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【沖縄発】


■アメラジアン問題に取り組んでいる宜野湾市は、アメラジアン・スクール・イン・オキナワ支援に対する基本方針として、アメリカ軍基地所在市町村活性化特別事業費を活用し、2001年度事業として施設の提供やスクールスタッフの給与を援助するなど、運営費の軽減に乗り出すことを決めた。

 提供施設は、宜野湾市内の他の民間施設を買い取る予定で7月中にも正式決定する。

 アメラジアンとは、「アメリカ」+「アジア」の造語。父親がアメリカ人で母親がアジア人の子供たちのことで、沖縄のケースは、父親が基地勤めのアメリカ人で、任期が終わってアメリカ本土に戻ったにもかかわらず残された子供たち。父親が基地にいる間は軍から教育援助がされているので学校にも通えるのだが、父親がいなくなってしまうと援助が停止され、学校にもいけなくなっていた。こうした子供たちのために出来た学校が「アメラジアンスクール」である。アメラジアン・スクール・イン・オキナワには、現在、4歳から16歳まで約40人が通学している。

 宜野湾市教育委員会は、アメラジアンの学歴保障に関する問題で、アメラジアンスクールに通学する児童・生徒が義務教育課程で「卒業扱い」とされるよう取り組みを行ない、宜野湾市在住の生徒8人について公立学校への就学猶予・免除を取り消し、学籍回復を認めている。

 市教委では、「子供たちにとって不利益な状態にはしたくない。アメラジアンスクールには現在、中学生の生徒もおり、この子たちが卒業を迎える3年生になったとき、不安定な状況で高校進学への妨げにならないよう結論を出したい」と説明すると共に「今後民間の教育施設のガイドラインづくりに取り組み、宜野湾市在住の8人以外の生徒の扱いについては他市町村とも連携を図りながら、2000年度中にも結論を出したい」としている。

 卒業認定について文部省は、全国で10万人以上といわれる不登校児の増加に伴ない、現在は市町村の教育委員会などで適切と判断された「施設」であれば、子供の卒業を認めるという柔軟姿勢を見せている。99年度予算の復活折衝では、文部省が要求した民間フリースクールなどへの財政支援として約7億3000万円が認められている。
 また全国では、フリースクールなどの生徒が、卒業を認められるなどの実績例も残している。

 政府は、7月に実施される主要国首脳会議、九州・沖縄サミットを控え、米軍基地をめぐる県民の不満を少しでも和らげたいとの狙いで、アメラジアンスクールを公的に支援していく方針を固め、沖縄県や宜野湾市などと連携して、子どもたちが学ぶ施設を新たに建設するとともに、スクールの運営資金についても、何らかの形で補助する方向で調整している。

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■砲弾の弾芯しんにウラン廃棄物を使い、劣化ウランの燃焼を利用して貫通力を高める劣化ウラン弾。その薬きょうが米軍払い下げ品の取り扱いをしている沖縄県内の回収業者に沖縄米軍基地から鉄くずとして払い下げられ、西原町の回収業者敷地内に屋外に放置されていることが5月31日、県や西原町、米海兵隊の調査で分かった。

 回収業者が、浦添市の米軍牧港補給地区内にある米国防再利用売却事務所から、6〜7年前に解体車両などとともに鉄くずとして購入したもののなかに、劣化ウラン弾の薬きょうが混じっており、ドラム缶1本に入れて約400発分の薬きょうが放置されていた。
 回収業者によると、米軍基地から鉄くずとして払い下げたものを処理業者に売った際、その業者が分別して薬きょうを返却、戻ってきたその薬きょうが劣化ウラン弾とは知らず、ドラム缶に入れて敷地内に置いていた、という。

 沖縄米海兵隊は5月31日、薬きょうを回収することを決め、この業者を訪れて回収の意思を伝えた。また、外務省と科学技術庁、防衛施設庁による政府の調査チームは6月1日、ドラム缶や周辺の地面、473個の薬きょうすべてに放射線測定器を当てて調べた結果として、「異常値は検出されなかった」とし、県や西原町、業者に対して、「環境や健康への影響はない」との結果報告をした。

 県などは事態を重視、「米軍の管理がずさんだ」として、放射性物質の有無やどういうことで民間に出回ったのかも調査する方針だ。

 劣化ウラン弾をめぐっては1995年から96年にかけて、在日米海兵隊機が同県内の米軍鳥島射爆撃場で1000発を超える劣化ウラン弾を発射していたことが明らかになり、科学技術庁や米軍が放射能の有無や放射線量などを調べるなど、環境への影響調査を続けている。

