狂牛病対策として買い上げ申請の国産牛肉、最終検査結果で対象外の肉が約140トン混入していたことが判明。

 農水省は2003年5月16日、狂牛病(BSE:牛海綿状脳症)対策として買い上げ申請の国産牛肉に対する検査の最終結果を公表した。

 偽装を行なった雪印食品、日本食品、日本ハム以外には「悪質な申請は見つからなかった」としたが、業者から申請のあった約1万2626トンを検査した結果、買い上げ対象外の肉が約140トン混入していたことが判明した。

 対象外の肉を買い上げ申請していたのは、全国365社のうち約3分の1に当たる121社で、全農(全国農業協同組合連合会)と全肉連(全国食肉事業協同組合)のものが対象外の割合が大きかった。対象外は、品質保持期限切れ76トン、加工肉の混入18トン、スライス肉混入13トン、確認できないもの12トン、骨付き肉3トンなど。

 買い上げ事業は、2001年9月の狂牛病発生で牛肉需要が落ち込んだことから、食肉業者を救済するために同年10月に始まった。
 ところが、2002年1月に雪印食品が意図的に申請牛肉に対象外の輸入牛肉を混入させ、買い上げ費用をだまし取ろうとした詐欺事件が発生。このことから、買い上げ申請の国産牛肉に対する総点検が開始された。当初は一部を抽出しての検査が実施されたが、「抽出検査ではチェックが甘い」と批判を受けたことから、全量検査に切り替えた。

 農水省は全量検査作業を4月初めに終え、疑わしいものについて業者に弁明を求めていたが、判定委員会にかけた結果を「ほとんどが趣旨の理解不足やミスによる混入で、業者名の公表や刑事告訴には至らない」と結論付けした。

 対象外となった肉は、買い上げ費用や保管費などの支払いが取り消されるが、日本ハム、雪印食品などが申請を取り下げた1358トンと合わせ、約31億円の無駄な補助金出費が抑えられる。(03・5/19)

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アメリカがEUの遺伝子組み換え作物規制は協定違反だとしてWTOに提訴。

 アメリカのブッシュ政権は5月13日、EU(欧州連合)が遺伝子組み換え作物を規制しているのは協定違反だとしてWTO(世界貿易機関)に提訴した。
 1999年にEUは、安全面への配慮から組み換え作物の栽培や流通の新規認可を凍結。アメリカ政府はこれに反発し、提訴も辞さない構えを見せていた。
 これまでアメリカは提訴を見送っていたが、EUが、一向に改善がみられないアメリカの輸出優遇税制に関して大規模な報復措置を2004年1月までに発動するとの方針を発表。WTOが約40億ドルの報復関税を発動する権利をEUに与えたことから、アメリカ政府が対抗策として提訴を決めた。

 アメリカ政府の言いぶんは「EUの措置は科学的な根拠に乏しいし、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に違反すると」というものだが、アメリカの主張する「遺伝子組み換え作物は問題なく安全だ」とする言いぶんも当然のことながら、「科学的な根拠に乏しい」というのが実情だ。

 アメリカ・EU間の貿易摩擦が一段と深刻化するのは必至の情勢で、アメリカの働きかけを受けて、カナダ、アルゼンチン、エジプトも共同提訴国になるほか、オーストラリア、チリなど農産物輸出国を中心とした9カ国が支持する考えを表明していることから、大型紛争に発展する可能性も出てきた。

 WTOの紛争処理機関の責任も重大で、国際機関として組み換え作物を徹底検証したうえで、「疑わしきは認めず」とした「予防原則」を、世界に向けてきっちり打ち出す必要がありそうだ。(03・5/14)

