スポットニュース


食肉牛を対象にした狂牛病の感染検査、全国で一斉に開始、厚労省、疑陽性反応時点でも公表から、確定時点での公表に転換。

 狂牛病問題で市場では、10月18日から食肉牛を対象にした感染検査が一斉に始まった。
 全頭での感染検査実施は全国117の食肉衛生検査所など牛の食肉処理場を運営する46都道府県と政令市など78の自治体。各自治体が1次検査を実施し、異常がなければ流通可能となる。ここで陰性と言い切れず「擬陽性」と判定された牛については、帯広畜産大、横浜や神戸などの各検疫所で2次検査を行ない、シロかクロかの確定診断をし、シロという結果が出れば出荷される。

 この検査開始に伴い、出荷の自粛要請が出ていた生後30カ月以上の牛の食肉処理も再開され、安全が確認された牛から順次、出荷される。但し、食肉処理場で解体された牛肉が消費者に届くまで、通常5日以上かかる。容器に表示されている「加工日」は、肉がカットされた日付で、解体日や出荷日の表示ではない。 食肉処理される牛は年間約130万頭余りだが、4割近くの自治体が「検査が追い付かない」として牛の入荷頭数を制限。検査体制や安全表示が整わないままのスタートとなっている。

 1次検査で「擬陽性」と判定された場合、その時点で公表するか否かについては、「最終確認検査の結果を待たずに公表する」ことをほぼ固めていた厚生労働省は、一転して「精密検査を経て確定するまで、国の段階では公表を控える」ことに方針転換した。一方、県レベルでは「疑陽性反応の段階で公表する」意向を固めているところもあり、公表をめぐっては今後、バラつきが出そうだ。

 港区の都中央卸売市場食肉市場分場で扱われている牛の延髄から狂牛病の疑陽性反応が出た際、改めて確認検査をした結果として、狂牛病ではないことが判明。厚労省および農水省が牛肉の安全宣言を出すことにしていた最中での疑陽性反応騒動で、市場が一時混乱した。この経験を受けて行なった対策本部会議では、「風評被害をくいとめるためにも確認検査の結果を待ってのち」との意見と、「1次検査で疑陽性反応が出ても、それが狂牛病発生を意味するものではないことが、先の事例で消費者にも理解された」「むしろ公表することで混乱が避けられるのではないか」との意見に分かれた。

 疑陽性反応騒動の際、厚労相は、「疑わしいものはすべて拾い上げることになるので、これからもこういうことはあるだろう」「疑陽性になった場合でも、最終確認検査の結果を待たず、情報を公表するのが望ましい」との見解を示していることもあり、最終的には「疑陽性段階で公表」が固まりつつあった。しかし、自民党農林議員などから強い抵抗が相次ぎ、10月16日に開かれた自民党対策本部の総会では、「1次検査の結果を発表するとかえって風評被害が大きくなる」などして、確定段階での公表を求める決議をするなど、圧力が増した。
 このことから「疑いのある牛は流通を止めるため、安全性は変わらない」として厚生労働省は、確定後の公表に転換した。

 18日以前に解体・出荷された国産牛肉在庫約1万3000トンは、農水省が、市場の需給調整のために行なう「調整保管」制度を利用し、すべてを一時保管し、当面は流通を見合わす。

 海外では多くの国が日本からの牛肉輸入を禁止しているが、製造段階で牛肉エキスを使用する日本製カップめんやインスタントラーメンなども輸入禁止にするところが出始めるなど、この狂牛病問題の余波は、拡大傾向にある。(01・10/18)

※バックナンバー関連記事:国内産牛で初発生の「狂牛病」で関係省庁、ドタバタ対策。

●9月下旬、首都圏の病院に入院している10代の女性が、狂牛病が人に感染して起きる「新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」の可能性があると診断された問題で、坂口厚生労働相は10月18日午前の参院厚生労働委員会で、患者の存在を公式に認め、近くクロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会が開催されるとの見通しを明らかにした。しかし、「症状は似ているが、違う症状もあり、断定できない。現在ではそうではないという意味合いが強い」と述べ、感染の可能性は低いとの見方を示した。確実な診断結果が出るまで3カ月程度を要する。

BACK


スポットニュース


今度は羊、狂牛病と似た症状を示す羊の海綿状脳症が発生。

 茨城県は10月16日、羊が狂牛病と似た症状を示す海綿状脳症(スクレイピー)が発生したと発表した。
 発症したのは、食用ではなく、茨城大農学部で飼育していた実験用の羊1頭。9月中旬に検査を行なったところ狂牛病同様に脳の一部が海綿状(スポンジ状)になっていたので、帯広畜産大で確認検査をしたところ、スクレイピーと診断されたという。

