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【東北発】


東電、ミスやトラブル続きで原発再稼働遅れ、やっと、福島第一原発6号機の1基、運転再開へ。

 トラブル隠しなどの影響で原発が停止し、関東地方での電力不足が懸念されるなか、停止中の福島第一原発6号機について、佐藤・福島県知事は7月10日、運転再開を容認する判断を示した。

 再稼働容認を求めて訪問した東電社長が、その後のトラブルや報告遅れなどを謝罪し、「安全最優先で透明性の高い発電所づくりに愚直に取り組む」と再発防止への姿勢を強調したのを受けて、福島県知事が容認姿勢を示したもので、6号機は営業運転を開始する。

 2002年8月のトラブル隠し発覚を受け、全17基が停止した福島、新潟両県の東電原発のうち3基目の運転再開で、福島県では初めてとなる。

 夏の電力確保のためには、あと3〜4基の原発再稼働が必要だが、他の原発については、福島県知事は「まだ検討していない」としている。また、国の安全宣言については「セレモニーで、茶番劇でしかない。原子力安全・保安院長が何度か福島県に来て『6号機は安全だ』と語ったが、決して『安心』にはつながらない」と指摘すると共に、「国は原子力政策の国民的な議論をせず、反対意見を抹殺するような体制だ」と、体質そのものを厳しく批判。「国の体質や体制、エネルギー政策の決定プロセスなどについて、機会あるごとに問題提起していきたい」「電力不足と『安全・安心』は別の問題だ」 と述べた。

トラブル隠しを続けた東京電力は最近でもミスを連発、6月14日には、定期検査中の福島第二原発3号機で、制御棒1本を挿入しないまま核燃料を装荷。作業員が中央操作室のモニター表示で制御棒が挿入されていないのに気付き、あわてて制御棒を挿入した。他の原発でも、福島第一原発3号機で2月、安全装置を作動させずに制御棒を操作し、2本を同時に引き抜く保安規定違反があり、保安院が5月に東電を厳重注意したばかりだった。

 また、福島第一原発4号機の使用済み燃料貯蔵プール内に、炉心隔壁(シュラウド)の修理工事で使用したポンプの部品が落下、工事を担当した日立製作所が4月末にトラブルに気付きながら東電に報告せず、東電も1カ月以上もトラブルの事実を把握できなかったことも判明。「一連の不正問題の反省として、トラブル発生時に協力企業との迅速な情報共有を図るとしながら、その方針が生かされなかった」と、批判を受けたばかりだった。

 その4号機で次は、水深約25メートルの原子炉内に重さ60キロのアルミ製カバーを落とす作業ミスがあった。カバーはプールとつながる原子炉圧力容器内の水中に沈み、シュラウド上部と圧力容器内壁の約30センチの隙間に突っ込む形で見つかった。
 東電は今後、カバーを回収する方法を検討するとともに、圧力容器内の壁やシュラウドなどの機器に損傷がないかどうかを調査する。また、4号機の定期検査作業を停止し、作業管理態勢などを見直す方針だという。

 ちなみに3号機は6月5日に炉心隔壁(シュラウド)のひび割れ補修工事を終え、7月にも運転再開に向けた最終検査に移る予定だった。4号機も、7月中にも運転再開に向けた最終検査に入る計画だった。

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青森県むつ市長、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の誘致を正式に表明。

 青森県むつ市長は2003年6月26日の市議会本会議で、東京電力から要請のあった原子力発電所から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設について、正式に誘致を表明した。

 むつ市議会の調査特別委員会は6月10日、「立地は可能」との結論をまとめ、15対3の賛成多数で誘致を容認していた。

 東電は2003年4月11日、貯蔵規模3000トンの施設を2棟建設し、他の電力会社と共同で運営会社を設立するなどとした事業構想を杉山むつ市長に提出。その際、市長は「私の方から立地の声を上げた。建設に向けて答えを出すよう努めたい」と述べ、立地促進に意欲を示していた。

