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【東北発】


■福島県天栄村に12月14日、自治体単独としては全国最大の風力発電所が完成した。総事業費は約10億円で、風車4基での発電最高出力は3000キロワット、年間では一般家庭約1800世帯分の発電能力をもつ。
 風車は高さ75メートル、羽根の直径50・5メートルでオランダ製。1基に3枚の羽根があり、自動で角度を変えられ、風向きを最大限とらえることが可能。同村の国有林に設置した。

 天栄村は、国土庁過疎地域等活性化推進モデル事業の採択を受け、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同研究事業として、風力発電をシンボルとしたむらづくり「風の谷・光の谷のTen−ei構想」を進めていた。

 風力からの電力は、村営スキー場で使う考えだが、今後はスキー場だけでなく、農業や観光施設、ロードヒーティングなどにも活用する意向だ。
 2001年9月には天栄村で第8回全国風サミットが開かれる予定。

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【東北発】


■宮城県築館町の上高森遺跡で、原人が掘ったとみられる円形の生活遺構が、約60万年前の地層から見つかったと、東北旧石器文化研究所と東北福祉大考古学研究会の合同調査団が発表したが、合同調査団の藤村新一団長が、石器を自分で埋め、発見を装っていたことが分かった。

 調査団は、見つかった生活遺構は全部で6カ所で、土壙の中心に石器7点を並べた埋納遺構も見つかった、と発表。直径70センチ〜1メートルの楕円形の土壙(どこう)と、それを囲むように直径15〜30センチの円形の穴が配列されており、小鹿坂遺跡や約35万年前とされる埼玉県秩父市の長尾根遺跡の生活遺構と形態が同じだとした。さらに調査団は、「木の葉か、もしくは獣皮を張った直径1・5メートル程度の構築物跡と推察できる」として、「大きさなどから住居ではなく、石器などの貯蔵庫か神聖な祭祀(さいし)の場所だった可能性もある」と言い、「このような生活遺構は、世界的にみても類例が少なく、世界最古の可能性がある」ともぶちあげていた。

 会見では「原人の高い精神性を証明する貴重な発見だ」と強調。「これまで定説になっている原人の野蛮なイメージを覆す発見だ」とも述べ、各界もこの発見については「一般的に伝えられている人類の進化史を覆えす材料がひとつ増えたことになる」と、注目していた。

 しかし、石器は、合同調査団長でもある藤村氏が、早朝など誰もいない時に、発掘現場で数回にわたって自分が集めた石器を埋めたもので、とんだ人騒がせな演出となった。

 これまで、NPO(非営利組織)の中心メンバーとして発掘活動に参画するなかで藤村氏は、前期旧石器時代の石器を次々に発掘するなど、「国内最古」の記録を塗り替えるような「大発見」が多かったことから、「神の手」と冠されるほどだった。

 藤村氏は「魔が差してやった。何とおわびしていいか言葉が見つからない」「上高森遺跡が小鹿坂遺跡に比べ成果が劣っていたので焦っていた」と釈明し、北海道新十津川町の総進不動坂遺跡で、9月下旬から10月上旬の調査で見つかった前期旧石器時代の遺跡とされる石器29点も「全部、自分で埋めた」と告白した。

 上高森遺跡の約60万年前の地層から見つかった原人が掘ったとみられる遺構については「本物だ」とねつ造を否定したが、成果を挙げたいとの思い入れが自作自演劇に至ったことは理解できるものの、例え本物であったとしてもその信憑性は、この自作自演劇で大きく崩れたのは確かなようだ。