 国内初の事例としてスクレイピーが見つかったのは1984年で、北海道内で3頭確認された。スクレイピーは、その後これまでに日本国内で57頭確認されたが、99年以降は発生が確認されていなかった。

 農水省は、「これまで発症した羊は全部適切に焼却処分されており、食肉、肉骨粉として販売されている事実はない」としている。
 ちなみにスクレイピーはヒトには感染しないとされているが、狂牛病同様に定かではない。
(01・10/16)

BACK


スポットニュース


2001年産水稲の作柄、豊作で減反強化や青刈りでも目標より生産過剰。

 米の流通・販売価格が下落するなか、過剰感を払拭しようと減反強化や青刈りによって収穫量を抑え込もうとする政策が続いているが、2001年産の水稲の作柄概況では、10アール当たりの収穫量を示す作況指数は全国平均で103の「やや良」で、値崩れを回避するために打ち出された生産目標の870万トンを10万トン程度上回ることがほぼ確実となった。

 減反の強化で作付面積は昨年より5万7000ヘクタール減った。また、3万3000ヘクタールの水田で収穫前に稲穂を刈り取る「青刈り」も実施した。このことから米の生産量は、 昨年実績の947万トンを下回るが、生産目標として掲げた870万トンを、計算上10万トン程度上回ることとなった。
 価格の下落を食い止めるため、約10万トンは生産過剰分扱いになり、流通市場から隔離されるものの、過剰感を払拭することは出来ず、今年産も流通・販売価格が低迷しそうな状況になっている。
(01・10/4)

※バックナンバー関連記事:豊作見込みの2001年産米、青刈り実施へ。

※バックナンバー関連記事:米の減反対策で稲発酵飼料の栽培拡大、作付面積は昨年の6倍に。

BACK


スポットニュース


国内産牛で初発生の「狂牛病」で関係省庁、ドタバタ対策。

 千葉県白井市内の酪農現場で「狂牛病」に感染した疑いのある乳牛1頭が見つかったと発表した問題で農水省は9月22日、「英国獣医研究所の診断で狂牛病に感染していたことが確認された」と、正式に狂牛病感染を認めたが、国内産牛で「狂牛病」初発生の問題で、関係省庁のドタバタ対策が続いている。

 厚生労働省は9月27日、特定危険部位の脳、眼、せき髄、回腸については、月齢を問わずすべての牛を焼却処分するように都道府県を通じて行政指導した。また厚労省は、食肉処理場での牛の解体方法も、牛の体を背骨に沿って二つに切断する「背割り」と呼ばれる従来の方法を改め、せき髄の一部が食肉部分に飛散し、汚染を広めないよう、延髄やせき髄を先に抜き取るヨーロッパなどの方法に切り替える改善策の検討も始めた。

 一方、農水省は、国内産の肉骨粉の製造や出荷を一時停止するとともに、輸入についても、一時的に全面禁止することを決めた。また、海外産も含めて在庫をすべて焼却する方針だという。 輸入や使用の全面禁止は10月4日からだが、停止期間は「当分の間」で、焼却時期ついては不明。輸入停止は、家畜伝染病予防法に基づく措置で強制的に実施できるが、国内産については法律が整備されておらず「要請」にとどまるため、早急に法整備して規制する。

 狂牛病に感染した牛は96年に北海道佐呂間町の農場で産まれ、98年4月に千葉県白井市の酪農家に売却された乳牛。搾乳できない状態になったため酪農家が8月6日、処分するために食肉処理場に持ち込んだ。その際に、起立不能など、狂牛病によく似た症状を示していたことから、検査用に脳の一部の延髄を採取、動物衛生研究所に回して検査した。
 当初は、「陰性」と判定されたが、脳組織から狂牛病特有の「空胞」(スポンジ状の穴)が見つかり、再検査をしたところ9月10日午後になって「陽性」の反応が出た。

 農水省はその時点では「確定ではない」とし、最終的な判断を仰ぐため脳組織の一部を英国の獣医研究所に送り、診断を依頼。その結果、9月21日に「狂牛病と診断する」との通知が届いた。
 これにより、国内産牛で初の「狂牛病」発生という事態になった。

