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【関東/甲信越発】


■全国初、16歳以上に住民投票権、神奈川県大和市で成立。

 神奈川県大和市の市民らで構成する「自治基本条例をつくる会」がすすめていた、住民投票の投票権を16歳以上から与えるとする条例が、2004年10月4日、同市議会本会議で賛成多数で可決した。

 常設の住民投票条例では、18歳以上に投票権を与えた広島市や愛知県高浜市などの自治体は複数あるが、16歳以上への投票権付与は例がなく、全国初となる。

 つくる会は、市の自治基本条例の素案策定を目的に公募市民26人を含む32人で構成し、2002年10月から130回以上の討議を重ねてきた。 素案では、地方自治の担い手となる子どもたちが政策作りにかかわることが必要として、「子どもの権利」を明記し、「子どもは年齢に応じて政策形成等に参加することができる」とした。住民投票の投票権でも「子どもの権利」を尊重し、義務教育を終えた16歳以上に権利を拡大することにした。

 大和市では、自治基本条例を自治体運営の基本的な理念や仕組みを明示した「自治体の憲法」と位置付け、この条例を2005年4月に施行する。
 同市は米海軍厚木基地をかかえることから基地問題に関しても、同条例では「厚木基地の移転」に向けて市長と市議会に努力義務があると明記した。

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【関東/甲信越発】


■茨城県神栖町の旧日本軍の毒ガス汚染関連で、地下水から環境基準の約3300倍の有機ヒ素化合物を検出。

 旧日本軍の毒ガス関連の研究所があった茨城県神栖町の井戸水から基準値を超える高濃度のヒ素化合物が検出され、周辺住民に健康被害をもたらした毒ガス問題で、環境省は2月17日、井戸の南東90メートル地点の地下約6メートルの地下水から環境基準の約3300倍の有機ヒ素化合物を検出したと発表した。

 今回の調査では、汚染された井戸から約10メートルの地点でも、地下30メートルの深さの地下水から、環境基準の1300〜2000倍の高濃度の有機ヒ素化合物を検出した。
 問題の地点で検出された有機ヒ素化合物は、これまでの調査では最高の濃度であることから、同省は汚染原因の毒物が埋まっている可能性が強いとみて、掘削調査をする。

 井戸水から基準値の450倍のヒ素が検出された問題で、医師らでつくる茨城県の専門委員会が、周辺住民の尿から通常は体内から検出されない有機ヒ素化合物が高濃度で検出され、乳幼児や児童には、歩行の遅れや手足の震えなどの症状がみられることを明らかにしたのは、2003年5月のことだった。
 高濃度のヒ素が検出された井戸を使った住民32人のうち28人の尿を調査した結果、旧日本軍が毒ガスの「くしゃみ剤」に使った成分が分解してできたとみられるジフェニルアルシン化合物とモノフェニルアルシン化合物を検出した。
 有機ヒ素化合物が高濃度で検出された幼児2人は、妊娠中に母親が井戸水を飲んでいたり、出生後に井戸水を与えられていた。このほか、健康調査に協力した6歳以上の人のなかで、バランスよく歩けない協調運動障害が10人、立ち上がってまっすぐ歩けない起立歩行障害が5人、手などの細かな震えやけいれんが8人と、何らかの症状がみられる人が23人もいた。

 神栖町での調査は、その頃から始まり、環境基準の450倍の高濃度のヒ素が検出された木崎地区の井戸を中心に、周囲10メートル四方の範囲で旧日本軍の毒ガス兵器の容器があるかどうかを調べ、地中レーダーや磁気探査で汚染源を探すとともに、深さ15メートルのボーリング調査を実施。これまでに計90本のボーリングを行なったが、周辺住民に健康被害をもたらした毒ガス問題は、調査開始から9カ月を経ても汚染源の特定には至っていない。

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■東京地裁、反戦を主張するトイレの落書きは「建造物損壊」の有罪判決。

 米英軍によるイラク攻撃が続くさなか、東京都杉並区立西荻わかば公園のトイレ外壁に、同区内在住の24歳の若者がスプレー塗料で「戦争反対」「反戦」などと落書きし、異例の「建造物損壊罪」に問われた裁判で、東京地裁は2月12日、懲役1年2カ月、執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)の判決を言い渡した。

 現行犯での逮捕時、杉並区公園緑地課長が「器物損壊」で告訴したが、検察側が「建造物損壊」に格上げして起訴するなど、過剰な対応となっていた。
 これに友人たちが異議を唱えて「落書き反戦救援会」を結成。「落書きに適用される罪名は通常『軽犯罪法違反』ないし『器物損壊』である。トイレを使用不能にしたわけでもない、単なる外壁の落書きに『建造物損壊』を適用するのは極めて異例であり、明らかに過重である。また、反戦落書きがなされたトイレには、他の多くの公衆トイレと同様それより以前に別の落書きが書かれており、区も警察もこれを放置していた。落書きで『損壊』が成り立つのだとすれば、同トイレは既に損壊済みであったことになる。検察による重罪化の背後には、反政府的な運動を押えこんで行こうとする国家権力の強い意思が窺える」
 「アルファベットを崩したような自らのマークを書きつける『タギング』と呼ばれる行為を1万回ほど重ねた青年が警察で聴取され、およそ100通の被害届の束をたたきつけられたが起訴はされず、署員の指導で自分の落書きをシンナーで消しに行った例がある。1回の反戦落書きが1通の被害届けによって即起訴されたことに比べると、扱い方に天と地ほどの差がある。これは『法の下の平等』に明らかに反する」などと抗議していた。

