紫式部が源氏物語の構想を練ったと伝えられる大津市の石山寺に、物語のあらすじを梗概(こうがい)書にまとめた『源氏小鏡』の江戸時代初期(17世紀)の写本があることが分かった。
石山寺ではこれを同寺で開かれる「石山寺と紫式部」展(3月18日〜6月30日:有料)で一般公開する。
この写本は5冊に分かれ、1帖を数ページから10数ページに要約、帖の最後に代表的な場面が描かれている。
料紙に金泥の草花模様を施した豪華な仕立てで、54帖すべてに彩色された鮮やかな挿絵が付いており、同種の貴重な挿絵がそろっている写本が見つかったのはドイツの図書館にある1点に次いで2例目だという。
同書は「源氏物語千年紀」の2008年末に石山寺が京都市内の古美術商から購入した。
梗概書は長編の物語の粗筋をダイジェスト版のようにまとめた本で『源氏小鏡』は南北朝時代頃、連歌師が教養として源氏物語を学ぶために編まれ、連歌の付合(つけあい)の参考にするために生まれた。
元来は連歌師のためのものだったが、簡単に各巻の主要場面の知識が得られるため一般にも普及し、梗概書の中で最も伝本が多い。版本としては、江戸初期の古活字本をはじめとして、整版本も、明暦・寛文・延宝・寛延・文政版など、江戸末期まで何種類も刊行された。
鎌倉時代以前に登場した連歌は、時代を経て江戸時代に松尾芭蕉が「蕉風俳諧」を確立して以来、俳諧と呼ばれるようになり、現代は日本を代表するコミュニケーション文芸「連句」として定着している。
せちがらい御時世だからこそ、古典に学ぶことも必要な時代になってきた。
温故知新「古きを訪ねて新しきを知る」。
これを契機に、源氏物語がさらに親しまれるのはもとより、連歌から発展し、今や日本を代表するコミュニケーション文芸として愛好されるようになった「連句」。その付け合いの妙味を知る人が一人でも多く、増えることも望まれる。