 農水省では、欧州など海外から輸入した飼料を通して感染した疑いが強いとみて対策本部を設置し、この牛の感染ルートに絞って調査をしたが、96〜98年に飼育していた北海道佐呂間町の農場も、98年以後飼っていた白井市の酪農家も「肉骨粉入り飼料は与えていない」としているため、感染ルートの解明は難航。また、佐呂間町の農場で飼われていた牛72頭については、すでに食肉処理されたケースがほとんどで「追跡調査ができない」というのが実情だった。

 狂牛病は昨年以降、欧州大陸の各国で大発生。欧州各地に広がった「狂牛病」は、感染した牛などの肉や骨を使ったエサが感染源とみられ、その病原体「プリオン」は、ただ1つの感染源から拡大していったとされた。このため、農水省は欧州からの牛肉や肉骨粉などを使わないように行政指導するほか今年1月にはEUからの輸入を禁止した。しかし、この間にEUから約8万トンの肉骨粉が輸入された。

 これまで日本での発生の可能性を指摘する声もあったが、基本的には、農水省は一貫して「日本で発生する可能性は極めて低い」と強調し続けてきた。しかし、現実には、欧州と同一の病原体によるもの、とみられる狂牛病が発生してしまった。

 また、問題の牛が発見された時に農水省は、この牛は「焼却された」と発表していたが、この牛が処理場で処分された後、加工場で肉骨粉にされていたことが判明するという問題も起きた。

 千葉県光町の処理場で処分された後、茨城県の業者の加工場に運ばれ、加工場では脳も含めた牛の全身から油分を分離し、残りを肉骨粉にした。肉骨粉の総量は、ほかの牛の死体と混ぜて処理したため150トン程度に達し、うち約100トンが徳島の親会社へ運ばれた。しかし、農水省自体が、これを掌握しておらず、業者が千葉県に報告し、同県から農水省に連絡が入った段階で、問題の牛の処理状況が把握できた、という怠慢さだった。

 狂牛病はヨーロッパでは人にも感染し、死者も出ていることから、「対応の遅れが被害を拡大させた」という結果にならないためにも、早急な防疫体制の徹底と流通・消費に関する安全対策が、待ったなしに必要になっている。にもかかわらず、農水省では「風評被害はできるだけ防ぎたい」として「食肉部や牛乳からの感染はあり得ないので心配はない」と、安全性を強調。また、EU(欧州連合)は、肉骨粉を牛以外の鶏や豚やに与えることも全面禁止しているが、「鶏や豚には感染しない」として、発見段階では、「肉骨粉の全面禁止措置は考えていない」と表明するなど、これまで農水省は、危機感のない対応を繰り返すだけだった。(01・10/1)

狂牛病:正式な病名は「牛海綿状脳症」。異常プリオン(たんぱく質)が病原体で、主に飼料を通じて伝染。感染した牛は、脳がスポンジ状になって神経マヒ症状を起こして死ぬ。
 1986年にイギリスで見つかったのが最初で、その後、感染した牛の遺骨が飼料に混入し、その飼料を再び牛が食べる食物連鎖で蔓延していった。
 96年、イギリス政府が人間にも感染することを認めたことでパニックにもなった。
 ヤコブ病との関連性も高く、イギリスで77人、フランスで2人が死亡している。

●海外でのEUが調査したところによる☆「狂牛病の発生の可能性がほとんど考えられない国」は、アルゼンチン、ウルグアイ、オーストラリア、コスタリカ、シンガポール、スワジランド、チリ、ナミビア、ニカラグア、ニュージーランド、ノルウェー、パラグアイ、ブラジル、ボツワナ。
★「汚染の危険性がある国」は、アイルランド、アルバニア、イタリア、エストニア、オランダ、キプロス、ギリシャ、スイス、スペイン、スロバキア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー、ポーランド、リトアニア、ルクセンブルク、ルーマニア。
★「汚染されている国」は、イギリス、ポルトガル。

 人が食べると狂牛病感染の恐れがあるとされる牛の「特定危険部位」は、脳、眼球、せき髄、小腸の先端(回腸遠位部)の4部位。一説には、潜伏期間が長い場合は18年〜20年ともいわれているため、今後の影響が懸念される。

