「食べる事で体調を整える(食養)」に「薬膳」の考えを合わせる


1)食べるものには「五性・五味」というものがある。

 五味は、「すっぱい」「にがい」「あまい」「からい」「塩からい/しょっぱい」という味覚で、酸・苦・甘・辛・鹹(かん)と称される。そして、その五味は身体の代表的な臓器(五臓)と密接な関係があり、酸「すっぱい」ものは肝臓、胆、目に、苦「にがい」ものは心臓、脳、精神に、甘「あまい」ものは脾臓、胃に、辛「からい」ものは肺臓、鼻、大腸に、鹹「塩からい」ものは腎臓、膀胱、耳に影響する。そしてそれは、摂取過剰にならない限り機能を養い、健康に貢献する。

 五性とは、食べものの性質のようなもので、それぞれの食べ物には、熱「あつくする」、温「あたためる」、平「変わらず」、涼「さます」、寒「ひやす」というものがあり、熱性の食べものには興奮作用があって貧血や冷え症の人に、寒性の食べものには鎮静や消炎作用があってのぼせ症や高血圧の人にいい。温性や涼性の食べものは、熱性や寒性ほど強力ではないものの、緩やかに同様の作用をおよぼす。平性の食べものはいずれにも属さず、平均的で均衡のとれたものだ。

 また五色というものもあり、黒・白・赤・青・黄で分けられる。これを食べものの代表でいえば、黒は黒米で腎臓に、白はダイコンで肺臓に、赤はニンジンで消化器系に、青は緑葉色野菜で心臓に、黄は穀物で五臓六腑に機能する。

2)この他、食べものの「性質」には次のようなものもある。

 この他に、食べものを補性と瀉(しゃ)性に分類することもできる。読んで字の如く、補性は身体の機能の衰退や不足をおぎなう働きをするもので、虚弱や衰弱、貧血、消化不良などに対応する食べものとして活用でき、その例としてごぼうや人参などの根菜類などがある。瀉性は身体の不都合な状態を取り除く働きをするもので、便秘や肥満などに効果的な食べものとして活用でき、その例としてコンニャクや海藻類や酢などがある。

 そして帰経。これは、食べものは個々に、身体の内臓のどこかに浸透していく道のようなものがあり、その食べものが内臓に辿り着いて吸収されることで身体の機能が補助されるというものだ。

3)食に「薬膳」の基本的なものを取り入れる。

 薬膳の特徴の一つに、四季の変化にあわせて、おりおりの収穫できる食物をとることがある。春、夏、秋、冬、それぞれの寒気と暖気によって育つ食物は違うのだから、それを人体の寒熱に適合させるのである。

 自然とはよくできたもので、夏には夏の、冬には冬の、季節的な諸問題を解決するにふさわしい野菜や果実が採れる。

 例えば寒い冬は、ニンジン、ニラ、ネギ、カブラ、ダイコンなどでからだを温め、暑い夏にはスイカ、キュウリ、ナス、トマトなどで、からだをさっぱりさせる。

4)四季とからだの関係、そして「食」への対応。

 は、風邪(ふうじゃ)と肝の季節。

 生命が躍動を始め、冬の眠りからさめて体内の毒を出そうとする。目の異常や肝臓などに故障が出やすい季節。苦みと野生の植物を摂り入れ、肝臓を強める食事をこころがける。ふきのとうやなずななどが最適だ。

 は暑の季節。

 暑邪(しょじゃ)に侵されると発熱、多汗のためからだが衰弱する。からだの中の暑邪を追い出し、疲れやすい心臓をいたわる食事をこころがける。ウリ科、ナス科のものが夏の盛りにはぴったりということになる。トマトや豆腐は欠かせない。

 は、過ごしやすいが、燥邪(そうじゃ)が押し寄せる季節。

 大気の乾燥は呼吸機能を低下させ、からだに必要な津液(しんえき)をも乾燥さす。皮膚のカサカサ、のどの故障などが起きる。呼吸器の肺の働きを助ける野菜、れんこん、辛味のからし等が益となる。ハスを使った料理やスギナのお茶もいい。

 は寒邪(かんじゃ)の季節。

 からだが寒さの為に縮こまり、痛みや冷えを作る。冷えに弱い腎臓を守る温かいスープ類に、適度な塩味をつける。保温作用の強いネギで煮込んだ烏骨鶏のスープなどは最適。またもち米は脂肪も多いのでいい。体全体を滋養する黒豆類は欠かせない。


日常の食生活をする際、これらの基本を頭の片隅に置いておいても損はない筈です。

そして、もうそろそろ「安全だー」「有機だー」と、馬鹿のひとつ覚えのように言うのだけはやめて、「何を、どう食べるか」も考えてみる必要があるのではないでしょうか?

さらに、本来「食べる」というコトはどういうことなのかを「基本食」で知る。

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