 核分裂反応などのエネルギーを利用しないとして、米軍は劣化ウラン弾を通常兵器に位置付けており、湾岸戦争やコソボ空爆などでも使われた。

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【沖縄発】


■第二次大戦で、国内で唯一、民間人を巻き込む地上戦が行なわれて20万人以上が亡くなった「沖縄戦」。
 その資料などを集めた沖縄県平和祈念資料館の老朽化に伴う建て替え新築工事がこのほど完了し、4月1日、新しい沖縄県平和祈念資料館として糸満市摩文仁の平和祈念公園内にオープンした。

 県による展示内容の変更など、一時は展示方法をめぐって曲折したが、常設展示室に再現されたガマ(自然の洞穴)では、日本兵がうずくまる住民の家族に銃剣を向けて構えている「沖縄戦」を象徴するシーンも人形でそのまま再現され、展示内容は、監修委員会がこれまでの方針を守り、事実に即した沖縄戦の実相を伝えるものとなった。

 旧館の約5倍に増えた展示面積の館内には、沖縄戦を経験した100人分の証言ビデオ上映のスペースや世界の紛争地帯の展示コーナーなどもあり、これまで以上に平和教育の活動の場としても期待されている。
 毎週月曜日が休館。入場料は大人300円、学生・子供は150円。

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■沖縄のアメリカ軍嘉手納飛行場の周辺住民が、アメリカ政府や日本政府を相手取って米軍機の夜間飛行差し止めなどを求める「新嘉手納基地爆音訴訟」を3月27日、那覇地裁沖縄支部に提訴した。

 前回の「嘉手納基地爆音訴訟」では1982年から6市町村の住民約900人が提訴したが、今回の訴訟では、具志川市、石川市、沖縄市、北谷町、嘉手納町、読谷村など、いずれも航空機の「うるささ指数」(W値)が75以上の地域の住民5544人が原告になり、家族単位で提訴に加わった。

 1998年5月、福岡高裁那覇支部での訴訟判決では、過去の被害について867人に慰謝料として総額約13億7300万円の支払いを国に命じたが、夜間飛行差し止めについては「日本には米軍機の運行を規制する権限がない」と棄却したことから、今回の訴訟では原告代表21人が、米軍機の運行をつかさどるアメリカ政府を相手に夜間飛行差し止めも求める。

 原告側は「アメリカを訴えることで、日本は本当に法治国家なのかを問いたいし、だれが差し止めできるのかはっきりさせたい」としている。

 また、爆音被害による約62億円の損害賠償を求めるほか、「午後7時〜翌日午前7時の飛行禁止」「その間の55ホンを超える騒音を出すエンジンテストや調整などの禁止」「午前7時〜午後7時まで、65ホンを超える騒音の制限」なども求める。

 前回の公判で退けられた身体的、精神的被害への損害賠償については、県が実施した「航空機騒音健康調査」をもとに、再度、爆音による健康への影響の「共通被害」の立証を目指し、騒音性難聴については前回、「原則としてそれぞれの原告ごとに立証が必要」と指摘されたことを受け、今回の訴訟では県の調査で騒音性難聴と診断された本人の証言などを通して、個別に被害を立証させる。

 国に請求する損害賠償額は、過去分計約60億円と、将来分の月1人当たり約3万5000円。

嘉手納基地と爆音被害訴訟
 嘉手納基地は、沖縄市、嘉手納町、北谷町にまたがる極東最大のアメリカ空軍基地で、面積は約1990ヘクタール。アメリカ空軍部隊が常駐し、F15戦闘機や空中給油機などの飛行場として使用。
 戦闘機などの離発着やエンジン整備などによる爆音がひどく、1982年に周辺住民が騒音被害賠償や午後7時〜翌日午前7時の飛行差し止めなどを求める訴訟を起こした。
 判決では過去の賠償だけを認め、夜間飛行の差し止めや将来の身体的、精神的な被害や個別の被害については請求を退けた。

