の自治相や総務相に提出していた。

 同会が発足した1995年から県内建設会社からの政治献金も始まり、埼玉県建設業協会(加盟約500社)の幹事社約50社のほとんどが、5万円ずつの小口に分け、個人名義で年間、数10万円を「地方行政研究会」に献金していた。
 そして、隠したとされる総額約1億1300万円の献金のほぼ全額を、長女が株取引の損失穴埋めや会社の運転資金などに私的に流用。特捜部は、献金隠しと資金流用について、土屋知事が長女から相談を受け、了承していた疑いがあるとの見方を強め、関与の程度など実態解明に乗り出した。

 これに先立ち、知事の長女・桃子容疑者がコンサルタント会社「ピーチ」を経営していた際、清掃用品レンタル最大手「ダスキン」から計1050万円の不明朗な資金提供を受けたとして、ダスキンの旧経営陣による特別背任事件に絡んで東京地検特捜部が捜索していた。そのなかで、特別背任ですでに逮捕されているダスキン元専務は、埼玉県三郷市への工場進出をめぐる謝礼として支払ったことを認めており、実際には、これが知事の政治資金管理団体にまわったとされている。

 今回の急展開で、知事本人の刑事責任が追及される可能性が濃厚になってきたが、土屋知事をめぐっては、公共事業にからむ地元建設業者などとの癒着も指摘されていることから、東京地検特捜部の今後のさらなる捜査が注目される。(03・7/12)

 土屋義彦氏は、1965年の参院選で初当選し、環境庁長官や参院議長を歴任。92年に埼玉県知事に初当選して以来3期目で、 96年からは全国知事会長も務めていた。

BACK


談合疑惑で調査を進めていた公取委、ゼネコンのスクラムの前に完全敗北。

 「必要悪」としてやむことのない「談合」で、仙台市内の土地区画整理事業をめぐって調査を進めていた公正取引委員会は6月13日、法的拘束力のある「排除勧告」を行なうまでの証拠が得られなかったとして、ゼネコン29社に対して「警告」のみの処分で幕引きを図る決定をした。

 談合疑惑で公取委が立ち入り検査に着手しながら、独占禁止法に基づく法的措置が取られず「警告」にとどまったのは今回が初めてで、事実上、ゼネコンの共同スクラムが公取委の審査を抑え込んだ形で、公取委の「完全敗北」になった。

 談合した疑いが持たれていた事業は、JR東北線岩切駅周辺約32ヘクタールの農地などを3工区に分けて造成するもので、総事業費は約80億円。仙台市が約14億円、国が約8億円などを助成して2006年度内の終了を目指している工事。

 公取委によると、29社は2001年3月から2002年3月にかけ、仙台市の岩切駅東土地区画整理組合が指名競争入札で発注した8件の工事に関し、受注を希望する業者が話し合い、他の入札参加業者に応札価格を連絡するなど、談合を行なったというもの。
 公取委が談合疑惑を指摘した8件の工事の落札者には、ゼネコン29社のうち9社が入っており、落札率は95%から100%だった。

 だが、ゼネコン業界は綿密に情報交換して公取委の検査状況を確認し合い、一致して、事前の話し合いがなかったように作戦を展開。疑惑が持たれても仕切り役の社などを特定することができないように「連絡役」の社を置き、それを介在して応札価格などの連絡を行なうなど、徹底した情報管理を実施した。

 結果、この事実についても公取委は明確に証拠を示すことができず、ゼネコン各社の東北支店などを立ち入り検査し、支店長や営業担当者ら150人以上から事情聴取したものの、決定的な供述を得ることはできず、完敗した。

 今回の「警告処分」の幕引きについて、落札したハザマは「公取委から疑惑を持たれる事実はないと確信している。警告は遺憾だ」とし、入札参加を辞退した鹿島も「警告を受けるような事実はない。疑念を持たれたことを遺憾に思う」とコメントを発表。入札に参加した熊谷組や清水建設は「警告を受けたことを真摯に受け止める」「疑いを招かないよう、より一層の努力を傾けたい」としている。