遺伝子組み換え作物の輸出入に関連する参考記事

●「輸入拒否権」を認める国際取引ルール

 「生物多様性条約特別締約国会合」で、2000年1月末、遺伝子組み換え作物の「種子」に関してのみ、輸入国が、それを輸出しようとする国に対して「輸入拒否権」が行使できるという内容の「バイオ安全議定書」が採択されている。
 EUなどは「食用、加工用、飼料用を問わず、すべての遺伝子組み換え作物そのものに対して輸入拒否できるようにする」ことを主張したが、アメリカなど遺伝子組み換え作物の輸出国は当然猛反対。「遺伝子組み換え作物の種子」に関してのみ、「輸入拒否権」が行使できるという内容に落ち着いた。拒否権を行使する際には「輸出国に通知をして同意を得る」という「事前同意」が必要だが、この議定は、WTOなど他の貿易協定には従属せず、独自に有効性をもつ、というもの。

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農産物の偽装不正表示続発で新潟県、緊急会議で防止呼びかけ。

 全国的に農業生産者、生産団体による産地などの偽装、不正表示が問題になるなか、新潟県は5月12日、「県産農産物信頼確保緊急対策会議」を開き、農産物表示の信頼回復にむけて意識改革を呼びかけた。
 新潟県内でもここのところ偽装、不正表示が相次いでいることから、これ以上の不祥事拡大を避けるため、「品質表示の点検」「栽培履歴・記帳の徹底」「栽培履歴の開示と追跡(トレーサビリティー)」などの取り組みを農業生産者や生産団体に強く求めた。

 新潟県内では、JAえちご上越の中頚頚城村の農家で構成する農事組合法人が、約7・7トンの他県産コシヒカリを「新潟県産コシヒカリ100%」と偽って表示して販売。JAS法で米産地などの表示が義務付けられた2001年4月以降、米どころ新潟の産地ではじめて米表示違反が表面化した。
 これを受けて新潟県は、表示違反の在庫品の出荷停止と改善計画の提出を指示したが、同法人はこれ以外に、無農薬表示して出荷したネギについても、適用外使用の農薬「オルトラン水和材」を使って2000年後半から年約13トンを通年出荷していたことが発覚。JAも、栽培確認義務の任務欠如として責任を問われている。

 現在、農産物表示については、一部の農業生産者や生産団体などのいい加減な取り組みが、農業全体の足を引っぱりかねないと、全国的に問題になっている。(03・5/13)

●こうした中で1997年8月から2003年5月13日までの約6年間、新潟県総合生活協同組合が佐渡島内の生協組合員延べ699人に「減農薬米」として販売していたものが、全量が一般米だったことが5月16日に判明した。また、この生協とJA佐渡が、減農薬の明確な栽培指針を文書で契約しないまま販売を続けるという、ずさんな契約実態も明らかになった。
 いま佐渡では、トキの野生復帰を目指す佐渡島内の有志でつくるボランティアグループなどが、有機農法による田植えやビオトープ(野生生物の生息空間)づくりに汗を流している最中で、トキの再生を軸に環境保全型農業がすそ野を広げつつあるだけに、地元では「地道な努力に対する裏切りだ」との声があがっている。

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はじめてのサンプル分析で国産小麦から基準値超えの「かび毒」を検出。

 FAO(国際食料農業機関)やWHO(世界保健機関)などで、穀物のDON(デオキシニバレノール:麦類で赤かび病の原因となるかび毒)に対するリスク管理の必要性が議論されているなか、2002年5月に厚生労働省が小麦のDONにかかわる規格基準を設定したのを受けて、農水省が国内ではじめて実施した「麦類のかび毒の実態調査結果」が2003年5月9日に発表された。

 その結果、国内で生産された小麦の3パーセントから、基準値を上回る濃度のカビ毒「デオキシニバレノール」が検出されたことが分かった。

 昨年生産された国内産小麦について出荷前の小麦を無作為に199地点でサンプル調査したところ6地点で厚労省が定めた基準値(1・1ppm)を超える1・2ppm〜2・1ppmの濃度を示した、というもので、農水省は基準値を超えた小麦の出荷自粛を生産者団体などに求めた。