※上高森遺跡は、前期旧石器時代の遺跡で、1992年に約40万年前の地層から石器が出土し、その後、60万年前の石器などが見つかっている。

※その後の関連記事:「遺跡のロマン」に深い傷、旧石器発掘ねつ造で日本の前・中期旧石器時代の存在が幻に。

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■10月12日、青森県と六ケ所村は、日本原燃との間で、使用済み核燃料の本格的な搬入の大前提となる安全協定を締結した。
 協定は『安全確保と環境保全』『情報公開』『使用済み燃料の輸送計画に関する事前連絡』『異常時の連絡』『立ち入り調査』『損害の賠償』『風評被害への措置』など23条からなっている。事業者が講じる安全確保策を、保安活動の強化や教育訓練の徹底などと具体的に規定し、住民への情報公開や、施設の新設・改廃に関する県と村の事前了解を新たに条文化したのが特徴、としているが、形式的な一般常識を条文化したにとどまっている。

 これに対し、県内の反核団体や市民グループ、全国の市民団体、個人などからは「再処理事業の安全性が確立されていない中で結ばれるのは、『安全』ではなく『危険』協定だ」「核のごみ捨て場になる危険性がある」などとした抗議のファクスが県および県知事宛に殺到した。

 日本原燃は今後、六ケ所村に隣接する三沢市など6市町村とも安全協定を締結し、国内の原子力発電所から出る使用済み核燃料は、早ければ年内にも同村の再処理工場に運び込まれる。使用済み核燃料を最初に搬出する原発は、貯蔵容量が限界に近づいた東京電力福島第二原発などが候補に挙がっている。日本原燃は平成17年7月の再処理工場操業開始までに1600トンの使用済み核燃料を受け入れる計画。

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■トーメンは、青森県東通村の下北半島東端の岩屋地区で、国内最大の風力発電所「岩屋ウィンドファーム(仮称)」を6日、着工した。発電能力1300キロワットの風車25基を設置し、総出力は3万2500キロワットで、北海道苫前町で同社が運転中の発電所(2万キロワット)や電源開発などが同町で年内稼働させる発電所(3万600キロワット)を抜いて最大規模となる。
 一部に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を活用する。

 トーメンの計画では総事業費は約70億円。2001年11月に完成予定。電力は東北電力に17年間供給し、年間約8億円の売り上げを見込んでいる。

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■白神山地の世界遺産登録に伴い、1995年から生態調査を実施している東北森林管理局青森分局と森林総合研究所東北支所は6月30日、生態系モニタリング調査の報告会を開き、天然記念物のクマゲラについて「生息は危機的状況だ」とする中間報告を発表した。
 鳥獣類調査で白神周辺でクマゲラの繁殖が確認されたのは8カ所で、すべてが同時期の繁殖確認ではなく、単年のみの繁殖もあった。

 このことから、森林総研では「ブナの二次林に適切に手を入れるなどして、クマゲラがすみやすい環境をつくり、積極的な保護に取り組むことも必要だ」とした。
 白神山地では、入山規制の是非も問題になっているが、白神山地内の歩道で行なった調査では、「入山規制の是非につながるような確定的な結論は今のところ出ていない」とし、「今後も調査を続け、より的確な白神山地の保護管理に務めたい」と入山規制の是非論は先送りした。

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■原発用の国産燃料確保をうたい、1992年に青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地で操業開始した日本原燃のウラン濃縮工場に関して、日本原燃と電力各社は、濃縮に必要な新型の遠心分離機の開発と同工場への導入を白紙撤回する方針を決めた。

 ウラン濃縮とは、天然ウランには原子炉燃料として使うウラン235が約1%弱しか含まれていないため、遠心機などを使い、約5%にまで濃縮するというもので、日本原燃は、国内の原発が必要とするウラン燃料の少なくとも四分の一を賄うことを目標に工場建設を進めてきた。しかし、濃縮行程をこなす遠心機に故障が多く、能率が悪いことから濃縮行程の設営を停止。 遠心機の改良や新たな機械の開発を行なったが、新たな機械の開発は、技術的な問題で大幅に遅れ、現在は開発そのものが止まった状態だった。