 仙台市や宮城県は警告を受けた29社に対し、指名停止要綱に基づく処分を検討しているが、指名停止は公取委による排除勧告を前提としてることから警告や文書注意にとどまる模様。

 さらに巧妙な手法を捻出して生き残りを賭けるゼネコンと公取委の闘いは、今後も熾烈になりそうだ。(03・6/14)

BACK


金融機関の破たん処理で国民が負担した額、5年間で10兆円を突破。

 1998年度から2003年3月末までに破たんした金融機関の処理で投入した公的資金のうち、国民負担額の累計が10兆4326億円に上ることが5月29日、金融庁が金融再生法に基づいて作成した報告書で分かった。

 国民負担額は、破たんした金融機関の損失を穴埋めするために預金保険機構に交付した国債を実際に現金化して使用した額の累計で、2002年9月末までの累計に比べると7834億円増えた。

 この額は、2002年10月以降2003年3月末までに事業譲渡された金融機関に対するもので、2つの地方銀行(石川銀行と中部銀行)と5つの信用組合(在日朝鮮人系金融機関)への資金援助に伴なう増加分。それ以降に発生したりそな分は含まれていない。

 破たん金融機関の救済で国民負担額が増す一方で、金融機関が急ぐ不良債権の解消に伴ない、企業も倒産やリストラを余儀なくされ、それによって失業者は増加し、所得も減少の一途をたどっている。失業者が増え、所得も減少すると景気はさらに悪化。悪化に比例して金融機関そのものが成立しなくなる傾向も強く、公的資金の投入はエンドレスの雰囲気にも。

 こうした悪循環は、やはり当分続きそうで、消費税アップも計画されるなかで、今後も増えるのは、国民の重税感と負担、そして一人ひとりが抱え込んでいる不安感のようだ。(03・5/29)

BACK


旧石器発掘ねつ造、日本考古学協会が「ねつ造は遺跡すべて」と最終報告。

 2000年11月の問題発覚から2年半、旧石器発掘ねつ造問題を検証していた日本考古学協会の前・中期旧石器問題調査研究特別委員会は5月24日、東京都内の総会で、藤村新一氏がかかわった遺跡すべてでねつ造があったとの最終報告を発表した。
 考古学界を揺るがしたねつ造問題は学術的に「決着」すると同時に、これで、学術的に日本の前・中期旧石器遺跡も「全滅」することとなった。

 調査研究特別委員会は「藤村氏の石器探しは、当初から遺跡のねつ造を目的としたもので、学問的探求心ではなく、名声の獲得を求めた可能性が強い」と改めて指摘し、「すべての遺跡について学術的根拠がない」とした。
 また、自らの反省も含め今後について「ねつ造をチェックできなかったのは、学界が怠慢であり、力不足であったということに尽きる。今後は、関連科学との連携を強め、国際共同研究を行なうなどして、研究の再構築を進めていきたい」と述べた。

 この問題を教訓とし、日本考古学協会は考古学者の倫理綱領を2004年5月までに制定することも決めた。(03・5/24)

関連記事バックナンバー:「遺跡のロマン」に深い傷、旧石器発掘ねつ造で日本の前・中期旧石器時代の存在が幻に。

BACK


衆院法務委員会陳述で、改めて刑務所での死因に対する疑問が浮上、リンチ以外に医療の不備も。

 衆院法務委員会で5月21日、刑務所・拘置所内の医療問題に関する集中審議が行なわれ、死亡例を分析した医師が「医療訴訟になっても不思議ではない」と、医療の不備を強く批判した。

 参考人として陳述したのは東京都の新葛飾病院院長で、過去10年間の死亡例のうち国会に提出されていた医師のカルテなどを含む238例の記録を分析した。
 参考人の医師は、死因の2割を占める「急性心不全」の表記について「心肺停止したという事実しか分からず死因として通用しない。カルテも通常の病院であればカルテとは言えない内容だ。死亡時の平均年齢が52歳と若く、私の病院なら、200例は医療訴訟になっただろう」と、ずさんさを指摘した。

