続く不祥事、問われる警察

 昨年(1999年)9月の神奈川県警の覚せい剤使用モミ消し事件以後、京都府警の巡査長が行なった押収品覚せい剤盗み出し事件、佐賀県警の信号機メーカー贈収賄事件、新潟の女性監禁事件に端を発した新潟県警および特別監察での一連の不祥事など、全国の警察で次々と明るみに出た不祥事はここ約半年間で170件近くになる。

ここに掲載の記事は2000年までのものです。これだけウミが出ると21世紀には「少しはまともな警察」に改まるかと思っておりましたが、以後も不祥事が止ることを忘れたかのように続々と湧出しております。以後の不祥事は、他のWEB「一般の新聞記事など」をご覧ください。

このページの項目・目次
警察監察の行方と国家公安委員会の存在。警察刷新に関する緊急提言国家公安委員会とは発覚した新潟県警に対する特別監察の実態女子大生刺殺事件で明らかになった埼玉県警上尾警察署の大失態、業務放棄警察、留置場でも失態失態噴出、なお進行形の警察

BACK

警察監察の行方と国家公安委員会の存在。

 神奈川県警をはじめとする一連の警察不祥事を受けて警察庁が打ち出した綱紀粛正対策の「特別監察制度」がいとも簡単に事実上崩壊した。

 神奈川県警の現職警察官の覚せい剤使用もみ消し事件で、県警監察官室が「もみ消し」の中心的役割を果たすなど、警察内部の不祥事に目を光らせるはずの監察体制そのものが崩壊していることが明らかになったため、警察庁は、同庁や管区警察局の幹部が直接都道府県警に出向き、不祥事対策が浸透しているかをチェックする「特別監察制度」をつくり、1999年12月の神奈川県警を皮切りに、都道府県警の監察を実施した。

 しかし、この特別監察もコトを成していなかったことが、新潟県警に対する特別監察の実情で明らかになった。

 政府は、神奈川県警の一連の不祥事から新潟県警の姿勢および監察の不祥事と、連続して表面化する警察の根腐れ状態に批判が高まっていることから、これに対応して、「警察庁のキャリア制度など警察組織全般について見直す」との方針を示し、検討課題として「国家公安委員会以外の第三者によるオンブズマン制度の導入」「県警本部長の人選の厳格化およびノンキャリアの幹部への積極登用」などを挙げて新たな制度をつくる、と表明した。

 しかし、時間が経過するに連れて改革の意気込みはトーンダウン。当初の方針では「民間人など第三者をまじえた検討機関では、警察を管理する国家公安委員会、都道府県公安委員会についても再検討する」としていたが、青木官房長官は3月6日の参院予算委員会で、政府が着手した警察組織の抜本改革について「国家公安委員会制度そのものの見直しという考えは今のところない」として、国家公安委員会制度自体の見直しには踏み込まない考えを表明。また、警察の一連の不祥事をめぐる問題が参院行政監視委員会でも取り上げられたが、与野党委員が監察制度の改革について、「警察外部の独立機関があたるべきだ」と主張したのに対して、田中警察庁長官は、「捜査上の秘匿性の問題」を盾にして「警察の内部事情もあり、慎重に検討しなければならない」と消極的な姿勢を示すなど、現実には相変わらず「綱紀粛正」とはほど遠い対応が繰り返されるなど、警察改革は早くも方針倒れの様相を呈しはじめている。

警察刷新に関する緊急提言
 
警察改革の在り方を議論していた警察刷新会議は7月13日、「警察刷新に関する緊急提言」を国家公安委員長に提出した。国家公安委員会と警察庁はこれを受けて、法整備の必要なものは警察法改正案に盛り込み、秋の臨時国会に提出する。

 不祥事が相次いだ背景として「犯罪の秘匿性を強調するあまり閉鎖的になり、本来公開すべき情報が公開されなかった」「第一線の幹部に対する教育訓練が質的にも量的にも不十分であることから、キャリア警察官の一部が国家と国民に献身する高い志と責任感に欠けた」ことなどを挙げ、具体的な改革案として、情報公開・苦情処理のガイドラインを策定するよう求めたほか、警察・公安委員会に対する文書による申し出は、処理結果を文書で回答する制度を設け、警察本部に「苦情担当課」を置くことなどを要請した。

