未承認の遺伝子組み換えジャガイモ混入のカルビー、今度は、未検査のジャガイモの種芋を使った栽培で家宅捜索。

 「じゃがりこ」などのスナック菓子に、安全性が確認されていない遺伝子組み換えジャガイモを混入させていて問題になったカルビーが、今度は、ホテトチップスの原料となるジャガイモの種芋を植物防疫法に基づく国の検査を受けずに、契約農家に栽培させていた。

 植物防疫法違反したのは、「カルビー」の子会社「カルビーポテト」で、3月11日、農水省が北海道警察本部に同社を告発したのを受けて、北海道警生活経済課は、北海道帯広市のカルビーポテトや東京都北区のカルビー本社などを家宅捜索した。

 植物防疫法は、病原菌のまん延防止を図るために1951年に制定されたもので、特に種イモは被害が拡大しやすいために厳しく管理され、植物防疫所の検査を受けて栽培した後に、一般農家に販売する仕組みになっている。

 合格証のない種イモは生産地からの持ち出しが禁止されているが、カルビーポテトは2004年春、富良野町や帯広市の契約農家等11戸に未検査のアメリカ産の種芋「スノーデン」約140トンを譲渡していた。
 契約農家の農場で2004年11月、病害虫ジャガイモシストセンチュウが見つかり、カルビーポテトから道に報告があった際、同社から検査を受けずに種芋を譲渡していたとの説明があり、加工用原料の調達のための大規模な違反行為が発覚した。

 これを受けて12月に横浜植物防疫所札幌支所が同社に対して調査を実施。その結果、カルビーポテト等が行なった行為は、植物防疫法違反であることが判明した。

 カルビーが製造するポテトチップスの原料用ジャガイモのほぼ全量を供給しているカルビーポテトは、原料用ジャガイモ「スノーデン」の種イモを1998年頃から直接輸入し、「試験栽培」と称して道央や道東地方の農家に「公式の検査に準じた自主検査済み」として出荷していた。(05・3/17)

●農林水産省は3月18日、植物防疫法に違反して譲渡された種芋1623トンの廃棄を命じた。ただし、廃棄と同等の措置を講じることを条件に種苗用以外の用途への使用は認めた。

ポテトチップス関連記事:国連食糧農業機関と世界保健機関、ポテトチップス「有害物質生成で健康被害の恐れ」と警告。

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日本政府、アメリカ産牛肉輸入の早期再開に大きくシフト。

 日本政府は、アメリカ産牛肉輸入の早期再開に向けて、着々と段取りをつけはじめた。食品安全委員会が厚生労働省と農林水産省に遅くとも4月中に「検査を緩和しても食肉の汚染度はほとんど変化しない」旨を答申し、両省は5月ごろ省令を改正して遅くとも夏以降には再開にこぎつけたい模様だ。

 ブッシュ大統領は3月9日、小泉首相と電話で会談し、BSE発生に伴ない日本が停止しているアメリカ産牛肉輸入の早期再開を要請した。これを受けて小泉首相は、日米関係を害することがないよう早期再開に努力することを約束した。

 この問題については、生後20カ月以下の牛肉輸入再開で基本合意しているが、日本で国内検査の基準緩和問題がなかなか決着しないことから、アメリカではブッシュ大統領の支持団体である畜産業界や一部の議員を中心に日本側の対応の遅れに反発が強まっていた。
 今回の要請を受けて小泉首相は早期再開を加速させる考えを示し、 内閣府の食品安全委員会に対しても、全頭検査を緩和して生後20カ月以下の牛を検査対象から除外する方向で調整するように求めた。

 小泉政権とすれば、検査基準を緩和して後、早ければ夏前、遅くとも夏以降には再開にこぎつけたい考えだが、安易な政治判断で再開時期が早まることになれば国民から反発が出るのは確実だ。加えて、国内で初のBSEが原因とされる変異型ヤコブ病の患者が確認されたこともあって、全頭検査を緩和することについては違和感を覚える人も多く、「国民の安全な食」という観点では、合意形成が困難な情勢だ。こんな状況下でアメリカに対して再開時期の明示などは出来ない。

 しかし現実には「安全な食」よりも「安易な政治判断」が先行し、「検査を緩和しても食肉の汚染度はほとんど変化しない」とする食品安全委員会プリオン専門調査会の結論を落としどころに、アメリカ産牛肉は、輸入早期再開に向けて誘導が開始されたようだ。(05・3/11)

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国内初の変異型ヤコブ病、英国滞在期間に食べた牛のひき肉などでの狂牛病(BSE)感染が濃厚に。