 全サンプルのうち、約60%にあたる118点からは検出されず、全国の平均値は0・16ppmだった。輸入小麦については、基準値以下のものを輸入することになっていることから分析サンプル178点のうち75%の133点からは検出されなかった。また、検出された45点の濃度は0・05 〜0・68ppmで基準値以下だった。

 DON(デオキシニバレノール)は「恒常的に摂取しない限り健康には影響ない」とされているが、厚労省などは「直ちにヒトの健康障害を招くことは考え難いが、小麦についてDONの摂取による健康危害を未然に防止するための方策を検討する必要がある」としている。

 腎毒性及び発がん性が認められているかび毒「オクラトキシンA」についても調査したが、国内産麦(小麦30点、大麦10点)、輸入麦(小麦17点、大麦3点)及び小麦粉10点の合計70サンプルからは検出されなかった。

 今後の対応として農水省では、「食用麦の赤かび粒の混入限度を1・0%から0%に変更するなど、農産物検査法に基づく検査規格を改正し、赤かび粒の混入防止の取組強化を推進する」としている。しかし、その方法として旧態依然とした形=農薬による防除=に依存し過ぎると、かび毒は抑えられたものの、残留農薬汚染という別の問題を抱え込んでしまう恐れも懸念される。(03・5/11)

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小・中学校の農業体験学習が増加傾向。

 全国農業協同組合中央会の委託を受けて実施した全国農村青少年教育振興会のアンケートで、小・中学校の農業体験が、完全週休2日制や総合的学習の時間などの効果で増加傾向にあることが分かった。
 2002年度に実施したアンケートは全国の公立小・中学校3332校が対象で、全国総数の10分の1程度と対象校はまだ少ないが、回答した小学校の約7割が農業体験を実施していた。中学校は小学校に比べると少なく、約3割で農業体験が実施されていた。小中合わせると約4割が未実施だった。

 調査結果によると、実施した時間は「総合的な学習の時間」が82%と大半を占めた。次いで「教科」64%「学校行事」21%「特別活動」17%と続いた。また実施頻度は「年に数回」が52%と過半数を占め、年1回の遠足気分の農業体験から種まきから収穫までを体験する傾向に変化しつつある傾向を伺わせた。

 とはいえ、農作業の一部を体験している学校では、まだ稲刈りや芋掘り等の収穫作業だけの実施が多数を占めた。

 農作業のすべての体験を実施している学校では、いも類や野菜類が約7割を占め、稲作は小学校で約5割、中学校で約1・5割強だった。

 体験の場所は、種まきから収穫までを体験する学校では「学校内」が最も多く66%、一部の体験しかしない学校は72%が「市町村内」だった。

 農業体験学習の実施上の問題点については「時間不足」「学校・教師の知識不足」「適当な場所がない」「外部の指導者不足」「経費がかかる」などを課題としてあげている。(03・4/29)

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全国に流通していた無登録農薬の土壌殺菌剤から基準値超えのダイオキシン検出。

 2002年7月末以降、約270の業者が登録のない農薬を輸入し、44都道府県で約4000戸の農家に10種類の無登録農薬を販売していたことがことが判明しているが、無登録農薬として販売が確認され、保管在庫のある農薬のうち、PCNB(土壌殺菌剤)とミクロブタニル(殺菌剤)からダイオキシン類が検出されたことが分かった。 そのうちPCNBは農薬取締法で定められた基準値0・1NG-TEQ/gを超え、0・97〜3・7NG-TEQ/gの数値を示した。

 このため農水省は4月25日、各県に対しダイオキシン類等の発生の問題がない処理又は処理が行なわれるまでの厳重な保管を指導するように通知した。

 PCNBについて農水省は「これまで、廃棄処理を行なわずに保管を指示しており、また、主にアブラナ科野菜等に使用された土壌処理殺菌剤であったことから、作物に直接施用されることはなく、ダイオキシン類が作物に付着することは無かったと考えられる」としている。(03・4/26)

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地域づくりや一村一品運動のモデル大分県大山町農協、自由な取引妨害で公取委が改善指導。

