コラム

比べるだけ空しい核兵器保有の脅しと
使用前提の新型核兵器開発の脅威
ブッシュ政権核兵器開発をエスカレート

 アメリカ国防総省が3月に議会提出した報告書で、ブッシュ政権が核兵器開発をエスカレートさせるつもりであることが判明した。
 独裁政権に対する嫌悪やテロへの恐怖からか、アメリカのブッシュ政権は、軍事技術偏重路線へ大きく舵をきりつつあるようで、常軌を逸した開発にゴーサインを出す見通しだ。
 計画では、地下に潜む敵を壊滅させるバンカーバスター(特殊貫通爆弾)用に、従来の核弾頭をさらに強力にした新型核兵器を開発するという。

 これまでアメリカは、イラクや北朝鮮などが大量破壊兵器を地中奥深い施設に貯蔵しているとの憶測から、それに対応するため地下貫通能力に優れた特殊爆弾の開発を進めてきた。実戦のイラク攻撃で使用したバンカーバスターの破壊力ではもの足りないのか、貯蔵しているモノのみならず地下深くに潜んだ攻撃目標者たちを、さらに影も形もなく吹き飛ばすよう、貫通力や破壊力を飛躍的に高めたバンカーバスター用の小型核兵器開発に着目しはじめた。
 国防総省がこの開発に投じるとしている予算は単年度だけで約1600万ドル(20億円弱)で、研究はロスアラモス国立研究所などが3年かけて進めるという。

 この小型核兵器開発に関して国防総省では、大気中での使用よりは地下使用のほうが、放射能汚染も少ないし副次的な被害が少ない、としている。しかし、都市部で小型核兵器のバンカーバスターを使えば、24時間以内に5万人以上の致死量に相当する放射能被害が発生、地下水汚染も深刻になり、人体における放射能被害は半永久的につきまとうのが実態だ。

 アメリカ・中国・北朝鮮の3カ国協議で北朝鮮が「核兵器保有」を表明した際、ブッシュ大統領は「いつもの恐喝ゲームに逆戻りした」と感想を述べた。しかしこの言葉は、「そっくりあなたにあげる」というブッシュ大統領に対する国際社会の感想でもあった。時代に逆行して核を使って自国の攻撃力や威圧感を高める姿は、嫌悪こそされても到底、共感が得られるものではないからだ。

 核兵器を保有する脅しと、使用を前提にした新型核兵器開発の脅威。比べるだけ空しいが、アメリカそのものがこれ以上、傍若無人な「ならずもの国家」にならないよう、国連が実質的には死んでしまい、曲がりかどを大きく曲がった今だからこそ、国際社会がアメリカの単独行動主義に対する批判を高め、監視し、嫌悪感を堂々と表明する必要がありそうだ。(03・4/29)

●環境保護団体のグリーンピースは、核保有国の指導者をトランプのカードにした「核ポーカー」を作り、「お尋ね者」の筆頭となるスペードのエースにブッシュ大統領を選んだ。アメリカ軍がイラク戦争で、顔写真付き手配者リストとして公表したトランプのパロディー版だが(とはいえ、ユーモアやインパクトには欠けるが)、新型核兵器開発を計画している「お尋ね者・ブッシュ」のカードには「約1万600の核兵器を保有」と批判を込めて添え書きし、ジュネーブでのNPT(核拡散防止条約)運用検討会議準備委員会の参加者らに配布した。

核兵器を所有していない国の中で核兵器転用可能なプルトニウムを所有している6カ国、スイス・ベルギー・スウェ−デン・ オランダ・ドイツ・日本がこのカードに登場。日本はスペードの7だった。

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