◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


佐賀で有明海海苔の入札が始まるが、赤腐れ病被害で出品量激減

 国営諫早湾干拓事業の弊害が指摘されているなか、有明海海苔の初入札が11月20日、沿岸のトップをきって佐賀県有明海漁連で開かれた。出品枚数はこの20年間で最低の約1億1900万枚で、昨年の約45%に落ち込んだ。

 「赤腐れ病」が福岡県境沖を中心に広がり、色やつやが悪いものもあり、品質面でも例年に比べると落ちる大変厳しい状況となった。
 まだ漁期は始まったばかりで、海の状況が良くなることを漁業者は祈り続けている。

 有明海海苔の不作では、国営諫早湾干拓事業との関連を指摘する漁業者らが工事差し止めなどを求めて訴訟を起こしているが、解決のめどはたっていない。

BACK


◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


鹿児島県川内市、使用済み核燃税条例案を市議会に提出。

 鹿児島県川内市は6月16日、九州電力川内原発に保管されている使用済み核燃料に課税する使用済み核燃税条例案を市議会に提出した。

 7月の市議会で可決される見通しで、2004年度から実施の意向だ。

 既に九電の同意を得ており、税額は燃料集合体一体当たり23万円(1キロ当たり約500円)換算で、2004年度からの5年間に税収約12億6000万円を見込んでいる。
 法定外普通税とし、原発の防災対策や原発推進広報やイメージアップ費用などに充てる。

 使用済み核燃税は、新潟県柏崎市に次いで全国2例目になるが、今年3月に条例を可決した柏崎市は東電の合意を得ておらず、10月からの実施を目指して現在、東電と協議中だ。

BACK


◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


長崎県、ホルマリン使用のトラフグ廃棄による業者救済での公費支援を断念。

 寄生虫駆除のため、長崎県内のトラフグ養殖業者の6割が禁止されているホルマリンを使っていた問題で、長崎県は、出荷停止中のトラフグ約160万匹の廃棄を条件に、公費による業者支援を検討していたが、「禁止薬物を使用した業者へ税金を投入することに県民の理解が得られない」と判断し、公費支援しないことを5月28日、決めた。

 長崎県は、問題が発覚した当初、「損失を避けるため出荷に踏み切る業者が出れば、県産水産物のイメージダウンは避けられない」として廃棄に伴なう業者の損失約10億円のうち、県と市町などがそれぞれ三分の一ずつ負担する公費支援を検討していた。しかし、全国のフグ養殖生産高の4割を占める産地とはいえ、人体への影響の恐れがあるホルマリンを、禁止されているにもかかわらず使用した違反業者を救済するとなると「住民訴訟で訴えられる可能性は大」などとして、「支援は不可能」と判断した。

 また、業者の一部にホルマリン使用のトラフグを出荷しようとする動きがあることから、「全国の消費者に不信感を抱かれ、長崎県の養殖漁業全体がダメージを受ける」として、出荷魚に薬物使用歴や残留調査結果の表示を徹底させるなど、混乱を回避するために流通面での対策を検討することも決めた。

 出荷停止中のフグについてのホルマリンの残留調査結果は、6月中旬にも出る見通しだが、出荷に踏み切る業者が出る可能性が高いといわれている。

BACK


◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


熊本県・川辺川ダム建設問題にからむ利水訴訟で、「ダムの水はいらない」とする農家が控訴審で逆転勝訴。

 根強い地元住民の反対運動が続く熊本県球磨郡に計画されている最大級の川辺川ダム建設問題に関連して、農家760人が、農相を相手取って、「ダムの水はいらない」と利水事業中止を求めた裁判で、福岡高裁は2003年5月16日、原告の訴えを認める判決を言い渡した。