緊急提言の骨子は次のようなもの。
 「警察庁の訓令、通達はホームページに掲載する。不開示とする情報は犯罪の予防、捜査に支障を及ぼす恐れのあるものなどに限定する。懲戒事案の発表はその範囲及び内容を明確化する 」
 「警察・公安委員会に対する文書での苦情申し出について、処理結果を文書で回答する制度を創設する」
 「管区警察局への監察部設置など監察を強化する」「公安委員会は、警察本部長の監察が十分でないときは是正し、第三者機関的な点検機能を果たす」
 「空き交番を解消、相談担当の警察職員を増配置するなど、相談体制を強化する」
 「 窓口担当職員と責任者は名札を着ける」
 「 警察署ごとに地域の有識者で警察署評議会(仮称)を設置、警察が住民の声に基づき行動する仕組みを確立する」
 「キャリア警察官の警視昇任までの期間を2倍程度に延長、警察本部長への一律登用を排除する」「合理化を前提に、地方警察官を増員する」

戻る

国家公安委員会とは

 委員長は自治大臣が務め、ほか5名の委員(任期5年)で構成される行政委員会で、総理府に置かれる外局。委員5人は学界、官界、経済界、法曹界、マスコミ界からそれぞれ選出し、衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。これは、国民の良識を代表する者が警察を管理することにより、警察行政の民主的管理と政治的中立性の確保を図る目的で戦後に導入された。
 しかし、委員会は、警察庁に事務局が置かれると共に警察という体制に好意的な高年齢者が委員に名を連れるていることもあり、警察の不祥事に対する管理体制は現実問題としてほとんど取られておらず、「国民の良識を代表する者が警察を管理する」というよりもむしろ「行政機関としての警視庁の飾りもの」というのが実情だ。

 ちなみに委員長を除く5人は毎週木曜の定例委員会以外はほとんど出勤しない。しかし、特別職の国家公務員扱いで、給与は「特別職の職員の給与に関する法律」で規定され、月額約130万円強、ボーナスなどを含めると年間総額約2600万円強が支払われている。他に主たる収入を得る職業を持つ場合には支給されないが、現在の委員5人のうち4人が、「週1出勤でこの高給」という座にあぐらをかいている。

 警察法では「国家公安委員長及び3人以上の委員の出席がなければ議決をすることができない」と規定しているが、新潟県警の前県警本部長の処分については、国家公安委員会は正式な会合を開かず、持ち回りで決裁を取り付けるなど、そのずさんさも表面化している。

 また、警察の組織や制度を見直すため、政府が設置の方針を固めていた第三者機関について、国家公安委員会は3月9日、後藤田正晴・元副総理や中坊公平・整理回収機構顧問ら6人の有識者で構成される「警察組織刷新会議(仮称)」を3月中に発足させることを決めたが、国家公安委の事務局を務める警察庁では、同会議を「諮問機関としての位置づけではなく、自由な意見を出す場」としているため、この第三者機関の設置は、国民の批判をかわすための手段との見方が早くも強まっている。

 国家公安委員会の組織・任務・権限 ・義務などの他、委員メンバーの詳細は下記アドレス。
http://www.npsc.go.jp/

戻る

発覚した新潟県警に対する特別監察の実態

 新潟県の女性監禁事件で虚偽発表を了承していた新潟県警本部長が、女性が保護された当日に、特別監察を受けた後の懇親として関東管区警察局長と温泉旅館で酒を呑みつつ深夜までマージャンをしながら、事件の指揮をとっていたことが発覚した。また、特別監察に出向いた関東管区警察局長も、監察そっちのけの物見遊山気分だったことが2月末に判明した。