 1996年3月、日米間で午後10時〜翌日午前6時の飛行を原則制限する内容の騒音防止協定が結ばれたが、順守されていないのが現状。

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【沖縄発】


■アメリカ軍普天間飛行場の移設問題を焦点にした名護市議会3月定例会の一般質問で岸本建男市長は、具体的な運用条件に初めて踏み込み、「米軍の運用をヘリコプターだけに限定する」という考えを表明した。「代替施設で大型輸送機などの離着陸があるか」との野党議員の質問に答えたもので、「受け入れ表明文の表題も『代替施設(ヘリコプター基地)』と書いた。滑走路のヘリコプター以外の使用には断固として反対する」と強調した。

 しかし、岸本市長が受け入れの際に示した前提条件には、「ヘリコプター限定」は正式には入っていない。今後、国や県に働き掛けていく構えだが、アメリカ政府は「代替施設にも普天間同様の機能を」と、日本政府に求めていることから、15年の使用期限問題同様、そう簡単にはいかないようだ。

名護市の動き
 名護市の岸本建男市長は、受け入れ表明の際、市長を辞任して出直し市長選に出馬することで受け入れの是非を市民に問う考えだったが、政府と県当局が市長に慎重な対応を強く求めたのに加えて、反対派住民によるリコール(解職請求)運動が予想された状況よりも広がっていないことから、市長を辞任しない意向を固めると共に、リコール署名が集まらないよう市民に理解を求めていく方針に転換した。

 一方、市長のリコール署名の取り組みに関して足踏み状態に陥っている反対派は、リコールに対する市民の理解が不十分なことや、実現した場合の市長選の候補者擁立のめどが立たないことなどを理由に、リコールを当面、棚上げにすることを決めた。
 「受任者が800人を超え、リコール後の市長選を想定した候補者の選考作業も詰めの段階に入った」「手続き的な面では、署名集めはいつでも取り組める態勢にある」としていたが、県議選や九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)などの日程とも重なり、署名活動が制約されることなども影響し、リコールに必要とされる有権者の3分の1の署名(約1万4000)を集めるのは、サミット前の混乱を避けたいという市民感情もあり、困難との意見が大勢を占めた。今後も、地域での学習会の開催などを進め、運動の立て直しを図るとしているが、事実上は、リコール断念という決断に至った。

普天間飛行場の返還と移設をめぐって
 沖縄県は1999年11月22日、宜野湾市の米軍普天間飛行場移設の候補地に「キャンプ・シュワブ周辺の名護市辺野古地区」を選定することを正式決定し、名護市の岸本建男市長に受け入れを要請。

 これを受けて12月23日、名護市議会(定数30)は本会議で、代替ヘリポートの建設候補地への「移設整備促進決議案」を賛成17、反対10の賛成多数で可決。名護市長は、施設受け入れを12月27日に表明。反対派住民が反発を強める中、1996年4月に日米両政府が普天間返還で基本合意して以来、移設問題は3年8カ月ぶりに大きな節目を迎えた。

 選定理由について知事は「基地の整理・縮小の着実な進行」「海域に飛行訓練ルートを設定することによる騒音の軽減」「空港機能を活用した産業誘致など地域経済発展の拠点形成」などが可能になると説明。「県内移設がベストではないが、目前の問題を解決するうえではベターな選択」とした。

 また沖縄県知事は11月25日、政府に報告した際、「米軍の使用期限を15年とすること」「周辺地域の振興や跡地利用について、立法を含めて特別な対策をとること」「代替施設の建設は、住民生活に配慮、自然環境への影響を極力少なくすること」「代 替施設は軍民共用空港とし、将来にわたって県民の財産となるものにすること」などを提示すると共に、在日米軍人が犯罪を犯した際、その被疑者を起訴前に身柄拘束することを認めていない日米地位協定の見直しと、米軍基地の計画的、段階的な整理・縮小に取り組むことも求めた。
 
 政府および自民党は、米軍の使用期限を15年とすることに関しては、「様々な要因と深く関係し、極めて厳しい」「今のところアメリカ政府と協議する考えはない」としているが、知事公約を踏まえ代替施設を「軍民共用空港」とする方針では一致。政府は、海上中心か、埋め立てかなどの工法の調整や使用期限の設定などについて今後、県と妥協案を探る。また、普天間基地返還問題に関連する沖縄県の経済振興策について、代替施設の建設地となる名護市など沖縄本島北部を対象とした振興策の第一次分として約100億円を2000年度当初予算に盛り込むと共に、今後10年間で総額1000億円を充てる方針も決めた。
 沖縄開発庁の予算として計上し、北部12市町村が要望している約80事業のうち、当面着手可能なものについての調査費、設計費などに充てる。そして「北部振興基金」の創設を打ち出したほか、 新たに制定する沖縄振興法で北部地域振興を推進する方針も明確に示した。

