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■97年に発覚した大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染をめぐる公害調停が7月14日、成立した。

 能勢、豊能両町の住民1054人が、大阪府公害審査会に申請していた公害調停では、調停委員会が6月16日、焼却炉を作った三井造船と炉の運転を受託していた三井造船の子会社、三造環境エンジニアリングが、同町や住民などに対して総額7億5000万円を支払うことや、センターを運営する豊能郡環境施設組合と能勢、豊能両町が2006年12月までに施設の処分や周辺土壌などの無害化を終え、今後20年間、施設組合が血中ダイオキシン濃度の測定を含む住民の健康調査を続けることなど14項目が盛り込まれた調停案を提示していた。

 調停式では、能勢・豊能両町の町長および施設を建設した三井造船が「予期せぬ理由によって環境汚染という問題が起き、両町の住民に結果的に迷惑をかけたことをおわびする」などと住民に謝罪した。
 企業がダイオキシン汚染で初めて金銭負担に応じ、地元自治体の経済的損失の補てん 分5億円
地元でのミネラルウオーター供給と集会所建設費、道路整備費用などの1億5000万円、農地改良対策費5000万円も含む総額7億5000万円を支払う。 また、施設や汚染土の処理法などを討議するため、委員15人からなる対策協議会が設置され、調停成立後20年間、健康・環境調査が実施される。
 住民側は調停条項に基づき、施設建設費11億6000万円の返還を求めた住民訴訟を取り下げて、調停成立後は三井側に新たな損害賠償は求めないとしている。

 組合と行政側は1カ月以内に対策協議会を設け、施設周辺での汚染物処理計画の安全性などについて協議するが、一部住民は、施設周辺での汚染物処理計画に反対を表明している。

 ダイオキシン汚染での公害調停の成立は初めてだが、元従業員の健康被害をめぐる労災問題や国家賠償訴訟のほか、施設解体中に高濃度の二次汚染が起こるなど、新たな難題も出てきていることから、最終解決までには相当の時間がかかりそうだ。

※「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染関連記事:「豊能郡美化センター」の解体作業員の血中から、高濃度のダイオキシンを検出。
※「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染関連記事:ゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」元従業員、ダイオキシン汚染での労災申請、認定されず。

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■高濃度のダイオキシン汚染で物議を醸した大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」。その焼却炉内の解体作業に従事していた作業員35人の血中から、高濃度のダイオキシンが検出されたことが7月12日、明らかになった。

 35人の平均値は血中脂肪1グラム当たり680ピコグラムで、500〜1000ピコグラムが11人、500ピコグラム以下が18人、6人が1000ピコピコグラムを超え、最も高い人は血中脂肪1グラム当たりで5380ピコ・グラム(1ピコは1兆分の1)に達した。国内での汚染例としては最高値で、深刻な健康被害が懸念される。

 一般には血中にあるダイオキシン濃度は平均20〜30ピコグラム前後。解体作業に従事する前の検査では、35人全員が60ピコグラム未満の検査結果だったことから、解体作業によって高濃度のダイオキシン汚染被害を受けたことになる。

 同センターの解体工事は日立造船が受注し、99年5月から解体作業を進めていた。焼却炉内の解体作業に従事した作業員らは延べ250人以上で99年7月から2000年1月ごろまで、1日8時間週6日、施設内でフィルター付きの防じんマスクを使用し、防護服を着用して作業にあたっていた。高濃度のダイオキシンが検出された35人の作業員は常時、炉内で焼却灰などの除去作業をしていたという。

 労働省は日立造船と下請けの計12社に、労働安全衛生法に基づき関係作業員の健康診断の実施を指示するとともに、省内に専門家による委員会を発足させ、原因や作業実態を調べる。

※「豊能郡美化センター」関連記事:「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染問題で、公害調停が成立。
※「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染関連記事:ゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」元従業員、ダイオキシン汚染での労災申請、認定されず。

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■「市が率先して汚泥を活用した透水性ブロックを使えば、市民の環境に対する自覚も高まるので、公共施設で使ってほしい」と、愛知県安城市の中学校に通う3年生の女生徒ら2人が安城市議会に出した陳情提案が、6月21日の同市議会で満場一致で採択された。

 下水処理場などでたまる汚泥の処理は? の素朴な疑問から、女生徒らは自由研究で「汚泥の処理」を調べた。下水処理場などでたまる汚泥は、焼却後に埋め立て処分されるが、勉強会などで彼女らは、汚泥から透水性ブロックが作り出され、道路舗装などに利用されているのを知った。そして、透水性ブロックは、地下浸透力の弱いアスファルトなどと違い、雨の際にも水が地下浸透して洪水を防ぐのにも役立つことから、汚泥の有効利用法として各地で新しく採り入れ始められているということも学んだ。

 「環境先進都市を宣言しているのだから、私たちの街でも活用できるはずだ」と思った女生徒たちは、勉強会で知り合った市議から陳情の仕組みを教わり、「私たちの街にも導入してほしい」との思いを込めて「汚泥のリサイクルに関する陳情書」を作成、5月末に市議会議長に手渡した。
 これを受けて市議会は6月の建設委員定例会で審査、6月21日の本会議で満場一致で採択した。