 新潟県警への特別監察が午後2時すぎまで県警本部で行なわれた1月28日は、行方不明の女性が9年2カ月ぶりに保護されるという日だった。本部長らは土砂崩れ現場や駐在所を視察した後、午後4時50分ごろ、刑事部長から女性保護などの報告を受けた。しかし、県警本部に戻ることはなく、そのまま温泉に投宿し、旅館では午前零時ごろまで宴会やマージャンを続けた。
 宴会には県警の警務部長や総務課長、秘書室長らが参加。マージャンは、新潟県警本部長と関東管区警察局長、女性保護時の連絡態勢や容疑者の母親が4年前に柏崎署に相談した際の対応などで責任が問われている生活安全部長、生活安全企画課長で行なった。
 他の管区警察局の担当者らは日帰りで監察に訪れていたが、同宿した関東管区警察局長は、あらかじめ「雪が見えるところに泊まりたい」と宿泊を希望していたため、県警が手配した温泉旅館に泊まった。この際、事件を耳にした関東管区警察局長は新潟県警本部長に「県警に帰ったらどうか」と力弱く打診しただけだった。
 途中、午後9時ごろファクスなどで県警から記者会見発表文、想定問答の送信を受け、新潟県警本部長は虚偽報告の報道発表を了承。翌日、本部長は警察局長をハクチョウの飛来地として知られる「瓢(ひょう)湖」に案内し、JR新潟駅まで送った後、県警本部に寄らずに直接、家(公舎)に戻っていた。このため記者会見は刑事部長らによって午後9時半ごろ新潟県警で行なわれた。

 特別監察の後に、監察に訪れた警察庁幹部が監察対象者である県警本部の幹部と宿に泊まって飲酒するのは、警察庁が監察にあたって監察を受ける側との飲食の厳禁などを管区警察局に指導していたといえども、百歩譲ってギリギリの許容範囲。だが、関東管区警察局長は、県警本部での監察業務をせずに訓示も別の幹部に代行させるという「職務放棄」を行なっていたばかりか、事件発生の報告を受けても署に戻らずにマージャンに興じ、宴席から事件の指揮をするという前代未聞のルール違反を犯している県警幹部を目の前にしながら、指導もできないばかりかそれらの行為を見逃して自らも宴に興じていたという、これまた前代未聞の特別監察の失態劇は百歩譲っても許容範囲を超えて、警察の信用は遂に、トコトン地に堕ちてしまった。

 今回の「事件対応よりも宴会が最優先」「特別監察よりも温泉」という新たな失態の発覚で、警察不祥事を改めるための特別監察制度そのものも、警察の根腐れ体質に汚染されていることがまたひとつ明らかになった。

 警察庁は、虚偽発表などの不手際を受けて2月20日に「特別検証チーム」を新潟県警に派遣、2月24日に調査結果を発表したが、こうした事実を全く把握していなかった。

 これらの不祥事で辞任した新潟県警本部長および関東管区警察局長に対し、改めて処分を検討した国家公安委員会は、新たな処分の見送りを了承。国家公安委の体質も根腐れ状態にあることが判明し、国民の不信を増幅させるものとなっている。

戻る

女子大生刺殺事件で明らかになった埼玉県警上尾警察署の大失態、業務放棄

 埼玉県警上尾警察署が、やるべき捜査をやらなかったために、当時21歳の女子大生が告訴から約3カ月後に刺殺された。

 被害者は元交際相手(当時27歳、今年1月に死亡)から執ような嫌がらせを受け、99年6月に上尾署に相談。翌月には自宅周辺で中傷チラシをばらまかれたため、容疑者不詳のまま名誉棄損容疑で告訴していたが、同署は捜査を進めるどころか業務を放棄。逆に被害者に対し、告訴状を取り下げるように要請、99年10月26日、元交際相手の兄らに刺殺された。

 警察が実質的な捜査を始めたのは刺殺事件後で、殺人事件の容疑者は逮捕されたものの、殺人を依頼した元交際相手は今年1月に北海道で自殺。遺体で発見されたため、刺殺事件への関与などの事件の全容解明は不可能になった。

