橋梁工事で大手各社の馴れ合い談合疑惑濃厚、公取委が40社に立ち入り

 公正取引委員会は2004年10月5日、鋼鉄を使用した橋梁(きょうりょう)工事の受注で、大手各社が大がかりな馴れ合い談合を繰り返していた疑いがあるとして、メーカー約40社の本社や各社が加盟する業界団体「日本橋梁建設協会」を、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査を開始した。

 国内の鋼橋の総発注量は鋼鉄重量に換算して、99年度に約85万トンあったものが03年度で約49万トンに激減しているものの、日本の重工業界を形成する大企業が軒並み参入する今も変らぬ巨大市場になっている。橋梁工事は、鉄道などを除いてほぼ100%がほんとんど競争原理が働かない公共事業で、その額は年間約4000億円にものぼる。

 立ち入りを受けたのは、新日鉄、三菱重工業、川崎重工業、三井造船、石川島播磨重工業、日立造船、川崎重工業、横河ブリッジなどのほか業界団体「日本橋梁建設協会」で、各メーカーおよび橋建協は、国や県、日本道路公団などの発注する鋼橋工事の入札の際、事前に落札会社と落札額を決めて受注調整し、各社の馴れ合い談合により、入札額を高値で推移させた疑いが持たれている。

 日本橋梁建設協会は1964年に設立された国土交通省所管の社団法人で、03年度末現在で71社が加盟している。
 この談合では、橋建協に加盟したメーカーや橋梁業界の企業で構成された取り仕切グループを中心に談合が進められていたとみられる。

 公取委は談合の実態解明を進めるが、公取委の審決が確定すると、大企業にはその取引で得た売上高の6%、中小企業には3%の課徴金が課される。

 橋梁建設をめぐっては2003年12月、国や自治体、日本道路公団の発注した「プレストレストコンクリート(鋼材の収縮力を利用してコンクリートを強化したもの)」を使った工事で談合を繰り返したとして、公取委が独禁法違反の疑いで、三井住友建設など約20社を立ち入り検査している。(04・10・6)

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三菱自動車、大型車の次は軽乗用車でも脱輪、リコール遅れ。

 三菱自動車は、軽乗用車で走行中に後輪が外れる事故が続いたとして、4月9日、国土交通省にリコール(無償回収・修理)を届け出た。
 リコール対象は「ミニカ」「トッポBJ」「eK―SPORT」「eK―CLASSY」の四輪駆動車で計8万1531台。後部の駆動軸のネジ部分が長すぎるうえ、ナットの締め付け力が弱いことから、ナットが緩んで外れ、後輪が駆動軸から脱落する恐れがあるという。

 これまでに3件続いて発生し、最初の後輪脱落は2003年9月、長野県穂高町で納車の翌日に45キロ走行しただけで起きた。2件目は、同年12月、群馬県赤城村で県道を走行中に異音が発生して左後輪が外れた。3件目は2004年3月、山形県米沢市の国道で異音が発生して左後輪が外れた。いずれも、運転者や歩行者にけがなどはなかったという。

 三菱が再現実験などにより原因を調べた結果、3件の事故とも同じ工場で同じ日に組み立てられた車だった。また、ナットを締め付ける力が規定の半分しかなく、ネジの長さも規定より0・5ミリほど長いことが判明した。
 同社は原因を2月に特定していたが、国交省にリコールを申し出たのは3月末になってからだった。
(04・3・10)

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タイヤ脱落で「多発性なし」と国に虚偽報告した三菱自工、「欠陥は早い時期に分かっていた」とリコール表明。

 三菱自動車工業が製造したトレーラーなど大型車でタイヤの脱落が相次いでいる問題で、三菱ふそうトラック・バス(三菱自工から分社)は、3月11日、「問題となっているハブ部品には、きちんと整備したものでも亀裂が入る事例があることが、2002年5月の段階で分かっていた」ことを明らかにし、国土交通省にリコール(無料回収・修理)を届け出ることを表明した。

 2002年1月に横浜市で発生したトレーラーのタイヤ脱落では、直撃を受けて母子3人が死傷。この事故が起こる以前にも、広島県で1999年6月に高速バスのタイヤ脱落が起き、調査を求めた当時の運輸省に対して三菱自工は、その時点で、92年からトラックを中心に大型車ではタイヤと車軸をつなぐ「ハブ」の破断による同様の脱落が約50件発生していたにもかかわらず「同種の苦情はなく、多発性はない」と報告していた。

 神奈川県警などは、幹部による対策会議で報告内容を決定した三菱自工に対して、多発性や重大事故につながる危険を認識していた可能性があるとみて関係者から事情を聴いていたが、事故原因を「ナットの締め付けが不均等だったり、締め付け過ぎたりしたことでボルトが折れ、タイヤが脱落する」として、「整備の問題」と説明し続けていた。

