解 説

使用済み核燃料が本格搬入されるものの、
核燃料再処理工場操業延期の憂鬱

 使用済み核燃料の搬入を巡って、日本原燃と青森県、六ケ所村が搬入の前提条件としていた安全協定を締結。全国の原発内に貯蔵されている使用済み核燃料の青森県六ケ所村の再処理工場への本格搬入が、2000年12月19日に始まった。

 今回、運び込めれたのは、茨城県東海村の日本原電東海第2発電所の使用済み核燃料11トンと東京電力福島第2原発の使用済み核燃料13トン。

 「再処理工場での処理を前提とした初の本格搬入」としているが、青森県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場では、2003年に同村に完成予定の再処理工場で使用済み燃料が再処理される予定だったが(操業開始時期は1996年の大幅な設計変更に伴ない、2000年操業開始予定が2003年1月に変更された経緯がある)、工場本体の建設工事の進ちょく率が1999年2月末で12%にすぎず、日本原燃が「予定通りの操業開始は困難」との結論を出し、操業開始を2005年7月へと2年半先送りしているのが現実。

 再処理工場は、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して、核燃料として再利用する目的で操業を計画しているが、再処理とは名ばかりで、使用済み核燃料の一時保管の役割が大きいのが現状だ。
 再処理工場の操業開始時期を2003年とした従来の計画では、国内の原発敷地内に貯蔵されている使用済み燃料(1998年で使用済み燃料のウランは重量換算計約7020トン)を1999年度に300トン、2000年度と2001年度に各400トンを六ケ所村に搬入し、操業開始までに計1600トンを受け入れる予定だった。しかし、操業開始が先送りされたことで、受け入れは1999年度に124トン、2000年度と2001年度に各250トンに減った。

 全国の電力各社は原発稼働に伴って増え続ける使用済み核燃料対策に苦慮しており、貯蔵容量の限界が近いとされている東京電力福島第2原発や関西電力美浜原発などを筆頭に、電力各社は、収納ラックの間隔を狭めて貯蔵容量を増やす「リラッキング」などと称される当座しのぎの対応策に頼っているが、「もはや限界」との声が高い。
 1998年10月に始まった六ケ所村への使用済み燃料搬入は、直後に発覚した使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題で中断、1999年6月に入ってやっと再開のめどが立ったという状況だ。
 この結果、「トイレのないマンション」と称された原発は、ますます発電所内での使用済み燃料の貯蔵量が増え、再処理事業の遅れがひいては、国のプルサーマル(混合燃料利用)計画にも影を落としかねないという八方ふさがりの状態になり始めている。

 国が進めるプルサーマル計画も、使用済み燃料の搬入と再処理が大前提になるため、この操業遅れは、平成22年までに国内16〜18基の原発に導入が予定されているプルサーマル計画そのものの見直しも迫られることになりそうだ。

 そこで「これでは展望を求められると、説明のしようもなく辛い」とばかりに電力9社と日本原子力発電は、「使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料に加工する工場を青森県六ケ所村に建設することを決めた」と発表。
 事業主体は、再処理事業を手掛けている日本原燃で、2008年ごろの稼働を目指す、としている。新工場は、六ケ所村にある日本原燃の再処理工場に隣接して建設。最大加工能力は年間約130トンで、総工費は約1200億円。順調に行けば「MOX燃料を使う予定になっている原発でこれらの燃料をすべてまかなうことが可能」とする電気事業連合会などの言いぶんは通るが、これまで予定通りに進行していないのが、核燃料の再処理をめぐる施設運営。

 これもまた、話だけでまったく現実的なめどはたっていないのが実情だ。

ウラン濃縮工場はダウン
 原発用の国産燃料確保をうたい、1992年に青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地で操業開始した日本原燃のウラン濃縮工場は、未だに当初目標の生産規模を達成するめどが全く立っていないのが実情だ。

 ウラン濃縮とは、天然ウランには原子炉燃料として使うウラン235が約1%弱しか含まれていないため、遠心機などを使い、約5%にまで濃縮するというもの。

 日本原燃は、国内の原発が必要とするウラン燃料の少なくとも四分の一を賄うことを目標に工場建設を進めてきたが、濃縮行程をこなす遠心機に故障が多く、能率が悪いことから濃縮行程の設営を停止。 遠心機の改良や新たな機械の開発を行なったが、新たな機械の開発は、技術的な問題で大幅に遅れ、現在は開発そのものが止まった状態だ。

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