●厚生労働省は、この「特定危険部位」を原料とした加工食品およびこれらを使っているかどうか不明な加工食品についての製造自粛と自主回収を、都道府県などを通じてメーカーに指導した。
 牛の骨やくず肉を煮込んで抽出する「牛エキス」などにせき髄などが混じっていた場合は、事実上の販売禁止となる。 牛エキスは、調味料、スープなどとして広く使われているが、メーカー側が製造・販売を継続するためには今後、原料の骨の中に、せき髄が混ざっていないことを確認し、保健所に報告しなければならない。
 このほか、「美容」がうたい文句の加工飲料での「コラーゲン」や、「健康」がうたい文句の加工食品での「骨粉」なども対象となる。
 狂牛病が発生していない国の牛を原料としたものや、国産牛でも加熱などで異常プリオンを不活性にする処理をほどこしたたものは対象外。

●厚生労働省のこれまでのまとめによると、メーカー側が自主回収した牛の危険部位を原料として使用した医薬品や医薬部外品の数は126品目。内訳は、医薬品45品目(軟こうなど)、医薬部外品44品目(薬用化粧品など)、化粧品27品目(乳液など)、医療用具10品目(縫合糸など)。

●環境省は年間生産量が40万トンあるとされる肉骨粉の処理について10月19日、市町村などが運営する1565カ所のゴミ焼却施設のうち、肉骨粉の受け入れ可能な施設は230カ所で、1日の焼却量は415トンという調査結果をまとめた。年間フル稼働したとしても、1年間に焼却可能な肉骨粉量は全国で約15万1500トンで、年間生産量の4割にも満たない。このため同省では、肉骨粉をセメント原料に転用するようセメント業界に要請すると共に、受け入れに難色を示している地方自治体にさらに協力を促す、としている。

BACK


スポットニュース


豊作見込みの2001年産米、青刈り実施へ。

 豊作が見込まれている2001年産米について、全中(全国農業協同組合中央会)は、全国の需給調整水田で青刈りを実施する必要がある、との判断を下した。青刈りの対象となるのは沖縄県を除く全国の需給調整水田約3万1000ヘクタール。

 需給調整水田とは、豊作の際に青刈りを実施することがあらかじめ決められた米の生産調整用の田んぼのことで、青刈りとは、稲の稔りを待たずに収穫時期前に刈り取るというもの。

 2001年度米の減反(生産調整)面積は2000年産米の減反面積96万3000ヘクタールから4万7000ヘクタール拡大し、101万ヘクタールにしていた。全国的に減反面積が拡大するなかで、特に、北海道、東北、新潟など、東日本の米産地を中心に減反面積が拡大した。拡大分4万7000ヘクタールのうち、北海道が約1万2000ヘクタール増、秋田県が約4000ヘクタール増、ほか東北各県および新潟県が約2000ヘクタール増となっていた。
 作況指数が100を超え、収穫量が870万トンを超えることが確実になったら、減反割り当てとは別に、収穫量を抑え込むためにさらに青刈りをさせることが決まっていた。また、「青刈り」への批判を避けるために、飼料用にまわす田んぼを「ホールクロップサイレージ(稲発酵粗飼料)に取り組む田んぼ」として確保していた。作況が良くなく、収量が870万トンより下まわる場合は、一般の主食用として収穫して農協が集荷するが、減反してなお収穫量が増える場合は、主食用の米を発酵飼料用に使うことも決められていた。

 2000年度も米の生産調整面積を96万3000ヘクタールに設定して「米の減反」に努めたが、100%達成したものの米在庫は基本計画を60万トン上回る280万トンとなり、過剰感と米消費量の低迷などで、米の取引価格は下落の一途を辿った。(01・8/6)

※バックナンバー関連記事:米の減反対策で稲発酵飼料の栽培拡大、作付面積は昨年の6倍に。

BACK


スポットニュース


国内農業生産額が23年ぶりに11兆円を割る。

 農水省がまとめた「農業・食料関連産業の経済計算」で、国内農業生産額が23年ぶりに11兆円を割ったことが分かった。米の価格下落と低価格の輸入野菜が増えたことなどにより99年度の農業生産額は前年度比4・9%減の10兆4912億円となった。

 米の生産額は2兆5544億円で73年度の水準に落ち込み、野菜の生産額は前年度比14・9%減の2兆2159億円となった。
 生産額が増えたのは、養鶏が7364億円(前年度比6・2%増)、豆類が952億円(同13・1%増)、米の減反による転作で麦類が1163億円(同9・5%増)など。
(01・8/4)

BACK


スポットニュース


空飛ぶ駅弁で、JRとJAが火花?