 安城市議会では「中学生が市議会に陳情したのは初めてで、県内でも珍しい。初めての中学生の陳情だから採択したのではなく、内容のある陳情だから、真剣に話し合い、採択に至った」と、この提案内容を高く評価している。

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■東京都同様、大阪府議会(定数112)は5月30日の本会議で、大手金融機関に対する外形標準課税導入の条例案を賛成56票の多数で可決した。

 同条例案は、2月の知事選で太田知事を推した自民党本部に反発して独自候補を擁立した自民党府議団が、太田知事に対抗する形で3月議会に議員提案し、継続審議となっていた。太田房江知事ら与党(民主、公明など)は継続審議を求めたが、継続審議案は反対60、賛成51の9票差で否決された。

 同条例は、2001年度から5年間、大阪府内に本支店を置く資金量が5兆円以上の銀行などを対象に、業務粗利益に3%を課税する。東京都は約1100億円の増収を見込んでいるが、大阪府の場合の実質収入は約74億円となる見通し。
 「税の公平性に反する」などとして導入に反対している大阪銀行協会などは、大阪府を相手取って行政訴訟を起こす構えを見せている。

 外形課税に関する条例成立は東京都に次いで2例目で、これを機に今後、他の自治体での外形標準課税導入の動きにも一層、拍車がかかりそうだ。

※県知事レベルでの外形課税導入を検討する研究会設立の記事

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■原発や火力などの発電所の立地計画をめぐっては、地元の同意を得るため水面下の交渉で不透明な資金が使われるのが常套手段のひとつになっているが、中部電力とその関連会社が過去数年間にわたって、地元漁協への正規の漁業補償金とは別に、漁業振興資金などの名目で提供した資金について名古屋国税局は、課税対象の交際費に当たると判断、事実上は「裏金」として支払われたこれら約35億円について、申告漏れを指摘し、重加算税を含め10数億円を追徴課税した。

 中電は、静岡県浜岡町の浜岡原発関係では関連会社を通じて地元有力者の関係企業に約6億円を支出。また、三重県川越町の火力発電所増設では、地元の漁協に対して漁業補償費とは別に計約17億円を支出。愛知県渥美町の火力発電所をめぐっても、建設工事の代金水増しなどで約11億円を関係者に提供。これら約35億円について、中電と関連会社は「損金」として一般の経費に含めて申告していた。

 しかし、名古屋国税局は、実害補償以外の資金提供は課税対象となる交際費として処理すべきだと指摘、悪質な経理を行なった場合に課せられる重加算税の対象とした。

 中部電力は、「一部について国税当局との間に見解の相違があったが、電源立地に伴う漁業振興資金は漁業振興のために支出しており、適切なものと考えている」とし、現在、国税当局に対する不服申し立てを検討していることを明らかにしている。

 国税通則法で、国税局や税務署が税額などを修正する更正に対し、不服がある場合、不服(異議)申し立てをすることができる。納得できない場合には、訴訟を起こすこともできる。

中部電力の発電所の立地計画をめぐる資金関連記事芦浜原発計画の中止で中部電力、『バラまいたおカネを返して』と漁協に異例の申し入れ

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■愛知万博の見直し問題で、通産省、愛知県、博覧会協会は3月4日、計画の立て直しについて3者合意し、規模縮小などを正式に決めた。
 「環境破壊」との批判が強かった瀬戸市の海上(かいしょ)の森を保全するため、造成は森の南端に限り、森を貫く道路と跡地の新住宅計画(瀬戸市南東部地区新住宅市街地開発事業)を中止し、県は都市計画認可申請を取り下げる。

 見直し案では、海上の森南端部での会場面積は具体的に示さず、今後、環境団体と意見交換しながら、5〜20ヘクタールを軸に広さを詰め、跡地は環境の研究施設や県営公園などを考える、としている。
 博覧会協会の環境プロジェクトチームは、海上の森や周辺の保全および活用について、海上の森では、間伐材を利用した環境教育施設の建設などを、見直しにより会場から外れた地域では、休耕田の復活による田園風景の再生などを提案する意向で、今後は、「森との調和」を基本姿勢に環境団体などと協議を進め、市民参加による里山管理の仕組みづくりを具体化させていく方針だ。

 なお、2500万人の想定入場者数や推計1800億円の会場建設費は減らすが、具体案は決まっておらず、最終的には12月のBIE(博覧会国際事務局)総会の登録を目指して、夏をめどにまとめる。

これまで
  愛知万博をめぐる日本側(通産省、愛知県、博覧会協会)とBIE(博覧会国際事務局)のパリでの協議で、BIE側は、跡地利用に加え、観客輸送や資金調達など会場計画の基本的な部分にわたって「様々な検討が必要」などと再考を求めた。
 また、日本側が求めている5月総会での計画登録についても、「日本にとって早期に登録することも重要だろうが、それよりも今は、登録用の文書などをしっかりと準備することや自然保護団体の理解を得ることに重点を置く方がより重要である」などと諭して、「登録は時期尚早であるし、加盟国の意見を聞く段階でもない」との見解を示した。