 利水事業は、建設が計画されている川辺川ダムの水を利用する国営川辺川土地改良事業で、1984(昭和59)年、同ダムから人吉市と球磨郡5町村の農地に農業用水を引く計画のもとに立ち上がった。その後、減反拡大などの農業政策によって農業を取り巻く状況が変化したことから、農水省が1994年に受益面積を縮小するなどの変更計画を決定した。

 農家はこれに対して、変更計画そのものの手続きに問題があると国に異議申し 立てをしたが、96年に農相および農水省は異議申し立てを棄却。そこで農家は同年、異議申し立て棄却処分を取り消すよう求め、裁判所に提訴した。
 熊本地裁判決は原告の訴えを退けたが、今回の福岡高裁での控訴審では、原告の訴えを認め、棄却処分の取り消しを命じた。

 最大の争点は、変更計画について土地改良法で定める対象農家の「3分の2以上の同意」があるかどうかだった。
 農水省は、「用排水事業に関する同意率は少なくとも69・9%で、手続きにも問題はない」としていたが、異議申し立てした農家が聞き取り調査を実施した結果、同意署名簿の原本に一部書き換えがあったことなども判明、「同意率は30・6%にとどまる」「国は同意取得手続きの際、水の負担金は必要ないとうその説明をした」などと指摘していた。

 これについて福岡高裁は、土地改良法で計画変更に必要とされる、約4000人の事業対象農家の3分の2以上の同意が得られていないと判断。農業用用排水事業と区画整理事業について、「同意書に本人が署名し、押印したとは認めがたいものが含まれる」と指摘したうえで「こうした同意書を除いて計算すると、同意率は用排水で65・66%、区画整理で64・82%、農地造成で68・84%になる」と認定し、「必要な同意が得られておらず農相の決定は違法」との判決を下した。

 農水省とすれば最高裁への上告理由が見い出せないため、上告を断念。川辺川土地改良事業を抜本的に見直さざるを得ない状況となった。

 一方、ダム計画本体を担当する国土交通省は、「ダム自体の是非と今回の判決は別」との立場を取っているが、今回のダム建設反対農家の逆転勝訴で、事実上、利水というダム建設の目的のひとつが失われたことになるため、今後の川辺川ダム建設計画そのものへの影響も避けられないものとなった。
 反対派住民は、「これを弾みにダム建設計画の白紙撤廃まで闘いぬく」と、絶対阻止の決意を新たにしている。

●事業を事実上中止することを決めた農水省は、九州農政局を通じて利水事業工事契約の解除を関係業者に通知した。利水事業の投入予算は1984年度以降で約165億円。全体での事業費ベースの進ちょく率は44%。2003年度の川辺川農業水利工事の事業費予算は約20億円にのぼるが入札発注は見合わせる。業者に支払われている工事代金については、工事の進ちょく状況に応じた工事代金の一部返還を請求する方針だ。

●6月16日、九州農政局、熊本県、利水訴訟原告団、関係農家らによる「代表者会議」の初会合が行なわれ、新利水計画の策定期間を「1年程度」とすることが申し合わされた。
 また、事業対象地で意見交換会を実施すると共に事業対象農家約4400戸の意向集約も個別に実施することなども合意された。
 これにより、国土交通省が目指す年度内着工は見送りが確実になり、利水事業を再開するとしても、2005年度以降となる見通しとなった。

BACK


◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


山口・上関原発、炉心用地の立木伐採禁止判決で建設計画は事実上凍結状態。

 中国電力が山口県上関町で建設を計画している上関原発の炉心用地などとして取得した地区共有地をめぐり、反対派住民4人が入会権確認などを求めた訴訟の判決が2003年3月28日、山口地裁岩国支部であり、地裁は住民の入会権を認め、中国電力による立木伐採や現状変更などを禁じる判決を言い渡した。