 7月17日からJR東日本の関連会社「日本レストランエンタプライズ」がアメリカ産の有機米を使って現地生産した輸入駅弁を首都圏の26のJR東日本駅の売店で一斉に売り出した。その名も「O―bento(オーベントー)」。
 JAはこれに対し、自民党の農林議員まで導入して「101万ヘクタールにおよぶ過去最大の減反をし、ミニマムアクセス米まで輸入している今の日本の農業を何と考える」「地方との結び付きが強い企業がやることではない」などとして連日抗議を繰り返したが、JR東日本側は「法制度上も問題なく、健康志向の有機米弁当を安価に安定してお客さんに提供することに対して、クレームをつけらるいわれはない」と突っぱねての予定通りの販売になった。

 米の単体輸入には、1キロ341円の関税がかかるが、ご飯にしておかずとミックスにした「調整品」だと6〜21%の低関税ですむことから、これに目を付けた日本レストランエンタプライズが、「鶏ごぼう照焼き」「牛すき焼き風」「鮭ちらし」の3種類を、いずれも現地の材料を使って調理し、冷凍にして輸入することを決めた。
 その値段は1個小が330円、大が600円という低価格。

 心情的には許せないことなのだろうが、世の中は、自由競争の真っ只中。自民党の農林議員まで導入して、商売に「圧力」をかければ、企業はそれに従う、という構図は終わっている。
 「日本の農業を守ろう」「地域産業との連携を」という観点からだとJR東日本の今回の商法には異議ありだが、年間で400億円規模と言われた駅弁市場も今や売り上げは半減していることから、低コスト販売に企業とすれば躍起だ。

 JAは、敵陣のJR山手線を走る電車の車内テレビに「やっぱ弁当は、日本の米」との広告を流したり、都内の駅前や街頭で国産米のレトルト米飯を配ったりと、駅弁販売への抗議活動を展開しているが、空飛ぶ駅弁をめぐる問題は、今後しばらくは混迷していきそうだ。

 ちなみに販売開始日の17日は、1日で5000食を突破した。これまで一番売れている駅弁が「幕の内弁当」の1日約2000食のため、日本レストランエンタプライズは「驚異的な数字だ」と喜び、「有機米の使用や低価格が消費者に理解された」とご満悦のようだ。

 JR側は今後1日1万食を予定しているが、JA側ではこの動きに対し、「精米ベースだと年間に400トン。このまま輸入が続けられるのであれば、関税見直しやMA米へのカウントを求める」と、憮然としている、とか。(01・7/17)

BACK


スポットニュース


アメリカで日本向けの米の作付け面積が激減。

 アメリカの農務省がまとめた「2001年度作付け実績面積」で、アメリカの農家が日本に輸出している主食用のジャポニカ米(短粒種)の作付面積が前年度比30・6%減と、大幅に減少したことが分かった。

 一時は日本の事実上の米市場開放で、短粒種の作付けが年々増加していたが、アメリカ産の米が日本市場で苦戦していることも影響して作付け意欲が低下し、今では、アメリカの米栽培に占めるジャポニカ米の割合も1%を下回る低水準となった。

 また、日本向け輸出を含む加工・備蓄用としての中粒種も26・7%減少。逆に長粒種は19・0%増で、米全体の作付面積は前年度比6・2%増となり、全体の8割を占めている。(01・7/3)

BACK


スポットニュース


米の減反対策で稲発酵飼料の栽培拡大、作付面積は昨年の6倍に。

 稲を家畜用飼料に利用する稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)の今年の作付面積が2000ヘクタール超と、昨年(約360ヘクタール)の約6倍に大幅拡大した。
 米余りを背景に、政府が生産調整(減反)策の新しい柱として助成措置を講じたのが要因だが、宮崎県と北海道で昨年発生した口蹄(こうてい)疫で、中国産麦わらが原因の可能性が高いと農水省が発表し、輸入わら依存見直しの動きが出たのも普及を促した。

 各県の作付けは、宮崎県が昨年の10倍を超え900ヘクタール(前年82ヘクタール)でトップ。続いて熊本県440ヘクタール(同144ヘクタール)、新潟県120ヘクタール(同21・4ヘクタール)、大分県100ヘクタール(同4ヘクタール)埼玉県70ヘクタール(同35ヘクタール)。昨年はほとんどなかった秋田県や茨城県でも作付けが広がった。(01・6/26)

「需給調整水田」とホールクロップサイレージ(稲発酵粗飼料)