 告訴の取り下げ要請に関しては、刺殺事件発生当初から取りざたされていたが、県警側は「そんな事実は全くない」と否定。また、今年3月になって国会などでも追及されたが、県警側はここでも「告訴取り下げを要請されたというのは遺族の誤解」と主張し続けてきた。
 これに対し、遺族の父親(49歳)はついに怒り、「上尾署からの告訴取り下げ要請はあった」と証言。加えて、「何度行っても、上尾署刑事2課長に『我々も忙しいんですよ』と言われ、要請に応じようとせず、助けてくれなかった」と当時の上尾警察署の対応を批判した。

 これを受けて、埼玉県警は事件をめぐる調査チームを編成し、4月6日、同事件についての調査結果を公表。
 上尾署員が警察自らの業務軽減のために、被害者から出されたを告訴を被害者側に取り下げるように要請したり、被害者から受理していた「中傷チラシによる名誉棄損の告訴状」を受理していなかったことにするため、調書の中の「告訴」の言葉を「届出」に書き改め、「何もなかった」かのように調書の改ざんなどを行なっていた事実を認めた。

 また、国家公安委員会は同日、県警本部長と刑事部長を減給処分にし、埼玉県警は、これらにかかわった同署の警察官3人を虚偽公文書作成等・同行使容疑で浦和地検に書類送検し、同日付で3人を懲戒免職にした。

 市民生活の安全を業務にする警察に救いを求めていた女子大生は、業務放棄の上尾警察署員の対応により、告訴から約3カ月後、告訴取り下げ要請から1カ月後に凶刃に倒れ、帰らぬ人となった。この事実に対し、埼玉県警本部長は「被害者のご冥福をお祈りするとともに、ご家族には心からおわび申し上げたい。名誉棄損の捜査を全うしていれば事件は避けられた可能性が高く、痛恨の極みです」と陳謝の弁を述べ、深々と頭を下げた。

 市民からの声に適切に対応しない慣習化した警察業務の怠慢姿勢は、上尾署に限った特異例ではなく、全国各地で見受けられている。例えば、今年1月に9年ぶりに保護された新潟県柏崎市での監禁女性事件でも表面化し、逮捕、起訴された犯人の母親が、4年前に警察に相談していたが、柏崎警察署の不十分な応対で直接の解決には結び付かなかった。

戻る

警察、留置場でも失態

千葉県警は留置場でわいせつ行為
 千葉県警では、 船橋東署に拘置中だった女性に、留置場内でわいせつ行為をしていたとして諭旨免職処分となった元巡査長(44歳)が、99年9月、同署の副署長同席で被害者の女性と会い、この席で女性に現金30万円を渡したうえ、領収書に「一切の解決金として」という但し書きまでさせていたことが3月29日、分かった。
 千葉県警監察官室は現金の授受を認めた上「元巡査長が示談金として渡したと理解している。口止めをする意図は全くなかった」と釈明している。

 当時看守係だった元巡査長は、シーツを差し入れるため留置場に入り、覚せい剤事件で拘置中だった女性の身体をしつこく触るなどし、わいせつ行為を迫った。発覚後、元巡査長は諭旨免職となったが、巡査長のわいせつ行為に関し、同署の当時の刑事課長が女性に「訴える意思がない」ことを明示するよう求めて文書を提出させ、「女性から被害申告がなかった」として、わいせつ行為を事件化しなかった。

 また、この女性が覚せい剤事件で逮捕された直前には、ホテルの部屋に、この女性と交際していた同署の巡査部長が一緒におり、女性から覚せい剤使用を告げられていたが、動揺して逃げてしまったということも判明した。

埼玉県警は留置人に留置場で脅されて特別待遇
 そして埼玉県警では、恐喝容疑で逮捕された留置人に越谷署の署員が留置場で脅されて、房のカギを取られたうえ、房から出た留置人たちが署員と乱闘。署員がボロボロに殴られる蹴られるなどの不名誉な傷を負うと共に、規則に違反して、脅された留置人に喫煙や飲食を許していたことも発覚した。

