■稲作やお米関連のミニ知識■

●米取り引きの傾向
 近年の自主流通米(計画流通米)の集出荷率は、55%前後で、あとは自由米(計画外流通米)として流通している。その自由米市場の流通状況は、消費者と生産者との直接取引が約50%で、卸や小売、出荷業者との取引が約30%、その他業者が約20%になっている。

 自主流通米は年間約430万トンが流通。これまではそのうち約100万トンが上場されて入札にかけられていた。「実勢価格や実質市場を反映していない」などの批判も多く、自主流通米の入札取引は米あまりの時代の中で低迷傾向にあった。その反面、生産と流通が相対で自由に取引価格をきめる自由米市場の流通は活性化傾向にあり、約300万トン〜500万トンの取り引きに拡大している。
 そうしたことから、自主流通米入札では自主米取引の入札制度の見直しが行なわれ、1998年度産から入札制度が一部変更になった。これまでは原則として「指標価格」に基づいて一定の値幅制限の枠内(上限下限13%)で入札・落札価格が決められていたが、実勢価格を反映した入札制度に近付けたい意向で、値幅制限が撤廃されると共に、売り手が最低平均落札価格を申し出て、それを目安にしての入札に変更。入札上場回数も増やした。

 1999年産米の作況は「平年並み」でも作柄は過去5年間で最も悪くなったため、本来なら新米として高値が付く時期の新米市場でも、作柄不良に在庫過多と消費低迷のトリプル要素で、値下がりが加速した。自主流通米入札では大量の売れ残りが発生。また下落対策として70万トンを市場隔離したものの、平均落札価格は、この10年間で最安値水準に落ち込んだ。
 その後、スーパーなどでは安売りが目立ち始め、例年より2割近く安い価格で販売するのが一般的になってきた。それを追ってディスカウント店ではさらに安い値を付け、米は値下がり傾向にある。

 2000年産米の価格も下落傾向で推移、2001年4月からの改正JAS法による表示がらみで、銘柄米の確保分が若干、上昇傾向に転じる傾向ではあるものの、米の低価格に対する歯止めはかかっていないのが現状だ。

 さらに米の値下がりに拍車をかけているのが消費者の安値志向と米離れで、購入傾向は高品質銘柄を敬遠して値ごろ感のある米が主流になっている。そうした状況を背景に1995年以降の4年間で自主流通米の販売価格は全体で約6000億円低下した。

 農水省は、2001年度米の減反(生産調整)目標面積を現行の減反面積96万3000ヘクタールから4万7000ヘクタール拡大し、101万ヘクタールにした。主食米用の作付面積は全国で168万1000ヘクタールとし、全国平均収量(10アールあたりの収量518キロ)換算で生産量は870万トンを見込んだ。しかし、2001年産の水稲の作柄概況では、10アール当たりの収穫量を示す作況指数は全国平均で103の「やや良」で、値崩れを回避するために打ち出された生産目標の870万トンを10万トン程度上回ることがほぼ確実となった。米の年間需給総量は農家消費分を入れて約900万トン強とされているが、米在庫がだぶついているため、これを約20万トン下回る計算だが、過剰感を払拭することは出来ず、今年産も流通・販売価格が低迷しそうな状況になっている。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●米の在庫・需給見通し
 食生活として消費するのに必要な量は最低でも約550万トンとされているお米。毎年の新米数量は、農家消費(約150万トン)を差し引いて約700万トン強。
 安定した年間流通量として必要な米数量は約750万トンといわれているが、持ち越し在庫を含めると現在の米在庫は若干「過剰気味」。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●人気のある米と米相場
 
お米は、福島や新潟県産などが人気で、傾向とすれば新潟魚沼コシヒカリが60キロ当たり3万0000〜3万3000円で、会津コシヒカリは2万0000〜2万2000円で取引されてきた。また、人気が定着しつつある「ひとめぼれ」は、岩手ひとめぼれ、宮城ひとめぼれ、秋田ひとめぼれが1万7000〜1万9000円程度。秋田県産あきたこまちは1万6000〜1万8000円程度で取引されてきた。
 しかし最近の米相場は、不景気を反映して、新潟県産コシヒカリなどの高値銘柄米を消費者が買い控える傾向にあることから、在庫がダブついて、自主流通米や自由米を問わず全体的に下げ基調を強めている。

