狭山事件、最高裁が特別抗告を棄却、再検証の扉も固く閉ざされたまま。

 「狭山事件」の第2次再審請求で最高裁第1小法廷は2005年3月16日、請求を退けた東京高裁決定を支持し、被告の特別抗告を棄却する決定をした。

 1963年に埼玉県狭山市で女子高校生(当時)が乱暴を受けて殺害され、石川一雄さん(事件当時24、仮出獄中、現在66)が犯人とされた「狭山事件」では、捜査方法および犯人断定の根拠、証拠物件の発見経過、裁判所判断等のすべての面で矛盾点や問題点が噴出したことから、被差別部落をめぐる冤罪事件として広く知られるようになった。
 裁判では、第1審の浦和地裁が死刑、第2審の東京高裁が無期懲役、1977年に最高裁が上告を棄却することによって、強盗殺人・死体遺棄・脅迫未遂などの罪に問われた石川さんの無期懲役が確定した。

 これに対して被告および弁護団が1986年に特別抗告(第2次再審請求)をしていたが、最高裁は今回も主体的かつ積極的に矛盾点や問題点の再検証をすることもなく「再審請求後の新証拠を含むすべての証拠を総合的に評価しても、犯行に合理的な疑いが生じていないことは明らか」として、被告の特別抗告を棄却する決定を下した。
 今後、被告側は確定判決が出された東京高裁に第3次再審請求をする方針だが、無実への道はもとより、矛盾点や問題点に対する再検証の扉も今なお固く閉ざされたままだ。
(05・3・18)

狭山事件:63年5月、行方不明となった女子高生宅に20万円を要求する脅迫状が届き、家族が身代金受け渡し場所に出向くが、あらわれた犯人は警察の存在に気付いて逃走。40人もの警官で周囲を完全包囲しておきながら、埼玉県警は犯人を取り逃がしてしまう。そして、3日後に市内の畑の中にある農道から遺体が発見された。犯人を取り逃がした埼玉県警は決め打ちするかのように狭山市内の被差別部落住民に対して見込み捜査を実施。女子高生が使っていた万年筆が石川さん宅のかもいから見つかったとして石川さんを逮捕した。石川さんは一度は犯行を認め、64年に浦和地裁で死刑判決を受けたが、控訴審から否認に転じ、自白の強要や証拠品発見の不自然さなどの矛盾点を指摘するなどして無罪を主張した。しかし、東京高裁は矛盾点の指摘をことごとく否定したうえで、無期懲役の判決を下した。77年の最高裁判決も東京高裁を全面的に支持し、有罪が確定した。第1次再審請求では85年に最高裁が棄却、第2次再審請求でも最高裁は棄却する決定をした。
 石川さんは94年12月、再審請求中の無期懲役囚としては異例の仮出獄をし、無実を訴え続けている。

事件の側面=リンク「狭山事件とは」

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汚染水排出、データ改ざんでJFEスチール製鉄所(川崎製鉄と日本鋼管の統合体)を家宅捜索。

 製鉄大手JFEスチール(川崎製鉄と日本鋼管が経営統合)東日本製鉄所千葉地区で、有毒なシアン化合物や六価クロムなどを含む違法排水が続けられ、水質測定データが改ざんされていた問題で、千葉海上保安部と千葉地検は2005年3月8日、水質汚濁防止法違反容疑で同製鉄所内の7カ所を家宅捜索した。

 今回の家宅捜索は、製鉄所の防波堤から高濃度のアルカリ水が漏出していた問題の解明だが「昔の公害企業並」との指摘が続いているため、同保安部と地検は今後、水質測定データ改ざんやたれ流しの実態などについても徹底捜査する。

 不正排水、データ改ざんが発覚した当初、同社は「1人の担当者に任せすぎていた」「大気には神経質になっていたが、水質は問題ないと信じ込んでいた」などと、会社ぐるみの関与を否定したが、千葉県や千葉市などが2001年4月から2004年12月までのデータを調べただけでも、有毒なシアン化合物や六価クロムの測定値改ざんを含め、1109件の虚偽記載が判明した。

 今回の家宅捜索を機に、時代遅れの公害たれ流し企業の実態がどこまで暴かれるのかが注目される。(05・3・8)

●千葉市は同社が長期間にわたり水質データを改ざんし報告していたことについて「環境管理体制が不適切で責任は重大」とした指導文書を出すと共に、水質汚濁防止法に基づき「高アルカリやシアン化合物を含む排水を出した施設からの排水を5カ月停止」「高アルカリ水を出した排水口での処理方法を5カ月以内に改善する」などの命令などを出すことを決め3月10日、同社に通知した。1週間の弁明期間を与えた後、正式に決定する。シアンなど有害物質を出した排水口は、土壌や地下水の調査を行ない、改善計画書を提出するよう指示する。

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国立大学病院、4月から過失なくても医療被害公表へ。 

 国立大病院で医療事故が起きた場合の公表基準を検討してきた「国立大学付属病院長会議」は2005年3月3日、病院に過失がなくても予期しない合併症や副作用が起きた場合は公表するとした初の指針をまとめた。
 過失の有無を問わずに公表するのは海外でも例がなく、事実と改善策を迅速に公表することで医療への信頼を向上させようというのが狙いだ。