 埼玉県警監察官室は「あってはならないことで 県民におわびし、再発防止に全力を尽くします」と陳謝。県警は3月30日、留置管理に重大なミスがあったとして当時の署長ら17人を減給などの処分とし、署員に暴行した2人を公務執行妨害などの容疑で浦和地検に書類送検した。

 しかし、暴行した2人のうちの1人は、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されていたが、12月に処分保留で釈放され、所在不明で立件できないという情けなさ。

戻る

失態噴出、なお進行形の警察

警視庁麹町署鑑識係巡査部長、800万円に目がくらみ恐喝で逮捕
 期限切れのロッカー内から発見した800万円を持ってコインロッカー管理会社が警視庁麹町署に相談に訪れた際、捜査資料用に現金の写真撮影を担当した同署刑事課鑑識係巡査部長が、何を狂ったか、その後、現金の所有者を装い、「コインロッカーにあったオレの800万円を返せ」などとコインロッカー管理会社に電話や手紙で脅し、「持ってこなければ命の保証はない」と、これを自分のものにしようと現金の受け渡し場所を指定、指定場所の上野公園付近の公衆電話から「本当にカネを持って来ているんだろうな」などと確認電話しているところを逮捕された。

栃木県警、リンチ殺害事件で不適切で不誠実な謝罪
 
栃木県上三川町の男性(当時19歳)が99年12月、少年3人から全身に熱湯をかけられるなどのリンチを2カ月以上受けた末に殺害された事件をめぐり、栃木県警は、両親の度重なる捜査要請にもかかわらず栃木県警石橋署が捜査に着手しなかった問題で5月29日、息子さんを亡くした両親の前ではなく、まったく無関係の記者たちの前で会見というありきたりの方法で、「積極的に対応していたら、亡くなる前に保護できたかもしれない。両親への対応や言動に不適切な点が認められた。ご両親をはじめ関係者の皆様に誠に申し訳なく、おわびする」と極めて形式的に謝罪した。

 また、両親が県警からの回答書を不満とし、さらに詳しい報告書の提出を求めていることについては「県警の調査結果と両親の主張との間に一致しなかったり、確認できなかったりする点があり、書面にすると微妙な問題がある」とし、「両親が納得するまで言葉で説明したい」と、両親への対応や言動に不適切な点が認められたと反省して謝罪したにもかかわらず、再び不適切で不誠実な姿勢を示した。

愛媛県警宇和島署、自白強要で冤罪をでっちあげ
 犯人が自供しているにもかかわらず、犯人でもない人を窃盗容疑などで誤認逮捕・起訴し、1年余り勾留。「違う」と言ってもさらに「違わない」と言い続け、「おまえが犯人だ」とした愛媛県警宇和島署の起こした不祥事は、4月21日、松山地裁宇和島支部で、起訴した検察側が「男性は本件にまったく関与していない」と無罪判決を求める異例の論告をし、「多大な苦痛を与えてしまった。深くおわびします」と検察側が深々と謝罪するというお粗末さで幕となった。

 犯人にでっちあげられた男性は、昨年2月に印鑑を盗んだ疑いで愛媛県警宇和島署から任意同行を求められ、虚偽の自白を強要されてその日に逮捕。あれよという間に松山地検宇和島支部に窃盗罪で起訴され、さらに窃盗や詐欺の罪などでも追起訴された。
 検察側は公判で「男性は宇和島市内の知り合いの女性宅から貯金通帳と印鑑を盗み、同市内の農協で50万円を引き出した」とぬけぬけと主張していた。
 しかし、高知県警が「別の事件で逮捕した男が犯行を自供している」と愛媛県警に連絡。それでも「違う、この男が犯人だ」としていたが、高知県警が逮捕した男の供述調書が「私が犯人である」と言わんかのように一連の窃盗事件と一致していることから松山地検側が「あれっ、間違えた」と、判決の4日前に釈放した。

