コラム

「たばこ規制枠組み条約」と「核拡散防止条約」と「京都議定書」と

 喫煙による健康被害の防止を目的とする世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」が2005年2月27日に発効した。
 成人のほとんどが喫煙者で、葉巻の輸出では年間約200億円以上を稼ぐキューバでさえ、レストランやバーをはじめ公共施設や交通機関での喫煙が禁じられ、たばこの自動販売機も撤去された。
 禁煙の先進国は、何といってもアメリカだろう。オフィスやレストラン、バーやカジノも禁煙となったカリフォルニア州は、違反した経営者には70万円以上の罰金を科すし、吸殻の有害物質が生態系を破壊するとしてビーチも禁煙にした。

 愛煙家の肩身はさらに狭くなるとはいえ、これが世界の潮流になった。愛煙家にとっては仕方ないことだ。
 「たばこ規制枠組み条約」の批准国では、これから、たばこ広告の禁止など消費削減策の実施が進む。

 地球温暖化防止のための京都議定書は2005年2月16日に発効した。これにより、先進国に課された二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減目標は国際公約となり、法的拘束力が生じた。
 世界中で発生している異常気象は、地球の温暖化が原因といわれ、温室効果ガス(CO2、メタン、一酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄)の削減が求められ、これが世界の潮流になった。

 しかし、これは「たばこ規制枠組み条約」並にとんとん拍子で進むことはなく、総排出量で世界全体の20%以上を占めるアメリカは、自国のエネルギー・経済政策優先を理由に地球温暖化防止からは離脱したままだ。
 日本だって、まじめに達成する気もなく、他国から排出量取引などを活用して「買う」形で帳尻をあわすシナリオを描いている。

 核拡散防止条約(NPT)は1970年に発効したものの、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国には、今もって核兵器の保有が認められ、核兵器全面禁止条約に至ろうという潮流は、ついぞ起きない。条約が決める「核保有国による核兵器廃絶への明確な約束」を、アメリカはあくまでも無視する構えだ。

 「たばこ規制枠組み条約」では、キューバの、あのカストロでさえ、健康を理由に自らも葉巻をやめて“禁煙法”まで施行したのに、地球の健康を目的とする温暖化防止条約や核兵器禁止条約については、さっぱり各国の反応が鈍い。

 自分で煙草を吸っての「禁煙せよ」の理屈は通用しない。だが、温室効果ガスを放出し続けての「環境を大切に」の話や、核保有や核兵器開発し続けてておきながら他国に「核開発を放棄せよ」という理屈は通用するのだから、困ったもんだ。

 愛煙家とすれば、「禁煙スペース」で煙モクモクくゆらせて、批判のまなざしを受けながらも、やけくそになって上記理屈等々を朗々と喋ってみたくもなるというものだ。
 そうすると「ほら、煙草吸うからアタマおかしくなるのよ」とせせら笑いされるのは必至だろう。

 しかし、5年毎に行なわれる核拡散防止条約の議論の席上で、核軍拡をやめずに非核国に対する核攻撃の可能性すらちらつかせるアメリカに対しては「ほら、新型核兵器の強力地中貫通型核の開発などするからアタマがおかしくなる」と迫る者すらいない、というのもおかしな現実だ。

 あれこれ様々な条約がある。どれも一見すると立派だ。しかし、矛盾にみちた条約やご都合主義の対応や詭弁も多い。これが浮世というものだろうが、もうそろそろ、どうにかならぬものか。(05・2/27)

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