 公判で弁護側は「落書きで便所の使用が困難になることはなく、建造物の損壊に当たらない」「表現の自由の範囲内」と無罪を主張したが、東京地裁は「便所を見る者に一種異様の感を抱かせ、利用への抵抗感を与えかねない」「便所がある公園の設置者の所有権、管理権侵害は許されず、被告にはほかの表現手段もあった」と退けた。

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【関東/甲信越発】


■自然保護のシンボル、尾瀬「長蔵小屋」の不法投棄事件で罰金120万円の判決。

 自然保護運動のシンボルとして知られる日光国立公園・尾瀬を代表する山小屋「長蔵小屋」の不法投棄事件で、福島地裁会津若松支部は2月2日、有限会社「長蔵小屋」に対して罰金120万円を言い渡した。

 この事件は、1999年に別館を建て替えた際、旧建物の建築廃材の一部を搬出せずに現地に埋めていたことが発覚し、入山者からの通報を受けて山小屋関係者の立会いの元で調べた結果、別館解体に伴って生じた断熱材の発泡スチロールや配水管、配線コードなどの建築廃材約7トン、圧縮した空き缶約1トン、細かく砕かれたガラスくずなどが約2トン、合わせて約10トンが見つかったというもので、「長蔵小屋」および従業員が廃棄物処理法違反の罪に問われた。

 福島地裁は、埋設行為のうち、別館解体に伴って生じた建築廃材を同館跡地に埋めた行為は、「現場は観光客が安らぎと憩いを求めて訪れる国立公園の特別地域。同社は尾瀬の自然保護運動を指導してきた象徴的存在で、投棄は関係者に対する背信的行為であり、社会に与えた影響も多大で不法」と断罪したが、圧縮した空き缶やガラスくずなどを新別館玄関前に埋めた行為については、「テラスの材料として2次利用されたものであり、産業廃棄物にはあたらない」と無罪とした。
 不法投棄を指示したとされる従業員に対しては、懲役5カ月・執行猶予2年を言い渡した。

 環境省はすでに、自然公園法に基づき「建設廃材などを投棄した旧別館跡地の環境省への返還」「内輪だけでなく第三者による監視体制作り」「全従業員の定期研修」「廃棄物処理状況の定期公開」などの改善命令を長蔵小屋に出している。

 長蔵小屋の不法投棄事件の裁判で弁護側は「地元市町村がごみを収集しない閉鎖域の尾瀬地区では、廃棄物処理の協力義務は果たせない」「自然公園法に基づく改善命令を受けており、同法の承認条件違反にほかならない」として、「廃棄物処理法を適用すべき行為には当たらない」と、同法での無罪を主張したが、判決では「廃棄物処理法は事業者の排出者責任の原則を規定しており、国内全域が対象になる」と指摘したうえで、「自然公園法の適用いかんにかかわらず、廃棄物処理法の処罰規定の適用は影響を受けない」との判断をくだした。

 長蔵小屋は、1890年に平野長蔵氏が尾瀬沼北部に建設したのが始まりで、その姿勢は、いつの時代にあっても、開発が美徳とされる価値観に反省を迫る鏡のような存在だった。

 初代の長蔵氏は、尾瀬ケ原をダム建設から守るための水利権争いに一生を賭けた。二代目長英氏もまた電力用ダム建設計画で消滅の危機に瀕した尾瀬ケ原の保護に生涯を捧げた。三代目長靖氏は林道建設計画や観光目的の車道工事を止めるためにいのちを費やし、雪の中で力尽きて36歳で逝った。それを引き継いだ妻の紀子さんは長蔵小屋を守り抜くことに力を注いだ。そして、それぞれの取り組みは日本の自然保護運動の大きな柱となっていった。

 その後継者・平野太郎氏(35)は判決を受け、「申し訳なく思っている。私の力不足です」と述べるにとどまった。

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【関東/甲信越発】


■群馬県制作の「食品表示ハンドブック」好評で全国に拡大中。

 食の安全性への関心が高まる中、群馬県食品安全会議が制作した改訂版「くらしに役立つ食品表示ハンドブック」が予想外に全国から注目を集め、2003年10月の発売から2004年1月までの約3カ月強で実売2万5000部を突破した。

 内容は、食品の包装容器などに貼られたりプリントされたりして記載されている「無添加」「有機農産物」「賞味期限」などの表示を解説する、というもので、実際に店頭に並んでいる33種のラベルを掲載し、マークの意味や項目の注意点などを具体的に説明し、表示の解読方法を、消費者に分かりやすく教えている。
 これが、A5判、300円という手軽さもあり、自治体の刊行物としては異例の売れ行きで、一般書店でも取り扱いをはじめるようになった。

 食品表示の規制は複雑で、農水省所管のJAS法、厚労省所管の食品衛生法を筆頭に、複数の法律にまたがり、それらは官僚ならではの難解な食品表示制度になっている。
 一般の消費者がこれを理解するのは極めて困難で、飲料、加工食品、生鮮食品など多岐にわたって表示そのものが謎なぞじみていているのが現状だ。

 群馬県では、分かりやすく解説するために2003年春に県内の消費者団体や事業者に配布したところ、思わぬ反響で県内外から問い合わせが殺到した。そこで、発行後に施行された食品安全基本法などの要素も盛り込み、改訂版として2003年10月から一般販売を始めた。

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