コラム

●通貨革命●

 欧州連合(EU)は1999年1月から単一通貨ユーロ導入のために本格的な実施準備に入った。

 現在、EU加盟の15カ国のうち参加を保留するイギリス、スウェーデン、デンマークと参加基準未達成のギリシャの計4カ国を除いた11カ国を「ユーロ創設国」と位置付けて準備が進んでいる。時代の流れの中で4カ国も合流せざるを得ない模様で、イギリスは、前政権の不参加方針を踏まえて、1999年からの第一陣参加を見送ったが、ブレア労働党政権は、2002年総選挙後の参加を予定している。
 ちなみに11カ国とは、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フィンランド、オーストリア、アイルランド、スペイン、ポルトガル、ドイツ、フランスで、ユーロ圏総人口は約2億9000万人。経済規模では世界生産の約20%を占め、アメリカとほぼ同等になる。

 3年間を移行期間とし、2002年には、マルク、フランなどに代えてユーロ通貨が本格的に導入される段取りだ。

 これで、ドルを頂点にマルクやフランや円などが追随するという通貨体制は崩れ、世界通貨は事実上、ドルとユーロの二極体制になった。

 勿論、参加国の経済のアンバランスや不安定要因は残されたままでの導入だが、征服や制圧によらず、複数の主権国家が、合意の上で共通通貨を実現するために各国自らの通貨主権を放棄するという事は、史上類を見ない通貨革命であるし、さらにこれを機に、欧州統合は、超国家的な体制を構築するために、和平の時代の中で、新たな一歩を踏み出したことも、まぎれもない事実。国際通貨体制は21世紀を目前にして、新通貨体制の形成に向けて、確実に実態の中で歩き始めている。

 そして、欧州単一通貨ユーロの誕生を控えた1997、98年に世界各国からユーロ参加国への資金流入額はいずれも2000億ドルを大きく超え、96年に比べ既に3倍以上に膨らみ、ユーロに対する世界の投資家らの期待感を早くも裏付けた。 

 ひるがえってアジアは、未成熟なまま金融危機がくすぶり続ける中で、膿んでいる。また、日本の円や日本型の経済システムは、未だに旧態依然とした価値観や虚構の中で、世界経済市場の嫌気を誘っている。(1999・1/10)

金融の次は軍事
 
ヘルシンキで開催されたEU(欧州連合)首脳会議は、欧州独自の危機管理機構として、5〜6万人規模の兵力や300〜500機の航空機、艦船の装備をもつ緊急対応部隊を創設することを決めた。

 緊急対応部隊の創設は、冷戦終結後、ボスニア・ヘルツェゴビナやコソボ、あるいはチェチェンなど欧州各地で相次いで噴出した民族紛争に、アメリカの軍事力に頼らず、欧州主導で対処するのが最大の狙いで、60日以内に紛争地域に部隊展開し、最低1年間駐留できる機能を2003年までに整備する、としている。

 意思決定は、危機発生に即応して開催されるEU外相・国防相合同理事会を最高の意思決定機関とし、その下部機関として、各国の大使級高官で構成した「政治安全保障委員会」が軍事行動の政策や戦略の立案にあたる。実際の軍事作戦を練る「軍事委員会」や、作戦を実行する「幕僚部」を2000年3月までに設置する。
 合意文書では、あくまでNATO(北大西洋条約機構)を欧州共同防衛の主軸とし、緊急対応部隊の任務は「危機管理、平和維持や創出に限定される」としているが、EUが初めて独自部隊を保持することになるため、欧州の安保体制が事実上、これで再編される。
 主導権を握りたいアメリカ側は、NATOでの事前協議を制度化したい意向だが、この再編で約半世紀にわたりアメリカの軍事力に依存してきた欧州安保の構図は、大きく変化する。

ユーロ未参加国の動向
 デンマークは2000年9月にユーロ参加を国民投票にかけるかける方針を決めた。また、スウェーデンは遅くとも2002年秋までにはユーロ参加を国民投票にかける意向を示している。
 イギリスは、2002年総選挙後の参加を予定しているが、産業界の代表などを集めた常設委員会を設置するほか、政府の各機関がユーロ導入に向けた作業計画づくりを始めた。ギリシャは2001年1月のユーロ参加が見込まれている。

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