 刑務所の医療は保険適用外で全額国費でまかなわれるが、別の参考人からは予算次第の刑務所医療の実情も述べられ、委員から「金の切れ目が命の切れ目では問題だ」と指摘する声があがった。(03・5/22)

●名古屋刑務所で2001年12月、当時43歳の男性受刑者が消防用ホースで放水され死亡した事件で「特別公務員暴行陵虐致死ほう助罪」に問われた看守部長の初公判が5月22日、名古屋地裁で開かれ、被告は事実関係を認めた上で、検察側の「事件の4日前に副看守長が受刑者の尻に意図的に放水したのを目撃しており、事件当時も懲らしめ目的と予期していた」との指摘に対し、「私が受刑者のズボンを脱がせたのは受刑者の体をきれいにするためで暴行ではなかった。受刑者への放水を手助けする意思はなかった。死亡したのは放水が原因ではなく無罪だ」と起訴事実を否認した。
 実際に放水した上司の副看守長(特別公務員暴行陵虐致死罪で公判中)も無罪を主張している。

BACK


経団連、時代に逆行して政治献金再開を決定、「あっせん利得」になりかねない目標設定も。

 経済界と政界の癒着への批判を受けて1994年から政治献金や斡旋を取りやめていた日本経団連は5月12日、会長・副会長会議で政治献金を2004年から再開することを決めた。6月にも経済界の献金総額の目標や企業ごとの献金の目安を設定する「政経行動委員会」(仮称)を経団連に設置する。

 献金の方法は、経団連の主張をもとに与野党の政策と実績を行動委員会が決めた評価基準で査定し、会員企業に献金してもらうというもので、いわば財界ぐるみで「あっせん利得」をすすめるというものだ。献金再開の実情は、冷え込む企業業績を献金の力に依存して多少なりとも立て直したい、といったところのようで、早くも新しい形の経済界と政界の癒着がはじまるとの批判が出ている。

 このことに関して奥田碩会長は、再開の理由を「民間部門のリーダーとして経済、政治の活性化に積極的に貢献するため」と述べ、表面的には癒着復活を打ち消した。しかし、2002年5月の就任以来、奥田会長は「カネを出して口もだす」と折にふれて発言していることから、政治献金の復活を決めた背景には、一向に発揮できない政治に対する影響力への焦りもあるようで、献金再開で自らの影響力確保を図りたいようだ。

 献金の対象は与野党としているが、現状では事実上自民党への献金が大半を占めるとの見通しだ。 (03・5/12)

BACK


生体肝提供の女性が死亡、国内約2300例の臓器提供で初の事態。

 1989年に始まった生体肝移植は2002年末に国内2000例を超え、いまでは約2300例が実施されているが、京大病院で臓器提供するために肝臓移植手術を受けた40代後半の女性が5月4日に多臓器不全のため亡くなった。生体肝移植によるドナーの死亡は国内で初めて。

 女性は2002年8月に肝臓の一部を摘出し、胆道閉鎖症の10代後半の自分の娘に提供した。しかし、女性は肝不全や肺炎を併発し、脳の障害も現われて重体に陥った。2003年1月に患者から摘出した肝臓をさらに移植に提供するドミノ移植を受けたが、その後も重体が続いていた。

 肝臓の一部を提供する前の検査では高血圧と軽度の脂肪肝があるものの、提供には支障がないと診断された。しかし、女性は飲酒と関係なく脂肪肝から肝硬変に進行する「非アルコール性脂肪性肝炎」で、ドナーに適さなかった。また、摘出後に残された肝臓の量も、安全とされる35%以上残す計画だったが、実際に残ったのは限界以下の26%しかなかったことも日本肝移植研究会の事後調査で判明し、ドナー選定や安全性の確保など、生体移植のあり方が問い直されていた。