 しかし、稲作農家に対しては1998年産米から「稲作経営安定対策」の名目で、生産者の拠出金と国からの補助金で価格差を補填する制度ができているため、深刻さは薄められているのが現状だ。
 この制度により、過去3年間の平均を補填基準価格とし、それを下回った年は、自主流通米の産地品種銘柄すべてに差額の8割が補填される。

●お米の流通・相場などに関する最新動向を米穀データーバンクの「日本の米市場」でみる。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●これから注目される米いろいろ
 お米は、大きくは「うるち米」と「もち米」に分けられる。日常ご飯としてたべているのは「うるち米」。
 このうるち米には「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「あきたこまち」など、さまざまな銘柄のお米があり、人気もまちまち。どの銘柄がいいとは言えないが、上記『人気のある米と米相場』が一般的なところ。

 これとは別にいま、限定したものとして大きくは3つのお米が注目を集めている。その3つは「古代米」「低アミロース米」「低タンパク米」。

 古代米は、その名のとおり古代から作られていたお米。赤米や黒米がその代表的なものだ。
 今では「古代米研究会」も全国的な広がりをみせ、赤米や黒米を栽培する農家も増えてきた。
 この米の特徴は、元来、陸稲(うるち米は水稲)の性格を持つことから丈夫。ノギ(稲のひげのようなもの)が長く伸びて、生育すると赤米はその赤いノギが美しい。
 普通のお米に、炊飯する際、おちょこ1杯か2杯の赤米を入れると赤ピンク色の「お赤飯」のようなお米が炊き上がる。見た目の美しさばかりでなくエネルギー値も高い。

 低アミロース米というのは、お米の成分のデンプンに含まれる「アミロース」が極めて低いもの。
 アミロースが多いとお米は粘りが無くなり、アミロースが少ないとお米は粘りおよび柔らかさが増す。
 その特性を引きだそうとしてできたのが低アミロース米。品種では「ミルキークイン」などもその一種。

 使われ方は、現在のところ一般の米にブレンドして、お米の食感を良くするために用いられているが、「混米用なら陸稲の安価なモチ米でもいい」という評価もあることから普及は遅れ気味。
 今後、食品メーカーなどが「冷凍米飯」用など加工米飯用にブレンドするなどして利用されそうだが、用途が少ないのが現状。
 和菓子など、原料をお米に依存する業態での利用が試みられているが、「帯に短し、たすきに長し」といった試作結果が出ている。

 今後の用途開発が待たれるお米だ。

 低タンパク米というのは、文字どおり「タンパク質」を抑えたお米。低グルテリン米と称されることもある。
 米の成分は「でんぷん質」「たんぱく質」「水分」「脂質」が主で(図は下記の『米の食味試験とランキング』を参照のこと)、「たんぱく質」が多いとお米を炊くとパサパサしたものになる。
 そのパサパサ感をなくすのと、もうひとつ大きな役目を担っているのが低タンパク米(低グルテリン米)で、食事療法が必要な糖尿病患者や人口透析患者に対しても「お腹いっぱいに食べても大丈夫」という性質のお米として注目を集めている(食事療法の得意な病院と1軒の米穀店が連携してデーターを集積中)。
 ただ精米に高度の技術が必要なことから、現在は「特殊なお米」という位置付けだ。

 有望な開発品種は「LGC(エルジーシー)1」(育成は農水省農業生物資源研究所)と「北陸183号」(育成は農水省北陸農試育成)で、現在は「LGC1」が一歩リード。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●米の食味試験とランキング
 お米の食味試験は、日本穀物検定協会(穀検)が毎年実施している。
 そこでの食味試験は、滋賀県野州郡中主町の「日本晴」を基準にして対象3銘柄毎を同じ皿に少量盛り、専門のパネラー20人によって実際に食べる「官能試験」で行なわれる。そして「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合」の項目ごとに相対法で比較し、7段階に分けて評価する。

 食味試験のポイントは、外観では「艶の良否、胚芽の程度、こ飯つぶの形、粒面の花咲き具合などをみる」。香りでは「ご飯特有の香りをかぎ、口から鼻に抜ける香りを捉える」。味では「喉ごしの滑らかさ、噛んでいる内に感じるあま味などに着眼する」。粘りでは「ご飯を噛んで離す時の歯や口腔の感覚をつかむ。自分の好みではなく基準米との比較で判断する」。硬さでは「基準米と比較した歯ごたえを確かめる」。総合では「全体的に基準米と比較してどうかを率直に判断する」。