 地域づくりや一村一品運動のモデルとなったことで知られる大分県の大山町農協に独占禁止法違反の行為があったとして、公正取引委員会九州事務所が改善を指導したことが4月3日、分かった。
 公取委が、大山町に隣接する日田市の専業農家でつくる「ひた認定農業者の会」から「大山町農協が不公正な取引をしている」との訴えを受けて調査したところ、大山町農協が排他条件付き取引を強要していることが判明した。

 大山町農協直営の農産物直売施設「木の花ガルテン」(同町に1店舗、福岡、大分両市に各2店舗開設、年間取扱高は約12億円で出荷農家は約2300人)に出荷する同市の複数の農家が2002年秋から生協の「直売コーナー」にも出荷を始めたところ、農家に対し大山町農協が「木の花ガルテンに出荷か他店への出荷か選択を」との文書を送付。これを受けて「ひた認定農業者の会」は「地産地消の先進地なのに、よその地産地消にブレーキをかけることはあってはならない」として大山町農協に文書撤回を求めた。しかし、大山町農協は「他店を取るなら出荷者登録を抹消する」と、二者択一を迫った。
これにより農家の一部が生協への出荷をやめざるを得なくなり、「ひた認定農業者の会」は自由な取引を妨害したとして、公取委に調査を求めた。

公取委は、農家に二者択一を求めたことは独禁法が禁じた排他条件付き取引に当たると判断。大山町農協に自発的な改善を促し、対象農家に謝罪して訂正する文書を出すよう指導した。

 大山町農協は、1961年に当時の村長で農協組合長だった故矢幡治美氏が、「山あいの土地では稲作は生産性が低すぎる」として、「梅、栗植えてハワイへ行こう」のキャッチフレーズで地域農業の新しい形として梅と栗の特産品づくりに乗り出し、地域おこしの先進地になった。
 その後、中国江蘇省蘇州に現地企業との合弁会社を設立するなどして事業展開し、現在、同農協はその存在感と少量多品目生産を核に農協合併にも加わらない方針で独自路線を進んでいる。

 今回の公取委からの指導に対して同農協は「入荷量確保の観点で協力してくださいとの軽い気持ちだった」と釈明しているが、農家からは「地域づくりのモデルは過去のことと言われないためにも、これを機に排他的にならず地産地消の原点を見直して欲しい」の声もでている。(03・4/4)

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イラクの戦後復興や難民支援に政府備蓄米を放出、こめ支援実施の方針がほぼ固まる。

 イラクの戦後復興や難民支援に、政府備蓄米を放出する案が農水省内で検討されていたが、WFP(世界食糧計画)などによる対イラク支援要請を受けて政府は、こめ支援を実施する方針をほぼ固めた。

 現在、政府米の在庫は、国産米約150万トンとミニマムアクセスによる輸入米約100万トンで、国内消費のほぼ3カ月分に相当する。そして、これは備蓄というより過剰米として積み上げられているのが現実だ。そこで、「この際、だぶつく国内のこめ余り現象の解消に」と「人道面で日本の積極的貢献を示して、対イラク攻撃への支持表明で懸念される中東諸国の反日感情を抑えたい」の思惑が浮上。WFPを含む複数の国際機関が、イラクとその周辺の難民支援のために総額22億ドル相当の援助を国際社会に要請したのを機に、「こめ支援を顔が見える援助の目玉にしたい」方針がまとまった。

 これまで、例年使う援助米は約20万トン程度で、輸出国からの批判を避けるために国産米と輸入米がほぼ半々という状況だった。イラク周辺では長粒種が好まれており、この際、政府とすれば安価で財政負担が少ない長粒種の輸入米を大量に「放出」したいところだ。しかし、WTO農業交渉も進行中でもあることから輸出国からの批判を敬遠して、今回も「国産米と輸入米の比率を半々にして援助米に」の声も一部にある。

