オバマのアメリカ、幻想で終わるか期待が叶うか。
Yes, We Can? or No, We Can't?
「オバマが新大統領になったことよりもブッシュが大統領の座から離れたことのほうが素晴しい」。
まずはじめに世界の多くの人々はそう思ったに違いない。オバマのアメリカはそこから始まるのだからシンドイ。日本も小泉というブッシュのポチが行なった愚策で、リリーフ役は尻拭いに大変なのだが、ブッシュの愚策よりも世界的な影響力がないぶん、救われているのであるが。
「ブッシュが実施した政策の中からプラス評価されるものを列挙せよ」。
そんな試験問題が出されたら、受験生のみならず教師すら解答を書くのが困難なほど、ひどいものだった。それでもやってこれたアメリカはやはり単純なタフガイだった。
しかし、今は違う。ブッシュが残した遺産の相続にはとても骨が折れる。
単純なタフガイだからこそやってしまった「対テロ戦争という欺瞞」や「紛争の混乱」や「金融の危機」。ブッシュ三大遺産とも言われるこれらは、一筋縄ではいかない。からまったあや取り糸は無茶苦茶にこんがらがり、単純なタフガイには解けそうにない。
そこに登場した新大統領バラク・オバマは複雑怪奇なパズルを、一体どこまでとき解くことができるのだろうか。人気だけでは解決しないし、その人気さえ、幻想なのか期待なのか、よく分からないのが現実だ。
【掲載開始:2009.3.7 河井大輔Daisuke
Kawai】
アフガニスタンの紛争をアメリカの多くのメディアは「オバマのベトナム」だという。
戦闘に勝ちながら戦争に負けた、あのアメリカのベトナム戦争。その惨劇がトラウマになっているアメリカでは、他国に軍事介入すると必ずと言っていいほど「第二のベトナム」「米大統領にとってのベトナム」と、ベトナム戦争が引き合いに出される。
今のアメリカが遭遇しているのが、オバマが仕掛けたのではないが「オバマのベトナム」、アフガニスタンでの戦争だ。ブッシュ前政権が決めたアフガンの駐留米兵を3万人から倍増させる計画は、「チェンジ」を口にしたオバマ大統領でさえ変えることはなかった。新大統領のオバマはアフガンへの1万7000人増派を承認した。
しかし、30年以上にわたって戦闘状態が続く地域の治安改善は非常に困難だ。アメリカはタリバンの攻勢が目立つ南部へ増派部隊を展開させる、としているが、有効な戦術があるかどうかも分からないのがアフガニスタンでの戦争だ。
北大西洋条約機構(NATO)主導のアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)を率いる米中央軍のマキャナン司令官が、短期的な展開としてオバマ大統領が承認した増派は、「駐留期間が3〜5年と長期化する可能性もある」と言うように、まったく出口が見えない。
タリバンが実効支配している地域は、アフガニスタン国土の中で70%を超えたとされる。アフガニスタンのケシは、世界のアヘン生産の90%を占め、ヘロイン取引による収入は倍増した。
タリバンの勢力が増すアフガンで、オバマは、何をどうチェンジするのか、まだ何も打ち出せないでいる。
アメリカ経済をどうやって立て直すのか。
どんなに優秀な経済学者でも明解な道筋を立てることは出来ないのが今のアメリカだ。しかし、「オバマに知恵は湧いてくるのだろうか」とのノンキな問いには目もくれず、その難題を背負うオバマは次々に政策決定を進め始めた。それはあたかも「スピード感のない日本の対策や『失われた10年』の失政を反面教師にしているのさ」と言わんかのように迅速な対応だ。
「社会主義に突入したのか」とアメリカの多くのメディアから皮肉られようが、一向に気にも留めずに強いアメリカであり続けるための金融業界や自動車業界救済策としての国有化への道を選択する。そして「バイ・アメリカン」条項が潜在させる保護主義への批判には、初外遊のカナダ・オタワでの同国首相会談で世界に向けて「保護貿易に反対し、世界貿易機関(WTO)などの国際的通商ルールと調和させていく」旨を発表するという具合に、素早い対応を繰り返す。
その間に、景気対策としての住宅ローン救済策を含む大規模な財政出動を決めるほか、すぐ先の未来を見据えて「石油からの脱出」を図るべくバイオエネルギーの開発予算を組む早業もやってのけた。
「これ以上、世界経済の足を引っぱりたくない」「強いアメリカを取り戻したい」。