 市長が誘致の旗印に掲げるのは交付金で、「国は相当の交付金を出す。まだ不確定だが、当てにしていい」と強調。貯蔵規模5000トン、50年保管の場合、交付金は約322億円と試算している。また、推進派の商工会は、50年間で1200億円の経済効果が生じると試算。「将来は増設も求めたい」としている。

 東電は今後、立地地点を確定した上で詳細調査に入る。県知事の同意が得られれば国に事業許可を申請し、経済産業省と原子力委員会、原子力安全委員会の審査を経て事業許可を受ける。

 計画では、建設地は同市北部の関根地区で、キャスクと呼ばれる円筒型の金属容器に収めた使用済み核燃料3000トンを保管できる施設1棟を2010年までに建設。その後、10年以内をめどに同規模施設を1棟建設する。5000〜6000トンを貯蔵する施設の貯蔵期間は50年。建設費は約1000億円でキャスク製造費が8割弱を占める。使用済み核燃料の搬入には、原子力船むつの母港だった日本原子力研究所の関根浜港を使用する。
 貯蔵量のうち東電の搬入分は約4000トンで、他社分は1000〜2000トンになる見込みだ。

 東電は他の電力会社との共同使用の可能性について、日本原子力発電から正式に参加表明を受けたことを明らかにしているほか、東北電力の参加に強い期待感を表明しているが、東北電力は「事業が円滑に進むよう理解を求める活動などは協力したい。だが、共同設置や利用などは現時点で具体的に検討していない」としている。

 東電は「建物自体は100年ぐらいもつが、貯蔵期間50年の延長は考えていない」としながらも、50年貯蔵した後の搬出先について「原則的には六ケ所(青森県)の再処理工場だが、確たる計画は持っていない。40年、50年先にどういう問題が出てくるのか不確かな部分も多い」と見通しが不透明なことを認めていることから、地元住民の間からは永久貯蔵を懸念する声があがっている。また反対派は「2棟では終わらないし、増設だけでも終わらない。50年のうちにこれ以上の施設がくる」と警鐘を鳴らしている。

 むつ市長の誘致決定を受け、誘致の是非を住民投票で決めることを目指す反対派などは、条例制定へ向けた直接請求の署名活動を開始する。
 しかし、市長は、請求に必要な署名数に達しても、反対意見書を議会に提出し、条例案可決の際には拒否権まで行使する構えだ。

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三菱マテリアルの子会社、秋田で放射性チタン残さいを無届け埋設、約30年安全検査せず。

 三菱マテリアルの子会社、東北化学(1989年にトーケムプロダクツに改称後2000年に解散)が、放射線を出すチタン鉱石の廃棄物のうち、1970年代に処分した約20万トンを、国に届けず、安全検査もせずに、秋田県内数カ所に埋めたままにしてることが、三菱マテリアルの調査で6月23日までにわかった。

 チタン残さいは、酸化チタンを製造する過程で生じる放射線を出す土状の廃棄物で、当時の東北化学およびその後のトーケムプロダクツは、1972年から2000年までの28年間で約358万トンを中和処理して排出した。このチタン残さいのうち、秋田市の旧秋田空港跡地など秋田県内の計4カ所については、放射線検査をして国に報告したが、約20万トンについては、74年から4〜5年にわたり、秋田県内の小学校校庭など7カ所に土地造成用の「人工土」として無償提供し、国に届けず安全検査もしていなかった。

 解散したトーケムプロダクツから三菱マテリアルが2002年4月に産業廃棄物処分場の管理を引き継いだ際、「チタン残さいを処分場以外にも埋めた」と伝えられたことから、過去の資料などで投棄状況の調査を始め、 6月20日に国へ報告した。

 三菱マテリアルは自社の調査結果として「自然放射線レベルで安全性に問題はないと思う」と説明しているが、今も埋められていることから、文部科学省などは、土壌が汚染されていないかなど、安全を確認するため、県などと連携して小学校校庭と旧県農業試験場グラウンドの2カ所の調査を始めた。
 チタン残さいが埋められている小学校では6月23日から、調査結果が出るまでの約1週間、グラウンドの使用を禁止することを決めた。