 自主対策として同型ハブの無償交換を行ない、これまでに対象車計約7万6000台の約98%の交換を終えたが、設計上の欠陥があることを国交省に報告したのは2004年3月に入ってからだった。
 三菱ふそうトラック・バスのヴィルフリート・ポート社長は、「複雑で技術的な要因を調べ、整備のみならず、設計要因でも起こると分かった。今後は必要なすべての措置を講じたい」と述べ、リコールを表明した。最終的にリコールの対象になる車は同型ハブを使っていた大型車計約3万7000台を加え、計約11万3000台となる。

 横浜市で通行人の母子3人が死傷した事故については、「遺族に哀悼の意を示します」と謝罪したが、設計上の欠陥が新たに判明した点についての謝罪はなかった。
 国交省は「設計、製造上の問題は否定できず、リコールすべきものなのに届け出が遅れたことは遺憾だ」として、設計上の欠陥について同社の対応を詳しく調査する。

 横浜市で発生したトレーラーのタイヤ脱落では、夫と子供ら遺族3人が、トレーラーの運転手に約7350万円の損害賠償を求め、運転手側が約7000万円を支払うことで横浜地裁で和解。運行上の過失を否定する運転手側は、「自賠責法の規定や被害者保護の観点から和解に応じたもので、三菱自工側の過失が将来確定した場合、支払った和解金の補償を同社に請求する」との考えを示している。 (04・3・11)

●リコール対象となる約11万3000台のうち約2万7000台については、欠陥のない部品を用意できないことが判明した。このため、新型が開発されるまでは、 欠陥部品を新品に換えて一時的に「つなぎ補修」で対応する。国交省は、「欠陥品を欠陥品で補うことになるが、使用中の大型車の古い部品をそのままにしておくことはできないので、新型開発までのやむを得ない暫定措置として認める」としている。

●国土交通省が国内の大型車メーカー4社に対して行なった調査で、過去5年間に発生したタイヤ脱落事故のうち7割が三菱の車に集中していたことが分かった。調査結果によると、99年1月〜今年2月の5年間に発生した脱落事故・不具合98件のうち、三菱が72件、日野13件、いすゞ8件、日産5件。脱落につながった破損部位別では、三菱は40件がハブに集中した。他3社の損傷はホイールボルトやベアリングで、ハブ破損はなかった。

●三菱自動車のブランドイメージが急落したのは、長年に渡ってリコール隠しを続けていたことが発覚した2000年7月からのことだった。
 「リコール隠し」や「クレーム報告書」については「運輸省の定期検査の際に提出するものとそうでないものを二重に電算処理している」との匿名の情報が運輸省(当時)に寄せられたのが発端だった。そして、特別監査で、リコールや改善対策などに該当するものが「ランサー」「ギャラン」「パジェロ」「RVR」など14車種70万台近くにのぼることが分かり、三菱自動車工業のリコール隠し体質が明らかになっていった。
 リコール隠しによる信頼の失墜は大きく、経営が一気に傾き、スウェーデンのボルボも出資から撤退し、同社は2000年10月に独ダイムラークライスラー傘下に入っていった。
 経営分離を進めるため、乗用車とトラック・バスを社内分社した後、2003年に「三菱ふそう」としてトラック・バス部門が完全分社したが、教訓は生かされることがなかった。イメージダウンを懸念するあまりに対応が後手後手にまわり、結果としてさらなるイメージダウンを引き起こすこととなった。

●こうした中、経営再建中でもある三菱自動車は、主要株主を引き受け手とする増資の予定額上積みするなどして、再建計画を抜本的に見直しているが、グループ内で多額の新規資金を確保して生き残り策を強化しても、企業の社会的責任という基本姿勢に気付かない限り、一般社会からの支持を得ることは難しそうだ。

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社会悪復活へ舵をきる日本経団連、政策をカネで買う献金再開のための政党政策評価を発表。

 2003年5月の会長・副会長会議で政治献金を2004年から再開することを決めていた日本経団連が、献金再開のための政党政策評価を1月28日に発表した。
 当初は共産党と除く与野党すべてを対象にするかに見えたが、公明党は政治献金受け入れの意思がなく、同様の社民党は存在価値までもが薄れてきているため評価を取りやめ、結局は、自民、民主両党のみが対象となった。

 ゼネコン汚職などをきっかけに1993年に襟を正し、企業社会の見本となるように献金あっせんを廃止した経団連が、11年ぶりに政策をカネで買う献金関与を再開するのだが、今回の政党政策評価が「悪しき慣習再開」の記念すべき第一歩となった。