 健康な体にメスを入れての臓器提供による死亡という生体移植で最も懸念された事態になると共に、肝臓の一部を提供してくれた母親が死亡という精神的ショックは、娘さんにとっても計り知れないものになった。
 病院側は、「脳死移植が少ない現状では、生体肝移植を進めることしかできない。今回のことを教訓に、完ぺきに近い状態で移植を行なうようにできることが我々に課された責任だと考えている」とコメント。肝臓の提供を受けた娘さんについては、「既に退院し、外に出るのは難しいが日常生活は問題がないまでに回復している」と説明した。

 生体肝移植の現状では、臓器提供した約1割のドナーが消化器疾患などの合併症やうつ病といった精神症状を訴えているとされる。(03・5/4)

BACK


市民団体の調査でTシャツ用プリント紙から有害物質「ホルムアルデヒド」、メーカーは製品回収を決める。

 家庭でオリジナルの絵や写真などをTシャツに転写する市販のアイロンプリント紙の一部に、有害物質のホルムアルデヒドが高濃度に含まれていることが、福井市の市民団体「子供たちの明日の暮らしを守る会」の調べで分かった。

 アイロンプリント紙は、家庭用のプリンターで自作のデザインや好きな絵や写真を印刷してTシャツにアイロンで転写すればお気に入りのオリジナル絵柄Tシャツができることから手軽に使われている。
 この用紙を「守る会」が北陸公衆衛生研究所に持ち込んで調べたところ、シャープ製から850ppm、三菱製から750ppm、ライオン製から170ppmのホルムアルデヒドが検出された。その3社のアイロンプリント紙でTシャツに絵を転写し、日本化学繊維検査協会北陸検査所で分析したところ、Tシャツの生地から24ppm、163ppm、45ppmのホルムアルデヒドがそれぞれ検出された。

 ホルムアルデヒドを使うと洗濯しても色が落ちにくいとされていることから製造段階で使用されていたが、3社はいずれも外国のメーカーに製造を委託していたためか、この使用を認識しておらず、当初はホルムアルデヒドの使用を否定する社もあった。
 「守る会」が3社に伝え、自社検査してホルムアルデヒドの使用を認識、検査結果を受けて3社は出荷停止を決めた。そのうち2社は店頭からの製品回収も実施する。

 アイロンプリント紙は法律の規制対象外だが、家庭用品規制法では、ホルムアルデヒドは乳幼児用衣類からは検出されてはならないと決められている。また、大人用の肌着は75ppm以下にしなければならないとされている。ワイシャツなど中衣類に使う繊維では300ppmを超えないよう指導通達がある。(03・4/30)

●ホルムアルデヒド:アレルギー性皮膚炎や頭痛など「シックハウス症候群」を引き起こす元凶として知られる有害物質で使用規制されている。合板の接着剤に使用されるほか、東京都立衛生研究所や名古屋市衛生研究所の実態調査では、ヒット商品になった形状記憶(形態安定)加工が施されたワイシャツの9割、カーテン・カーペット類の6割から有害物質の「ホルムアルデヒド」が検出されたことが過去に分かっている。この際、形状記憶(形態安定)加工された衣類は、主にホルムアルデヒドのガスや水溶液のホルマリンで繊維同士を化学結合させてつくるのが主流であることも判明している。

BACK


防衛庁と自治体が長年にわたり自衛官募集に住民基本台帳情報を無頓着に利用、懸念される住基ネットでの個人情報の漏えい。

 防衛庁が自衛官などの募集に使うため、満18歳を迎える適齢者の情報を住民基本台帳から抽出して提供するように全国各地の自治体に要請し、多数の自治体が住基台帳法を逸脱して無頓着にプライバシー性の高い情報提供にも応じていたことが分かった。この悪しき慣例は37年間にわたって続いている模様だ。