あの埼玉県警上尾署、変死事件の捜査を中断したまま捜査書類も12年間放置で時効成立。
 
埼玉県上尾市で1988年に起きた1歳女児の変死事件で、上尾署の刑事係長(当時、93年に退職)が、捜査を中断したまま、捜査書類を今年3月まで同署刑事課のロッカーに放置していたことが、4月14日、埼玉県警の調べでわかった。
 桶川市で起きた女子大生刺殺事件の捜査検証過程で、署内のロッカー内から放置されたままの女児変死に関する捜査書類がみつかったもので、この変死事件は、その間に7年の時効が成立している。

 当時、女児は「のどにものを詰まらせた」として市内の病院に運ばれたが死亡。死因は窒息死とされたが、頭にあざがあったことなどから、せっかんによる傷害致死の疑いも持たれた。このため同署は、事情聴取や実況見分するなど、暴行の有無や死亡との因果関係を調べ、変死事件として捜査。ところが、刑事係長は、解剖担当医が解剖結果を出す前に死亡したことなどから捜査を中断。その後、捜査書類を放置したまま後任者への引き継ぎもせずに退職した。
 県警は14日付で、刑事係長の上司だった当時の刑事課長ら3人を本部長戒告などの処分とした。

兵庫県警では被害届を紛失、傷害事件を3年間放置
 兵庫県警加古川署は、3年前に被害の届け出を受けた傷害容疑事件の被害者調書と診断書を紛失し、事件処理をせず放置していた。

 1997年3月3日、高校生がアルバイト先で経営者に殴られ1週間のけがしたとして、父親と加古川署を訪れ、診断書を添えて被害届を出した。しかし、その後、警察からは連絡がないことから、被害者側は不審に思い、今年3月31日、「届け出後、何も言ってこない」と加古川署に連絡。この指摘を受けて同署が調査したところ、当時の担当が数日後に担当替えになり、この事件の引き継ぎを後任にしなかったというマヌケぶりが発覚した。

 同署は「あってはならないこと」として、4月になって被害者に謝罪した上で改めて被害者から事情を聴き、被害者調書を作り、被害者を治療した病院から診断書を提出してもらい、再捜査を始めたという。

岡山県警は捜査で知り合った暴力団組員とダチ付き合い
 
岡山県警では、矢掛署地域課の警部補が捜査で知り合った暴力団組員と飲食を重ねていたうえ、現金100万円をもらっていたことが発覚。県警は4月6日、警部補を収賄容疑で岡山地検に書類送検し、同日付で停職3カ月の懲戒処分にした。これを受けて警部補はこの日、依願退職した。
 調べでは、警部補は捜査を通じて知り合った組員と87年頃から、いわゆる「ダチ付き合い」になり、飲食を重ねるなど親交を暖めていた。そして97年、この組員から現金100万円をもらい、なお親密になっていた。県警では、10日後に返した、としているが、組員は99年6月に死亡していることから確認は不明。

三重県警はジャン荘通いで賭けマージャン
 三重県警は3月31日、勤務時間中に賭けマージャンをしたとして、桑名署員6人をとばく容疑で津地検に書類送検した、と発表した。
 書類送検されたのは、刑事課や警備課の警部補らで、6人は昨年8月ごろから今年2月にかけて、事件や事故がなく暇だったので、昼間、暇つぶしに3回から6回、管轄外の地域のマージャン店に集まって賭けマージャンをした。1月末に、県警本部に「警察官が勤務時間中にかけマージャンをしている」と投書があり、監察官室が調べてバレた。

静岡県警では薬物事犯などの捜査刑事が覚せい剤取締法違反
 
静岡県警では、沼津署生活安全課巡査長が薬物事犯などの捜査に従事していた際に、覚せい剤取締法違反の罪で捜査対象になっている犯人と知り合い、捜査情報を漏らすほか、覚せい剤を自らも所持。巡査長が、覚せい剤取締法違反(所持)、犯人隠避、地方公務員法違反の疑いで逮捕された。
 県警は、沼津署内で覚せい剤所持を複数の同僚課員が目撃していたにもかかわらず、課長以上の幹部に報告していなかったことを明らかにした。