 政党の政策評価は、税制改正、社会保障改革、規制・行政改革など10の政策分野について、「日本経団連の考え方と政権公約の合致度」「法案や党内の議論など取り組み状況」「法律や予算などの実績」の3点を、A〜Eまで5段階評価する、というものだ。
 今回は、「実績」については見送り、政策事項の合致度と取組状況で評価した。その結果、自民党が、合致度および取り組み共に民主党よりも評価が勝った。

 日本経団連は、今回の政策評価を基に、企業の純資産額などに基づいた日本経団連の最低50万円の年会費を目安に、02年で約19億円だった会員企業の献金額を総額約40億円を目標に掲げて献金実施を各企業に促す。

 この旗ふり役は、2002年5月の就任以来、「カネを出して口もだす」と折にふれて発言している奥田碩会長(トヨタ自動車会長)で、政治献金の復活を決めた背景には、一向に発揮できない政治に対する自らの影響力への焦りもあるようで、献金再開で影響力確保を図りたいようだ。

 勿論、献金再開イコール財界ぐるみで「あっせん利得」をすすめるというもので、企業イメージがいのちのこれからの経済社会において再開に慎重な企業も多いのが実情だ。

 奥田会長は、再開の理由を「民間部門のリーダーとして経済、政治の活性化に積極的に貢献するため」と述べ、「最終的には企業の自主判断にまかせる。あっせんの復活ではない」と強調するものの、いつの日か「時代錯誤の方針で社会悪復活に大きく舵をきった財界人」として歴史に不名誉な名を残すことになりそうだ。

 日本経団連は、政策評価を年2回程度実施する予定で、次回の政策評価では、今回は見送った実績についても評価する。 (04・1・29)

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日本の若者に広がる麻薬MDMA、高校生が学校内で密売。

 服用すると気分や性欲が高揚することから「エクスタシー」「セックスドラッグ」などと呼ばれ、1980年代から欧州を中心に広まった錠剤型麻薬MDMAが、日本の若者に広がっている。

 これは、覚せい剤と似た化学構造を有する麻薬で、けしやコカなどの植物からではなく、他の科学薬品から合成された化学名:3・4メチレンジオキシメタンフェタミンといわれる代物だ。この麻薬には、視覚、聴覚を変化させる作用があり、幸福な気分になったり、他人に対する親近感が増したりするといわれている。しかし、その反面、不安や不眠などに悩まされ、強い精神的依存症が発生し、乱用を続けると錯乱状態に陥ることがあるほか、腎・肝障害や記憶障害などの症状が現れる。

 その弊害を知らずに一時しのぎの覚醒や幻覚を求める若者が、1錠4000円程度で手に入り、注射器を使う覚醒剤より手軽に服用できることもあって、気軽に求めるようになった。

 そんな中、警視庁生活安全総務課と赤坂署は1月27日までに、都立高校の校舎内で女子生徒に錠剤型麻薬MDMAを売ったとして男子生徒と無職の少年の2人を麻薬取締法違反容疑で逮捕した。

 調べに対して2人は、「MDMAを服用して頭を激しく揺らし踊りまくるクラブでの揺頭パーティーに出入りしていた」「テレビで放映された麻薬関係の番組で興味を持って、MDMAを1錠1000円〜5000円で販売し始めた」と供述している。

 これまで年間約15万錠が成田空港で押収されていたが、最近では、成田空港で4カ月で約26万錠が押収されるなど、国内への進入ぶりも顕著で、主な供給源のオランダやフランスなどの密売グループが、摘発で減少した供給を補うため、報酬目当ての日本人を運び屋に仕立て、大量に密輸させているとみられている。
 今後、警視庁では、若者が出入りするクラブなどを徹底調査して、密売ルートの解明と売人の逮捕などに力を注ぐとしている
。 (04・1・27)

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全国大学の6割が病院に大学病院や医学部の医師「名義貸し」。

 大学病院や医学部の医師による「名義貸し」問題で全国調査を行なった文部科学省は、2002年4月以降、医学部を持つ全国の大学79校のうち51校、延べ1161人の医師が名義貸しを行なっていた、との調査結果を1月22日に発表した。
 医師が病院に名前だけを貸し、診察をしないで給与を受け取るなどの名義貸しの問題が発覚したのは2003年9月頃からで、北海道大、旭川医大、札幌医大、東北大で次々に不正が明らかになっていた。それを受けて行なった文科省の調査結果で、不正な慣習が広く全国に渡って行なわれていたことが浮き彫りになった。しかし、名義を借りた病院や名義貸しに対する報酬については調査しておらず、曖昧な調査結果となった。