 政府は最大1億ドルの支援を検討しているが、具体的な支援方法は現段階では未定だ。
 ちなみに、政府備蓄米の価格は国産米で国際市場価格の約8倍、輸入米で約3倍になるため、支援方法は、政府が差額を補てんしてWFPに資金を拠出し、政府米を買い上げてもらう案が有力だ。
(03・4/2)

※4月9日、農水省はイラクに対する政府米の支援について、長粒種米を主体にタイ産米7600トン、国内産米2400トンの計1万トンを名古屋港から5月中旬までに積み出すことを決めた。

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無登録農薬の製造、販売、輸入、使用を全面的に禁止する改正農薬取締法、施行。

 無登録農薬の製造、販売、輸入、使用を全面的に禁止する改正農薬取締法が2003年3月10日から施行。無登録農薬が全国で流通し、多方面の農業現場で使用されていた問題を受け、販売者に対する罰則を大幅に強化、使用した生産者に対しても新たに罰則が設けられた。
 無登録農薬を販売した場合の罰則は、個人が「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」。法人の罰金の上限はこれまでの「5万円」から「1億円」に一気に引き上げられた。製造、輸入した者に対する罰則は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」。

 改正法では、農水省や環境省に対し、農薬の種類ごとに「適用作物」「単位面積当たりの使用量の最高限度または希釈倍率の最低限度」「使用時期」「総使用回数」などの基準を省令で定めるよう義務付けた。登録のない農薬を農産物の防除に使用したり、登録農薬を省令に反して使用したりした場合には、使用者に対して「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」が適用される。

 定義が曖昧で、名称を含め概念そのものが意味不明だと指摘され、生産者の間で極めて不評な「特定農薬」=有機栽培に取り組む農家などが雑草や病害虫などの防除に使い、人や動物などに害を及ぼす恐れがない資材=については、改正法では、殺菌効果のある「重曹」と「食酢」、「地域で採取された寄生バチなどの天敵」の3種類が「特定農薬」として指定される。
 「特定農薬」については、「無登録農薬と明確に区別できる」と歓迎する声も一部であるが、有機無農薬栽培に取り組んできた生産者の間では「そもそも農薬として位置付けるものではなく、国が管理するべきものでもない」「通常の農薬と混同され、消費者のイメージダウンを招く」との懸念の声があがっている。
(03・3/9)

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鳥インフルエンザ発生でオランダ産に続きアメリカ産の鶏肉も輸入禁止措置。

 3月3日にオランダの採卵鶏農場で「鳥インフルエンザ」(血清亜型H7)が発生したため、オランダ産鶏肉に対して輸入禁止措置が講じられたが、アメリカ・コネチカット州の養鶏場でも「鳥インフルエンザ」が発生したことから、農水省は3月6日。アメリカ産鶏肉のすべても輸入停止した。
 アメリカ産鶏肉は輸入全体の約15%に当たる7万6000トンが輸入されている。

 同病の清浄性が確認されるまでの間、輸入禁止措置は継続されるが、ウイルスの病原性が弱く、発生地域で適切な防疫措置が講じられたと確認された場合は、停止措置を縮小する。

 過去、香港では97年から98年にかかけて鳥インフルエンザが大流行し、このウイルスに感染したとみられる6人が死亡。2001年5月には新型ウイルスが発見され、120万羽以上が処分されたこともある。(03・3/7)

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年内施行を目指し、農水省、環境省、厚生労働省など「遺伝子組み換え生物使用規制」の法案提出へ。

 遺伝子を組み換えた昆虫などが自然界に広がり、在来の生物に悪影響を与えるのを防止するため、環境、農水、厚生労働など5省は、今国会に「遺伝子組み換え生物使用規制生物多様性確保法案」を提出する。