 防衛庁では「通常は氏名、生年月日、住所、性別の4情報を閲覧しているが、市町村によっては要請に応じて情報を提供してくれる場合があり、住基台帳法の範囲内と考えている」「自衛官の募集は、自衛隊法で都道府県知事や市町村長の法定受託事務とされており、防衛庁と自治体の共同作業でやっている。募集に必要な情報の提供を依頼し、自治体からその情報をいただくのは問題ないと思う」と解釈している。

 しかし、住基台帳法の範囲(住所、氏名、生年月日、性別)での閲覧は問題ないが、住基台帳法では「提供」を認めてはいない。
 一部の自治体は「住基台帳法上、認められない」と断っているが、自治体によっては、自衛隊地方連絡部に対し、家庭環境が推測される情報や健康状態などプライバシー性の高い「センシティブ情報」の提供を続けていた例もあり、提供を受ける防衛庁と情報提供する自治体のモラルの低さを象徴している。

 プライバシーのない時代ではあるが、住基ネットが本格稼働し、こうした事例がなし崩し的に続き、さらなる情報の拡散が懸念されることにでもなれば、自治体からの個人情報漏えいの危険性も含め、国民の不信感はますます高まることになりそうだ。 (03・4/22)

※4月23日の衆院個人情報保護特別委員会で防衛庁長官は、住民基本台帳法で認められていない情報の提供を332市町村から受けていたことを明らかにした。情報の提供を行なっているのは794市町村にものぼった。今後については、住基台帳法の範囲(住所、氏名、生年月日、性別)での情報提供にとどめる、とした。

BACK


精神科医ら心神喪失者法案の廃案求め参院に請願書

 院で不十分な審議で可決された「心神喪失者医療観察法案」に対し、精神科医や弁護士ら約5000人が4月4日、継続審議中の参院に廃案を求める請願書を提出した。
 「心神喪失者医療観察法案」は、重大事件で不起訴や無罪になった精神障害者に対し、裁判官と医師が合議したうえで強制的に入院手続きを定めるというもので、入院・通院・退院を裁判所の裁判官と医師が合議して決定する。 不確実な再犯予測に基づいて予防拘禁を行なう内容になっているため、精神科医や弁護士らは「社会防衛のため一般の人より再犯率が低い精神障害者を特別扱いし、差別を助長する」「社会防衛を理由に精神障害者が長期間、入院させられる懸念がある」と批判。この法案の廃案を求めた。
(03・4/5)

●この法案をめぐっては、法案推進派の与党議員に対して私立精神病院の経営者らでつくる「日本精神科病院協会」が多額の献金をしていたことが発覚し、国会の審議で「法案が金で動いている」と野党が批判していたが、6月3日、参院法務委員会で与党3党の強行採決で可決した。

BACK


刑務所受刑者の「変死」など不審死が多数存在。

 名古屋刑務所の受刑者死亡事件をきっかけに受刑者の不審死が問題になっているが、衆院法務委員会が法務省に、名古屋、府中、大阪、横須賀の4刑務所について過去10年分の受刑者の死亡帳を提出させたところ、過去10年間に死亡した260人の受刑者のうち、病死、老衰ではない「変死」が100人にも上るなど、不審死のケースが相当数あることが分かった。

 法務省が提出した4刑務所の計260件の死亡帳を調べたところ、「府中刑務所で興奮した受刑者に対し筋肉注射を打ったところ、自発呼吸を停止し、心停止して死亡」「腰痛治療のために医務室に行ってその後急死」など医療ミスを疑わせるようなケースも複数含まれていた。

 このため、野党側は、刑務官の暴力だけでなく、適切な医療を受けさせずに死んだケースがあるとみて、不審死について、新たに資料請求すると共に、全国すべての刑務所の過去10年に死亡した受刑者約1600人の死亡帳を提出するよう法務省に求めた。