その姿勢を世界に発信し始めた。それは、補正予算さえ組むのにもたつく日本の例をあげるまでもなく真剣だ。
しかし問題もある。強いアメリカでありたいが由のメガバンクや自動車産業への救済は、ゾンビ企業をそのまま生き存えさせ、山と積まれた不良債権を前にして経済を凍り付かせることだってあり得る。日本がそうであったように。
ベン・バーナンキFRB議長は公聴会の席でこう言った。「大きすぎて潰せない、ということこそ極めて大きな問題だ」。
解体させるべき時には解体が最も有効だ。それもスピード感をもって。
超党派。党派政治の壁を超えよう、と、オバマは就任演説で訴えた。
しかし、民主・共和の2大政党制のアメリカでは、実現不可能なのが現実だ。
超党派という言葉は聞こえはいい。しかし、むしろ意見の対立やそれをめぐる議論、それが存在するのが健全な民主主義というものだ。
大統領下での超党派は、一歩間違えれば全体主義に陥りやすい大きな欠点を兼ね備えている。しかし、そこまで心配することはなさそうだ。オバマがいくら「党派政治の壁を超えよう」と言っても、議会は早くも真っ二つに割れている。日本のように、舞台裏の根回しで官僚たちが合意を取りまとめる姑息さよりも、とても健全だ。
就任演説でオバマは党派対立を「子どもじみたことだ」と批判した。しかし、それは概ね違う。「大人じみている」から、信条・信念の違いが出てくるし、違いがあってこそ政党の存在意義があるというものだ。むしろ対立すらしない政党ならば不要だ。
人気度抜群のオバマが真の実力を身につけるには、意見の対立や違いを踏まえて、党派の壁を自らが乗り越える必要があるのかも知れない。
オバマは米大統領として4月5日、訪問先のチェコ・プラハで演説し、「核のない、平和で安全な世界を米国が追求していくことを明確に宣言する」と決意表明をした。
「核兵器なき世界」の実現は、大統領選でも公約に掲げていたが、米大統領として改めて世界に向けて明言すると共に、核安全保障に関する世界サミット(首脳会議)を「向こう1年以内に米国が主催する」ことも表明、各国にも参加を呼びかけた。
核軍縮に関しては、ロシアとの間で第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約を12月までに結ぶ目標を確認。140カ国以上が批准しながら、米国などが批准していないために未だに発効していない包括的核実験禁止条約(CTBT)については、「早急かつ意欲的に取り組む」と米議会に対して批准に向けた働きかけを強めることを約束した。併せて、核兵器の原料となる兵器級核物質の生産そのものを停止する新条約(カットオフ条約)交渉の妥結を目指す考えも示した。
核拡散防止については、北朝鮮のミサイル発射を非難したうえで、イランの核開発も「米国のみならず同盟諸国にも脅威だ」と指摘し、国際的な核査察体制の強化、規制違反国に対する国連安保理での罰則強化に取り組む考えを示した。
核抑止力への依存姿勢については、「(改めることは)すぐに到達できる目標ではない」としながらも「我々はできる、と言おう」と呼びかけた。
一方、原子力の民生利用については、核燃料バンクなどの国際的枠組みづくりも提案した。
米ロが突き進んだ核兵器開発や実験に伴う核汚染。先導役だったアメリカ。その国の大統領が世界に向けて表明する「核兵器なき世界」への実現は、もはや色褪せて遅すぎる宣言ではあるが、表明したからには一刻も早く、核兵器や核実験を刻印し、核汚染のない地球に立ち戻る努力を本気で実施してもらいたいものだ。
冷戦崩壊時に「ビロード革命」を指導したチェコのハベル元大統領は、オバマ米大統領と会談した際に「指導者には途方もない期待がかけられ、そして、失望は怒りに転じやすい」と助言したという。
●核兵器のみならず規制が切望されるものに「クラスター弾」がある。多数の不発弾による民間人被害が問題となっているクラスター弾は、その規制条約を巡って揺れ続けている。
即時・全面的禁止を定めた「オスロ条約」を支持する国と、緩やかな規制や実施への移行期間の確保を求める米国やロシア。
核兵器廃絶と同様に即時禁止に向かえるのか。オバマの姿勢が単なるポーズか否か? それが分かるのは、こんな場面での対応なのかも知れない。
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