【環境&開発関係】
新築住宅には、やはり身体に悪影響をおよぼす「揮発性有機物質が大氾濫」の実態が、厚生省調査で判明。

環境影響評価(アセスメント)法
諌早湾干拓


新築住宅には、やはり身体に悪影響をおよぼす「揮発性有機物質が大氾濫」の実態が、厚生省調査で判明。

 住宅の建材などから発生する化学物質が引き起こす頭痛やめまい、吐き気などの症状「シックハウス症候群」が問題視されている中、厚生省は、初めて実施した居住環境中にある揮発性有機化合物の実態調査の結果を99年12月14日に公表した。
 これは1997年度と1998年度の2年間で実施したもので、主に調査では、「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」との関連が指摘されている化学物質44種類についてマンションを含む全国の住宅合計385戸を対象に室内外で測定、健康に関するアンケートも実施した。

 室内濃度の最大値が高かったのは、接着剤などに含まれ中枢神経系に影響のあるトルエン、家庭用防虫剤に含まれ鼻の粘膜組織変化を引き起こすパラジクロロベンゼン、塗料などに含まれ神経作用のあるキシレン、溶剤に含まれ肝臓障害などを起こすクロロホルムなどで、クロロホルム、トルエン、キシレンは、WHO(世界保健機関)のガイドライン値を上回って検出された。特にクロロホルムは1997年度の調査で28%も超過、中にはガイドライン値の約120倍が検出された住宅もあった。
 厚生省が耐容平均気中濃度を定めているパラジクロロベンゼンは両年度とも5%前後上回る事例があった。
 また、築後3カ月までの新築住宅と中古住宅では、トルエンの室内濃度平均値が6倍を上回る例があるなど、一部の物質で新築住宅が高濃度の傾向にある実態が浮き彫りになった。

 全般的に室外に比べ室内濃度が高く、健康アンケートでは合計28人が目やのどの痛み、頭痛などを訴えていた。

 現在、厚生省が室内濃度指針値を示しているのは接着剤に含まれるホルムアルデヒドだけだが、多くの物質で 高濃度が検出された実態を重視した同省は、WHOガイドライン値が決まっている物質を中心に少なくとも9種類についてリスク評価を行ない、2000年春にも室内濃度指針値を設定して建築業界に対し、化学物質氾濫抑止の取り組みを促す方針だ。

 「シックハウス症候群」は、和製英語として日本で名付けられたが、これは、1980年代に欧米で問題化した「シックビル症候群」のような症状が、日本では一般住宅でもみられることから、称されるようになった。現在は特に、合板の接着剤に使用するホルムアルデヒドによる健康被害が問題になっており、壁紙の接着剤やフローリング床のワックス、防腐・防虫剤などに含まれる揮発性の高い有機化合物が主な原因とされている。

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環境影響評価(アセスメント)法

 大規模開発などが自然環境に与える影響を事前にチェックする 「環境影響評価(アセスメント)法」が99年6月12日施行された。

 「環境影響評価(アセスメント)」とは、事業者が開発行為を行なう際、環境にどのような影響を与えるかを調査・予測・評価し、その結果を踏まえて環境保全措置を検討するなど、大規模開発事業を環境保全の観点でより望ましくしていく仕組み。
 しかし、アセス実施の基準はあくまでも大規模事業を対象としたもので、埋め立て事業だと、アセス法による国の基準では40ヘクタール未満は対象外で、廃棄物最終処分場の場合は25ヘクタール未満は対象外になるなど、目の粗さが指摘されている。
 このため、1997年6月の環境影響評価法成立を受け、33都道府県と11政令指定都市では「環境影響評価条例」などを制定し、地域独自の基準も盛り込んで、国の法律より一歩進んだ取り組みをする地域も出ている。しかし、もともとアセスを行なう事業には公共事業が多く、行政が実施する事業を行政自らがアセス(評価)するという問題もあるため、このアセス法が、事業実施を前提にしたアワス(合わす)メントになる可能性も高い。

 このことから今後は、チェック機能を持った第三者の審査会を設けるなど、より繊細な地方自治体の対応が必要になっている。

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揺れる諌早湾干拓。

 農水省は、長崎県の諫早湾国営干拓事業が順調に進んでいないことから、2006年度まで完成予定を延長すると共に、批判をかわすために2001年度に「時のアセスメント」(公共事業の再評価)を実施する方針を固めている。本来は、計画の中止や縮小も視野に入れて見直す時のアセス制度だが、農水省は「大幅な変更はあり得ない」との姿勢を崩していない。
 現地では、排水門が閉め切られてからも、生態系や漁業への影響などを懸念する声が高まっており、農水省に対して、「排水門を再び開けろ」という国民の要望が強まるのは必至の情勢だ。