 今回は、その開発を中止し、新型機に代わる全く新しい高度遠心機の開発に向かうというものだが、全く新しい高度遠心機の開発には6〜7年はかかる見通しで、ウラン濃縮の事業化は大幅に遅れることが決定的になった。

 1970年代から3000億円以上の予算を投じて進めてきたこともあり、「中止宣言」に至ると批判が集中する恐れもあることから、日本原燃では「今後の計画は未定だが、今年秋ごろまでには発表する」としている。しかし、世界的に濃縮ウランは供給過剰になっていることから、電力各社などからも国産不要論が出ているのも現実だ。

※原発関連記事「揺れる原発政策」

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■秋田県能代市で全国的にも先進例となる風力発電の事業化調査に乗り出し、1999年に風車設置のための地質調査、周辺環境への影響調査、送電線への連絡状況など具体的な調査のほか、採算性も検証していた東北電力は、1月17日、グループの東北発電工業、ユアテック、東北緑化環境保全の3社が出資する事業会社を通して、能代市で、風力発電事業に初めて参入すると発表した。
 計画によると、能代市の県有地で約3キロにおよぶ海岸線の敷地面積約6万平方メートルに、2000年10月から総工費33億円をかけて、東北最大級となる出力計1万4400キロワットの風力発電所を建設する。東北最大級の出力で、全国10電力会社の中でも初の試みとなる。

 2月下旬にも新会社を設立し、1基600キロワットの風車24基を建設、2001年12月からの運転開始を目指す。事業費の3分の1程度は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を見込む。

 風力で起こした電力を1キロワット時当たり11円50銭で東北電力に販売する。順調に行けば、今後は能代以外の他の事業候補地についても検討するという。
 東北電力は自然エネルギー利用推進の一環として、青森県に風車10基を備えた「竜飛ウインドパーク」(約2800キロワット)を建設して実証試験を重ねてきてきた。
 
 風力発電が開始されれば、新エネルギーの「環境に優しい風車」が能代市の海岸に立ち並ぶことになり、その姿は「厳しい気候をプラスに転化した見本」として、あるいは「代替発電事業化のシンボル」として、全国から注目を集め、熱い視線を浴びることは確実だ。

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■岩手県大迫町が、補助を受けて発注した展望台や入浴滞在施設建設事業の工事遅れを隠そうと、県と共謀して補助事業実績報告書を偽造していたことが発覚した。

 県と町は「展望台工事は平成9年度末に完了した」としていた。ところが実際の完成は今年6月で、県が「9年度末に工事完了を現地確認した」とする報告書も、実は県の検査担当者が「カラ出張」で作成し、町はこれを裏付けるための写真を施工業者に偽造させていた。
 また、入浴滞在施設建設事業では、共同浴場とコテージ2棟の複合で補助を受けたが、コテージが完成したのも今年6月だったのに、町が1998年度内の今年3月末に完成したとする虚偽の工事完了届を県に提出し、県の担当職員も現地で施設の未完成を確かめながら、町の虚偽を追認する完了確認書を作成した。

 問題の展望台工事は、町が1997年度事業で同町大迫の向山森林公園に約2000万円で設置した木製展望台の建設。県から730万円の補助を受けた。また、入浴滞在施設建設は、事業費約1億1100万円で、補助は国から3000万円、県から600万円。県の補助金は1998年4月に町に交付された。
 一連の工作は、町の土地利用台帳を改ざんしたとして公文書変造、同行使の罪で、11月25日に起訴された同町農林課長の指示で行なわれた。

 補助金を執行する際、全国的にもよくありそうな話だが、基本的に許されない行為。これに関して大迫町長は「工事遅れは今になって確認できた。現場の状況が分からずに工期の遅れや不正を見過ごしてしまった」と陳謝した。