佐賀県警ではわいせつ犯罪事件担当刑事がわいせつ行為を強要
 そして、佐賀県警では、 知人の女性にわいせつ行為をしていたとして懲戒免職となった佐賀県警警備部機動隊の元巡査部長が、この女性とはわいせつ犯罪事件を担当したときに被害者として知り合い、その後もしつこく交際などを迫り、さらにわいせつな行為を行なっていたことも分かった。
 佐賀県警によると、元巡査部長は諸富署刑事課に勤務していた1998年3月から1年間、わいせつ事件などの捜査を担当。この間、管内で発生したわいせつ事件の被害者として元巡査部長がこの女性から事情を聴いたのが、知り合ったきっかけだったという。
 その後、元巡査部長は昨年12月中旬、女性を佐賀市内に呼び出して一緒に酒を飲んだ後、路上で無理やりキスをしたり抱きついたりしたとして、17日付で懲戒免職となった。女性は今年2月になって同県警の被害者相談窓口に匿名で訴えていた。この問題では、当時の諸富署次長ら上司3人も監督責任を問われ、本部長訓戒などの懲戒処分を受けた。

国会議員の秘書が絡んだモミ消し事件以外にも交通違反のモミ消しが発覚、限りなく出てくる不祥事で、新潟県警はボロボロ。
 元国家公安委員長で現職国会議員の秘書が絡んだ新潟県警の交通違反モミ消し事件で、前同県警警視の交通機動隊長が、前運転管理課行政処分係長に対し、今回の逮捕容疑以外にも交通違反のモミ消しを指示していたことが3月22日、分かった。

 県警捜査2課は、正規の手続きを経ずにコンピューターに保存されている交通違反の記録が抹消されていたケースが複数あったことを把握しており、前交通機動隊長は「警察関係者からの依頼もあった」と、周辺に漏らしていたということから、関連性を詳しく調べている。
 また、元国家公安委員長で白川勝彦衆院議員(自民、北陸信越比例ブロック、当選6回)の私設秘書から、モミ消しを依頼されていたことを認める供述をしていることも分かった。

 議員や議員関係者の口利きによる交通違反のモミ消しがあることは、過去から半ば公然と語られてきた。しかし、今回のように国家公安委員長経験者の秘書が絡む事件として、あからさまになった例はこれまでにない。

新潟県警の交通違反モミ消し事件
 
新潟県警捜査2課は3月19日、交通違反の記録を抹消したとして公電磁的記録不正作出、供用の疑いで、同県警警視の交通機動隊長のほか警部補の運転管理課係長を逮捕、送検した。

 事件に関連して元国家公安委員長の白川勝彦衆院議員(自民、北陸信越比例ブロック、当選6回)の私設秘書がもみ消しを仲介し、謝礼として3万円の商品券を受け取ったことも発覚し、 またひとつ、不祥事の数と事例を増やした。

 調べによると、白川議員の秘書に依頼され、交通機動隊長と運転管理課係長が、スピード違反した同県板倉町の自営業男性の違反数の記録をコンピューターから抹消した疑いがある、というもの。

 コンピューターは、警官がパスワードを入力して警察庁のホストコンピューターと接続、データ処理するが、公電磁的記録不正作出、供用罪(刑法161条の2)では、コンピューターを利用し、権利、義務や事実証明に関する公文書などの公的なデータを不正に作成、使用した場合、10年以下の懲役または100万円以下の罰金、となっている。

 白川議員の説明によると、男性は知人を介して秘書に「違反で何点引かれるのか」などと相談。秘書は10数年前から知り合いだった交通機動隊長に「どうなるか調べてくれないか」と照会し、数日後、「免停にはならない」と返事を受けたという。知人は男性から預かった商品券を「手数をかけた」と秘書に渡したが、秘書はいったん辞退。しかし「そう固いこと言わずに」と勧められ受け取った。秘書は「うかつだった」と話しているという。

BACK


Top Page