 死亡帳とは、病死も含め刑務所内で死亡した受刑者のデータが記されるもので、自殺や変死の場合は検視者や立会者の氏名、検視結果も記載され、各刑務所に10年分保存されている。法務省はこれまで死亡帳があることを明らかにしてこなかったが、野党議員の指摘で存在を認めた。
 今回提出された資料では、死者は名古屋が120人で最も多く、府中93人、大阪46人、横須賀1人。司法解剖は名古屋4件、府中3件、横須賀1件。革手錠などが原因となった名古屋刑務所での事件2件も含まれている。
 また、事件の疑いがあるとして、司法解剖が行なわれた事例が8件あったことも分かった。

 野党委員は「急性心不全などの突然死が多い。『変死』の場合、司法検視などが行われるが、大阪刑務所では99年の途中から検視の記述が出てこなくなるなど、不自然な点も多い」としている。 (03・3/14)

※法務省は4月3日、過去10年間に死亡した約1600人全員について本格的な調査に乗り出す方針を固めた。法務省は当初、約1600人のうち、司法解剖を実施した68人に限って集中的な調査をすることにしていたが、記録に不審な点が多数見つかったため方針を切り替えた。国会答弁で不手際が続いている森山法相に対して辞任を求める動きが強まっていることもあり、法務省も本腰を入れた調査に転換せざるを得なくなった模様だ。

BACK


業者にたかり、脅してカネをまきあげ、食いものにするゴロつき国会議員、逮捕。

 相変わらず「政治とカネ」の問題が日常茶飯事のように浮上する国会議員の世界。そんな中で、国会議員の周辺では氷山の一角に過ぎないが、裏献金をやめようとした業者を脅してカネやモノをまきあげ続けていた労働族自民党議員の坂井隆憲が逮捕された。
 食いものにされたのは、現在は人材派遣会社と称するが、昔では要は手配師とかヒト入れ稼業というブローカー的性格の強い部類の組織。
 叩けば労働基準法違反も賃金体系の不明瞭さ、果ては労働者派遣法改正がらみの画策などもボロボロ出てきそうだが、労働族の坂井議員がフィールドの強みを生かしてその会社に自らを「丸抱え」させ、カネやモノをまきあげていた。

 坂井議員は、秘書給与や事務所経費を負担させたうえ、800万円の車を買わせて保険料まで出させた。2000年ごろには、前年までに約9300万円の裏献金をしていた人材派遣会社の会長が「献金をやめたい」と申し出ると、議員会館の事務所に呼びつけ「ふざけるな」「払い続けろ」と怒鳴りつけたという。いわば総会屋やヤクザや用心棒顔負けの要求を繰り返していた。

 その人材派遣会社、日本マンパワーからの裏献金は、労働政務次官だった96年ごろから始まったとされるが、日本マンパワー側が何かと便宜を図ってもらうことを期待していたこともあり、その姿勢につけ込まれ、政治家のタカリはどんどんエスカレート。たかりたかられの構図はどっちもどっちだが、裏献金額は1億円を越えた。

 坂井議員は捜査の手が迫ると、政策秘書に「確証めいたことは言うな」と口止め、さらに裏献金した日本マンパワー会長に「なかったことにするよう」に口裏合わせを依頼。東京地検特捜部の任意聴取では「不正経理は知らなかった」「秘書がやった」などと否認し、億単位の裏献金額を示されると「そんなに巨額だったんですか」などと驚いて見せるなど、ゴロつき政治家そのものの対応を続けた。

 衆院議院運営委員会は「緊急に身柄を拘束しなければ、事案の真相解明に困難を来す」として、衆院本会議に逮捕許諾請求を上程。可決されたのを受けて、約1年前から内偵を進めていた東京地検特捜部が政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕に踏み切った。

 議院の許諾を経て国会議員が逮捕されたのは、2002年6月の衆院議員鈴木宗男以来。政治資金規正法違反容疑での現職国会議員の逮捕は、元防衛政務次官の故・中島洋次郎元衆院議員以来2人目。
 坂井議員は佐賀県出身で90年の総選挙に立候補して初当選以来4期当選。その間、労働政務次官、衆院地方行政委員長、内閣府副大臣、衆院厚生労働委員長などを歴任していた。
(03・3/7)