 これを受けて通産省、愛知県、博覧会協会などは5月のBIE総会での計画登録を見送ると共に、規模縮小するなど、計画の立て直しを決めた。

 そして、2月末の愛知県議会の代表質問で県知事は、会場計画見直しについて、新住宅計画のみならず、2500万人の想定入場者数や約1800億円(一説には3000億円との試算もある)とされる会場建設費を、さらに減らす方針を明らかにした。

 また、愛知万博に反対する市民グループは、県民投票で賛否を問うことを求め、県内全域で署名活動を始めた。地方自治法の定めで2カ月間に県内有権者の2%を超える署名(約11万人)を集めれば条例制定を県議会に請求できるが、97年には約13万人の署名を集めたものの県議会で否決されたことから、今回は80万人分を最終目標に掲げている。

愛知万博事情
 2005年開催予定の愛知万博は、昨年は会場予定地の「海上(かいしょ)の森」で、絶滅が危惧されるオオタカの営巣が確認されたことから、工事着工の一部凍結が決められるなど、準備段階から物議を醸しているが、今年になって、万博後の跡地利用について、あるいは資金面について新たな問題が発生し、弱りめにタタリめの状態に遭遇している。

 博覧会国際事務局(BIE)が、愛知万博の跡地利用として愛知県などが計画している「瀬戸市南東部地区新住宅市街地開発事業」について、「環境破壊であり、世界に約束したテーマ『自然の叡智(えいち)』とはほど遠い」として、「このままでは愛知万博を承認しない」と言わんかの如きクレームを寄せたことから政府は、通産相を通じて新住宅計画の見直しを含めた検討を県に求め、これを受けて愛知県知事が、従来の方針を変えて計画を再検討することを示すなど、ドタバタが続いている。

 これに加えて国内事情として資金面の問題も発生していることから、日本国際博覧会協会は、会場建設費を抑制するため屋内展示施設をすべて平屋建てにし、展示面積を当初予定の27万平方メートルから3分の2程度縮小し、約18万平方メートルにする方針もまとめた。
 屋上部分を通路や広場として活用する方針だった重層構造物は、建設コストが高くなるとして一部を除き廃止。愛知県瀬戸市の「海上の森」地区に配置する日本政府館とテーマ館を一体化させ、従来の3万平方メートルから2万平方メートルに圧縮する。県立愛知青少年公園地区で検討していた回転式大型ステージの建設も計画から除外する、と修正していた。

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■1995年12月にナトリウム漏れ事故を起こして以来、運転を止めている福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」(核燃料サイクル開発機構=旧動力炉核燃料開発事業団)をめぐり、地元住民ら34人が、国に原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟の差し戻し審と、核燃機構に建設・運転の差し止めを求めた民事訴訟の判決が3月22日、提訴から14年半ぶりに福井地裁で言い渡された。
 裁判長は、「ナトリウム漏れ事故を考慮しても、もんじゅの建設、運転により原告らの生命、身体が侵害される具体的な危険があるとは認められない」「安全審査に重大かつ明白な欠陥があるとは認められず、事故は安全審査の合理性を左右するものではない」として、原告の請求をいずれも全面棄却した。

 原告側は、最終的な論点を「現実に起きたナトリウム漏れ事故」「耐震性」「蒸気発生器の構造上の問題」「炉心崩壊問題」などの4点に絞って危険性を指摘し、「事故などの想定に誤りがあり、安全審査は無効」と主張。これに対し、被告側は「放射能は外部に漏れておらず、多重の安全確保対策を講じており、安全審査の合理性は失われない」と反論していた。

 判決で裁判長は、核燃サイクル機構側の主張に全面的にそった形で「ナトリウム漏れ事故の原因となった温度計の設計ミスは、安全審査の合理性を左右するものではない。また、ナトリウムを遮へいする鉄板は、設計次第で健全性を維持でき、現在の科学レベルから見ても、安全審査の合理性は失われない」とした。
 また、阪神大震災をきっかけにして浮上したもんじゅの耐震性についても「核燃側が耐震設計審査指針の下敷きにした地震学上の知見に不合理な点はなく、具体的な危険性があるとは認められない」とした。
 蒸気発生器の構造上の問題についても「事故の発生は想定しがたい」とし、炉心崩壊の危険性についても「構造耐力、遮へい性能への影響はなく、放射性物質の放出による周辺環境への影響はなかった。事故の際も、炉心冷却能力は十分に保たれていた」とした。