 これを判断指針に評価は、基準米と比較してどうかを、「同じ」を0として「それ以上かなり良い」を+3、「少し良い」を+2、「わずかに良い」を+1、「それ以下かなり悪い」を-3、以下順に-2、-1と点数化して記入、それを合計してパネラーの数で割る。その平均値が「食味の評価値」になる。そして基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、同等なものを「A’」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」とし、毎年これを「食味ランキング」としてまとめる。

 良品質米づくりへの取り組みを反映して全国的に食味は向上している。

 勿論、穀検の食味ランキングが、ムーディーズのように「格付け」を支配するものではなく、あくまでもお米選びの際の「ひとつの目安にする」ものとしての一参考例。また、「特A」に選ばれた地域のお米がすべて食味良好と言えるものでもなく、個々の田んぼ条件など栽培条件や稲を育てる人の違いで、お米の味は大きく違ってくる。しかしながら、この食味試験には大きな外れはなく、平均的にお米の味を評価すると、妥当な線が出ている。

食味ランキングの詳細を穀検のホームページでみる。

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●世界の米貿易
 国連食糧農業機関FAOは今年の春以来、「インドネシアなどの米不足を主因に、米の貿易量が過去最大になり、世界的な穀物供給不足が懸念される」と、世界穀物生産見通しを発表し、警戒を促し続けている。
 見通しでは、今年の穀物生産量は18億7200万トンで、来年までの需要は十分に賄えるものの、食糧安全保障上での備蓄最低水準が十分に確保できない模様。全世界の消費量は、飼料用を含めて年間約16億万トン。備蓄にまわるのが約3億万トンでは、全消費量の約16%にすぎず、FAOが食糧安全保障上で必要とする備蓄最低水準17〜18%に届かないと警戒している。

 今年の世界穀物生産見通しを品目別に見ると、小麦が約5億8200万トン(前年比3%減)、米が約3億7000万トン(前年比1%減)、雑穀が約9億2000万トン(前年比1%増)。
 米の国別の輸入必要量は多い国で、インドネシアが350万トン、ブラジルが120万トン、フィリピンが100万トン。また米の輸出量は多い国で、タイが560万トン、ベトナムが400万トン、インドとパキスタンが各200万トン、中国が170万トンの見込み。タイは既に今年の1〜2月で前年比70%増の120万トンを輸出しており、ベトナムは5月までの輸出が250万トンに達したことから、米不足の国に対する援助輸出が数量的に次第に困難になっていく事が、改めて懸念されている。

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■稲作やお米関連のミニ知識■

●日本の稲作の歴史
 
実際に日本で発見された栽培稲の跡は、約4500年前の縄文中期のものが最古とされていたが、岡山市の縄文時代の貝塚「朝寝鼻(あさねばな)」を調査している岡山理科大の考古学チームが1999年4月21日、「縄文前期の土壌から稲の細胞に含まれるプラントオパールが見つかった」と、発表。約6000年前に「米作り」が行なわれていたとする発見で、稲作の歴史が縄文前期にまでさかのぼることになった。
 このプラントオパールはイネ科の葉の細胞内に含まれるケイ酸体の粒子で、同貝塚の下層(深さ2メートルの土壌)からのサンプルを採り調査したところ、356点のサンプルから10点、形状からジャポニカ(短粒種)とみられる稲のプラントオパールが検出された。また、稲のほか小麦とハトムギのプラントオパールも見つかった。小麦の検出例もこれまでは約4000年前(縄文後期)が最古で、これを約2000年もさかのぼることになる。

 年代を推定した根拠は、プラントオパールが見つかったのと同じ地層から縄文前期の特徴を持つ土器が出土し、この土器の様式が放射性炭素年代測定法で約6000年前と測定された福井県・鳥浜貝塚出土の土器と共通したため。同遺跡は、岡山理科大の通学路工事で発見され、考古学チームが1997年夏から発掘を開始。これまでの調査で縄文前期から後期の土器が見つかっている。