 除草剤に強い大豆の栽培や運搬など組み換え作物を屋外で利用する第1種使用では、国の承認を受けるなどの事前チェックと、悪影響があれば回収させる規制も盛り込んだ。使用中止や回収の命令などに違反した者には、1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。これまでは各省庁の指針で安全性をチェックすることにとどまっていたが、年内施行を目指して法制化する。これにより管理体制がようやく国際レベルに達する。法制化は、組み換え生物による生態系への悪影響を防止する生物多様性条約カルタヘナ議定書(2001年1月採択)を批准するための措置で、議定書は早ければ2003年中にも発効する見通しだ。

 規制では「研究室など閉鎖環境で利用する第2種使用では拡散防止措置を取る」「普通の大豆に遺伝子組み換え大豆が混じるなど混入の恐れがある産地からの輸入では、混入を調べる生物検査を受ける」ことも義務付ける。
 第1種使用の承認時には、ほかの生物への影響などの評価書と使用方法などを示した使用規程を主務大 臣に提出させ、悪影響があると判断すれば修正を求める。予想しなかった影響が後から分かった場合は、変更や中止を求めることができる。また、第2種使用で拡散防止措置が定まっていない場合は、主務大臣の確認を受ける。
 輸入の際には第1種使用と同様に主務大臣の事前承認を受けるとともに、使用規程通り使う責任を負う国内管理人を置く。日本からの輸出の際には、事前に相手国に組み換え生物の種類などを通告、包装や容器などに「組み換え」であることが分かる表示を求めた。

<規制法案の骨子>
●組み換え大豆を栽培するなど組み換え生物の屋外使用では、国の承認を受けるなどの事前チェックと、影響があれば回収などの規制
●使用中止や回収の命令などに違反した者には、1年以下の懲役か100万円以下の罰金
●研究室など閉鎖環境での使用では拡散防止措置
●組み換え生物が混入する恐れがある場合は、輸入段階で混入を調べる生物検査を受ける
●輸入で事前承認、輸出では事前に相手国に組み換え生物の種類などを通告、包装や容器などに表示

遺伝子組み換え生物:生物のDNA(デオキシリボ核酸)の一部を、ほかの生物のDNAに組み込むことでできる生物で、例えば、葉を食べた害虫が死ぬように細菌の遺伝子を組み込むなどする。
 農業分野を中心に実用化が進んでおり、それらを用いた農産物も、害虫や除草剤に強いトウモロコシや大豆、病気に 強く日持ちがするトマトなど17に上る。

遺伝子組み換え農産物の弊害:北米を中心に栽培されている殺虫成分を作る細菌「Bt菌」の遺伝子を組み込んだトウモロコシ「Btコーン」の例のように、「益虫であるチョウにも有害」なほか、殺虫成分が土壌に染み出して毒素が根近くの 土壌に残留して200日以上殺虫性を維持するなど、弊害や生態系への影響などが指摘されてきた。
 また、害虫を寄せつけないように遺伝子を組み換えたジャガイモをラットに食べさせたところ、免疫力の低下が著しくあらわれたという実験結果もあり、遺伝子組み換え農産物は全般的に、人体に悪影響を与えるのではないかと懸念されている。

(03・3/2)

※関連記事バックナンバー「迷走の遺伝子組み換え食品表示問題、一歩前進?(1999〜2000年)」

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JAS法違反で有機認証業務停止命令、熊本の有機JAS登録機関。

 農水省は2月26日、有機JAS認証機関のオーガニック認証協会(特定非営利活動法人・熊本市)がJAS法に違反したとして90日間、有機認定を停止するよう命令した。

 農林水産消費技術センター(独立行政法人)から、オーガニック認証協会について、事業者の認定に当たって「認定手数料」以外は徴収認可されていないのもかかわらず、別途「申請料」と称する手数料を徴収しているとの報告を受け、農水省が調査した。その結果、同協会はそれ以外にも、有機認証した総菜・弁当などの加工品の製造業者に対する定期的な調査で、製造業者に原料を納入している業者の代表者が検査員となり、生産工程管理審査も十分行なわずに、利害関係を有する者同士で、いわば「なれあい認定」していたことも分かった。