 高速増殖炉もんじゅは、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」のシンボルとして総工費約6000億円をかけて開発され、政府は遅くとも2030年ごろまでに実用化する方針を示していた。
 1983年5月に国の原子炉設置許可を受け、94年4月に初臨界に達したが同年12月、二次冷却系の温度計破損で、冷却用のナトリウムが漏れだす事故が起き運転停止。動燃(核燃サイクル機構)は虚偽報告などで原子炉等規制法違反罪で略式命令(罰金)を受け、科技庁からはもんじゅの運転停止命令が出されている。
 ちなみに止まっていても維持費などで年間100億円程度が使われている。

 原子力開発をめぐる事情も、もんじゅ裁判の審議、約15年の流れのなかで大きく変わり、政府の原子力開発利用長期計画策定会議などで継続するかどうかも含め検討中だ。しかし、もんじゅは、核燃料サイクルおよびプルトニウム利用を軸とする日本の原子力政策の象徴でいわば「国策」。
 高速増殖炉は経済的に高くつき、ナトリウム漏れ事故も多いという理由などから、先進国の多くが開発を断念しているものの、この路線を国が自ら積極的に見直すことは、いまのところあり得ない、というのが現実でもある。

 今回の判決では、裁判所は現在進行形の国策に対しては、まるで無力ということを改めて示すものとなった。また、それと共に、事故を起こさずに稼働しているものならまだしも、停止し続けなければならないほど危険な事故を起こしたものに対しても、「安全審査の合理性は失われないし、問題はない」とする判断および判決の無責任さも明確に示すものとなった。
 原告は控訴する方針。

 核燃サイクル機構は、改善工事をするなどして早期運転再開を目指したい意向だが、施設の改良や福井県および地元敦賀市との同意などを含めて課題も多く、運転再開に至るにはほど遠いのが実情だ。

※関連記事として「社会一般のニュースハイライト」に「揺れる原発政策」があります。

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■中部電力は、三重県紀勢町および南島町の芦浜原発計画を断念したことに伴ない、1994年に海洋調査受け入れを前提に支払った地元2漁協への漁業補償金と協力金の計15億円を返還するよう、漁協に申し入れた。

 返還を求められているのは、紀勢町の錦漁協(組合員約300人)と南島町の古和浦漁協(組合員約200人)で、錦漁協には8億5000万円、古和浦漁協には6億5000万円を、中部電力側が海洋調査受け入れの協力金および海洋調査で発生する損害の補償金として支払った。

 中部電力側では「協定では海洋調査が実施できない事態になった場合、双方で協議する、となっているし、海洋調査を前提としたものなので、計画が撤回されて調査をしない以上、返還してもらいたい」としている。一方、漁協側は「海洋調査に合意して調査を待っていたが、中電が実施しなかった。こちらには何の落ち度もないのだから、返還する気持ちも理由もない。しかも、もう年月もたっていることから漁民は返す金を持ってない」としている。

 古和浦漁協と錦漁協は、94年に中部電力から漁業補償金や立地協力金の提示を受けて海洋調査受け入れを決めた。中部電力は古和浦、錦の両漁協との間で協定を結び、海洋調査受け入れに対する協力金(両漁協各4億円)と海洋調査で発生する損害の補償金(古和浦漁協2億5000万円、錦漁協4億5000万円)を支払った。そして、総額15億円は、漁協組合員個々に200〜300万円平均で分配された。勿論、反対を貫いて分配されたおカネを受け取らなかった漁業者もいた。

 その後、立地を前提にした海洋調査は行なわれることもなく、2月22日、北川正恭三重県知事の県議会での芦浜原発計画白紙撤回表明に至った。これを受けて中部電力も芦浜原発計画の中止を決定。芦浜原発をめぐる騒動は37年ぶりに終止符がうたれた。

 原発立地をめぐってカネがバラまかれるのは常套手段だが、バラまいたカネの返還を求めるのは、原発立地騒動史上、極めて異例だ。

 37年間もの芦浜原発をめぐる騒動。その間、反対か推進かで人間関係を引き裂き、住民に苦悩とキシミを与え続けた原発騒動。その地元漁協に対する「迷惑料」としても「返す必要はない」の声が地元ではあがっているようだが、その思いは十分にうなずける。
 南島町の町長は「芦浜原発問題では大勢の町民がデメリットを被ってきた。組合員の中には、返還に応じるのが大変な人もいると思うが、『返すべきだ』とか『返さないべきだ』とかの発言は差し控える」としている。

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■1970年に大阪で開かれた「万博」を記念して大阪市中央区の大阪城公園に埋設された「タイム・カプセルEXPO70」が万博開幕から30年後の3月15日、地中から引き上げられた。
 タイム・カプセルは71年1月に2基埋設されたが、引き上げられたのはそのうちの1基(総重量約2トン)。
 ステンレス製容器(内径1メートルの球形)に、当時の日常生活を描いた「風俗絵巻」をはじめ衣類、書籍、音楽テープ、超小型ラジオ、植物の種子など計2098点が収納されている。

 大阪万博EXPO70は日本にとって高度経済成長をとげるシンボルでもあった。新幹線が走りはじめ、高速道路の建設も行なわれ、酔いしれる経済成長のなかで、万博に異議を唱える者は殆ど皆無に等しかった。

 しかし、30年後の今は皮肉にも、経済は冷え込み、環境破壊は深刻で、愛知万博をめぐっては「財政問題」や「環境問題」などの視点から、見直しを迫られるなど、賛美された万博は今や「無駄」の代名詞にもなり、状況は一変した。

 そんな時代の流れのなかでタイムカプセルは4月初旬ごろに開封される予定で、11月には再び埋め戻され、今後は100年ごとに開封、点検が行なわれる。別の1基は万博開幕から5000年後の6970年に初めて開封される、とか。

 果たして6970年まで、人類は、そして地球は存在するのか?