その後
 大迫町は、不正受給の対象となった木製展望台と入浴滞在施設の建設に充てた補助金と地方債の計約1億800万円を国、県に自主返還する方針を固めた。返還総額のうち、国・県の補助金は、展望台建設の県補助金730万円、入浴滞在施設の国庫補助金3000万円、入浴滞在施設の県補助金600万円、合計4330万円。
 これに加え、展望台、入浴滞在施設の両事業の財源に充てた地方債のうち、町が独自に民間金融機関から調達した資金を除く総額6470万円も補助金返還に合わせて繰り上げ償還することにした。

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■全国19地裁、約700人が集団提訴している「トンネルじん肺訴訟」で、青森県の原告8人が1999年7月12日、仙台地裁の和解勧告を受け入れ、全国に先駆けて初めての和解が成立した。和解金額は1人当たり1600万円〜540万円。
 仙台地裁では、東北6県の元建設作業員ら35人が、トンネル工事現場で働いたことによる粉じんが原因で気管支炎を引き起こしたとして、鉄建公団とゼネコン27社を相手取り、1人当たり3300万円の損害賠償を求め、1997年5月に提訴。鉄建公団分について今年3月、青森・岩手両県の21人について同地裁が「早期解決を図るべきだ」と和解を勧告、公団側も今後の予防措置と原告への謝罪を約束していた。今回、和解した8人以外も、順次和解の見通し。

 1次提訴から2年余り。全面解決への道のりは、今回の和解で最初のトンネルを抜けた。

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【東北発】


■「宮城県女川、牡鹿両町にある東北電力の女川原発1、2号機の運転は不可避的に大事故につながる」として、住民が同電力を相手に原発の安全性に疑問符を呈し、女川原発の運転差し止めを求めた控訴審判決で仙台高裁は1999年3月31日、住民側の控訴を棄却した。
 1994年1月の1審判決後にあった95年1月の阪神大震災で争点の一つになった原発の耐震性については「各種計算式などの信頼性、断層、直下型地震の評価について問題点が指摘されているが、その信頼性をくつがえさない」とし、「女川原発に具体的な危険性はない」と判断した。原発で頻発するトラブルについては「トラブル対応について安全への視点に問題点を残しており、原発事故が極めて深刻な事態を招くことを知り、安全に徹した運転を心掛けるべきである」と指摘しつつも「抽象的、潜在的なレベルでの危険性を判断基準に用いることはできない。多々重要な教訓を含むものが少なくなくないが、総体として直ちに原発の運転の具体的な危険性に結び付かない」とした。
 また原発の必要性については「原発に代わる発電方法は見いだせない現状で、情勢は原発による発電の必要性を否定、あるいは著しく減少する方向へは働いていない」と表現。高レベル放射性廃棄物最終処分など核燃料サイクルの問題については「原発の必要性と将来の生活の在り方を見据えた社会的決断と選択にゆだねざるを得ない」と述べた。
 そうした判断の下「女川原発1、2号機の運転の具体的な危険性は認めがたい」と住民側の控訴を完全に棄却した。原告は上告する方針。

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【東北発】


■東北電力が青森県東通村に建設する東通原発1号機(沸騰水型軽水炉、出力110万キロワット)の起工式が1999年3月24日、東通村白糠の建設予定地で行なわれた。
 1960年代後半から計画されていた青森県東通村での原発建設の1号機は、敷地造成や専用港建設などの準備工事が1997年に始まり、昨年8月に原子炉設置許可を受けた。建築工事が完了するのは2004年頃の予定で2005年の運転開始を目指している。
 原発の新規着工は、1988年の北陸電力志賀原発1号機(石川県志賀町)以来10年ぶり。国内の商業炉として54基目の着工で、東北電力では女川原発1〜3号機に次いで4基目。
 東通原発は、東北電力と東京電力が2基ずつ建設する計画で、東通村議会は1965年に誘致を決議をしていた。残る3基について両電力は、従来の沸騰水型軽水炉から改良型沸騰水型軽水炉(出力138万5000キロワット)に変更することを決め、県と村に申し入れている。