 作況指数が100を超え、収穫量が870万トンを超えることが確実になったら、減反割り当てとは別に、収穫量を抑え込むためにさらに青刈りをさせることが決まった。
「青刈り」への批判を避けるために、飼料用にまわす田んぼを「ホールクロップサイレージに取り組む田んぼ」として確保。作況が良くなく、収量が870万トンより下まわる場合は、一般の主食用として収穫して農協が集荷するが、減反してなお収穫量が増える場合は、主食用の米を発酵飼料用に使う米の強制減反面積割りあてとセットになって付いてきたもの。

BACK


スポットニュース


遺伝子組み換え原料使用の加工食品、表示義務対象を拡大。

 ハウス食品の「オー・ザック」やカルビーの「じゃがりこ」などのスナック菓子に、安全性が確認されていない遺伝子組み換えジャガイモが混入する事態が増えていることから、農水省は6月20日、遺伝子組み換え原料を使用した加工食品の表示対象を拡大する方針を固めた。

 改正JAS法では当初、「遺伝子組み換え」と表示が義務付けられるのは、遺伝子組み換えの大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどを使用したことが明らかな食品で、豆腐、みそ、スナック菓子など、遺伝子組み換え食品であることが検証可能な30品目に限定していた。しかし、農水省は、改正JAS法の実施段階で、ジャガイモは対象外とし、大豆とトウモロコシを原料とする加工食品24品目を対象に4月から表示を義務付けていた。

 1998年から1999年にかけ、「遺伝子組み換えしたジャガイモをネズミに食べさせたところ免疫機能などが低下した」」など、悪影響が懸念される研究結果が海外で相次いで出され、消費者から不安の声が出ていたが、これまで農水省は、基本的には「表示の義務なし」の姿勢を通していた。
 しかし、スナック菓子に遺伝子組み換えジャガイモの混入が相次ぎ、回収騒ぎが増える傾向にあることから、場あたり的ともいえる対応で、7月からジャガイモを原料にした加工品も表示義務対象とすることを決めた。
 安全性が確認されていない遺伝子組み換え原料を使用した加工品に対する消費者の不安が広がっていることから農水省は、他の作物の加工品への表示義務対象の拡大も検討する、としている。
(01・6/21)

※バックナンバー「迷走の遺伝子組み換え表示問題、一歩前進?」

BACK

花粉の飛散実験で品種の交雑がどのように起こるのかの可能性調査
 遺伝子組み換え作物の栽培が近隣の農作物にどのように影響を及ぼすのかを調べるため、農水省は、花粉の飛散距離が長いとされるトウモロコシを使い、実際に花粉がどのくらい飛散し、花粉飛散による品種の交雑がどのように起こるのか、などの調査に乗り出すことを決めた。
 茨城県つくば市の農業環境技術研究所と栃木県西那須野町の畜産草地研究所の実験用ほ場で、遺伝子組み換えではない通常の「飼料用」と「食用」の2種を使用してトウモロコシの花が咲く8月から約1年を通して調べる。
遺伝子組み換え作物の影響では、トウモロコシ「スターリンク」の花粉が飛散したことにより、品種の交雑がすすみ食用のトウモロコシに混入して問題になっている。国内の農家などからも、組み換え作物の栽培が国内ですすめば、その花粉が飛散して自作の農作物に影響を及ぼすのでは、と懸念する声が強まっている。


スポットニュース


日本と中国の農産物セーフガード協議、平行線のまま終了。

 中国産の農産物3品目を対象に日本政府が暫定発動した緊急輸入制限措置(セーフガード)をめぐる日中政府間の事務レベル協議が6月4日、北京市で開かれたが、双方の意見がかみあわず、協議は平行線のまま終了した。

 中国側はネギ、生シイタケ、畳表の3品目について「産地に被害が出始めている」との認識を示したうえで、「日本が一方的に実施したセーフガードは撤回すべきで、民間企業同士の話し合いによる解決を模索すべきだ」と要求。また、中国政府が検討しているとされる日本製自動車の輸入枠削減については明言を避けながらも「報復措置を発動する権利を留保する」「報復措置を実施する場合は事前に通告する」と日本側を強く牽制した。

 これに対し日本側は、「短期間で合意の枠組みをつくるのは難しい」として中国側の要求を拒否。また、報復措置については「WTOのルールにはなく、到底、受け入れられない」との見解を表明した。

 暫定措置発動後に日中両政府担当者が対応を協議するのは、今回が初めてだが、協議には至らず、双方の立場を主張しただけで、もの分かれに終わった。
 次回協議の日程は不明で、外交ルートを通じて調整される模様。