愛知万博の動向をみる

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■イギリス核燃料会社・BNFLが福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機用に製造したプMOX燃料の検査データねつ造問題で、関電は3月1日、不正のあった燃料が、当初の3号機の22ロット(1ロットは3000のペレット)から、4号機も合わせると31ロットに増加した、とする再調査の中間報告を通産省や福井県などに提出した。

 また、関電は今回の問題で、副社長ら役員3人がけん責処分、そのほか3人が減俸や厳重注意処分、社長を含む役員4人が2カ月間の報酬月額3割カットの社内処分も発表した。

MOX燃料の検査データねつ造問題
 プルサーマルを計画している福井県高浜町の高浜原発4号機用のMOX(プルトニウムとウランの混合)燃料データで、新たなねつ造が見つかったたのは1999年12月。

 関西電力は、福井県高浜町の高浜原発3号機用燃料については、MOX燃料の検査データが製造元のイギリス核燃料会社・BNF Lでねつ造された問題が発覚したため、3号機用燃料をすべて作り直すとしていたが、4号機用は「何ら問題はない」とする最終報告書をまとめ、11月1日、福井県に提出、資源エネルギー庁や原子力安全委員会および関西電力側は「ねつ造はなかった」と強調していた。

 しかし、プルサーマル計画を疑問視する市民団体は、「関電が公表した検査データをもとに分析した結果、4号機用燃料についても記録にねつ造の疑いがある」と指摘すると共に、燃料の使用差し止めを求めて大阪地裁に仮処分を申請した。

 そんな折の12月9日、イギリスのガーディアン紙が「イギリス核燃料会社(BNF L)でデータ偽造のあった燃料の一部は日本へ送られたことが、この問題を調査した検査局のイギリス政府への報告で分かった」と、日本に送られた高浜4号機分の燃料についてもデータ偽造の可能性があることを報じ、一気に状況は変化していった。

 この報道を受けても、資源エネルギー庁および関西電力側は「ねつ造はなかったと信じている」と強調していたが、燃料を調査したBNFL検査局が12月16日、調査結果を関電に報告し、燃料集合体8体に収められた直径約8ミリ、高さ約13ミリの燃料ペレット3000個の中から200個を抜き出して直径を測る検査データでは、8体に入った199ロット(1ロットは3000個のペレット)のうち1ロットのデータが、別のロットのデータを100個分そっくり引き写したも のだったことが判明すると共に、他のロットもデータ偽造の疑いが濃厚であることが分かった。

 そうなれば、ごまかしたくてもごまかしようもなく、資源エネルギー庁は 「関電には、再発防止策が確立されるまでBNFLから核燃料を輸入し ないよう指導した」と、態度を急変。
 また、かたくなに「ねつ造はなかった」と言い続けていた関電側も態度を一変させて「われわれの調査不足と言われても仕方がない」と責任を認め、MOX燃料の使用中止とプルサーマル計画の延期を表明した。

 今回の問題は、通産省、資源エネルギー庁、原子力安全委員会、そして電力会社と、一蓮托生の馴れ合いの要素を多く含んでいることを示すと共に、国民の中で高まっている原発不信にさらに拍車をかけることになり、プルサーマル計画そのものは、実施以前の課題が山積されている状況だということを鮮明にした。

イギリス原子力施設検査局の調査結果
 イギリス原子力施設検査局(NII)は2月18日、検査データねつ造問題でMOX燃料製造元のBNFLを厳しく批判する報告書を公表、同社に対して業務体制の大幅改善を求める勧告を出した。

 報告書では、4年前から不正が続き、ねつ造が長期にわたって常態化していたことを指摘。イングランド北部セラフィールドにある同社のMOX燃料工場では1996年から組織的、意図的に検査データのねつ造が行なわれており、5つの検査チームのうち4つまでが不正にかかわっていた、と指摘。さらに、このチームの勤務体制を管理していた管理職も不正を見逃していたことから、「管理体制の欠陥が、多くの従業員に安全記録のねつ造を許した」「危険物を扱う現場としては著しく不適切」と断じた。
 NIIは、BNFLが改善策をすべて満たさない限りMOX施設の操業再開を認めないとしつつも、今回の品質検査データねつ造に関して「ただちに安全を損なうものではない」としている。