 また、青森県大間町に大間原発(改良型沸騰水型軽水炉、出力138万3000キロワット)の建設を計画する電源開発が、隣接する村に地域振興への協力金を提示している問題で、佐井村は1999年3月24日、村、議会、漁協による三者協議会を開き、提示額20億円を受け入れる方針を決めた。風間浦村も既に20億円の受け入れを決めている。
 協力金は、大間原発計画では、国の電源開発調整審議会への上程(事業着手)前に、3町村と三町村の六漁協の同意が必要とする申し合わせ事項があるため、同意を得る手法として電源開発が1997年末、立地町より電源三法交付金が少なく、固定資産税が入らない風間浦、佐井町両村の地域振興、水産振興を支援するための基金造成用として拠出を申し出ていた。提示額は当初、各15億円だったが、両村の増額要請を受けて2回上積みされ各20億円となった。
 協力金を中心とする電源開発の地元協力策は、両村が建設計画に同意することが前提条件になっていたため、受諾により両村は計画に同意したことになった。そして、大間町に隣接する風間浦、佐井両村と電発との「共存共栄にかかわる協定書」の調印式が行なわれ「電発は両村の基金づくりのために各20億円を負担して水産、地域振興に協力する」などの協力措置が盛り込まれた協定が締結された。

 さらに、これに先がけて電気事業連合会の財団「むつ小川原地域・産業振興財団」は、青森県内の地域振興を名目にした助成金30億円の寄付を決めた。これは、同財団が電事連の寄付を財源にして、六ケ所村など電源3法交付金対象の15市町村を除く52市町村の事業に対して助成金交付する「原子燃料サイクル事業推進特別対策事業」(平成6年度に電気事業連合会の寄付25億円を基に設けられた。10年度までの総事業数は164件で事業総額は54億5000万円。1市町村当たり約5000万円助成)が平成10年度で終了したため。青森県が今後の継続を電事連に要求し、電事連がこれに応えるという形で決まった。平成11年度から5年間、核燃サイクル事業を円滑に推進するため寄付名目で青森県内の市町村にカネをばらまく。

 そうした外掘が埋められた後、青森県の木村守男知事は電源開発 が進めている大間原発の建設計画に同意することを決めた。同原発の建設計画は、首相の諮問機関である電源開発調整審議会で、国の電源開発基本計画に組み入れられ、事業着手となる。
 大間原発は、原子炉の全炉心でMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を使う世界初の「MOX燃料フル使用」の軽水炉になる。

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【東北発】


■仙台市は、夫や恋人など親しい男性からの暴力=ドメスティック・バイオレンス(DV)に苦しむ被害者の深刻な実態が明らかになったため、その支援に乗り出すことを決めた。

 現在、DV被害者救済に対する法律は整備されておらず、母子生活支援施設での一時保護も2週間と限られている等、行政支援には限界があるのが実情。このため、民間のシェルター活動を側面から支援することで、緊急を要するDV被害者対策の前進を図ることにした。まずは被害者支援の活動をする市民グループに対し、運営費などを補助する考えで、1999年度予算案に290万円を盛り込んだ。補助対象は、DV被害者を一時的に保護する活動や、カウンセリング活動、社会復帰のための支援活動などを自主財源を持って行なっている市民グループ。補助額は、活動実績や支援している人数、期間などに応じて決める。しかし、活動の特殊性から、その存在を公にしないグループが多く、この補助制度がどこまで浸透するかは今後の課題だ。

 仙台市は今後、市民グループの聞き取り調査を通じ実態把握に努めるほか、DV被害者の相談窓口を開設するなど、民間の取り組みを支える環境整備を進める。また、緊急避難してきた母子が男性に居場所を知られることなく暮らしていくため、住民票の変更なしで居住や通学ができるような制度改革などを検討していくことにしている。

 DV被害者の救援に取り組んでいる民間団体に、行政が助成するのは全国的にも珍しいが、今後、こうした取り組みが各地方の自治体に広がっていくことが期待される。

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