 これは、名護市長らの受け入れ容認の姿勢および受け入れ後の体制を後押しするために提示されたものだが、10年間にわたる対策費までも、政府が確約することは、「カネで合意させる」というのが常套手段ではあるにせよ、極めて異例のこととなった。

 ちなみに在日米軍専用施設の約75%が集中する沖縄県自らが、新たな基地建設を認めて候補地を示し、政府と一体になって動くのは初めて。
 しかし、名護市民をはじめ沖縄県民が「日米安保」に起因する問題で混乱を強いられるのは、戦後から今日まで変らずに続いている。

普天間飛行場の返還と移設の経緯
 96年4月、普天間飛行場の県内移設による返還などを日米間で合意したSACOの中間報告で県内移設条件付きとされたため、県議会は同年7月、基地機能強化につながるとして県内移設反対を全会一致で決議した。大田前知事は昨年2月、政府の海上ヘリ基地建設反対を表明した際、この反対決議を理由の一つにあげた経緯もある。

 しかし、稲嶺知事体制になって沖縄県議会は10月15日の本会議で、「普天間飛行場の早期県内移設を求める要請決議案」を自民党などの賛成多数で可決。
 
県議会では与野党が徹夜の激しい攻防を展開したが、本会議の採決では、提案した自民、県民の会、新進沖縄の3会派と無所属の25人が賛成、社民・護憲など野党19人が反対し、これまで県内移設に反対だった公明2人は退席した。

 この要請決議案の可決を受けて県による移設候補地の選定は、年内決着に向けて、名護市辺野古地区の米軍キャンプ・シュワブ周辺を軸に一気に進み、名護市長は、年内の受け入れ表明を前提に、騒音などの基地被害の対策や政府の地域振興策の確約などの条件を提示するために、県側と日程などの事前協議を始めていた。

 稲嶺沖縄県知事は、移設先を政府に提示する際には、政府が難色を示している「軍民共用空港で米軍の使用期限は15年」の条件は譲らないことを強調。さらに政府が口にする普天間の跡地利用での特別立法や移設先の振興策発言に関しては、「抽象的な地域振興でなく1歩でも2歩でも掘り下げたい」など、意欲を示していたが、現実には15年使用の期限設定は、アメリカ側と日本政府の間の「了解事項」にも類する「最低でも40年は使用する」という申し合わせが存在し、アメリカ国防総省も「われわれは米軍の沖縄駐留期限を設けることを望んでいない」「使用期限を検討するのは時期尚早。日米両政府が時間をかけて協議する問題」と述べるなど、受け入れ困難との立場を示しているために、即座には無理、というのが実情だ。
 ただし、軍民共用空港に関しては「沖縄の人々の役に立つなら受け入れる」としている。

 いずれにしても「使用期限」に関しては、政府も期限を明確にしない方向で決着させる模様だ。

●アメリカ軍普天間飛行場の代替施設の使用期限を15年とするよう沖縄県と移設先の名護市が要求している問題についてコーエン国防長官は3月17日、日本記者クラブでの会見で、「われわれは常に、実際の脅威に基づいて安保関係を討議しており、人為的な限定で決まるものではない。日本との安保関係も同じで、日本側もそうした政策を支持しているし、日米安保共同宣言によって順守されている」と使用期限の設定を明確に拒否する発言を行なった。
 沖縄県知事、名護市長ともに、県内移設受け入れの条件として「15年の使用期限設定」を明言しているが、実現不可能は必至の情勢になっている。

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【沖縄発】


■計画から24年、稲嶺県政の誕生で仕切り直しとなっていた新石垣空港建設問題で、建設位置選定委員会は3月11日、石垣島東部の「カラ岳陸上」を建設地に選んだ。稲嶺知事は答申を受け、正式決定する。

 建設場所を「宮良」「カラ岳東」「カラ岳陸上」「富崎野」の4候補地を提示した新沖縄県政は、2月14日の第5回全体委員会で、4候補地のうち「宮良とカラ岳東」の2案を除外、第1段階のハードルを越えた。しかし、3月5日の審議で農政、環境保全、騒音、滑走路延長の観点から質疑応答を行ない、一本化を図る予定だったが、委員から慎重論が相次ぎ、結論を持ち越した。