日本向けのMOX燃料の製造事情
 MOX燃料の データねつ造が相次いで発覚しているイギリスBNFLは、イギリス政府からプラントの一時閉鎖を命じられており、現在は、政府の再開許可が出るまで稼働できない状態になっていることから、日本向けのMOX燃料を製造し直すめどは、全く 立っていないのが実情だ。

福井県高浜町の動向
 
福井県大飯郡高浜町の関西電力高浜原発で予定しているプルサーマル計画の賛否を問う住民投票条例案は1月17日に開かれた同町議会臨時議会(定数18)で、反対多数で否決された。
条例制定を目指す地元の住民団体「住民投票条例を実現する会」は請求に必要な有権者数の約10倍の署名簿を添えて同町に直接請求していた。
 臨時議会では、国のエネルギー政策にかかわる問題を町内だけの住民投票で判断するのは不適切とする派が多数を占め(住民投票条例案への反対票13)、町民の意思を確認せずに計画は進められないとする派(住民投票条例案への賛成票4)に大差を付けて、住民投票条例案を否決した。
 プルサーマルをめぐる住民投票条例案の否決は、1999年3月に新潟県柏崎市と刈羽村の両議会がともに否決して以来3回目。町長は「住民投票は議会制民主主義にふさわしくないし、プルサーマル推進の立場は変わっていない」としている。

プルサーマル
 
プルサーマル計画とは、事故で見通しが立たなくなった高速増殖炉に代わる国の核燃料サイクル政策の一環として存在するもので、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を一般の原発で燃やすというもの。電力業界は2010年までに16〜18基の原発で導入を計画している。
 
プルサーマルの一番の問題点は、原子炉内の核反応を調節する制御棒の利きが低下し、制御が不安定になるということ。原子炉安全専門審査会でも、制御棒の利きの低下を認識している。しかし、「制御が不安定になることはない」とするのが推進を前提にした審査会の見解だ。またさまざまな事故を想定した場合、周辺住民の被ばくの危険も指摘されているが、これに関しても「被ばくの危険は小さい」と審査会では結論付けている。

 そして、原発燃料としてプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料だけを使う「フルMOX」を前提に設計した改良型沸騰水型炉(ABWR)の安全審査についても、国の原子力安全委員会は「フルMOXでも炉に与える影響はほとんど変わらない」として「審査基準を変える必要はない」と結論づけている。
 原発の燃料はウラン燃料を使用するが、プルサーマルでは、ウラン燃料にプルトニウムとウランの混合酸化物のMOX燃料を混ぜて使用する。しかし、フルMOXはMOX燃料だけを原発の燃料として使用するもので、ウラン燃料に比べてプルトニウムが多いMOX燃料は、原子炉内で核反応が進みやすく、制御に大きな問題が残る。そのため、世界ではフルMOX燃料使用の原発稼働を見合わせているのが実情だ。
 原子力安全委員会が「現行の原発の安全評価審査指針で充分」と、時期尚早の結論を出した背景には、電源開発が青森県大間町に2002年着工を目指している大間原発からの「フルMOX」燃料使用が計画として存在しているからで、この結論は、あらかじめその計画を認めることを前提に出された模様だ。

データをねつ造MOX燃料の返還
 品質検査データねつ造のMOX燃料に関しては、高浜原発に搬入済みの燃料をイギリス側に返却することで合意。しかし、核燃料の国際輸送には、日米原子力協定に基づきアメリカ政府の同意が必要なうえ、海上輸送ルートをめぐっても沿岸諸国との調整が必要なため、実際の返却は2001年以降になる模様。

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■兵庫県尼崎市で大気汚染に苦しむ公害病認定患者379人が、国と阪神高速道路公団を相手取り、損害賠償や自動車の排出ガスの抑制などを求めた「尼崎公害訴訟」の判決が1月31日、神戸地裁で言い渡された。
 判決では「自動車排ガスが、気管支ぜんそくなどの症状を増悪させるなど健康に影響を及ぼした」として、原告患者50人に総額約3億3200万円の支払いを命じると共に、自動車排出ガスの抑制を求めた「差し止め請求」についても、「自動車排ガスの浮遊粒子状物質(SPM)が、1日平均値1立方メートルにつき、0・15ミリグラムを超える汚染を形成してはならない」と、道路公害裁判史上初めて、自動車排ガスに含まれる有害物質の排出差し止めの必要性を認めた。

 1988年に公害病患者が企業9社と国、公団を提訴。99年2月には、工場排煙が問われた被告企業9社が、原告側に解決金を支払うなどの内容で判決前に和解が成立。すでにこれまで原告132人が亡くなったが、排ガスをめぐって国、公団との争いが続いていた。