 日本での稲の栽培例は、岡山県美甘村「姫笹原遺跡」の約4500年前が最古とされてきた。これを約1500年さかのぼると共に、小麦などのプラントオパールも見つかったことから、米と穀物を組み合わせた農耕が縄文時代前期からすでに存在していた可能性も高まった。また、朝鮮半島で最古とされる約5000年前の米よりも古いことから、狩猟・採集中心という固定された縄文観や稲の伝播ルート観にも、この発見は影響を与えることとなった。

 中国に起源を発する稲の日本への伝播ルート「ライス・ロード」についてはこれまで「朝鮮半島を経由」「東シナ海から九州に到達」「南方の海上から到達」とする三つの説がある。

プラントオパール:植物のガラス質細胞の化石。酸やアルカリ、熱に強く、植物が枯れても分解せず地中に残る。植物の種類によって形状が異なり、イネ科は地中からケイ酸を吸収して細胞にため込む性質がある。発見されたのはこのケイ酸体の粒子。

放射性炭素年代測定法:生物に含まれる炭素の放射性同位体が、死後、一定の速度で窒素に変化していく性質を利用した年代測定法で、炭素の放射性同位体濃度の半減期5730年を基に計算する。加速器によって同位体の原子1個1個を検出して正確に測定するAMS法というのがある。

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稲作・お米・流通関連のニュースバックナンバー


1999年産米、値下がりで補助金による補填額が決まる。

■1999年産米の販売価格が下落したことから、自主流通米に対する補填単価が決まった。
 1999年産米に関しては、入札上場銘柄すべてが補填の対象になり、補填単価平均が60キロで1400円程度と、販売価格の下落の大きさを改めて裏付けるものとなった。銘柄によれば補填単価が60キロで3000円を超えるもののあった。

 この補填制度は、1998年産米から「稲作経営安定対策」の名目で実施。過去3年間の平均を補填基準価格とし、それを下回った年は、差額の8割を補填するというもの。

 財源は、生産者の拠出金と国からの補助金で基金をつくり、それを充てる。

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1999年産米、作柄最悪&在庫過多&消費低迷のトリプルで値下がりが加速。2000年産米の政府買い入れ価格もダウンが決まる。

■1999年産米の作況は「平年並み」でも作柄は過去5年間で最も悪くなったことが、1999産米の検査結果で分かった。
 うるち玄米の1等米比率は、全国平均63.3%で、台風や長雨、高温の影響、カメムシの被害等による「質」の悪さが目立った。西日本では台風や長雨の影響が強く、東日本では登熟期の高温による乳白粒の混入が多い。また、東北地方の秋田や山形ではカメムシの被害が等級格下げの原因となった。
 このため、通常の自主流通米は1等米の出荷が基本になっているが、作柄の低下で各県の経済連などは2等米出荷などの対応策を迫られている。

 本来なら新米として高値が付く時期の新米市場でも、作柄不良に在庫過多と消費低迷のトリプル要素で、値下がりが加速し、自主流通米入札では大量の売れ残りが発生。また下落対策として70万トンを市場隔離したものの、平均落札価格はこの10年間で最安値水準に落ち込んだ。
 スーパーなどでは安売りが目立ち始め、例年より2割近く安い価格で販売するのが一般的になってきた。それを追ってディスカウント店ではさらに安い値を付けてきており、米は値下がり傾向だ。

 さらに米の値下がりに拍車をかけているのが消費者の安値志向と米離れで、購入傾向は高品質銘柄を敬遠して値ごろ感のある米が主流になっている。そうした状況を背景に1995年以降の4年間で自主流通米の販売価格は全体で約6000億円低下している。

 ちなみに主食用の国産うるち米販売量の1999米穀年度(98年11月〜99年10月)累計は、自主流通米が388万トンで昨年度より29万トン減。政府米は50万トンで昨年度より3万トン減。

 99年産米の政府買い入れ数量 は、豊作による市場でのだぶつきを調整するため、前年より15万トン多い45万トンとなっている。また、2000年産米の政府買い入れ価格(60キロ当たり)が、1999年産米に比べて424円(2.7%)引き下げられ、1万5104円になることが決まり、政府買い入れ価格は4年連続の引き下げとなった。