 名義貸しをしていた医師は、延べ人数で国立854人、公立108人、私立199人。人数が50人以上と多かったのは、国立では北大の177を最高に、岡山大71、神戸大65、広島大61、愛媛大56、名古屋大55、千葉大52人。公立では名古屋市立大が53、私立では藤田保健衛生大が60人。内訳は、大学院生が約83%の964人。教授、助教授、講師、助手などの教職員が55人、研修医が3人、研究生などその他が139人だった

 こうした背景には、地方病院の医師確保についての政策がないままの状態で、もろにしわ寄せが来ている地方病院の医師不足という現実が重く存在している。厚労省が実施した2002年度の病院立ち入り検査では、全国の4分の1の病院で医師数が基準に達しておらず、その状況は特に北海道、東北地方に片寄っている。医師数が不足すると診療報酬などが減額されるため、経営難の地方病院は「名義借りの仕組み」を利用して医師数の帳尻を合わす手段にでるのである。 (04・1・23)

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臓器移植を橋渡しする移植ネット、コンピューターのプログラムミスで待機患者の移植順後回し。

 「日本臓器移植ネットワーク」のコンピューターのプログラムに間違いがあり、腎臓移植の機会が巡ってきたはずの待機患者6人が、順位を後回しにされ、移植を受けられなかったことがわかった。

 腎臓の提供者が現れた場合、コンピューターで、約1万2000人の移植待機患者の中から最優先の患者を自動的に選び出すようにプログラムされたが、提供者の白血球型が適合していても「不適合」と判断してしまうケースがあった。プログラムミスは、移植後の拒絶反応にかかわる部分の「白血球型の適合」を点数化して判断する箇所で、減点対象ではないものまでも減点してしまケースがあった。待機患者のデータ入力を担当するコーディネーターが操作している際に気付き、プログラム設定にミスがあることが判明した。
 過去の提供例を調べ、本来なら順位が上の6人の患者が移植の機会を逃したことがわかった。

 ソフトウエア会社が設定を行なったが、移植ネット側は間違いがないか運用前にチェックしていなかった。

 移植ネットが1月18日、このことを自らが明らかにし、「公平、公正は移植医療の根幹であり、非常に責任を感じている。より精度の高い仕組みを作り上げ、社会の信頼を取り戻したい」と謝罪した。(04・1・18)

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建築団体の耐震調査、震度5強以上の地震で木造住宅の5割以上が倒壊の危険。

 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(東京)が全国の木造住宅7万4327軒を対象に調査したところ、震度5強以上の地震を想定した危険度評価で「倒壊、大破壊の危険あり」が約50%の3万7267軒にのぼり、「やや危険」を含めると木造住宅の4軒に3軒が、耐震性に不安があることが判明した。
 「安全」や「一応安全」は26%だが、住宅に必要とされる壁の占める割合を大きくした81年の建築基準法改正前の家屋では62%が「倒壊の危険あり」とされ、81年以降でも「安全」はわずか11%で、「やや危険」を含めると60%が耐震性に問題があるという。
(04・1・9)

●阪神大震災をきっかけに活断層を調査している国の地震調査研究推進本部は、地震を起こす可能性が高いと判定される国内98の活断層の地下構造や周辺の地殻変動などを詳細に調べている。全体の調査結果は2005年度末にまとまる予定だが、これまでに調査が終わった44の活断層のうち、発生確率が3%以上で30年以内に地震を起こす可能性が高い活断層は16カ所あるという。このうち「糸魚川―静岡構造線断層帯=新潟・長野・静岡県」「富士川河口断層帯=静岡県」「三浦半島断層群=神奈川県」の3カ所は、30年以内にマグニチュード7〜8級の地震を起こす確率が14〜1 1%とされている。
 活断層による最近の主な地震としては、福井地震(1948年)や阪神大震災(1995年)などがある。

●国交省は地震で倒壊の危険があるビルやマンションなどに対する自治体の勧告制度を導入するため、建築基準法を改正する。
 倒壊の可能性が強いと認められた場合は、補修を勧告、命令できるようにする。
 マンションなどの集合住宅やビル、文化住宅やアパート、学校、ホテルやデパート、映画館など不特定の人が集まる大規模な建築物など、延べ床面積が100平方メートル以上を対象にする。 ただ、建て替えや補修の費用がかさむ例が多いで、段階的な耐震化を促す。耐震工事については、国や自治体が補助制度を導入する。
 耐震基準は、震度6〜7の地震が起きても、大規模な倒壊はしないという基準で規定されている。現行の基準はマグニチュード7・4を記録し、28人の犠牲者を出した1978年の宮城県沖地震の被害を受けて、81年に強化されたが、自治体は81年以前の建物については倒壊の恐れなど外見上著しく危険な状態が判明した場合にしか、立ち入り検査や補修命令ができないため、建築基準法を改正する。

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