コラム

●ニッポンの常識は海外の非常識●

 サッカーのワールドカップ(W杯)フランス大会で、日本人の入場券が大量に不足した問題をめぐり、大会のフランス組織委員会(CFO)と、日本の旅行業界が対立、という状況を見聞きしている時、ふと中国の上海に行った時のことを思い出した。

 現地上海のツアーコンダクター氏と散歩をしながら話をした際、「日本について」彼はこんなことを言った。

「朝、目覚めて外を見たとき、沢山の白いネコが歩いているのを目撃したとします。そして次の日、また目覚めて外を見たとき、今度は沢山の黒いネコが歩いているのを目撃したとします。すると日本人は、昨日は白ネコだったのに今日は黒ネコって変だ、どうして、なぜ、っておおかたは、そう思います。中国人が、その光景を見て感じるのは、昨日は白ネコが多い日で今日は黒ネコの多い日なんだ、です。なぜ、どうして、はなくって、そのままを受けとめます」と言い、話を続けた。

「日本の貿易商社が中国に青磁(中国の代表的磁器)を買い付けに来ました。そして、買い付けが終って上海港から横浜港の船便での輸送を指示し、貿易商社は日本に戻りました。そして約束の日、間違いなく横浜港に船は着き、間違いなく荷物が入っている箱も届きました。それを買い付けた日本の貿易商社の人がその箱を開けると、注文通りの数の磁器はありませんでした。そこで、中国の買い付け先に電話を入れて、注文の数が揃っていない旨と配送管理の不備を強く抗議しました。すると買い付け先の人はあっさりとこう返事をしました。『私たちは、あなたの注文されたものを間違いなくあなたが指定した輸送業者に渡しました。伝票も間違いなくあります。輸送業者から先のことについては、あなたたちとわたしたちの間では、何の約束も契約もしていません。輸送業者の手から船への荷積み、運搬まで、いろいろな人の手を介します。その間で何がどのようになるのか分からないのが中国です。日本ではそんな事は常識的に考えて起こらないと言われても、それは日本の常識で、私たちの常識ではありません。むしろ仕事というものは、手配するだけではなく、買い付けした側がその場に立ち合い、最後まで責任をもって見届けて確認するのが常識です。それをあなたが怠ったために、こうした問題が発生したのです。責任はあなたにある』と、言った」というのだ。

「なぜ、どうして」と、いろいろ詮索したり疑ったりする癖がありながら、肝心なところでの確認や管理をミスするマヌケさが日本人にはあると、彼は言いたかったのだろうと、その話を聞いて思ったことだった。

 そして今回の「チケット不足」の件である。イカサマなチケット業者もいれば、まともな業者もいる。購入を手配しただけで確保できたと思ってしまった日本の旅行代理店業者は、やはり「よもや」というトラブルの慣習を忘れてしまって、緊張感のないノントラブルの平和ボケの世界にいるのかも知れない。

 海外で日本人旅行者がカモにされる時代が終り、日本の旅行代理店というプロがカモにされるマヌケな時代の到来だ。

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