 これにより農水省は、3月1日から5月29日までの90日間有機認定を停止するよう命令すると共に、これまで認定した191の業者が現時点において認定の技術的基準に適合しているか否かを調査し、4月30日までにその結果を報告するよう求めた。

 認定停止は、登録認定機関の取り消しに次ぐ重い処分。登録認定機関そのものの取り消しは、有機認証に匹敵しない農産品を有機表示認証して自ら認定業務の廃止を申し出た日本オーガニック農産物協会がある。(03・2/27)

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JA、今度は選果機入札で見積書偽造を業者に指示、県も関与して不正黙認。

 愛媛県八幡浜市のJA西宇和が、かんきつ類共同選果場の選果機導入および選果場増築の入札で、参加した2業者のうち高い価格を示した業者に落札させ、県側も事実を黙認するなど、不正隠しに関与していたことが分かった。

 選果機は光センサーを使って糖度や酸度を測定する装置で、入札には静岡県内と愛媛県内のメーカー2社が参加した。もともと地元業者に発注する方針でいたJAは、入札の際、静岡の業者が地元業者より 約1億7000万円安い価格を提示したため、異例の手段として、高い価格を提示した地元業者に落札させた後、安い価格を提示した静岡の業者に提示額を落札額より高い額に書き換えるよう指示し、県内の業者に10億5000万円で落札させた。
 静岡の業者は、入札では実際には8億7900万円を提示したが、入札後に組合長から「落札価格より高い金額に入札の見積書を書き換えてくれ」と言われ、それに応じた。

 これに関して組合長は不正を認め、辞任する意向を示している。また県農産園芸課の係長なども関与しており、「選果機と建物の入札日が同じでは都合が悪い」として入札見積書の日付変更を指示、JAはこれを受け、県外メーカーに対し見積書を偽造させると共に入札日も書き換えさせていた。県もこの事実を認め、近く担当者らを処分する。

 JA西宇和の選果機導入と選果場増築の事業費は計約12億6200万円。補助事業として農水省が6億2500万円、八幡浜市が約1億2620万円を補助しているが、不正入札という事態発覚で今後、当然のことながらJA側が補助金を返還する=組合員の負担が増す=ことになる。(03・2/22)

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食品表示、「品質保持期限」を廃止し「賞味期限」に統一。

 「わかりにくい」との批判が多い食品の期限表示について、厚生労働省と農林水産省の審議会「食品表示共同会議」は2月18日、両省の法律で別々になっている同じ意味の表示「品質保持期限」(厚労省所管で食品衛生法)と「賞味期限」(農水省所管でJAS法)について、近く省令・告示を改正し、「賞味期限」という表示で統一することを決めた。2年後をめどに実施する。 弁当や総菜など劣化しやすい食品の安全性を保証する「消費期限」はもともと両省の法律で共通しており、今後も使用される。
 相次ぐ偽装表示問題を受け、両省が共同会議を設置して検討したものだが、「品質保持期限」や「賞味期限」の問題ではなく、偽装表示問題は、生産、流通、小売など、全構造的な問題だけに、「食品の期限表示についてはそこそこにして、本質的な偽装表示問題の解消を模索してほしい」との意見が消費者のおおかたの声だ。
(03・2/18)

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今度は静岡県経済連が米を不正に表示、農協グループに対する不信感さらに高まる。

 食糧庁は2月13日、静岡県経済農業協同組合連合会が、2001年9月から2002年3月にかけて、茨城県産のコシヒカリなど他銘柄の米を少なくとも約164トン混ぜて「静岡県産コシヒカリ13年産100%」と不正表示して販売していた、としてJAS法に基づく改善を指示した。

 農協グループによる米の不正表示が発覚したのは初めてだが、偽装が相次ぐなかでの生産者団体の度重なるごまかしは、農産物や食品表示に対する不信感をさらに煽ることになったようだ。(03・2/13)

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全農、今度はお茶を偽装。ずさんな農協の姿勢が次々に鮮明に。