 300種以上の生き物が生息し、渡り鳥が中継地としてきた国内最大級の長崎県・諫早湾奥部の干潟は、国営干拓事業の潮受け堤防で閉め切られて以来、乾燥が進み、生態系は一変した。そして、閉め切りでできた調整池は水質汚濁という新たな難題を抱えはじめた。調整池の塩分指標となる塩素イオン濃度は、700ppm台と閉め切り前の20分の1になり、巻き貝類、ホヤ、ゴカイなど海水性の底生生物はほとんど死滅。ゴカイなどを目当てに集まっていた渡り鳥は激減し、日本野鳥の会長崎県支部の調査では、18種7500羽いたものが、今となっては3種13羽しか確認できていないという状態だ。ムツゴロウは辛うじて調整池の水際で生き延びているが、調整池の水質汚濁度の目安となる化学的酸素要求量(COD)は、目標値の2倍程度で推移。県が策定した水質保全計画が実効性を上げるのはまだ10年以上も先のことだ。

 干拓は、大規模農地の造成と、高潮や洪水対策などの防災上の目的で、諫早湾の約3500ヘクタールを堤防で仕切り、内部に約1500ヘクタールの農地と約1700ヘクタールの調整池を造成するというもの。総事業費は当初の見込みより2倍に膨れ、2370億円になっている。すでに1986年の着工から1998年度までに1875億円を投入。2000年度中に完成する予定だったが、干拓地域の地盤が軟弱で、地盤改良や干拓地域内の道路整備に時間がかかるため、同省ではさらに約120億円を追加し、工期も2006年まで延長することにした。見直しの声に対しては、国と県が「防災効果」や「農地造成の必要性」を主張する姿勢を続けている。

諌早湾の干拓事業計画とは。
 
この計画が浮上したのは1952年。当時、長崎県と国は「長崎県南部地域総合開発計画」を打ち出し、諌早湾に干拓農地を造成しようと試みた。これは、戦後間もない復興型農政の初歩的な計画で「農地を拡大するには干拓」という単純な発想から出現したものだった。

 しかし、漁業を柱にする諌早漁民の毅然とした反対の意思表示をはじめ無謀な農業政策への批判の前に、当時はあえなく頓挫。だが、一度計画したものはどんなに時代状況が変化しても「申し送り計画」で残り続けるのが官僚の世界での計画という代物。公共事業は一度動き出すと、止めることが出来ない仕組みになっている。

 挫折したかにみえた干拓計画は、1982年に「諌早湾防災総合干拓計画」と名前を変えて再浮上。どうしても予算を計上し続けて自分たちの領分を確保したいという既得権固執の虫が目を覚ます。そして、「漁業権放棄の保証金(1所帯約1200万円)を積み上げて、食いつかせて従わせる」という手法で魚連に「干拓を認める」という回答を強いる。このあたりから干拓計画が息を吹き返す。

 そして15年、計画から45年の今、農協も歩調を合わせて「水害対策にも絶対に干拓は必要」との主張を開始し、「生態系のことやムツゴロウのことよりも、人間優先、農業者利益の方が大切」「これから地球規模での食糧不足が来る、それに備えるためにも農地を確保する干拓は必要」と、干拓推進を唱え続けている。

 しかし現実には、農地があっても農業者はどんどん減っていくのが、日本の農業の姿。まして耕作放棄地が増加の一途を辿っているこの時代、高額な干拓農地、しかも農地として安定させるまで相当の年月が必要になる極めて難しい農地を購入してまで農業をする人はいない。

 そうした中で、日本の農業政策として、税金を湯水のように投入しながら生態系を壊すことを、何の臆面もなくやっているのが、この諌早湾干拓の姿である。

 実際、造成に巨額な費用を費やした結果、農家への干拓地の分譲予定価格は10アール当たり120万円と高額だったこともあって、95年に国が周辺農家にアンケート調査したところ、入植希望農家は約70戸で、購入希望総面積も、干拓地の約3分の1の550ヘクタールにしか達しなかった。このため、県では一部を負担する形で10アール70万円台にまで値下げ。97年から県が農家・農業生産法人を対象に実施した面接調査では、151戸(農業法人を含む)が購入に意欲を示し、希望総面積は約1900ヘクタールと、干拓地面積を約500ヘクタール上回ったが、意思が鮮明になっていない農家が殆どなのが実態。

「時のアセス」
 長期間未着工だったり、工事が遅れている事業などの計画を費用や効果などの観点から見直す方式で、農水省では、1998年に導入した。同省構造改善局では、アセスは2001年度中に着手し、半年ほどの調査、検討を経て2002年8月までに結果をまとめる予定にしている。実際には、九州農政局長の諮問機関として学識者などによる第三者委員会を設け、漁業への影響も含めた水質、防災効果、営農需要調査などの項目に従って評価を行なう。

 農水省では、1998年度に418の直轄事業を再評価した。その結果、21事業が中止、19事業が休止、36事業が縮小された。

 国営干拓事業は、羊角湾(熊本)や有明海沿岸(佐賀)は合わせて200億円以上の事業費を投入した末、1997年12月に廃止が決定。中海(鳥取、島根)は1988年に凍結された。木曽岬(愛知、三重)は、ほぼ工事は終了したものの、農地として整備するにはさらに費用がかさむことから、農地以外の利用が協議されている。このため、現在、事業を継続しているのは諫早湾(長崎)だけ。

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