 日本政府は4月23日から11月8日までの200日間、中国などからの輸入が急増している農産物3品目(ネギ、生シイタケ、イグサ)について、WTO(世界貿易機関)協定に基づく暫定的なセーフガード(緊急輸入制限)を発動している。

 東京都中央卸売市場調べによると、5月中に築地、大田両市場に入荷した中国産ネギと生シイタケは、ネギの入荷量が54トンで前年同月比16・9%減、生シイタケの入荷量が79トンで61・5%減とそれぞれ大幅に減少。平均単価はネギが1キロ当たり227円で94・0%上昇。生シイタケは461円で78・7%上昇している。
 セーフガードの暫定措置が影響しているとの見方もあるが、季節的に国内の需要が減る時期で、輸入業者が秋の需要期に向けて輸入を控えていることもある。
(01・6/4)

中国、報復措置で工業製品3品目に特別関税

 中国政府は6月19日、対抗措置として、日本産の自動車・携帯電話・エアコンなどに対する特別関税を課すことを日本政府に通告すると共に、「日本政府は、不公正な貿易制限措置で、中国輸出品と国内関連産業に著しい損害を与え、中国の再三の申し入れにかかわらず、改めなかったため」として、現行関税を加えた価格(現行では、乗用車180%、トラック150%、バス165%、エアコン140%、携帯電話112%)に、特別関税100%をさらに上乗せする報復措置を6月22日から実施。

BACK


スポットニュース


土地改良法違反、土地改良区の組合費流用、自民党費に。

 長年、土地改良区の組合費が自民党費などに流用されている問題について農水省は5月16日、1996〜2000年度までの5年間に、全国15県の土地改良区で組合費計約4513万円が自民党の党費や政治団体の会費などに流用されていた、との中間まとめを発表した。

 土地改良区とは、都道府県の認可を得るために、ほ場整備などを進める目的で地権者が設立する団体で、土地改良事業以外への資金支出は禁じられている。土地改良区の組合費などを特定政党へ支出した場合は、土地改良法違反となるが、有利に農地整備などをすすめるために「袖の下」が使われるのが通例。

 これについて自民党の小泉総裁は5月17日、自らの政党のことでありながも「あれはひどいね。ああいうことが行なわれていること自体が、国民が党を批判してきた原因の一つなんじゃないか」と指摘すると共に、今後の対応について「正していかないとダメだ。不正はいかん」と言いながらも、具体的対応や、これまで流用された党費などの返還に関しては「どういう形でやったのか、まだ実態が分からないから・・・」と、いつものように「まぁ〜だだよ」のスタイルを決め込んでいる。(01・5/17)

※農水省が5月30日に発表した最終調査結果によると、これまで分かっただけでも全国で31道府県の土地改良区が、9361万円を自民党費として肩代わりしており、土地改良法違反の巣窟になっていることが判明した。
 内訳は、政党費への支出が計約4835万円、政治団体会費が計約4395万円。大阪府や宮城県などの土地改良区ではパーティー券や陣中見舞いなどに計約131万円が支出されていた。今のところ最も多かったのは茨城県(1764万円)。

※7月2日に公開された国会議員の所得報告書などで自民党の国会議員7人が土地改良事業の関連団体から役員報酬や顧問料などとして計496万 円を受け取っていたことが判明した。
 役員報酬や顧問料を受け取っていたのは衆院4人、参院3人で、なかにはこのほかに改良事業に関係する企業や団体から別途、政治献金を受けている議員もいた。
 農水省旧構造改善局出身の参院議員は、農地整備や用水路の改修などを手がける工事会社約90社から計約1500万円、測量会社約50社から計約800万円、ポンプやスプリンクラーなどのメーカーから計約600万円の総計約3000万円の献金を受けていた。

BACK


スポットニュース


政府、ネギ、生シイタケ、イグサ、セーフガード(緊急輸入制限)を暫定発動、4月23日から200日間。

 政府は4月23日、中国などからの輸入が急増している農産物3品目(ネギ、生シイタケ、イグサ)について、WTO(世界貿易機関)協定に基づく暫定的なセーフガード(緊急輸入制限)を発動した。 暫定発動の期間は、4月23日から11月8日までの200日間。

 日本がWTOセーフガード協定に基づき、一般セーフガードを発動するのは初めてで、発動の根拠は、輸入急増による価格下落で生産農家が打撃を受けているため、というものだが、背景には参院選挙をにらんだ農業票の確保という政治的判断があるのは否めない。