 そして仕切り直しの3月11日、「カラ岳陸上」「富崎野」のいずれか1候補を予定地に選定する審議の日を迎え、出席した35人の委員が2カ所それぞれについて「○△×」の3段階で両案を評価投票、カラ岳陸上への賛成が多数を占めた。

 新空港は航空需要の増加を理由に、地元の要請を受けて県が1967年に計画。滑走路を1500メートルから2000メートルに延ばし、中型ジェット機が就航できるようにすることを決めた。1970年に珊瑚群で知られる白保地区を建設地としたが、自然保護の声が高まり計画は頓挫した。その後、就任した大田前知事が内陸部の「宮良牧中地区」を選定したものの、農家が猛反発、再び頓挫した。98年当選した稲嶺知事は、地元関係者も含めた建設位置選定委員会で検討し、審議を尽くして建設候補地を再検討する方針を打ち出した。

 しかし、もともと自然環境に恵まれた石垣島に新空港を建設すること、それ自体が「環境面」での難題を抱え込み、容易ではない問題だった。また、4候補地から2候補地に絞り込んだ段階でも、「カラ岳陸上」「富崎野」のどちらを選定するのかについては課題が多く残った。

 「富崎野案」は、地権者らが誘致運動を展開しているものの、鳥獣保護地区に掛かることや付近にラムサール条約登録の動きが出ているアンパル湿地を抱え、環境上の課題が目立っていた。また、「カラ岳陸上案」は、地元が望む2500メートル滑走路だと西に伸ばすと宮良牧中地区の高台にぶつかり、東に伸ばすと白保の海の珊瑚礁破壊が懸念されるなど、これも課題が多かった。

 「○△×」の3段階で両案を評価する投票では、「○」の数はカラ岳陸上が21、富崎野が2、「×」はカラ岳陸上が4、富崎野が16と、「カラ岳陸上案」が大勢を占めたものの、建設位置選定委員会の決定は「全会一致」を大原則にしているため、全会一致に向けて「カラ岳陸上案」を再審議することとなった。
 再審議では、自然保護団体WWFJの委員から工事に伴なう白保の海の珊瑚礁破壊への懸念が指摘され、保留を求める声があがったが、「これ以上の保留は時間的にも、審議上も無理」という判断が示された。そして、珊瑚礁破壊への懸念に関しては、環境対策の充実などを条件に建設を認める、ということで落着、全員の意見が一致した。

 選定委員会は答申をとりまとめ、稲嶺知事へ提出。正式決定してからも環境調査などの手続きを経て建設着手から完成までにはさらに7〜10年かかる見込みだ。
 地権者の一部が反対を表明していたり、カラ岳陸上の予定地を含む土地に50億円の抵当権の仮登記が設定されている問題もあることから、着工の前提となる地権者同意にも若干の課題が残されている。また、建設地は、白保海域に近接していることから、工事による赤土流出などで珊瑚礁への被害が予測されることから、今後も、建設に至るまでには、なお曲折しそうだ。

 しかし、位置決定をめぐり24年にわたって混迷を続けてきた新石垣空港問題は、建設に向けて大きな一歩を踏み出したことは確かだ。

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【沖縄発】


■文化庁は、琉球王国時代の城跡など沖縄県内にある9遺跡を世界遺産に推薦することを決め、ユネスコ世界遺産センターに推薦書を提出した。推薦の対象は「琉球王国のグスク及び関連遺産群」。グスクとは「城塞(じょうさい)」の意で防衛のため石垣を数千メートルから数万メートルの規模で巡らしたもの。
 グスク及び関連遺産群は「斎場御嶽(せいふぁうたき)=琉球最高の聖地とされている」「識名園」「首里城跡」「今帰仁(なきじん)城跡」「座喜味城跡」「勝連城跡」「中城(なかぐすく)城跡」「園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん」「玉陵(たまうどぅん)」の各遺跡で、いずれも琉球が独特の発展を遂げた独立王国であったことを象徴するものとして国の史跡や重要文化財に指定されている。認められれば国内11番目の世界遺産となる。

 世界遺産
 1972年にユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」によって登録された文化遺産と自然遺産のことで、98年末までに582件が登録されている。日本では93年に「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」「屋久島」「白神山地」の4件が同時登録されたのが初めて。その後「古都京都の文化財」「白川郷・五箇山の合掌造り集落」「原爆ドーム」「厳島神社」「古都奈良の文化財」が登録された。現在、「日光の社寺」が推薦中。いずれも加盟国の分担金で遺産を損傷や破壊から保護する。

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