 主な争点は「国道や阪神高速道路の沿道の大気汚染の状況」「自動車排ガスと健康被害の因果関係や道路の環境対策をめぐる責任」などで、原告側は、「尼崎地域の大気汚染は、工場排煙を中心とした二酸化硫黄と、自動車排ガス中の二酸化窒素、浮遊粒子状物質などが原因」「疫学調査などから、排ガスと健康被害との因果関係は明らかで、住宅地に2階建て構造の国道43号線と阪神高速を造ったうえ、環境対策を怠った」とし、現在も排ガス公害が続いていると訴えていた。
 一方、国や公団側は「尼崎地域の大気汚染は、65年ごろまでの工場排煙の二酸化硫黄を除けば重大なものではなく、疫学調査にも科学的証明はない」「道路の公共性などを考慮しながら、最大限の環境対策も行なっている」と反論していた。

 今回の判決が、汚染物質の差し止め請求に対して「1立方メートル中1日平均0・15ミリグラムを超す浮遊粒子状物質が測定される範囲内に居住する原告には、有害が明らかな大気汚染を形成してはならないという不作為請求権がある」とすると共に「浮遊粒子状物質が1立方メートル中1日平均0.15ミリグラムを超えてはならない」と明言したことで、係争中の東京大気汚染訴訟をはじめ国の環境行政に今後、大きな影響を与えるのは必至の情勢になった。

 大気汚染訴訟で、排ガスの差し止めが認められたのは初めてで、賠償を認めたのは1995年の大阪西淀川訴訟、1998年の神奈川川崎訴訟に続き3例目。

 建設省および国は「浮遊粒子状物質と健康被害の因果関係が指摘された点や、自動車の排気ガス規制を求めた差し止め請求が一部認められた点は、とうてい承服できない」として2月8日、控訴。その一方で二階俊博運輸相は、兵庫県と大阪府のトラック協会と検討し、国道43号を通過するトラックに対し、並行している阪神高速湾岸線にできるだけう回するよう両協会が呼び掛けることも明らかにした。

浮遊粒子状物質(SPM)対策
 アメリカなどでは、粒子状物質が人体に与える影響を探る調査が実施され、循環器系の死亡率との因果関係が立証されている。しかし、日本ではこれまで、健康に与える影響との関連は否定され続けてきた。SPMの環境基準(1立方メートル中0.15ミリグラム)は設定されているのもの、主にディーゼル車対策の遅れから、全国のSPMの環境基準の達成状況は、幹線道路沿いではわずか35%といわれており、対策後進国となっている。

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■特殊法人の財務調査を行なっている総務庁の調べで、関西国際空港の累積赤字が1998年度末で1333億円に達していたことが判明した。

 同空港は1994年に開港して以降、毎年、損失を計上するばかりか、年々、収益が減るという悪化状態にある。ちなみに98年度の収益は前年比21億円減の1186億円で、支出費用は1419億円の赤字額235億円にのぼった。中でも空港建設資金の支払い利息がベラボウで473億円に達した。長期債務の累計は1兆3478億円で返済は2875億円にとどまっており、国策法人以外の一般の法人組織なら即、倒産状態だ。
 赤字経営の要因は、ありきたりの文言で「景気の低迷と、空港の利用実績が当初予測より伸び悩んでいるため」らしいが、「当初予測より伸び悩んでいる」のに2本目の滑走路建設を既に着工するなど、「あとは野となれ」方式で進む「特殊法人」そのものの異常体質に、赤字経営の元凶はあるようだ。
 関空経営に関して運輸省は当初、「2000年度には年間の旅客数2680万人、発着回数15万回」と予測したが、年間の旅客数は2000万人にも達していないのが現実で、経営立て直しの見通しは立っていない。

 総務庁は、同社に対し、深夜発着便の増枠による空港の有効利用やホテル経営など直営事業で増収を図ることを求めると共に、増収につなげる方策をとるよう、運輸省に改善を求める。

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■1999年7月12日午前6時頃、福井県敦賀市の日本原電・敦賀原発2号機(加圧水型軽水炉、出力106万キロワット)の原子炉格納容器内から放射性物質を含む一次冷却水が漏れ出たことから、日本原電は1時間後の午前7時前に原子炉を手動停止した。

 作業員が格納容器内に入り、配管の弁を閉め、漏れが止まったのは14時間半後だった。その間、総量で常時約250トンある1次冷却水の流出は、約89トンに達したとされた。

 ところが総量を89トンと正式発表した約3時間後の13日未明に突然、「20トン未満の可能性がある」と修正。その50分後には、「どちらが正しいかはっきりいえない」とさらにあいまいになっていった。説明によると、格納容器内の床に深さ5センチほどにたまっていた水を、1センチになるまでくみ出したところ約12トンしかなく、これをもとに水の総量を計算すると、格納容器内の残量と蒸発分を考慮しても20トン以下という数字が出てくる計算になったという。
 日本原電では「最終的に回収した冷却水の総量を漏出した量とすることになった」と、極めてふざけた対応になり、13日昼すぎに「38・9トンの冷却水を回収した」と発表。そして、89トンと20トン未満の中間を取るかのように「最終的には51トンです」とドタバタ修正した。