 セーフガード発動で、輸入価格と国内の卸売価格との差額を上限に最長200日間、関税を引き上げることができるが、対日批判を強める輸出国の中国に配慮し、過去の輸入実績を考慮して決めた輸入量までは、現行の関税率(ネギ3%、生シイタケ4・3%、畳表6%)を適用し、それを超えたものについて、国内産品との価格差分の関税を課す「関税割当方式」での実施。
 超過分に課す関税率は、ネギが256%相当(1キロ当たり225円)、生シイタケが266%相当(同635円)、畳表が106%相当(同306円)とした。

 現行の関税率で輸入できる割当量はネギ5383トン、生シイタケ8003トン、畳表7949トン。2回に分けて農水省で申請を受け付ける。第1回は4月23日〜26日まで。
 割当数量を超えると、超過分に課す関税率が加算される。 

 中国は、報復措置として日本製工業製品を輸入制限する可能性もある。
 報復措置を回避しながら、暫定措置の期間中に2国間交渉を進めて、協議の中で中国側から輸出自主規制を引き出そうとのシナリオも日本側にはあるが、中国側は自主規制にも「反対する」という姿勢を崩していないのが現実。

 この輸入制限により、中国では、日本に出荷する量が減る分、国内流通するネギや生シイタケがダブつくとみられることから、既に農家は安く買いたたかれているようで、卸売り価格が昨年同期の半分以下に下落を始めている。(01・4/23)

農産物輸入が増加の一途、2000年の貿易統計

 財務省がまとめた2000年の貿易統計によると、輸入量は、野菜が過去最高の281万トンで、うち生鮮野菜は92万トンと、生鮮野菜輸入100万トン時代が間近になっている。
 生鮮野菜のなかでも特にシイタケ、ショウガ、ネギが40%近く増えて、中国からの輸入が急増した。

 果実類も増加の一途で、前年比10・9%増の188万トンと、果実輸入200万トン時代が近付いた。
 食肉は、牛肉が約72万トン、豚肉が約65万トン、ブロイラー(鶏肉)が約56万トンと、それぞれ2〜8%増加し、これもまた200万トン時代が目前に迫っている。

 急速に輸入が増えはじめたのは1998年以降で、その年の国内産の高値野菜から、国内の外食産業を中心に商社などが、安いアジア諸国からの輸入に積極的に転じたことも大きな一因になっている。

BACK


スポットニュース


農水省の補助金をめぐる汚職事件で東京地裁、農水省元調査官に有罪判決

 農水省の補助金をめぐる汚職事件で、東京地裁は4月11日、収賄罪に問われた農水省元農産園芸局総務課調査官の溝上欽也被告に対し、香川県の四国大川農協に飲食代を付け回して支払わせた問題で、「公務員に要求される公正さに対する自覚と倫理観が欠けていた」として、懲役2年の判決を言い渡した。しかし、「懲戒免職されるなど社会的制裁を受けている」として、執行猶予4年(求刑懲役2年)の判断を示した。
 被告側は「補助事業に関する職務権限はなかった」などと無罪を主張していたが、判決では「予算について大蔵省と折衝し、決済文書に決済印を押すなど、職務権限はあった」と、この主張を退けた。

 97年4月から北海道農政部次長として出向中だった被告は、95年9月から北海道に出向する97年3月まで農産園芸局の総務課調査官を務めたが、入省間もない頃に四国大川農協がある香川県内の自治体・長尾町にも2年間勤務し、四国大川農協幹部と接点を持ち、以降、本省の構造改善局や畜産局、農産園芸局など複数の部署を経ながら、キャリア組として、 何かと補助事業にからんで同農協に対して便宜を図っていた。
 四国大川農協は、ライスセンターの建設を96年ごろ計画、農産園芸局の補助金1億4800万円を受け、98年6月に総額約3億6000万円をかけて完成させたが、四国大川農協の組合長らは、贈賄の容疑で逮捕、起訴された。

 農業構造改善事業をめぐる業者との癒着のうわさが絶えなかったため、農水省では1999年、調査委員会を設置して内部調査を実施したが、ノンキャリアに不祥事の責任を押し付け、キャリア組に責任が及ぶのを避けてきた。しかし、この事件により表面化した農水省の不祥事は、出世街道を歩むキャリア官僚の逮捕、起訴、有罪判決へと発展。同省の根腐れを象徴するものとなった。(01・4/11)

BACK