 イギリスに滞在歴のある男性が国内で初の変異型ヤコブ病と確認された問題で2005年3月7日、厚生労働省の委員会は、家族や主治医らへのヒアリングやパスポートなどによる渡航歴を確認した結果として、この男性がイギリス滞在中に牛のひき肉製品などを食べていたことなどから、これにより変異型ヤコブ病に感染した可能性が最も高いとする調査結果を発表した。
 男性は1990年前半にイギリスに24日間、フランスに3日間滞在するなどしていた。

 このことから厚生労働省は、80〜96年に英仏両国に1日以上滞在した人の献血も中止する暫定措置を決めた。対象者数ははっきりしないが「推計で数十万人に上る」としている。 

 狂牛病=BSEは、1986年にイギリスで初めて確認された。96年にイギリス政府が、狂牛病は変異型ヤコブ病として人間に感染することを認め、対策に乗り出したが、2000〜01年には欧州全土に狂牛病が拡大し、パニックとなった。

 2001年9月、日本初の感染牛が千葉県白井市で確認され、感染源とみられる肉骨粉の国内流通が全面禁止となった。その後、食肉用牛の全頭検査を決定するなど国内でも狂牛病パニックが起こった。2003年になって沈静化したかに見えたが、カナダで93年以来2例目の感染牛が確認され、続いて広島県福山市で西日本初、日本で9頭目の感染牛が確認された。そして、アメリカのワシントン州で感染牛1頭が発見されるなど、その後も狂牛病=BSE感染牛問題は食肉流通に深刻な影を落とし続けている。(05・3/7)

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国連食糧農業機関と世界保健機関、ポテトチップスやフライドポテト「有害物質生成で健康被害の恐れ」と警告。

 発がん性が指摘されてきた化学物質アクリルアミドが、ポテトチップスやフライドポテトなど炭水化物が多い高温加熱食品で生成されることが分かり、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同専門委員会は、「健康に有害な恐れがあることから、特に食品業界は大幅に低減させる技術を早急に導入し、食品の含有量を低減させるべきだ」とする勧告をまとめた。

 スウェーデン食品庁が、炭水化物を多く含む食材を高温で加熱して製造したポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなどの食品に「アクリルアミド」という化学物質が高濃度に含まれていると世界ではじめて発表したのは2002年のことだった。
 その後、イギリス、ノルウェー、スイス、アメリカなどからも同様の結果が報告されるなどして、世界中で大きな関心を呼んだ。

 アクリルアミドは容易に重合して固まる性質があることから、紙力増強剤、合成樹脂、合成繊維、土壌改良剤、接着剤、塗料、土壌安定剤などの原材料に用いられているが、動物実験で発がん性が指摘されてきた物質だ。

 ポテトチップスやフライドポテトは、高温加熱によりアスパラギンとブドウ糖などが反応して発がん性のあるアクリルアミドが生成される。言うまでもなく、ポテトチップスに限らずスナック菓子の殆どは有害な添加物の固まりで、健康への悪影響が過去から指摘され続けているが、ポテトチップスやフライドポテトに含まれるアクリルアミドの濃度が飲料水の基準値に比べて極めて高いことなどから、これらを食べることに対しては特に警戒感が必要なようだ。(05・3/6)

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空しく繰り返される「食料・農業・農村基本計画」、曖昧さに終始。

 農水省の審議会が2015年度を目標年度とする「食料・農業・農村基本計画」の最終案をまとめた。
 主な内容は、総合食料自給率の目標設定、担い手や農地などの構造改革の推進、農村の振興などだが、今の日本の農業政策を象徴しているかのように曖昧なものになった。

 毎度のように登場する「消費者の視点や環境保全を重視」「従来のばらまき型補助金を見直して直接支払いを導入」「意欲と能力のある農家を重点的に支援する政策へ転換」などが柱だが、常に先へ先へと伸ばすだけの基本計画で、改革への道筋が見えないものになっている。

 今回、議論の焦点となったのは、施策の支援対象と食料自給率をめぐる問題だったが、 現状を把握したうえでの結論とは言い難いものとなった。

 基本計画による施策の支援対象は、大規模農家を担い手として支援を集中するというものだが、現実には、担い手の絞り込みには農業関係者からの反発や「全国一律的な面積要件ではなく、地域農業の実態を踏まえた意欲ある者、育成すべき者、集落営農など多様かつ幅広い担い手を施策対象とし、積極的な育成を図るように」の要望も強いことから、 担い手として認定農業者とともに「一定の要件を満たす集落営農組織」を挙げ、小規模・兼業農家にも施策対象となるように道を残した。
 求められている小規模農家への配慮、とも受け取れなくもないが、この曖昧さが、従来のばらまき型補助金農政を残すことにもなり兼ねず、早くもこれが懸念材料になっている。

 今回、最も曖昧になったのは、自給率向上のために必要な措置だ。

 カロリーベースを基本とする食料自給率については、達成出来なかった現行目標の45%を据え置くとともに目標年度をさらに15年度まで5年間も先送りした。
 それのみならず、カロリーベースが達成できない時のための用心なのか、新たに生産金額ベース自給率が設定された。