BACK


刑務所の刑務官が受刑者をリンチ殺害した事件で、法の番人が受刑者からの刑務所不正訴え情願をまったく無視して握りつぶす。

 名古屋刑務所の受刑者が刑務官から消防用ホースで肛門に高圧放水されて死亡するというリンチ殺害事件をめぐる問題で、受刑者が、処遇に関する不満を法相に直接訴える「情願制度」に基づいて法相に「情願」したにもかかわらず、まったく無視して握りつぶしていたことが、2月21日の衆院予算委員会集中審議で明らかになった。

 情願制度とは、刑務所に収容された受刑者らが収容先での処置に不服があるときは、法相らに申し立てができる制度で、監獄法第七条に定められている。
 施行規則では、法相に提出する情願書は在監者本人に封をさせ、監獄官吏はこれを開いて調べることはできないとしている。
 法相に対する情願に関して法務省は1999年12月、矯正局長から矯正管区長に「情願の調査にあたっては、管区の調査担当者が申立者から直接事情を聴取するなど、不服内容を明確に把握すること」という処理の公正、迅速化を図る通達を出している。
 しかし実際には、過去数十年にわたり法相が「情願」を見ることはなく、刑務所を所管する法務省の矯正局がこれを開封して決裁。不都合な身内の不正については握りつぶせる形にしていた。2001年の申し立ては約3000件だが、官僚の勝手な運用で、密室の暴行が表に出ない仕組みが続いている。

 これに関して民主党の山花郁夫氏は衆院予算委員会で、元受刑者の話を以下のように紹介した。

 受刑者の男性は2000年3月、今回、ホースでのリンチ殺害事件があった名古屋刑務所に入所。約20日後、「痴ほう症気味のお年寄り」ら2人が刑務官から頭を壁にぶつけられる場面を目撃した。この事実を訴えようと所長に面接を求めると、刑務官らによる刑務所側の「報復が始まった」。面接を求める書類を目の前で「破れ」と刑務官らは要求、受刑者は階段の踊り場で引きずり回された。また、革手錠をかけられて保護房に入れられると、後ろ手の腕に数人が体重をかけ、「このままへし折ってやろうか」「お前、保護房でこのまま冷たくなるヤツはいっぱいいるんだ」と言われた。
 2000年10月、受刑者は情願を出したが、その回答は、「職員の暴行に関する情願の事実は認められず、却下する。2001年12月20日 法務大臣 森山真弓」だった。

 そして、情願が却下された6日後に刑務官の消防用ホース高圧放水によるリンチ殺害事件が起きた。
戦時中に陸軍などが行なった軍法会議、あるいはナチスなどの対応かと思わせるが、21世紀の今の話だ。
 法の番人の法務省が法を破り、人権を無視する。これが今の日本だが、「監獄法施行規則違反ではないか」との追及に、「われわれは大臣の手足であり、権限を内部で委任されている」と矯正局長は意に関せず。一方、「これを見ていない」とする森山法相は、事態を取り繕うかのように「昨年の夏か秋にそういう制度があると知った。大臣が直接見るべきではないかと言ったところ、今年1月ごろ、見せてもらうことになった」と答弁、「これから情願はすべて私が直接読む」と、いたって呑気だ。
 直接大臣が読まなくても、決裁規定では、法相には特に重要なものを上申することとし、実際には矯正局長が法相から権限委譲を受けて同局内で開封し処理することとなっている。それでいい。ごく普通に、法の番人があたりまえの役割を遂行すれば済む話だ。しかし、現実には違った。不都合な身内の不正については「握りつぶし」が慣例になっていた。
 そればかりか、同刑務所ではこの事件後も、2001年5月と9月に刑務官の暴行で受刑者が死亡している。