 しかしこれでは終わらず、漏れが続いている間、原子炉の空だきを防ぐために注入した水が約183トンに上ったのに対し、流出量として格納容器内から回収できた約51トンを引くと、計算上、約132トンが、どこに行ったのか分からないという「珍な」状態になったことが14日に判明。日本原電は「外部には1滴たりとも出ていない。200度の温度差がもたらした『体積変化』にある」と主張するものの、放射能を帯びた水132トンが、体積変化や蒸発で、まるで無くなることは一般常識では考えられず、環境に漏れた可能性が極めて濃厚になった。

 漏れの箇所は、蒸気発生器から原子炉に戻る途中にある「再生熱交換器」の配管のつなぎ目付近。亀裂が長さ8センチ、幅0・3ミリ程度入っていることを確認した。
 日本原電では「この付近はテレビ監視モニターの死角になっていたため、場所の特定に手間取った」としているが、敦賀原発2号機では96年にも同様の箇所付近で約1トンの一次冷却水漏えい事故が起きており、今回の漏れた量の計算といい、監視・保守体制の甘さといい、日本原電の「おそまつさ」が問題視されそうだ。

 この事故と対応のまずさを重くみた福井県は13日午後、原電に事故の原因究明と抜本的な対策の徹底を申し入れ、申し入れ書では栗田知事名で「原発に対する県民の信頼を損なう結果となり、誠に遺憾」と表明。申し入れ書を渡された日本原電の副社長は「原因究明と対策に取り組み、安全確保に万全を期したい」と陳謝した。

 また、亀裂の見つかった箇所は、ステンレス製小口径配管にねじれがあり、ここに亀裂が入ったことが14日、事故調査に入った原発関係者らの指摘でわかった。
 「化学体積制御系」の再生熱交換器にステンレス製配管が施されており、この個所配管が問題視されている。これを製造したのは住友金属工業で、工事担当は三菱重工。
 住友金属工業では「今回の製品は検査すべてをクリアし、製造時に問題はなかった」としており、三菱重工は「対策本部で原因を調査中で、コメントできない」としている。

 この事故をめぐり、同じ加圧水型軽水炉を抱える4つの電力会社(北海道・関西・四国・九州)の計22基の原発でも「SUS316」と呼ばれる同じ材質の高品質ステンレス鋼の配管が多数使われいることが分かったことから、電力各社は、定期検査中の原発での超音波探傷検査を始めるなど、対応に乗り出した。

 そして7月16日、通産省資源エネルギー庁は、運転中の原発に格納容器内の配管などの点検を指示した結果、全原発で異常がなかったと、原子力安全委員会に報告した。同庁によると、運転中の原発43基に対して調査と点検を行なうよう指示し、全原発で問題がないことが確認されたという。
 「全原発で問題がない」ことが確認されたからには、今後、同じような事故は勿論のこと、各種の原発事故そのものが起こるはずもないということで、この発表は、極めて重要な意味を将来的にも持っていることになる。

一次冷却水漏れ
 一次冷却水とは炉心を循環させている水で、加圧水型炉では、発電用の蒸気タービンをまわす元になる「蒸気発生器」から出た一次冷却水の一部を、再生熱交換器を通して温度を調節したうえで原子炉に戻している。
 燃料棒から熱を取り出すと共に中性子を減速して核分裂の連鎖反応を促進する役割ももつ。
 水がなくなると炉心に熱がたまり、温度が上昇しすぎると炉心溶融という大事故になる可能性も高く、「めったに起きない事故」というより「起きてはいけない事故」のひとつにあげられている。

 通産省・資源エネルギー庁は、「今回の事故は、原発の事象の国際評価尺度(暫定評価)の『0〜7』までのうちレベル1(逸脱)に相当する」と発表。「8段階評価基準のうち軽いほうから2番目で、安全上重要ではない事象」という見解を述べている。「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故もレベル1。

 原発の一次冷却水漏れ事故はこれまで、関西電力高浜2号機で95トン、関西電力美浜2号機で55トンが漏れたことがあった。

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■核燃料サイクル開発機構(旧動燃)の福井県敦賀市・新型転換炉「ふげん」(出力16万5000キロワット)で1999年7月2日午後、核分裂調節用の重水精製建屋内で放射性物質トリチウムを含む重水が約50リットル漏れ、大気中に放射能が放出された。

 「ふげん」では、これまでも重水漏れが頻繁に発生していたため、重水が漏れても放射性物質トリチウムが漏れにくいよう定期検査作業で対策を施したばかりだった。
 また、今回の定期検査では、燃料交換プールから放射能を含む水、約300リットルが漏れ出たり、復水器から海水が漏れ出るなどのトラブルも相次いでいた。

 同機構では、放射能漏れ後の定番の決まり文句、「外部への放射能の影響はない」「中にいた作業員は全員被ばくを免れたことが確認された」というが、値を下げるためにはふき取り作業が必要で、ふき取り作業は人海戦術で行なわれるため、その作業に関わる人たちは、大なり小なり必ず被ばくすることになっている。
 名称を核燃料サイクル開発機構に改めても旧動燃体質に変化はなく、管理体制等すべてにわたって「いい加減体質」は続いている模様だ。

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