 三菱マテリアルは「残る未確認の場所も早急に調査したい」としている。

 チタン残さいは、放射線を出すが、原子炉等規制法で定める基準値の固体1グラムあたり370ベクレル以下だとして、放射性物質としては扱われない。しかし、90年7月に岡山県内の産廃処分場でチタン残さいから通常より高い放射線が検出されされたこともあり、当時、科学技術庁がチタン残さいについて全国調査を実施した経緯がある。

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福島県議会、福島第一原発6号機再稼働を容認。

 福島県内にある東電の原発10基が一連の不正などによりすべて停止しているなかで福島県議会は6月9日、国が安全宣言した福島第一原発6号機について「技術的な安全性が確認されたと思われる」などと判断し、再稼働を認める見解を取りまとめた。
 原発再稼働については「先に再稼働のスケジュールありきではないのか」「安全宣言イコール再稼働ではなく、信頼関係が構築できたかが最大の問題」などといった批判や指摘もなされたが、多数意見として「東電や国が安全確保に努めることを条件に運転再開を認める」旨の見解を県議会としてまとめた。

 運転再開に慎重な姿勢を示している福島県知事は、「県議会の結論は大きな判断材料だが、県民の全体的な雰囲気を見極める必要がある」として、今後、県民各層の代表から意見を聴く会を開催し、再稼働の是非を6月下旬にも判断する。

 原発に反対する県内の市民団体などは、原子炉の安全確保や県民合意などが得られるまで、県内原発の再稼働について判断を留保することなどを盛り込んだ要望書を知事と県議会議長あてに提出。福島第一原発6号機については、運転再開前に今秋に予定される定期検査を前倒しで実施するよう東電に求めるべきだとしている。

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青森県六ケ所村にある使用済み核燃料再処理工場内の燃料貯蔵施設で放射能を帯びた冷却水漏れ

 日本原燃は2003年2月8日、青森県六ケ所村にある使用済み核燃料再処理工場内の燃料貯蔵施設の「燃料送り出しピット」で、新たに水漏れが確認されたことを明らかにした。既に燃料貯蔵プールの一つで、業者の不正溶接による漏水が確認されており、ピットの溶接も同じ業者が行なったことから、不正溶接が原因の可能性が高まった。

 今回水漏れを起こしたのは、使用済み燃料を再処理施 設に送り出すために一時的に貯蔵するピット。原燃社員が7日深夜、毎日3回行なっている巡回点検中に出水しているのを確認した。漏水量は1時間当たり0・2〜0・3リットルで、8日午後4時半までに4・7リットルが確認された。水は使用済み燃料を冷却しており、放射能を帯びている。
 ピットは、漏水を起こした燃料貯蔵プールと同様、コンクリート外壁に複数枚のステンレス製内壁を張り付けた構造。燃料貯蔵プールでは、2001年12月に3つあるうちの一つで漏水が発覚。原因が業者の不正溶接だと特定するのに丸1年かかった。原燃はほかのプールや貯蔵施設、再処理工場本体で同様の溶接が行なわれていないかを調査している最中で、4月末までに終える予定だった。これにより施設全体への信頼が失われ、再処理工場で6月に開始される2005年稼働をにらんだウランを使った試運転は、先送りが必至の情勢となった。
 調査が終了するまで使用済み燃料の受け入れは凍結している。

 これまでに再処理工場本体で16カ所、貯蔵施設で297カ所もの「要注意箇所」が確認されている。国の審査に合格した施設から次々と欠陥が出てきており、「もんじゅ」の例を挙げるまでもなく、今後、審査のやり直しを求める声が上がるのは必至の情勢だ。

 原子力発電所のトラブル隠し、先行きが不透明なプルサーマル計画など、原発および核燃サイクル政策は、信頼感の喪失により、完全に崩壊しつつある。

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