 「情願制度が機能していれば、受刑者の命は守れた」と野党側は厳しく追及し辞任を求めたが、法相は、「私の政治責任は再発を防止することだ」と、辞任要求を拒否し、大臣席にしがみつきたい表情をにじませた。(03・2/22)

BACK


旧動燃、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定調査で12道県40カ所以上を候補地としていたことが判明。

 旧動燃(動力炉・核燃料開発事業団=現在は核燃料サイクル開発機構)が、1986年から88年にかけて実施した高レベル放射性廃棄物の処分地選定調査で、12道県の40カ所以上を候補地としていたことが、市民団体の開示請求で公表された86―88年調査報告で明らかになった。

 候補地12道県は、北海道、秋田、山形、福島、長野、新潟、岐阜、愛媛、高知、長崎、宮崎、鹿児島だが、具体的な市町村名は非公開扱いとなった。

 当時の調査では、各地の航空写真などを解析し、現地で地質調査を実施。近くに活断層や集落がないなど一定の条件をクリアした3〜5キロ四方を数カ所ずつ選び候補地とした。候補地からいくつかの地域を選び、さらに詳しく調査して最終処分地を決める計画だったが、動燃は87年6月の原子力開発利用長期計画で処分地選定業務から外れたため、その後の調査は行なわれていない。

 処分地選定は現在、電力会社などが設立した原子力発電環境整備機構(原環機構)が全国から公募する形になっているが、応募する自治体は出ておらず、まったく見通しは立たない状態。核燃料サイクル開発機構は「現時点で報告書が使われる予定はない」としているが、市民団体などは「選定が難航した際に利用される可能性が高い」と危機感を強めている。
 選んだ候補地の市町村名を非公開=不開示処分とした理由を核燃サイクル機構は「混乱を招く恐れがある」としているが、市民団体は非公開部分の取り消し(不開示処分の取り消し)を求めて提訴する方針。
(03・2/14)

高レベル放射性廃棄物の処分:原発の使用済み燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを取り出して残った放射能の強い核のゴミが高レベル放射性廃棄物。それをガラスで固め、ステンレス容器に入れて30〜50年間、貯蔵するのが、青森県六ケ所村の中間貯蔵施設。そこで冷却した後、最終的に地下に埋設処分するのだが、最終処分技術も確立されず、処分地も決まっていない。2020年ごろには、このガラス固化体が約4万本に達すると予測されている。

非公開はダメの判決:高レベル放射性廃棄物の処分地選定調査の報告書について「地名などを開示しないのは違法」として岐阜県の市民団体代表が、動燃の後身の核燃機構を相手に不開示処分の取り消しを求めた訴訟で、名古屋地裁は5月8日、「不開示部分と開示部分の区別が不明確で、処分は無効」として、旧動燃の不開示処分を取り消す判決を言い渡した。

関連記事バックナンバー:揺れる原発政策

BACK


■「救う会」調査会が「北朝鮮による拉致被害者」84人を公表。

 北朝鮮による拉致被害者と家族を支援している「救う会」全国協議会の特定失踪者問題調査会は、全国から寄せられた行方不明者情報のなかで「拉致の可能性を完全に排除できない」と判断でき、かつ家族が公表を承諾した44人の氏名や失跡状況、顔写真などを2月10日、新たに公表した。

 同調査会によるリスト公表は2回目で、このリストには、1月10日のリスト発表の際は非公表にしたが、その後公表の承諾を得た人も含まれている。
 リストは「失跡する理由がない」「遺留品や自室の状況など失跡の経緯が不自然」「5年以上消息不明」の条件に沿って作成。近く、政府にもリストを提出するが、これで公表者総数は84人にのぼる。

(03・2/10)

特定失踪者問題調査会:政府認定の15人以外にも拉致被害者がいる可能性があるとして、北朝鮮による拉致被害者と家族を支援している「救う会」全国協議会が1月に設立。独自に調査を進めている。

BACK