 理由は、野菜や果実はカロリーが低く、供給熱量の自給率数値には反映しにくいので生産金額ベースの自給率を政策目標として設ける、というものだ。しかし、カロリーベースと生産金額ベースの2本立てでは、自給率の問題は、曖昧にこそなれ、実効性のある自給率向上の取り組みが鮮明になることはない、ということに直結する。

 生産金額ベースの参考目標値は76%だが、2003年度で70%だからカロリーベースに比べ実際の減少率は小幅となる。
 「目くらましを図ろうとするだけだ」との批判の声を待つまでもなく、数字だけが独り歩きして「70%台なら安心だ」の誤解を生みかねない。そして、生産金額ベースで自給率を算定している国がないのにも拘わらず、いつの日か、日本の自給率だけが、カロリーベースから生産額ベースに切り替わってしまう可能性も無きにしもあらずである。
 実際、過去に穀物自給率を重視した日本は、穀物自給率が大幅に低下したためにカロリーベースに自給率計算の重心を移した経緯がある。

 2本立てで自給率を分かりにくくしてはならない。やはり自給率は最低限、世界標準でもあるカロリーベースを基本とし、過去の取り組みの反省の上に立って目標達成に向けて真剣に取り組むべきだろう。なぜならば、カロリーベースの食糧自給率は、アメリカ約120%、フランス約120%、ドイツ約99%、イタリア約70%、イギリス約60%などで、日本は先進国中で最低なのだから。

 日本の自給率は1960年度には79%だったが、食料輸入の増加に伴って年々低下したままで、上昇のきっかけはつかめていない。世界の食料需給は逼迫し始めている。中国の成長もあり、世界の輸出入バランスも危うい。そして、将来のわが国の食料事情はバラ色ではない。
 農家は減り、放棄地は増え、担い手も少なく、過疎化にも歯止めはかかっていない。
 そんな現状を見据えたうえで、いま今いまが実感できる実効性のある基本計画が求められている。

 参考までに以下、バックナンバー記事を示そう。これは、2000年に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」に関連するものだ。2005年に出された「食料・農業・農村基本計画」と一体どう変わっているのか、極めて興味深いが、5年前と何も変わっていないのが実態だ。(05・3/3)


10年後の食料自給率の目標値を45%とするなどの「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定。

 2000年3月24日、食糧自給率を現在の40%から2010年度に45%に引き上げることを柱にしたが「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定された。

 農水省は、食料自給率の目標値などを議論する「食料・農業・農村政策審議会」の企画部会で、2010年までにカロリーベース(供給熱量)で45%、将来的には50%以上を目指すとの原案を提示していた。

 原案は、実現可能性を重視して目標値を低めに抑えたい農水省側と、努力目標として理想的な数値を掲げるべきだとする農協など生産者団体や農林議員側との折衷案となった。

 生産数量や品目の数値設定では、米2・4%増、大豆56・3%増、小麦40・4%増を示しているが、拡大目標での自給率設定では「単なる絵に描いた餅」になる可能性が高く、実現不可能なため、「カロリーベースでの自給率」の設定になった。
 しかしカロリベースであろうとなかろうと、自給率の現実は、農産物輸入にはさらに拍車がかかり、大蔵省が2月25日に発表した2000年1月の貿易統計でも野菜の輸入量は毎年、増加傾向で、生鮮野菜の輸入量は前年よりも24%増え、果実も前年より39%増え、食肉では豚肉が約50%増えるなど、依然として農産物全般での輸入依存傾向は強まっている。
 また、農地の荒廃や農業後継者の不足、農業者の高齢化など、農業を取り巻く現実は厳しい。

 農水省では「目標値そのものに意味があるわけではない」とし、「生産、消費の両面での課題を設定し、それらを解決できれば結果的にぎりぎりの数字として45%程度は達成し得るのではないか」との認識を示しているが、それに関しても「それは当然で、それが出来れば悩みはないが、それが出来ないのが現実」と、早くも農業や消費の現場では、冷ややかな意見が出始めている。

 農水省は、小麦や大豆など品目ごとに生産努力目標と消費目標を積み上げてカロリーベースや金額ベースの総合自給率を設定したり、消費面でも、食生活の改善で減少傾向の続く米の消費回復を促し、増加傾向にある肉類の消費減少を図る、という方針を掲げているが、さて、この台本、うまくいくか否か?

 計画を実行するため、首相を本部長とし、農水相、厚相、文相らで構成する「食料・農業・農村政策推進本部」も発足させる。

 農政に従わない農家や地域には見境もなくペナルティーや圧力を課す行政当局だが、この自給率が達成できなかった際の農水省自体の責任やペナルティーについて農相は「今から言われても困る」と言っている、とか。

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