 土地は1号機炉心の予定地を含み、1998年12月に四代地区の役員会が中電の社有地と等価交換する契約を結んだもので、反対派住民が「処分には地区住民全員の同意が必要で契約は無効」として99年2月、提訴した。
 裁判では、原告側の反対派住民が「土地は村落共同体構成員の総有に属し、住民全員の承諾のない土地譲渡契約は無効」と入会権と所有権移転登記の抹消を主張するのに対し、被告側は上関村議会当時に議決した区会条例などを基に「四代区の財産であり、民有地ではない」と反論していた。

 山口地裁は「土地所有権が四代区に帰属したことはない」 とした上で、「土地の共同所有関係は、いまだ入会権の性格を失っていない」と結論付け、立木伐採や現状変更などを禁じた。反対派住民側が併せて請求した所有権移転登記の抹消は退けた。

 中国電力は原子炉2基の上関原発建設を計画。1号機は2012年度、2号機は15年度の営業開始を目指しているが、これにより、建設の前提となる詳細調査などには入れないため、上関原発建設計画は事実中凍結状態となった。

 反対派住民は「推進側が控訴しても、逆転は難しいはず」「推進派の反応を見ながら気を引き締めて反原発の勢いを強めたい」としている。一方、推進派は「予想以上に厳しい判決」「これでは立木の伐採も造成もできず、ボーリングなどの詳細調査にかかれない」「合併しないと決めた町が生きていくには原子力しか ないのに」と落胆している。

 上関原発建設をめぐってはこれ以外にも、推進派と反対派が、予定地内にある四代八幡宮所有の約10ヘクタールの土地をめぐって係争中で、漁業補償に関する審理も山口地裁岩国支部で続いている。

特報バックナンバー環境アセス法と原発と「スナメリの住む海」問い直される瀬戸内・周防灘、上関原発建設計画。

BACK


◆列島縦断ニュースハイライト◆
【中国・四国・九州発】


高知県、4月から森林保全を目的に県民から「森林環境税500円」を県民税として上乗せ徴収。

 高知県は2003年4月から、森林保全を目的に県民から「森林環境税」を徴収する。県民税に年間一律500円を上乗せして徴収し、県民27万人、法人1万5000社から計約1億4000万円の税収を見込む。

 地方分権一括法施行で自治体の法定外目的税創設が認められたのを機に、「森林環境税」として独自課税することを検討していたが、県民税への上乗せ方式を採用。実質的に目的税と同じ性格を持たせ、上乗せで徴収する部分を「森林環境税」と名付けた。 これを森林環境保全基金として積み立て、森林保全を目的とした事業に使途を限定。荒廃した人工林を県が直接間伐し、より保水力の高い自然林化を促す事業などに充てたり、県民に間伐を体験してもらうなど森林保全の県民活動などに使う。

 高知県は太平洋に面しているため一般的に「海」のイメージが強いが、県土に占める森林面積が84%と全国一のいわば「山の里」。森林のうち人工林面積は約38万ヘクタールで全体の66%あり、林業従事者の高齢化などで間伐ができていない森林は10万ヘクタールを超える。
 日本全体を見ても、森林は過去の農林水産省の施策によるスギやヒノキの人工林化により、山の荒廃がすすんだ。近年では、間伐や枝の伐採など必要な手入れがされず放置状態で、森林の保水能力も下がるなど、荒廃は加速度的になっている。このため、高知県は2002年度予算で森林整備に約20億円を使うなどして、間伐推進などに力を入れてきた。しかし、財政難の中での予算組みも年々厳しくなっていたのが実情だ。そうした状況下での「森林環境税」の導入である。
 ちなみに農水省の調査などによると、全国で少なくとも26道県が、間伐や水源林整備、森林保全の意識啓発や森林体験の森づくりなどの目的で同じような課税を検討している模様だ。

 今後、手入れが行き届いていない山林を保全し、水源を育てることなどが、どこまで可能なのかは未知数だが、橋本・高知県知事は「今後は四国の他の3県にも創設を働きかけていきたい」と、森林税に期待を寄せている。

BACK