 指針では医療被害を、過失があった医療過誤と、過失のない合併症や副作用などに2分類。医療過誤で、患者が死亡か重篤で永続的な障害が残ったケースなどは、速やかに会見し、発表する。また、一時的に重篤になり、治療により回復したが、過失があった場合は、大学病院のホームページなどで概要や原因、改善策を示す。

 全国42の国立大病院に4月から指針に沿うよう求める。

 医療への不信は年々、高まりこそすれおさまることがないのが現状だ。医療への信頼を向上させるためにも、国立大病院に限らず、全ての病院での早急な取り組みが求められる。また、それと共に、医療過誤、不適格医師への対応策も一日も早く法制化し、実行に移す時を迎えている。

 旧富士見産婦人科病院の「乱診乱療」が社会問題となった事件では、医師の処分が出るまでに25年もの長い年月がかかった。厚労省は3月2日、同病院の元院長の医師免許取り消しなどの処分を決定したが、あまりにも年月が経過し過ぎていた。

 医道審議会で審議される医師・歯科医師の不祥事をめぐる行政処分の対象は、診療報酬の不正請求が明らかになった医師らや、刑事事件で判決が確定した医師らに限られてきた。重大な医療過誤を起こしても刑事事件にならなければ処分されないのが現実だった。厚労省が、刑事事件にならなかった事案も処分対象とすることに方針転換したのは2002年のことで、医療過誤が次々に表面化するようになってからだった。
 後手後手にまわる医療行政のなかで、今日も日本のどこかで医療過誤による被害者がうまれようとしている。
(05・3・4)

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「虚偽」を抱え込む企業、相次いで自爆し、崩壊。

 総会屋利益供与事件が摘発されて以来、封印されていた西武グループの闇が次々と明るみに引きずり出され、2005年2月25日、逃げ場の無くなった堤義明前コクド会長は、経営改革委員会が中間報告としてまとめた「コクド分割・合併案」について正式に了承した。
 これで堤家の独裁王国だった西武グループが事実上、完全に崩壊した。

 コクドは西武鉄道株を個人名義に偽って保有。西武鉄道も有価証券報告書に、偽装分を除外してコクドの保有株数や保有比率を過少に記載し続けた。コクドなど実際の株保有比率は、東京証券取引所が上場廃止基準とする80%を超えており、過少記載によってこうした実態が隠されていた。
 堤前会長は、名義偽装問題を公表する前、コクド幹部らとともに、取引企業など70社などに西武鉄道株計5665万株を約650億円で売却し、コクドの株保有比率を引き下げていた。

 堤義明が失墜する引き金となった利益供与事件は、西武グループと右翼関係者との土地取引を総会屋につけ込まれたのがきっかけだった。その取引は80件以上で総会屋の利益は軽く1億円を超えた。

 東京地検特捜部が捜査の焦点にするのは、堤義明前コクド会長および西武鉄道、コクド両社の役員や担当者らに対する証券取引法違反容疑だ(特捜部は3月3日、堤義明を証券虚偽記載、インサイダー取引など証券取引法違反の疑いで逮捕した)が、コクドそのものの企業体質から見れば、これは単なる氷山の一角に過ぎない。
 何かと政治家との関連も強かったことから、これを突破口にして今後、どこまで封印されていた実態が明かになるのかが注目される。

 とはいえ、東京地検特捜部は、日本歯科医師連盟(日歯連)から自民党旧橋本派の政治団体「平成研究会」へ渡った1億円献金隠し事件でも忙しい。自民党の野中広務元幹事長と青木幹雄参院議員会長と橋本龍太郎元首相という大物相手に神経をすり減らしている。衆参両院選挙の度に、政治資金収支報告書に記載しない「ヤミ軍資金」を候補者に支給していた実態も明かにしなければならない。棚卸しを終えた不正陳列ケースの外には不正屑の在庫がまだまだ山積みだ。しかし、ここは、東京地検特捜部にさらに奮起してもらいたいものだ。

 政治家とコクド。これも明かになるべく使命を持っている。

 それと共にこの事件は、多くの日本に存在する独裁的な仕組みを持つ企業に、社内や忠義者で固めれば秘密が守れて違法行為を継続できるような時代ではなくなったことを、強く示唆した。少なくとも、有価証券報告書に関して「不適切」と指摘されている600社近くの企業は即刻、改善をはかる必要がありそうだ。

 山一証券や雪印食品や日本ハムや三菱自動車などは、社外の独立性の高いモニタリングの専門家や、社内情報を正確迅速に伝達出来る得る内部監理スタッフや軌道修正システムを持ちえていなかったので崩壊した。
 「風通しの悪いものは腐る」。この自然の摂理は普遍であることも改めて認識された。

 社会悪を繰り返しながらも平然とうそぶく企業や政治家は、まだまだ多い。「虚栄」と「虚偽」を抱え込み、隙間をすり抜けるかのようにして、うまくいく時もたまにはあるにはあるが、これとて時間の問題で、やがては自爆していくのは必至だ。しかし、問題を抱え込む企業や政治家は「虚栄」と「虚偽」の上塗りに今もなお全精力を費やしているようだ。(05・2・26)

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