コラム

破たんした金融依存&政策依存型
日本経済システム

 タイの通貨不安から始まったアジア経済の変調は、香港株急落をきっかけに東京株式市場での急落を招くなど、足腰の弱まった金融市場を揺さぶった。今後の日本は特に深刻で、不動産投機に沸く香港での株の急落や成長を続けていたインドネシアの通貨不安などによるアジア経済の失速で、日本の銀行の融資(東南アジア向け融資は現在700億ドルとも1000億ドルともいわれる)が焦げ付いて数兆円レベルで不良債権化し(国内外での不良債額は今後、30兆円はゆうに超えると推測される)、輸出(日本企業の輸出の40%強はアジア向け)の減少から日本企業は、かなり厳しい状況に追い込まれてきた。

 国内のバブル処理が終らない日本の金融最優先の経済システムの場合は、常に成す術のない不安と背中合わせという状況から、一歩先にある「金融システムとそれに連動した経済メカニズム崩壊の時」を迎えた。

 そして今、現行の日本型システムやメカニズムが限界にきている中、既得権に固執する政府およびそれに付随する組織は、展望を見失ったまま日本型システムやメカニズムを保持し続けようと躍起になりはじめた。そして、時として「敗戦」に突っ走った第二次世界大戦の戦況報告の如く「ワレら優位ナリ、コノ状況を突破セリ」の大本営発表的な、時代遅れのギマンに満ちた発言も増え始めた。しかし、増税のあとのその場しのぎの減税や金融機関への公的資金投入、株価への口先介入や相も変わらぬ公共事業の拡大という稚拙な対策のみならず、既存の価値規範や体制的な判断、あるいは気安めにもならない経済展望ではらちがあきそうにもなく、日本は全構造的に硬直した時代に入った。

 さらに今後は、海外では日本への愛想尽かしから「円」が嫌われて円安傾向に拍車がかかり、結果としてアジアの金融市場の足を引っぱることになり、国内ではさらなる粉飾決算や簿外の負債問題が噴出し、大型倒産が続いた後は、政策的な経済問題、いわば政府の簿外の負債=財政投融資計画などでの公的な負債(高速道路建設や空港建設などのために貸し出された「財投」の負債などは約1500兆円に上るといわれる)=での経済危機が泥沼のカード破産の如く表面化して行きそうだ。

 そして、表面化した日本経済の破綻を機に、大型倒産をはじめ株価や円相場の上下に一喜一憂する時代もやがて終り、竹槍で戦闘機に向かうような日本型金融ビックバンは世界の金融やゼニゲバ以下のおぞましいヘッジファンドなどに翻弄された挙句に、公的資金を銀行に湯水のように投入。結局は何の効果もなく、日本は、旧態依然とした日本型システムやメカニズムを解消する必要を痛感し、やっとのことで、何事も自己責任を持ち、民意から発生する本当の意味での多様な価値観や取組による構造の再編という新たな時代を迎える時が来る、と言えるためには、まだいくつかの波をかぶらなければならず、その時を迎えるのは、SFの世界のおとぎ話の中の遥か遠いもののようで、このままだと実現を見ずに終焉の姿だけが私たちの前に出現するのかもしれない。(1997年11月記)

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