 JA全農(全国農業協同組合連合会)は2月7日、全農ふくれん(福岡市)が製造した八女茶の表示がJAS法に違反していた問題で、農水省に点検結果と業務改善策を報告した。
 ブランド茶「八女(やめ)茶」の偽装は、全農福岡県本部が同県星野村産の茶葉に宮崎産や熊本産の茶葉を混ぜ、「茶処(どころ)八女で育ったさわやかな茶」などと表示して販売していたもので、取引先の生協の調査がきっかけとなり、2002年12月5日に発覚した。

 全農は2002年4月、全農チキンフーズが輸入鶏肉を国産鶏肉と偽装するなどの事件を 起こし、「チェック機能が働いていない」として同法に基づく業務改善命令を受けたばかり。
 この命令によって、当時の大池裕会長ら幹部が引責辞任、子会社を含めた全事業を見直し、全農が関わる商品について「新たな偽装は見つからなかった」と報告していた。

 しかし、実際には、昨年3月時点で不正をつかんでいながら全農の福岡県本部は、鶏肉偽装で全農が改善命令を受けた後も隠ぺいを続けていた。

 全農は「新しい機構もつくり適正表示に努め、信頼を回復していきたい」としているが、信頼回復に至るよりむしろ、他の農産物加工品の虚偽が今後も明るみに出る可能性が高い、と言えるのかも知れない。(03・2/10)

全農=農協組合員が作った農畜産物の販売や、生産に必要な資材の調達などの経済事業を担当するJAグループの中核。「全農ブランド」で知られ、昨年度の総取扱高は約5兆5000億円。ちなみに福岡県本部が扱う八女茶の昨年度の売り上げは約47億円に達している。

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有機JAS認証で初の取り消しへ  岡山の会社が組み換え大豆で豆腐

 有機JAS(日本農林規格)の認証を受けた豆腐製造会社「フージーファクトリー」(岡山県邑久町)がアメリカ産遺伝子組み換え(GM)大豆から作った豆腐に有機JASマークを付けていたとして、農水省は同社の認証を取り消す方針を発表した。取り消しは、有機JAS法が施行されてから初めてのケースとなる。

 同社は、有機JASで認められていないGM大豆を使った豆腐に有機JASマークを付けて売っていた。農林水産消費技術センターが同社の豆腐を買って成分を分析した結果、GMのDNAが検出されて分かった。改正JAS法で定められた記録の保持も行なっていなかった。

解説:「有機JASマークの付いているものだから絶対に安心だ!」の盲信はダメ

 有機JASマーク表示の農産物は、その認識として、「無害」が証明された肥料・土壌改良剤や農薬を使って栽培したもので安心、というのが一般的な認識だ。
 しかし、それは極めて安易な認識で、記事のような虚偽認証ではなく、正真正銘の「有機JASの有機農産物として認証する」規格のなかには、殺菌剤のボルドー剤(液)や殺虫剤のデリス乳剤など、ヒトに対する毒性あるいは発ガン性、環境汚染物質もあることは知っておきたい。
 有機JASマーク表示の農産物だかといって、安全・安心だとは限らないということは最低限、認識しておく必要はありそうだ。

 有機JASマーク表示農産物として日本農林規格使用できる農薬には、次のようなものがある。
 除虫菊乳剤/デリス乳剤/デリス粉/デリス粉剤/なたね油乳剤/マシン油エアゾル/マシン油乳剤/硫黄くん煙剤/硫黄粉剤/硫黄・銅水和剤/水和硫黄剤/シイタケ菌糸体抽出物液剤/炭酸水素ナトリウム水溶液/炭酸水素ナトリウム・銅水和剤/銅水和剤/ 銅粉剤/硫酸銅/生石灰/液化窒素剤/天敵等生物農薬及び生物農薬製剤/性フェロモン剤/誘引剤/忌避剤/クロレラ抽出物液剤/混合生薬抽出物液剤/カゼイン石灰/パラフィン/ワックス水和剤/二酸化炭素剤/ケイソウ土。

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