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農水省、これまでの水稲作況指数調査と発表方法を見直し。

 農水省は、これまで続けてきた水稲の作況指数調査と発表方法を見直し、時代に即した方法を検討することを決めた。

 作況指数は、食糧事務所が統計として米粒の成熟具合などを調べ、毎年8、9、10、12月(各15日現在)の作況指数を発表しており、1955年ごろから現在の形に定着した。ところが、現在の作況指数の調査や発表方法は、数字としては大きなブレはないものの、実際の生産現場の実感や実態、流通ニーズからは「問題点も多い」と指摘され続けてきた。
 政府が米を全量買い上げていた時代とは違い、自主流通米が価格形成の主流になって以降、特に1994年12月成立した新食糧法後、作況指数も市場価格を形成する大きな要素になっていることから、「より細かな産地品種銘柄別の調査と敏速な発表を」という要望も強まっていた。
 この動きの背景には、自主流通米価格の下落で、選挙で「農業票」に依存する自民党農林部会が、農業者から「何とかしろ」と言われかねないことから、その対策として「作況指数が価格の下落を誘発しているので発表方法を見直すべきだ」との意見が強まり、「幅を持たせて発表する」「数字ではなく言葉で表現する」などを農水省に「指数発表を見直す案」として強引に提示した、という経緯もある。このことから、米穀業者などからは「あまりにも露骨な変更が行なわれた場合、米市場をこれまで以上にゆがめることにもなりかねない」との批判の声が出ている。

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棚田米、もう買いません?

■棚田保全が注目を集めているが、九州や山口でとんかつチェーン店を展開する『浜勝(長崎県)』は、店舗近くの棚田で生産された米を使用するのを中止した。「棚田によって米の質に差があり、炊き方も難しい」というのが同社が仕入打ち切りを決めた理由。

 同社は57店舗を開設し、米の年間消費量は約850トン。九州や山口の17カ所の棚田で栽培された米を店舗ごとに精米、メニューにも「棚田米」をうたい、「ヌカ」も無料配布していた。同社が棚田米を取り入れたのは93年の「平成の米不足騒動」がきっかけだった。そして、95年に発足した「全国棚田(千枚田)連絡協議会」の第一回全国大会を機に、団体会員として積極参加し、店舗拡大に合わせて仕入れ先や量も年々、拡大していた。
 しかし、中山間地で栽培される棚田米は、昼夜の温度差が大きく、水も良質で、おいしいといわれる反面、品質が平均化しないため、均一な味を求める業務用には難点も多かった。

 品質安定を優先させたい外食産業と、棚田保全活動との両立は難しかったようで、同社は「棚田保全運動は広がり、当社の役割は果たした。今後は品質が一定の米を全店分一括仕入れして工場で一括精米する」としている。

棚田保全の動きの中で、もうひとつの現実
 ここのところ脚光を浴びているのが、棚田の保全や景観美保持の動き。古くから多くの人に愛されてきた棚田は、全国1182市町村約22万ヘクタールあるといわれ、地方で独自に棚田保全の取り組みが広がりはじめている。ボランティア活動や募金活動、棚田オーナー制など、その動きも活発化してきた。

 しかし、そうした取り組みが広がる反面、問題も出始めてきた。
 例えば、国の「名勝」指定の長野県更埴市の棚田「姨捨」は、「棚田保全の象徴」とされているが、現実には米の減反政策で約4分の1を畑地に変えた。また、新潟県松之山町が実施した「たんぼシンポジウム」がヒントになって考案された「棚田サミット」は、1995年の第1回(開催地/高知県梼原町)から1999年で5回目になったものの、回を重ねる度に、年1回の単なる定番イベントになり、魅力が半減した。
 そして、棚田のある都府県との間で「棚田保全」を新事業として立ち上げた農水省の基金造成も、単なる「官の予算確保あるいは予算消化」の手段と化しつつある。この基金造成は、総額予算240億円で三分の一を国が拠出するというもので、棚田保全事業の内容は、棚田で農作業をしたり、景観保全に協力しようという都市住民を、ボランティアとして都道府県に登録してもらい、県の要請を受けて登録者が休日などに農作業に従事。また「研修」や「PR」に必要な費用は基金の利息などで賄う、というもの。
 しかし、米の減反を強要して農地を荒廃させることにしかつながらない政策を展開する農水省がらみの補助金や「登録による参加要請」という事業が組み合わされることに異論が出始めている。


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